斬 殺 サムライ・ダークネス   作:馬路まんじ……?

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「シ、シオンさん。ご飯なに食べますか!? 奢りますよッ!?」

 

「清明さん、その態度やめてくれ。アナタこそ俺の恩人なのだから……」

 

 真緒(マオ)の事情を知った後のこと。

 俺と真緒と清明さんは、屋敷内の食堂に来ていた。

 

「ていうかここ、マジで広いな」

 

 白くて清潔でとにかくデカいぞ。

 何百人も一気に食べれると聞いていたが、それくらい広いし机も椅子もあるし、真緒の話の通りだな。

 

「――シオンっ、焼き魚定食貰ってきたよ! これがすっごく美味しいんだ!」

 

 と、そこで。注文台のほうから真緒がやってきた。

 両手には俺と自分の分の定食がお盆に。清明さんの分はなかった。

 

「あれーっ、僕のはー!?」

 

「手は二つしかないし、清明さんは自分で取って来てよ。……ずっと盗み見してたんだしさ」

 

「うぐ……っ!?」

 

 そりゃしょーがないと、フラフラと注文台に向かう清明さん。

 ちなみに俺の側を通り過ぎる時、「よくやった」と小声で言われた。何のことだ?

 

「はいシオン、お魚の骨取っておいたよ!」

 

「おっ、ありがとう真緒。焼き魚は初めて食べるから助かる」

 

「いいってことよ! 友達だろー!」

 

 ちなみに真緒氏、さっきからすごく元気である。

 元気な人が側にいるとこっちも元気になるから良いことだ。

 

「どれどれ、初めての焼き魚を一口……んっ、旨味が旨い……!」

 

「あはは、なにその感想。シオンは面白いなー」

 

 おお、面白いのか俺。そんなこと初めて言われたから嬉しいぞ真緒。

 あ、そうだ。真緒がほぐしてくれた焼き魚を、九尾にもほい。

 

『む、どれどれ仕方ない食ってやろうか。あーん……って、ンガッ!?』

 

 変な声を出して固まる九尾。赤い瞳が前を向く。

 その視線を追いかけると、真緒がニコニコニコニコニコニコニコニコ――ッとすごく上機嫌に微笑んでいた。

 ん、なんだなんだ? 綺麗な笑顔じゃないか。なんで九尾は固まったんだ? ん?

 

「あははっ、なんだろうなこの気持ちは~……! あぁそうそう九尾さんだったよね。九尾さん用に小鉢に魚の身を分けてあげるから、それを食べなよ。ね?」

 

『うっ、うむ……そうさせてもらおう』

 

 自分の魚を切り分けていく真緒。

 おお……なんて良いヤツなんだ。俺以外にも、九尾にご飯を食べさせてあげたいと思う者がいるとは。

 ぶっちゃけ俺だけが養いたいという気持ちもあるが、真緒の偉大な献身の心は評価に値するものだ。

 好感度、めちゃくちゃ上昇だぞ!

 

「……にしても九尾さん、妖魔なのに人間のご飯を食べるんだね」

 

「ん?」

 

 なぜか真緒が意外そうな顔をしている。え、なんぞなんぞ?

 

「妖魔は普通の飯を食べないのか?」

 

「うん。妖魔は元々、負の感情から生まれた存在。人間を傷付けることが前提の生物だからね。それゆえか、普通の食べ物みたいな、()()()()()()()()が生理的に大嫌いみたい」

 

 ほほう、そりゃ知らなかった。というか妖魔の存在を知ったの、まだ三日くらい前だしな。

 

「だから妖魔って、人間の肉しか食べれないんだってさ。それなのに……」

 

 九尾のほうを二人で見つめる。

 焼き魚をハフハフッと熱がりながら『これはっ、旨味が……旨味がっ……!』と唸っている白い少女。

 うん……なんか俺よりも美味しそうに食べてるな。頬をぱんぱんに膨らませて、めちゃくちゃ笑顔で食しておられる。

 

『んぐんぐっ……って、なんだ貴様ら!? じろじろ見るな!』

 

「あぁすまん九尾。妖魔は人間の肉しか食えないと聞いてな」

 

 そう言うと、九尾は手の油を舐めながら『あー』と答えた。

 

『まぁ確かにそうだな。我も実際そうだったし。ただなぁ、シオンと一つになってからのことだ。浅草で鰻を食っているのを見た時、ふいに美味しそうと思ってしまってな。それから平賀(ヒラガ)に仮の身体を与えられたら、この通りよ』

 

 はぐはぐと食事を続ける九尾さん。とっても美味しそうなご様子だ。

 

「んーなるほどねー。噂にはなってたけど、シオンが九尾を取り込んだ一件が原因か。魂に人間らしさが混ざっちゃった、ってこと?」

 

「マジか。それはなんだか嬉しいな」

 

 九尾が俺色に染められたってことだ。

 おいおいおいおい……なんだか背徳感にも近い愉悦を感じるぞ。

 

「ふふふ……九尾、いっぱい食べろよ? たくさん稼いでお前を養うからな? ふふふふ……!」

 

「わー……九尾さん、シオンにすごく慕われてるね。うわなんだろう、そう考えるとさっきから変なもやもやが……!」

 

『ってなんだ貴様らーーーっ!?』

 

 俺と真緒に見つめられて九尾が叫ぶ。

 ――こうして俺たちは、明るく楽しく食事の時間を過ごしていくのだった。

 

 

 そして。

 

 

「――はい注目! キミたち二人の仲間に入れて欲しい子がいまーす!」

 

 ふいに、清明さんが手をパンパンと叩きながら食堂の出入り口より現れた。

 はて、食事を取りにいったんじゃないだろうか? そう思っていると……。

 

「キミたちと友達になりたがってる、蘆屋 鋼牙(あしや こうが)くんでーす!」

 

「誰が友達になるかボケェエエエーーーッ!?」

 

 清明さんに続いて現れたのは、全身ボロカスで包帯まみれの青年。

 ――数時間前に俺と戦ったチンピラの、蘆屋だった……!

 

 あっ、ということは!

 

「よく来たな蘆屋っ! というわけで巫装展開ッ、【喰密刃(クラミツハ)】――!」

 

 “ッッッ~~~~!!!”

 

 また会ったな、宿敵(とも)よ! って感じで蘆屋の全身に現れるミッちゃん。元気そうで何よりだ!

 

「って勝手に人の巫装を展開するなっ!? 【喰密刃】も出てくんなやッ!」

 

 蘆屋がなんか叫んでるがどうでもいい。

 俺は刃を抜き、ミッちゃんも拳を構えると、俺たちは激突を開始したのだった――!

 

「やめろぉおおおおおおおおおーーーーーーーーーーッ!?」

 

 





あしやすき
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