鬱エロゲ世界に生きる純愛厨の俺、女勇者の貞操を守るため魔王を潰します   作:ぽんじり

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メスガキさんがでるまでもうちょいかかりそう。


自称嫁VS幼馴染VSダーク〇イ

 放課後の生徒会室。

 

「ん? ライト? どうしたの? 聞こえなかった?」

 

 「トントントン」と机を指で叩きながら、額に青筋を浮かべたオリビアが、俺に問いかける。

 

 どうしてこうなった。

 

 突如として訪れた、命の危機。

 大げさと言うことなかれ。

 普段から強気な性格のオリビアだが、怒ったときはその比ではない。

 

 一度、二人で村をまわるという約束をすっかり忘れて、近所の女の子と追いかけっこで遊んでいたことがある。

 翌日、どこかの畑からとってきたであろうナタを片手に、一日中追い回された。

 あの時が、俺が人生で初めて「死」を感じた瞬間だった。

 

 そんな実績のあるオリビアのことだ。

 今の彼女ならば、俺が一歩間違えた次の瞬間、聖剣を振り抜いていてもおかしくはないだろう。

 この距離では、仙術も間に合わない。

 仙術は、その効果を発揮するまでの時間で僅かばかり加護に劣る。

 

 師匠。

 これが、己の力を過信した末に訪れる「敗北」ということなのですか……。

 

 トントントントントントントントン――。

 

 俺がこうして考えている間にも、オリビアの機嫌がみるみる下がっていくの感じる。

 

 マズい。

 未だ状況は意味不明だが、とにかく何かを言わなければ。

 

「オリビア、落ち着いて聞いてくれ」

 

 その言葉に、彼女の指が止まる。

 

「『落ち着け』ですって? 私は常に冷静よ。それはもう、もの凄く冷静よ。具体的には、私を守ると言って去った幼馴染が、他の女と同棲してイチャイチャしていたとしても、言い訳を聞いてあげるくらいに冷静よ」

 

「…………」

 

 どうやら、早速何かを間違えたらしい。

 ノアに散々「察しが悪い」と言われてきたが、まさかこのタイミングでそれに足を引っ張られるとは。

 こんなことになるのなら、師匠の話に出て来た「リトさん」なる人物の話をもっと聞いておくべきだった。

 曰はく、「リトさん」とは、多くの女性に愛されながらも円満に生き抜いた偉人だそうだ。

 とにかく、ここまできたら全てを嘘偽りなく話すしかないだろう。

 もとより、俺にはそんなやり方しか思いつかない。

 

 俺は、オリビアと目を合わせてハッキリと告げる。

 

「いいか。俺とノアは――」

 

「将来を誓い合ったラブラブ夫婦。幼馴染とかいう負けヒロインの付け入る隙はない。帰れ」

 

キィンッ――。

 

 瞬間、金属のぶつかり合う音。

 目にも止まらぬ速さで接近し、振るわれた聖剣。

 その狙いは俺ではなく、いつの間にか前に現れていたノアであった。

 

「チッ、仕留めそこなったわ」

 

 剣をしまい、悪態をつくオリビア。

 

「イヤン。剣を持った新種のゴリランガに襲われた。ライト守って」

 

 そう言って、ノアは俺の腰に抱き着いてくる。

 

「んなっ!? 誰が魔獣よ!! てか、何しれっと()()ライトに抱き着いてるわけ? とっとと離れなさい! この泥棒女っ!!」

 

「泥棒? ふふっ。オリビアはお笑いの才能がある。誇っていいい。私とライトは加護で繋がれている。加護は神からの祝福。つまり、実質結婚。オリビアこそ、()()夫に手を出さないで」

 

 バチバチバチ。

 

 そんな音が聞こえて来そうなほどに睨み合う二人。

 

「今、私とライトはとても大事な話をしているの。邪魔しないでくれる? そもそも、あんた仕事はどうしたのよ。今日のためにわざわざ用意したっていうのに」

 

「そんな見え見えの罠に引っかかるのはオリビアみたいな脳筋だけ。私をゴリランガと一緒にしないでほしい」

 

 バリバリバリ。 

 

 比喩抜きで、二人の間の大気が震えだす。

 

 「……どうしてこうなった」

 

 俺は、いっそ手放したくなる意識を必死につなぎとめながら、この場を治めるために二人の間(地獄)に割って入る覚悟を決めたのだった

 

 

 

 

 あの後、ひとまずノアを体から引き離した俺は、オリビアに今日までの十年間のことを大まかに説明した。

 師匠のこと、ノアのこと、仙術のこと。

 そして、俺の目的のこと。

 一度で抱えるのには多すぎる量の情報ではあったが、なんとか飲み込んでくれたようだった。

 話を聞き終えたオリビアが、静かに口を開く。

 

「つまり、ライトはノアと結婚しておらず、恋仲でもなんでもない。さらに、その、じょ、女性経験もまだないということね! こほんっ! 取り敢えず、それが分かったからよしとするわ」

 

 少し赤くなった顔で、そう頷くオリビア。

 

「そうか」

 

 よく分からないが、なんとか怒りは収まったらしいので一安心だ。

 

「むぅ……、『婚約事実刷り込み作戦』は失敗」

 

 一方、何故かノアは少し落ち込んでいるように見えた。

 

「でも、あの脳筋女は相手にもならない雑魚。HENTAIが言ってた。『暴力系ヒロインは最近流行らない』と。時代は銀髪クール系美少女。私の一人勝ち」

 

 かと思いきや、「ふふふっ」となんだか悪い笑みを浮かべていた。

 やはり、女心はよく分からない。

 俺は、改めてそう感じた。

 

「ひとまず、私が一番知りたかったことは今ので聞けたわ」

 

 そう語るのはオリビア。

 

「後は、まったり昔話に花をさかせましょう――と、言いたいところなんだけど、そうもいかないの。理由は、分かるわよね?」

 

「ああ、魔王軍についてだな」

 

 俺たちの共通目標。

 

 ”魔王討伐”

 

 そのためには、こちらの持っている情報と、オリビアの持っている情報。

 それらをここで、すり合わせておく必要があるだろう。

 

「まず、ライトたちに聞きたいんだけど、加護についてどれくらいの知識を持ってる?」

 

「加護……か」

 

 「神の祝福」とも呼ばれる、絶対の力。

 加護を持つものと持たないものでは、文字通り存在の格が違う。

 その隔絶は、死すら隔てるほど。

 しかし、それ以上の話となると知っていることは多くない。

 

「……なるほどね。その顔を見るに、世間的に知られている程度の情報しか持っていないとみたわ。師匠とかいう人は教えてくれなかったの?」

 

「ああ。師匠も、加護については詳しいことは知らないようだった」

 

 正確には、教えたくても()()()()()()と言っていた。

 師匠は確か、

 

「世界の根幹にまつわる話じゃからのう、もしかしたら、世界の修正力で記憶に制限が……。はっ!? まさか、何度もお世話になった一枚絵たちの記憶が不鮮明なのも、世界の修正力というのか! 許さんっ!!」

 

といったことを口にしていた。

 

 師匠の言葉は難しく、全ては理解できなかったが、師匠の記憶にばかり頼ることはできないということは間違いない。

 

「そう。なら、まずはそこからね」

 

 そう言って、オリビアは語り出した。

 

「この世界には、計16の加護が存在するわ。その半分は魔族にのみ発現する。人類に発現する加護は次の八つ。

 

『勇者』、『魔法』、『聖女』、『守護』、『忠誠』、『繋縛』、『星詠み』。

そして、『救世』。

 

持ち主の適正によって形を変えるから、能力や名称が多少変わることもあるけど、おおよそこの通りよ」

 

 なるほど。

 恐らく、カーターが持っていた「雷の加護」が「魔法の加護」のことだろう。

 

「一方、魔族側の加護は全てはっきりとわかっているわけではないの。現状判明しているのは次の五つ。

 

『魔王』、『魔法』、『寄生』、『影詠み』、『終末』。

 

ここから、ヌルクスの討伐によって、人類側の『魔法』と魔族側の『寄生』が消えたわ」

 

「消えた――とはいっても、完全に消滅するわけではないんだろ?」

 

「そうよ。けど、『聖女』や『星詠み』といった継承型の一部加護を除いて、持ち主が死んだ加護は、次生まれる赤子の中で最も適性のある者に宿る。だから、実質無いものと思ってもらって問題ないわ」

 

 つまり、残る加護は互いに七つということか。

 

「現在、人類側で持ち主を把握できていないのは『救世』のみ。これをどれだけ早く見つけられるかが、一つの勝負所ね」

 

 そう言って、オリビアは話を結論づけた。

 

 「救世の加護」

 この加護の持ち主を、俺は知っている。

 なぜなら、『救世』に選ばれし者こそが、この世界の()()()なのだから。

 しかし、それが分かったところで現状は変わらない。

 俺たちが、主人公を見つけられていないからだ。

 

「ねえ、その『救世』って、既に持ち主が死んでいるってことはないの?」

 

 先ほどまで黙って話を聞いていたノアが口をはさむ。

 

「それはないわ。もし加護の持ち主が死んだのなら、『星詠み』が感知するはずよ。だから、間違いなく生きている」

 

 オリビアはそう断言した。

 

 主人公はいない。

 けれど、「救世」の保持者は死んでいない。

 事態は、当初の想定よりも複雑になっているようだった。

 

「加護について私が教えられるのはこのくらいね。それから、もう知っているかもしれないけど、加護持ちであるノアは既に生徒会入りしたわ」

 

「ああ。ノアから報告を受けた」

 

「それで、ライトの方なんだけど……。本当によかったの? ヌルクス戦のことを正直に話せば、すぐさま選抜クラス行きだったのに」

 

「それも以前話した通りだ。もうしばらくは、力を隠しておきたい」

 

 次のキーイベントで敵対する相手は少し特殊だ。

 一度警戒されると、イベントの進行を把握しづらくなる。

 

「そう。わかったわ。ライトを信じる」

 

 これで、おおよその方針は決まった。

 

「さて、思ったより時間を食ったし、今日はもう帰りましょうか」

 

「そうだな」

 

 余裕はまだある。

 必要以上に詰め込むのも、かえって効率が悪いだろう。

 

「ふぅ、やっと私たちの愛の巣に帰れる。ライト、晩ご飯の材料がないから、町によりたい」

 

 ノアが俺に提案する。

 

「ああ、それなら今晩は気にしなくて大丈夫よ。食材は私が持っていくし、料理もするから」

 

 すると突然、帰り支度を済ませたオリビアがそんなことを言い出した。

 

「オリビア、家に来るのか?」

 

「あれ? 言ってなかったっけ?」

 

 そう言うと、彼女は当然のことのように俺に告げた。

 

「今日から私も、ライトの家に住むことにしたから」

 

「は?」

 

 ノアの口から、聞いたことのない驚きの声がもれる。

 

 こうして、俺の日常にオリビアの姿が加わることになった。

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