艦娘幼稚園   作:リュウ@立月己田

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なんかリハビリ執筆していたら書けたので投稿です。
今度の語り手はどうやら先生のようですが……あれ、聞いたことがあるような?


番外編「私、※※さん」

 

 元帥の怪談ホラ話を終えたわけだが、予定されていた時間はもう少し残っている。

 

 ひとまず漏らしてしまった天龍を着替えさせ部屋に戻そうとしたが、本人が手をずっと離さないでいたので仕方なく元に戻ってきた。

 

「天龍ちゃんがそんな感じだと、怪談はやめた方が良いかな?」

 

「べ、べべべ、別に大丈夫だし!

 まったく怖くねえし!」

 

 そうは言うが、さっきから手がブルブルと震えまくっているので本音はもう限界だろう。

 

 しかしここで切り上げと言っても素直に引き下がらないだろうので、ここは1つ怖くない軽めの怪談を披露するのが良いのではないだろうかという結論に至った。

 

「それじゃあ、今度は俺が話しますね」

 

「おっ、先生の怪談か。

 こりゃあ期待できるかなー」

 

「そうですねぇ〜。

 先生って色々と不幸な目に会いまくっていますから、怖い話を1つや2つくらいストックしていることでしょう!」

 

 そうしてハードルを上げまくる元帥に青葉……って、いつの間に参加していたの!?

 

「記事にできそうな雰囲気を察知して、バッチリ潜り込んじゃいました!」

 

「いや、俺はなにも言っていないんだけど……」

 

 相変わらず心の中を読まないでほしいなぁと思っては見たものの、どうせ言ったら言ったで「分かりやすい顔をしていましたからね〜」とか答えられるんだろうだろうし、ここは素直に無視しておくことにしよう。

 

「ごほん。

 気を取り直して話しますね。

 あれは確か、少し前のことなんですが……」

 

 俺はそう言って部屋の明かりをリモコンで消し、火を着けたろうそくを持ちながら語りだした。

 

 

 

 

 

「ある休日の昼下がりだったかな。

 ちょっと市内に出かけていた俺は、用事を済ませて鎮守府に帰ってきたんですよ」

 

 いつものように門番に引き止められたが、さすがに慣れたもので拳銃を取り出そうとする前に門をくぐる。

 

 そうして真っ先に寮の自室に戻ってきた俺は、市内に出かけていた戦利品を整理していた。

 

 それはアニメのDVDで、少しばかり懐かしい物だ。実はこれ、とある切っ掛けで見直したいと思っていたところ中古ショップで並んでいたのを偶然発見し、格安で手に入れちゃったんだよね。

 

 あまりの嬉しさに、共通の趣味を持つ知人に自慢しちゃったくらいなんだが、返事が帰ってこなかったので少々がっかりした。まぁ、忙しいやつなので仕方がないだろう。

 

 ちなみにこの原作本は少しばかり卑猥なシーンがあったりして実家に置いてきた。改めて買い直すということも考えたが、幼稚園の教員という立場上避けておいた方が良いだろうという結論に基づき、我慢しているところである。

 

 ましてや、なぜか存在する俺のファンクラブや、ヲ級が勝手に部屋に忍び込んでいることを考えれば、そういった危険を犯すのは愚の骨頂。

 

 とまぁそういうことなのだが、さすがに地上波でやっていたアニメなのだからさすがに大丈夫。

 

 さっそく今から購入したDVDをプレイヤーにセットし、のんびりした休日を過ごそうと思ったんだけど、

 

 

 

 ピロン〜♪

 

 

 

「……ん?」

 

 ポケットに入れていた携帯電話からメールの着信音が鳴ったので、画面に表示させてみる。

 

「私、※※さん。

 今※らそ※※に※※いま※ね」

 

「……なんだこれ。

 メールが文字化けしちゃってるよなぁ」

 

 最近調子が悪いと感じていた携帯電話だが、ここまで酷いとは思っていなかった。

 

 これはさすがにまずいと思ったが、電話が通じれば仕事の方はなんとかなるし、機種変更をする時間よりもまずはDVDを見ておきたい。

 

 それに携帯電話の故障は確か申請すれば新しいものに変えてもらえたはずだから、費用も負担しなくていいし。

 

 メールの相手も返信がなければ電話をかけてくるだろうとたかを括り、プレイヤーのリモコンの再生ボタンを押した。

 

 しばらくするとオープニングが流れ、覚えのある音楽が鳴り響く。懐かしさに胸がこみ上げ、ウキウキとした気分が収まらない。

 

 そして始まった第1話。久しぶりということもあって覚えていなかったシーンを見直し、若干感動をしていたところで再び携帯電話が着信音を奏でた。

 

「私、大※※ん。

 今は※鶴※※埠※にい※※」

 

 またしても文字化けだ。

 

 さすがにちょっと気持ち悪いなぁと思った俺は、アニメを一時停止状態にしてから送ってきた相手のメールアドレスを見る。

 

「むぅ……、誰だよこれ……」

 

 携帯電話に登録されていない、見知らぬメールアドレス。アルファベットと数字がグチャグチャと並んでおり、推測すら難しい。

 

 返信をした方が良いだろうか?

 

 いやいや、今はアニメが見たい。

 

 せっかくの休みなんだから、ゆっくりまったり過ごしたいのだ。

 

 重要な用事があるのならば電話をよこすだろうし、気にせずにしておこうと再生ボタンを押して一時停止を解除する。

 

 そうしてしばらくアニメに見入り、1話を終えてエンディング曲が流れている最中に、またしてもメールが届いた。

 

「私、※※さん。

 今※の入※※立※い※す※〜」

 

 相変わらず読めない文章に、俺は大きなため息を吐く。

 

 タイミングとしてはちょうど良く、2話のオープニングも合わせればそれなりに時間はあるが……。

 

 何度もメールを送ってきているのだから、さすがに返事をした方が良いのかもしれない。

 

 いやしかし、相手が送ってきた文章がほとんど分からないのだから、どう返せば良いのだろう。

 

 普通に考えれば文字化けしているので、電話をしてくださいという感じかな。

 

 とりあえずそのようにメールを送った俺は、テレビ画面に視線を向ける。

 

 そろそろ2話に入るぞ……と思ったところでメールではなく、『ピリリリリ……』と電話の着信音が鳴り始めた。

 

 どうやら俺のメールが通じたようだ。

 

 これでメールの差出人が誰だか分かるだろう。

 

 そして用事を済ませれば、今度こそアニメに集中することができると思い、通話ボタンを押す。

 

「もしもし」

 

「………………」

 

「……もしもし?」

 

 返事がない。

 

 なにか少しばかり雑音というか、音楽のようなものが遠くに聞こえている気がする。

 

 そう……思っていたところで、小さな女性らしき声がゆっくりと聞こえてきた。

 

「私、※※さん……」

 

「……はい?

 ちょっと音が遠いみたいで、聞き取りにくいんですけど……」

 

「今、あなたの部屋の前にいるの」

 

「……へ?」

 

 突然告げられた言葉に呆然とし、固まってしまう俺。

 

 すると扉の方から、ガチャ……と音が聞こえてきた。

 

 い、いやいや、待て待て待て。

 

 扉の鍵はかけていたはずなんだが、どうして開いちゃったんだ!?

 

 そ、それ以前に、誰が一体なんのために、俺の部屋に入ってこようとするんだよ!

 

 

 

 ピリリリリ、ピリリリリッ。

 

 

 

「……っ!?」

 

 

 

 またしても鳴る電話の着信音に、俺は視線を扉の方から手元に向ける。

 

 ハッキリとは覚えていないが、先ほどかかってきた番号と同じはず。

 

 俺は背筋に続々とした寒気を感じながら、再び扉の方に視線を向けつつ通話ボタンを押した。

 

「も、もし……もし……?」

 

 

 

 しばらくの間。

 

 返事は……ない。

 

 

 

 どれくらいの時間が経ったのか分からないくらい緊張していた俺の額に大粒の汗が浮かび、その1つが目に入ってしみた時だった。

 

 

 

 

 

「私、ヤン鯨さん。

 今あなたの後ろにいるの」

 

 

 

 

 

「「ぎょえええええええええええええっ!」」

 

 突如部屋に響き渡った悲鳴に驚き、俺は語るのを止めた。

 

 ちなみに声を上げたのは元帥と青葉の2人な。ちなみに青葉の方は泡を吹いてぶっ倒れているのはなぜだろうか。

 

 なお、俺の手を握っていた天龍の震えも収まっておらず、どうやら俺の目論見どおりとはならなかったようだけれど……どうしてこうなった。

 

「こ、怖っ、マジで怖っ!」

 

「いやいや、なんでそこまで怖がっているんですか……?」

 

「だ、だって、ヤン鯨だよ!

 出会った時点でゲームオーバー確定のラスボスなんだよ!」

 

「えっと、そうなんですか……ねぇ?」

 

 オレは元帥の言葉に疑問を持ちながら頭を捻っていると、ポケットの中にある携帯電話が鳴りだした。

 

「ひっ!?」

 

 急な音に驚いた天龍が手をギュッと握ってくるが、俺は大丈夫だという意味を込めて頭を撫で、通話ボタンを押す。

 

「あー、はい。もしもし……。うん、そうそう。

 …………へ?」

 

「い、いったい……誰……なのかな……?」

 

 冷や汗ダラダラの元帥が恐る恐る俺に声をかけてくる。

 

 その言葉が非常にタイミング良く、俺はニッコリと笑いながら通話したままの状態で携帯電話を差し出した。

 

「元帥、電話の相手が変わってくださいって言ってます」

 

「ぼ、僕に……?」

 

 大きく狼狽える元帥だが、俺が表情を変えないことに観念したように受け取り携帯電話を耳に当てた。

 

「も、もし……もし……?」

 

 

 

 

 

「私、ヤン鯨ちゃん。

 今あなたの後ろにいますよ〜」

 

 

 

 

 

「…………………」

 

 ゆっくり、ゆっくりと後ろへ振り返る元帥。

 

 そこには俺以上にニッコリと微笑んだヤン鯨……もとい大鯨が顔面ドアップになるように中腰で座っていた。

 

「………………がくっ」

 

 ばたりと横倒れになる元帥。

 

「ちーん。

 ヤン鯨ちゃん、死亡確認で〜す」

 

「いやいや、死んでない死んでない。

 ただの気絶なだけでしょうに」

 

「あら〜、そうなんですかね〜」

 

 いや、もし死んでたらマジで大事だからね。

 

「……で、今日はいったいどうしてこんな夜更けにきたんです?」

 

「この間のアニメ視聴会でお願いされていたDVDを持ってきたんですよ〜」

 

 大鯨はプンプンと頬を膨らませつつ、俺にディスクを差し出してくる。

 

「おおっ、これがセカンドシーズンのDVDですか!」

 

「そうで〜す。

 ファーストシーズンだけしか見ていないなんて、そんなもったいないことはダメなんですからね〜」

 

 そう言って再び笑みを浮かべた大鯨からディスクを受け取り頭を下げた。

 

 

 

 しかし、どうして青葉と元帥は気絶しちゃったのかなぁ……なんてね。

 

 




本編はまだまだかもですが、気分が乗ったら何か書ければ良いなぁと。
やっぱりモチベーションは大事ですよね。


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