ようこそ陰謀論者が荒らす教室へ 作:みはいるすーす
「何をしている。」
石崎の腹を下させて荷物を物色する暁子。しかし、その様子は葛城に感づかれてしまう。あまりにも想定外...だと思ったのだが、
「あぁ、石崎くんがお腹痛いんだって。それでさ、昼にもらった痛み止め、余った分を石崎くんにあげてたから、それをね。」
「何で石崎にあげていた?」
「ストレスとかたまったら、胃痛とかなっちゃうでしょ。」
暁子はしっかりと言い訳を用意していた。わざわざ昼に痛み止めをもらったのはこのためだ。
忘れているかもしれないが、もともと暁子のスペックは高い。そこに、命をかけるほどの慎重さを持っている。
「わかった、そういうことなら。」
「あ、あとさ、無線機をもらえないかな?今日ちょっと迷子になりかけて、念のために持っておきたいんだ。」
「わかった、手配しておく。」
そう言い残すと葛城は去った。暁子の回避能力の強さが、ここに来て証明される。
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「それで、まずはどうすれば?」
『とりあえずは、クラスに馴染め。それから積極的に手伝いをして好感度をあげろ。』
深夜、石崎は一人起き、洞窟の外に出た。暁子はその気配を察知すると、石崎の無線機から盗み見た周波数に、葛城からの無線機を合わせ、傍聴する。
『だがな...』
(やべ、音でか!)
しかし、音量調整をしていなかった。
「う~ん、なに...?」
「ひえっ」
皆を起こしてしまったか、と暁子は身構えたが、幸いにも起きたのは隣の神室だけだった。神室は目を擦ると、薄暗い中に暁子が何かを手にしていることに気づいた。
『...だから....を...』
その“何か”からは微細な音声が出ていた。しかしその声は、神室も聞いたことのある声で、
(え、暁子盗聴してんの? 盗聴器なんて買えないはずだけど?)
神室はドン引きした。
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『おまえは頭が悪いんだから、俺に従え。まず、』
まずい、と暁子は思った。神室にばれたことではない。それに関しては神室に目線を送り、黙らせた。実際、もともと共闘関係を結んでいるのだから、その筋でいくらでも言い訳はできる。若干引かれた視線を感じるが。
暁子が本当にまずいと思ったのは、Cクラスの“何者か”による石崎への指示である。明らかに探りを入れてきているのが分かるのだ。しかも的確な采配だと判断できるほどの指示。このままでは暴かれかねない。
(まぁ、いくらでもやりようはあるか。)
暁子もまだ、全力ではないのだが。
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「くぉおおおおおー!」
数日後、石崎はトイレで暴れていた。お腹が痛すぎる。
(これ絶対あのお好み焼きモドキのせいだよな!? )
久しぶりにお好み焼きモドキが出て来て石崎はそれを食ったのだが、あの日と同様、腹を下した。もちろん暁子の策略である。哀れ石崎。
当然、この時暁子は洞窟に入り、石崎の無線機を操作した。ちょっと周波数を変えてやれば、もう繋がらない。これで石崎は指示を受けられなくなった。
『おい... チッ、寝やがったか。』
夜中、龍園は非常にいらつきながら無線機にずっと毒を吐いていたとか。
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「なので、Dクラスのリーダーは堀北です。」
数日後、Dクラスへのスパイ、伊吹は龍園に報告を済ませた。なんやかんやあって伊吹は堀北が持っていたカードキーを手にいれ、こうしてDクラスのリーダーを特定したのだ。
「ククッ、上出来だ。」
これには龍園も大満足である。しかし、少しして彼の様子が変わった。
「それでな、伊吹。お前にもう一つ任務をやってもらう... 今、Aクラスにいるはずの石崎と音信不通だ。」
龍園の瞳に鋭い光が走る。伊吹は思わず息を飲んだ。
「何かの策に引っ掛かりでもしたかもしんねえ。だがな、それだけじゃ俺は下がんねぇんだよ。」
誰に言い聞かせているのか。対面の伊吹か、Aクラスか、はたまた自分にか。龍園に諦めるつもりなど全くない。
「自分は石崎と同じ被害者だって言って、石崎と接触しろ。俺が遠目から確認したが、石崎は外に出てたり軟禁されているようすは無かった。無線機が壊されてるかもしれない。石崎にお前の無線機をやってから、リタイアしろ。」
「...はい。」
まだ続く。