ようこそ陰謀論者が荒らす教室へ 作:みはいるすーす
入学からまだ一週間というこの日、Aクラスは完全に分裂していた。流石、学園なのに“失脚”とか、そんな表現が使われる学校である。
さて、ではどのように分裂したのか。主要な3グループを紹介しよう。
まずは坂柳グループ。イケイケ改革派である。有利とみれば博打上等、若干ラジカルな面をもつ。有能で便利な人材、橋口や武闘派の鬼頭、弱みを握られたあわれなる神室などが所属している。
次に葛城グループ。葛城こと葛城康平。彼は禿頭の悪逆非道な脳筋の見た目をした慎重系頭脳派である。いったい何人が彼の見た目に騙されただろうか(憤慨)。 名前は見た目どおりなのに...。葛城(かつらぎ)って、これ作者狙って(殴 あっ、でも被ってはいないから逆に(殴(殴
そんなリーダーなので、グループの特徴としては保守派である。側近的存在は無能こと戸塚がつとめる。
最後に中立派。グループをまだ見極めている者、単純に政争は面倒くさいといった人などがいる。そもそも気付いていない者もいるのだが。ちなみに暁子は後者である。大丈夫かこいつ...
まあ実際には入学から一週間で派閥を形成し始めているのが一般からみたらおかしいのだが。なおご存じであろう通り、この派閥とはいわゆる“クラスカースト”とは別物である。どちらかというと、世界中の政界で繰り広げられているような、そういう感じの“派閥”である。ポイント、或いは卒業後のコネを狙っている人もいるかもしれない。そういう利害が絡みに絡んでトマトスパゲッティのような惨状になっている。ベトベトしてる。
しかし今、暁子が派閥形成に気付いていないという事実に疑問が残るだろう。なんせ暁子は優秀(他人からみた場合)である。何故勧誘の一つもされていないのか。
(暁子さんは...いや、彼女は...)
説明すると、まず坂柳に関しては単純に悩んでいるのだ。今現在、坂柳は暁子を好敵手とみている状態である。その為、自分の陣営に引き入れて自陣を有利にするか、好敵手として争うか、色々と考えている。さすが血気盛ん系銀髪ロリである。
或いは暁子が、坂柳陣営にはいった後に関野派として新派閥を形成して独立した場合、坂柳派時代の繋がりを利用して坂柳派から良い人材をヘッドハンティングするのでは?とも恐れている。
(関野にアプローチするのは...厳しいか....)
次に葛城に関してだが、葛城は単純に自陣に来る可能性が低いと考えている。
今現在、暁子は坂柳と非常に仲が良い。たいして葛城は数回しゃべったことがある程度。確かに望みは薄そうだ。
それだけではない。もし仮に暁子が葛城の誘いを断った場合、葛城派は圧倒的不利におかれる可能性がある。なんせ普段でも仲の良い坂柳に一歩リードされるわけである。未だに派閥を決めていない人の多くは、暁子の出方をうかがっている。そんな状況で断られでもしたら、この勢いをどう立て直そうか。
...もうお気づき頂けただろうか。暁子は今、前述の二人に並ぶ実力者としてクラス中に認識されているのである。両陣営の影響力を左右する程度に。
またまたこれも説明すると、話は数日前に遡る。
・・・・・・・・・
「あいつらみる目ないんすよ!!」
「いや戸塚、声が大きい...」
入学早々、いざ生徒会に入らんと意気揚々と生徒会室へ出陣した葛城は鮮やかに一蹴され帰って来た。堀北 学は彼の生徒会入会をあっさり断ったのである。
そんな中、A組の開いたドアから暁子を呼ぶ声があった。
「関野さん、放課後生徒会の集まりに来ていただけますか?」
「アッハイ、わかりました。」
顔を出したのは生徒会書記の橘であった。まさかの出来事にクラスは騒然とする。橘が奇抜な格好をしていたとかではない。彼女の話を聞く限り、このクラスに入学早々生徒会役員になったやつがいるというではないか。しかもそいつはあの葛城を差し抜いたときた。当然そいつとは暁子のことなのであるが、このようなやり取りのもと、暁子は冴えない一般生徒から実力未知の強者へとランクアップしたのである。
ちなみに前話の通り、彼女の出世は全て偶然によっての出来事である。エリコエフダイヤ会も驚きの100%の奇跡による大出世だ。
実際、堀北のもつ生徒会入会への判断材料は南雲の思想に対する耐性があるかだ。これが多くを占めている。だからどれだけ優秀であろうと、南雲に靡きそうなら速攻入会は却下されるのである。しかし、そんなことを知らないAクラスの生徒たちであるので、暁子の実力が葛城より上だった。彼ら彼女らはそう考えた。
「すみません、いきなり。この間
「あぁ、いえいえ、こっちは全然問題ありませんから。」
そうして最後の一撃と言わんばかりに、橘は地雷を残して去っていった。なんと彼女によれば暁子は勧誘された側と言うではないか。まさかのスカウトである。当然こんなの坂柳も受けていない。
(関野さんって、あのいつも ぼーっとしてる...?)
(勧誘した...?それって生徒会にってこと...!?)
時間が経つにつれ、クラスのざわめきは大きくなる。こうして暁子は現在のクラスの評価を得たのである。
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4月下旬、3限目の国語の時間、いつもより少ない手荷物で真嶋が教室に入ってきた。古語辞典も、教科書すらもっていない。手にあるのは玉紐付きの茶封筒、何も言わず教卓につくと、紐をほどきつつ話し始めた。
「これから、小テストを始める。」
皆そんな話は聞いていない。騒ぎはせずとも表情、雰囲気に真嶋への非難が混じるが、真嶋は全て無視して話を続ける。
「なお、今回のテストはあくまでも今後の参考用だ。成績表には反映されない。だから安心して受けるといい。ただし不正行為は厳禁だからな。相応の罰を受けることになる。」
しかし、こんな説明で安心するAクラスではない。ちなみにこの学校のシステムについてはAクラスの全員が知っている。いつの時点からと言えば暁子と坂柳の初コンタクトなのだが、別に小声で会話していたわけではないので、クラスの皆に知れ渡った。
被害は皆無とはいえ、クラスの認識的には学校からの回りくどい説明で一度煮え湯を飲まされているわけである。入学後一学期目にして皆の学校への不信感は頂点に達した。こんな学校他にあるだろうか、普通は学校へ不信感を入学早々もつ者なんて普通いない。(ただし暁子は普通でないものとする)
しかし、不信感はあれど反抗するわけではない。皆は真面目にテストに取り掛かり、いよいよ五月を迎える。