ようこそ陰謀論者が荒らす教室へ 作:みはいるすーす
体育の始め、全員が運動場に向かって教室を出た頃、最後に教室を出ようとした女子のもとに坂柳はやって来て、周りに誰もいないのを確認してから、声をかけた。
「山田さん?少しいいですか。」
「あぁ、坂柳さん?どうかされました?」
「言い値で構いませんので、昼休憩の時間、食堂で先輩方から過去問2年分を買ってきてください。」
「...了解しました。」
「そして、ちゃんと
本番のテスト二週間前、坂柳は早速過去問の存在に気づいた。真嶋がさらりと放った“赤点を絶対回避できる”という旨、坂柳にはこの発言の趣旨がわかったらしい。
そして、坂柳派の中でも目立たないモブ系の女子を指名し、ちゃんと他クラスや葛城派、そして暁子に知られないように小声という条件をつけて過去問を買いにいかせた。橋本や神室に行かせなかったのは二人が葛城派にマークされているから、そして暁子とある程度仲の良い人達だから。つまり、会話を聞かれることを考慮してだ。当然、今は二人を除いてここにはだれもいない。
(こればっかりは暁子さんには譲らせません。それに、今日の昼休憩には“生徒会の仕事がある。”と暁子さんからそれとなく聞き出しました。この交渉がばれることはないでしょう。)
昼に生徒会の仕事がある場合、食事は生徒会室で摂ることになっている。当然暁子が昼食だろう惣菜パンを買って来ていたのも確認済みだ。彼女が嘘でもついていない限り、彼女は食堂には来ないはずだ。
綿密に念入りに、保険に保険をかけて計画は実行に移される。
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暁子は食堂にいた。(無慈悲)
いや、暁子が嘘をついたわけではない。確かに彼女はいま、生徒会の仕事をしているのだ。もっとも、彼女の仕事とは食堂の使用状況の調査なのだが。
(おっ、あれは先輩と...Aクラスの子じゃん。)
そして不運にも、目立たない山田(前述のモブ)は目をつけられた。それはなぜか。彼女が接触している先輩は“生徒会”の先輩なのだ。当然、暁子と面識のある。
そしてそんな生徒会は、生徒会長が暁子からナチ扱いを受けているのもあって、暁子からはとんでもない陰謀の坩堝たる組織だと誤解されている。
さて、そんな生徒会の一員とAクラスの女子が
(なにを企んでやがる!)
不運に不運を重ね、坂柳の策略は裏目にでた。目立たないよう、時間を指定して行ったのが、全て逆に暁子に気付かれる要因となった。
暁子はなるべく気配を消して、二人の声に耳をすませた。
「・・・それで...・・・譲って・・・ますか...」
「・・・うん、過去問は送ったから・・・」
「・・・わかりました。ありがと・・・ざいます...」
(なんだ、過去問を貰ってたんだ、心配して損したじゃん。)
哀れ坂柳。バッチリと聞かれた。理解された。失敗した。暁子は過去問の存在なんてミジンコの触手ほども考えていなかったのに。
ただし、山田の名前を暁子は知らない。彼女に「えっと、名前知らないけど過去問を融通してくれないかな。」というわけにもいかないので、暁子は少し過去問を欲しいと思ったものの、次の仕事もあってこの場は諦めた。
しかし昼休憩後、暁子は例の女子が坂柳に「例の物はメールで送りました。あわせて12万ppです。」と声をかけている場面を目撃することになる。なるほど、確かに頭の良い有栖ちゃんなら過去問の存在に気付けるかも、と暁子は考え、例の物とは過去問の事だろう。と目星をつけた
そして帰り際、坂柳に話しかける。
「有栖ちゃんって過去問持ってるよね? ポイントは払うからさ、私にも売ってくれないかな? おねがいっ!」
「えっえっ...え?何で知って...!?」
坂柳は恐怖した。