仮面ライダーバレット   作:了見

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訳あってちょっと萎えてましたがお待たせしました。


第11話 影を見せるM/Mad Scientists

 

研究所を探索する裕也は、広い通路に出た。

奥の部屋から続いていると思わしき通路には、見るも無残な大量の人骨が残されていた。

ほぼすべてが倒れこんだ状態で白骨化していることから、逃げ遅れた人々のものだろう。

 

人骨(こんなもん)まで放置されてるとはな。」

 

あまりに無残なその光景に思うところがあったのか、物陰に生えていた花をとって遺骨の近くに手向けた。

そうしてその場から離れ、周囲の探索を続け、ここにいるであろう羽京を探し始めた。

 

―――――

 

ボロボロになりながらもまだ原型を保っていた研究所の部屋で、羽京はくつろいでいた。

目の前の机にはガイアメモリが数本置いてあり、近くに資料のようなものも置いてあることから、ここに来るついでに彼も調べ物をしていたようだ。

そうしてある人物を待っていた羽京だったが、突然後ろの扉が吹き飛んだ。

扉は羽京の方に向かってくるが、羽京は動じることはなく、再び風が吹いた。

風にあおられた扉は元々ボロボロだったのもあって粉々になる。

そして羽京はその人物の到着を確信した。それと同時に羽京の頭部に銃が突き付けられる。

 

「ああ、来たんだ。」

 

羽京はそんな状況になっても臆することなく、その人物―裕也を迎える。

裕也の方もすぐに引き金を引くようなことはせず、羽京に問いかける。

 

「随分荒れてんなここ、てめぇらなんか知ってんのか?」

 

ここが荒れている理由。

そんなものは目の前の羽京の様子を見れば火を見るよりも明らかだったが、予想通り羽京はここをめちゃくちゃにしたのは自分だといった。

 

お前たちの目的は。

続いてそれを聞いてきた裕也に対し、依然として飄々とした様子で羽京は続けた。

 

「僕たちの目的は、"神の力"をもってこの世界に裁きを与える。そしてその先に『あのお方』の目指す真の平和がある!だからここには犠牲になってもらったんだよ♪」

 

『あのお方』とやらが目指す真の平和。

それがどうやらジャッジメントの最終的な目的らしい。

これまでの動向を見るに、それをガイアメモリの力で実現させようとしているのだろう。

 

「だって平和は「平和はいつも誰かの犠牲で成り立つ…って言いてぇのか?」!!」

 

さらに語り続ける羽京だったが、裕也もそんな羽京に対し、自分の考えを語りはじめた。

 

「お前たちの言い分もわからんでもないな。なぜなら人を守る"法"も何かの悲劇が起きて初めてそれを守る"法"が生まれる。犠牲が生まれなきゃ人は事の重大さに気が付かない。いつもそうだ。そしてそれで平和になったかと思えば新たな犠牲が生まれ…最悪な無限ループだ。」

 

犠牲の先にしか平和はない

 

そう断言した裕也は、さらに続ける。

 

「実際この世界は上級国民庶民問わず、腐った人間で溢れている。世の中で善人とされるやつも悪人とされるやつも腹の内になにかよからぬものを隠してるもんだ。そういうのを一回リセットするってのは、手っ取り早い方法だな。」

 

ジャッジメントの目的に賛同するようなことを語る裕也だが、それでもジャッジメントに協力するつもりはないのか、羽京に突きつけた銃口は動かさない。

それを見て協力する気はない徒判断した羽京は、そんな考え方を持っていながらなぜ自分たちと敵対するのかと問いかける。

 

「そんなもん答えはシンプルだ、てめぇらが気に入らねぇ、それだけだよ。」

 

気に入らない

 

そんな裕也の答えに羽京はほくそ笑む。

そして裕也は羽京に発砲したが、羽京はさっきと同じように一瞬で裕也の背後に移動した…

と思いきやそれを読んでいたのかバレットドライバーを回転させて背後に銃口をあわせ、そのまま発砲する。

さすがの羽京も一瞬動揺するも、すぐに逃げてしまった。

埒が明かなくなった裕也を前に、羽京は自分の能力のカラクリを説明した。

 

「ガイアメモリを使用し続けることで目覚める特殊な力、"ハイドープ"。メモリを起動しなくても特別な力が使えるんだ。」

 

ハイドープの前では生身の人間じゃなんにもできない。

そう煽って高笑いする羽京だったが…

 

《ジェット マキシマムドライブ》

 

「おぉーっとそれは聞いてなーい。」

 

流石にマキシマムドライブを使われると分が悪いのか、羽京は表情から余裕が消え、ジェットスプラッシュをくらう前にそそくさとその場から逃げ出した。

そして裕也は、逃げた羽京をすぐには追わず、部屋を見渡していた。

 

―――――

 

羽京は研究所を逃げ回り、長い通路に出る。後ろを見ても裕也はおらず、逃げ切ったと一息つく羽京。

だが、直後に後ろから裕也が壁を突き破って現れ、羽京を取り押さえた。

どうやら羽京の逃げ道を予測して、先回りのために研究所を破壊して回り込んだようだ。

予想外の奇襲になすすべなく取り押さえられた羽京だが、静かに笑いながら裕也に話しかける。

 

「あの有様を見ても怒りを微塵も見せないなんて、よっぽど冷たい人なのかな?君は。」

 

あの有様、というのは、研究所内に放置されていた人骨の事だろう。さっきの犠牲になってもらった、という発言からも彼がこの惨劇を引き起こした犯人の1人だろう。

それで揺さぶりをかけられるかと思いきや、裕也は妙に冷静だった。

動揺していない、いや、むしろそもそも興味がないかのような反応だった。

 

「正直興味はねぇな。お前がどれだけ殺してきたかなんて、聞かなくてもわかる。」

 

「わお結構ドライ。」

 

裕也は研究所の惨劇については、「興味はない」と吐き捨てた。

そしてその目は、平和を守る"正義の味方"ではなくいうなれば目的のためには手段を択ばない"悪の敵"のもの。

バレットドライバーの銃口を羽京に突き付け、質問を続ける。

 

「とりあえず質問に答えろ。じゃなきゃお前の両足、両腕は使い物にならなくなるかもな、答え次第では命も。」

 

「うん、君だったら余計な情なんてなく僕を殺すよね。」

 

そんなはたから見れば絶体絶命のピンチになっても羽京は落ち着いていた。

一方の裕也は情報を聞く前に下手に殺すわけにはいかないので実質膠着状態にあった。

が、そんな中、裕也の背後から1人の"狩人"が迫る。

 

「その銃をどけろ。」

 

裕也の首筋に鋭い爪が光った。

それは紛れもないハンター・ドーパント、玲央のものだった。

予想外の刺客に、裕也はおろか、羽京も驚いていた。羽京もまさか、玲央が自分を助けに来るとは思わなかったのだろう。

動揺した隙をついて、羽京は裕也を奥へ蹴り飛ばした。

 

「君らしくないね、こんなことするなんて。それとも何?僕がこの程度のことで助けが必要な奴だと思ってんの?」

 

「貴様をここで失うわけにはいかないと、『あのお方』からのお達しだ。」

 

考えられる限り最悪の状況であった。

目の前には最高幹部クラスが2人もそろっている。

裕也は前に玲央と戦った際に、その力を身をもって知っており、それゆえに羽京の実力も想像に難くない。

が、玲央はドーパント態を解き、後ろに下がった。

 

「あれ、手伝ってくれないのー?」

 

「本当ならここで貴様を殺して俺が戦いたいところだかな。貴様と奴の戦いも見てみたくなった。」

 

どうやら玲央は見ているだけで戦わないようで、裕也と羽京の戦いに興味を持ったのか、ここでの戦闘は羽京に任せたようである。

 

「ええー、面倒なんだけど、でも…負けるような勝負じゃないしいいか。」

 

《プテラノドン》

 

羽京は自分1人で戦うことを面倒臭がっているようだったが、即座にガイアドライバーとゴールドメモリの"プテラノドンガイアメモリ"を取り出し、ガイアドライバーを背中に巻くと、プテラノドンメモリをセットした。

すると羽京の両腕から巨大な翼が生え、その足は鋭い爪をもったものとなり、頭部には長く大きなトサカが出現し、その体は黒く光っていた。

 

「変身。」

 

《ジェット》

 

それに対抗して裕也もバレットに変身し、迎え撃つ。

互いに最初は空中でぶつかり合っていたが、プテラノドン・ドーパントは突如羽ばたきをはじめた、すると風がどんどん強くなり、終いには巨大な竜巻となって、バレットに襲い掛かった。

バレットは危うく竜巻に飲み込まれそうになるも、ジェットをフル稼働させて何とか竜巻から逃れることに成功する。が、その間にもプテラノドン・ドーパントは大量の竜巻でバレットに追撃を仕掛けてくる。

それに気づいたバレットは竜巻から距離をとり、後ろに回り込んでバレットドライバーで狙いを定め、攻撃を放つ。しかしプテラノドン・ドーパントはその巨大な翼で難なく防ぎ切ると、翼を振るって斬撃を飛ばしてきた。

その斬撃は研究所周りの木々をあっという間に蹴散らし、バレットも真正面からくらうこととなったが、受けきれずに遠くに吹っ飛ばされかける。

すんでのところで持ちこたえるも、なんと今度は口から火球を放ってきた。

想定外の攻撃に対応が遅れたバレットはもろにくらってしまい、地面へと落下する。

しかし何とか耐えたようで、起き上がると、さっきから抱いていた疑問を相手にぶつけた。

 

「…さっきから風を操るわ炎は吹くわ、てめぇの様なプテラノドンがいるかァ!」

 

先程から風を操って竜巻を起こしたり斬撃を飛ばしたり、火球を放ったりしていたが、普通に考えればそんな生物は古代のものであろうとあり得るはずがない。

なのにプテラノドン・ドーパントは平気でそのような芸当をやってのけている。

 

「いや?僕だったらそれができる。こんなこともね。」

 

さっきまでとは違い、全身を回転させて大きな竜巻を飛ばしてくる。

危機感を感じたバレットは何とか寸前で避けたため、ダメージをくらうことはなかった。

だが、次にとある光景を見たことで、バレットは大きな冷や汗をかいた。

 

そこにはさっきまであったはずの通路が跡形もなくなくなって―否、えぐり取られており、外の風景が丸見えだった。

 

プテラノドン・ドーパントが発生させた竜巻で、研究所の4分の1ほどが一瞬にして削り取られていたのだ。

それはもう、生半可なドーパントとは比べ物にならない。

まさしく『災害』と呼ぶにふさわしい力だった。

 

「あー…まずいやつだな、これ。」

 

ひとまず物陰に隠れるバレットだったが、そんなバレットの真横に玲央が立っていた。

玲央はドーパントに変身することもなく、バレットに問いかける。

 

「さて、どうするつもりだ?奴は三騎士の中では実力は一番下だが、それでもお前程度なら正面から圧倒できるぞ。」

 

「俺を試してんのか?訳のわからん奴だ。」

 

「せいぜい頑張るんだな。」

 

現状プテラノドン・ドーパントと正面からぶつかって勝てる可能性は間違いなく0。

対抗策を考えながらバレットは研究所内を駆け巡る。

自分がすでに持っていたガイアメモリ、そして()()()()()()()()()()()()を見ているうちに、何かを思いついたバレットはあることに賭けた。

 

そんなことを気にせずお構いなしに斬撃を飛ばしてくるプテラノドン・ドーパント。

バレットは体のジェットから一気に風を噴射し、プテラノドン・ドーパントの斬撃を相殺した。

 

「その攻撃の仕組みはわかった。要はそれと同等の風力で逆向きの風をぶつけりゃあ相殺できるってことだろ?」

 

「フゥン、対抗策、見つけちゃった?でも、それで僕に勝つどころか、僕から逃げれる保証もないでしょ?」

 

プテラノドン・ドーパントは追い打ちとしてバレットが隠れている部屋にさらに火球を放つ。逃げ場はない、着弾すればバレットの敗北は濃厚であった。

しかしバレットは、その攻撃を待っていたのだ。

勝ったと確信したプテラノドン・ドーパントは、ふと気が付いた。

この廊下から奧の部屋にかけて、妙なにおいが漂っていたのだ。

 

(この匂い…アルコール、酒?)

 

プテラノドン・ドーパントがその匂いの正体、アルコールに気付いた頃には、すでに火球は部屋の扉に着弾していた。

 

「チェックメイト。」

 

そして炎は、すさまじい勢いで一気に燃え広がり、プテラノドン・ドーパントも包み込もうとする。

 

「クッ!?なんでいきなり…そもそも酒なんてどこに…ッ!?」

 

プテラノドン・ドーパントが炎のすき間から見えたのは、"アルコール"の記憶を宿す"アルコールガイアメモリ"を持ったバレットの姿だった。

バカな、なぜ、あんなメモリいったいどこで。

そう思考するプテラノドン・ドーパントだが、自身がここで裕也と初対面した時を思い出した。

あの時、自分は研究所の1室の机に座っており、その机の上には、せっかくだから研究材料にしようといくつかガイアメモリを置いていたのだった。

そして彼が来たとき、あの場所で交戦し、自分は彼より先に部屋を出ていた。

 

「…あの時、パクってたの?油断も隙も無い。」

 

プテラノドン・ドーパントの推測通り、あの部屋で交戦したときにメモリを何本か盗んでいたバレットは、そのうちの1本、アルコールガイアメモリを起動して、研究所内に可燃性のアルコールをばらまいていたのである。

しかしそのままでは風を使った攻撃で対処されてしまう可能性もあるため、ジェットフォームの能力で風の攻撃は意味がないと思わせておくことで炎攻撃を撃たせたのだった。

結果、作戦は成功し、プテラノドン・ドーパントは研究所ごと炎に包まれた。

 

「ここは地上に出てる分は調べ切ったからな、地下があるかは知らねぇが、俺にしてみれば燃やしちまっても問題はねぇ。」

 

「フッ…最っ高にイカレてるね、君。」

 

バレットは燃え盛って崩れた研究所の屋根から外に脱出した。

一方のプテラノドン・ドーパントは、突風を発生させて火を消火し、再び追おうとする。

だが、そんなプテラノドン・ドーパントを1つの声が止めた。

 

[羽京、ここまでです。]

 

「!!」

 

[ここで一旦引きましょう、そんなに急ぐことはありません。]

 

その声を聞いたプテラノドン・ドーパントは動きを止め、それどころか地上に降りてドーパント態を解除した。

『声』は羽京にこれ以上追うのをやめ、帰還することを伝えた。羽京はこれまでとは打って変わって冷静になり、近くにいた玲央とともに黙って帰還した。

 

――そしてその声こそが、羽京や玲央よりも上位の存在

 

ジャッジメント最高指導者の『あのお方』のものだとは、彼ら以外の誰も知らなかった。

 

―――――

 

「また壊れたのか…ドーパントのメモリはこいつには合わねぇのか?」

 

帰り道、裕也は見事にぶっ壊れたアルコールガイアメモリを見てあきれたようにつぶやいた。

一応他にも拝借していたが、どれもアルコールガイアメモリと同じドーパント用のガイアメモリだったため、下手に使ってもどうせ結末は予想できる。

しかもどれも特別強いと言えるようなメモリではなかったため、得られたものと言えば研究所で見つけた資料くらいであった。

それでいったんスワンプに帰還した裕也であったが―

 

「何があった…。」

 

目の前には非常に疲れた様子の茂となぜか机に突っ伏している里奈の姿だった。

里奈はどうやらあの後起きたようだが、なぜかまた机に突っ伏しているし茂は妙に疲れている。

意味不明な状況に裕也は何事かと思い茂に事の顛末を聞いてみた。

 

「…あの後、目を覚ましたはいいんだけど説明したらなんか急に動揺して「もういい、やけ酒する!」って言いだしたもんだから、止めようとしたんだけど今度は変に酔っちゃったもんで無駄に上戸になっちゃってねー…。」

 

「成程、納得。」

 

茂の話から察するに、酔ったせいでちょっとした騒ぎが起こったんだろう。それで今は落ち着いてあの状態。

状況を把握した裕也は、今度からは里奈でも飲める酒を買ってきてやろうと思うのであった。

 

―――――

 

部下の運転する車に乗って教会に帰る途中。

羽京は裕也にまんまとしてやられたにも関わらず、余裕の態度を崩さなかった。

一方玲央は、裕也が研究所に侵入した際にボロボロながら残っていた資料を裕也が奪っていたことは玲央も気づいていたものの、羽京もそれを取り返そうとせず、『あのお方』すらも意に介していなかったのを気にかけているようである。

 

「大丈夫だったのか?あのまま渡して。」

 

「大丈夫だよ。1番見られたらまずいのは全部抜き取ったし、あれくらいの情報は与えとかないとフェアじゃないでしょ?」

 

そういって笑みを浮かべる羽京。

だが、それを聞いても玲央はどこか腑に落ちないことがあるようだった。

 




はい、というわけで前回と今回で5年前の事件とやらに言及しました。ジャッジメントの目的も羽京の口から語られましたが…

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