斬 殺 サムライ・ダークネス   作:馬路まんじ……?

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第二章 ―『八咫烏』参入編―
9:天草什造の苦労


 

 

「出会ったのが浅草でよかった。――なにせ妖魔伏滅機関『八咫烏』の本部は、ここ東京にありますからね」

 

 風が吹き去る。景色が過ぎ去る。機械の唸る音がするたび、街並みを高速で抜けていく。

 今、俺たちは“自動二輪(バイク)”なる乗り物に跨って走っていた。

 あ、ちなみに俺は清明さんの後ろに乗り、気絶した蘆屋は天草さんに括り付けられた状態だ。

 

「すごいですね、バイクって」

 

 うーん速い速い。噂には聞いてたが、座ってるだけでこんなに速く走れるのか。二輪ってすごい。

 平賀(ヒラガ)も足に二輪つけてたし、俺もつけようかなぁって思った。

 

「陰陽師は多忙な仕事。それゆえ悪路でもすぐに踏破できるような、軍用バイクの改造品が与えられているんですよ。シオンくんも陰陽師になれば貰えますよ」

 

「足に車輪を付けることはできますか?」

 

「えっ!? ……うーーん……人間の技術力だと、ちょっと無理かもですね……」

 

 難しい顔をしてしまう天草さん。

 なるほど、平賀の技術力はそれだけ優れているということか。

 

「まぁいつかは人に埋め込める機械も出来るでしょうが、段階を踏んで人々に理解をさせて欲しいですね。……その点、狂った先鋭品(オーパーツ)を撒く妖魔平賀はまずい。元は罪人ながらも偉大な発明家だったとされていますが、今は完全にタガが外れている」

 

 ――ゆえに必ず討ち取らなければ、と。天草さんは強く呟いた。

 

「やる気あるんですね、天草さん」

 

「いや、私なんて最低限ですよ。陰陽師の中には妖魔への復讐を誓った者も多い。そんな方たちに比べたら――あぁ」

 

 ふと、天草さんは前を見上げた。

 俺も釣られてそちらを見ると、そこには大きくて立派なお城が。

 

「見えましたよ。あれこそ、皇居にして現政府の中心。かつて江戸城と呼ばれた存在」

 

 近づくほどに感じる偉容。白き城壁が目に眩しい。

 

 

「そして、我々『陰陽師』たちの本部――東京城です」

 

 

 その厳めしい城門へと、俺たちは向かっていった。

 

 

 ◆ ◇ ◆

 

 

「ま、陰陽師はあくまで機密の存在。正確には城の地下が本部なんですけどね」

 

「はえー」

 

 天草さんと二人、『自動昇降機(エレベーター)』なる箱に乗って地下へ地下へと向かっていく。

 

 ちなみに、清明さんは「蘆屋くんを治療しないとねッ!」と言って彼を抱えてどっかに消えた。

 その後ろ姿に、天草さんは「逃げたなアイツッ……!」と唸っていたが。

 どうやら清明さん、仕事をさぼって放浪中だったらしい。

 

「我ら陰陽師の服装がスーツなのも、政府機関内を出歩く際、役人に擬態するためなんですよ。……まぁ、清明のようなちゃらんぽらんな男が役人なワケないんですけどね」

 

「清明さんのこと怒ってます?」

 

「別に。アレの任務を私がするコトになりましたが全然怒ってないですよ」

 

「はえー」

 

 顔が完全に怒っていた。

 

「……ただ、清明には先祖伝来の『人の才能を見抜く眼』がありますからね。それゆえ人材発掘も彼の仕事。そう考えたら、天才(アナタ)を見つけてきた時点で組織に大いに貢献してるんですよねぇ」

 

 ゆえに怒るに怒りづらいと、天草さんはお腹をさすりながらぼやいた。

 その仕草気持ちいいのかなぁと思い、肩に座ってる九尾のお腹を撫でたら『なにするーッ!』と噛まれた。痛い。でも九尾に歯形を付けられて幸せ。

 

「とにかく天草さん、大変なんですね」

 

「ええ、大変なんですよ。それにこれから、浅草で暴れた件と――アナタの存在を、報告しなきゃですしね」

 

「?」

 

 と、そこで。エレベーターの箱がガタッと揺れて止まった。

 一番下についたようだ。鉄の扉が、ゆっくりと自動で開いていく。

 そして。

 

 

「おぉぉ……!」

 

 

 目の前に広がったのは、日の光が差す桜並木に囲まれた庭園付きの大屋敷だった。

 なんだここは、どうなってるんだ。地下なのに空があるぞ。太陽があるぞ。空気だって美味しいぞ。

 

「九尾のいたとこは空気まずかったのに……」

 

『まずくて悪かったなッ!?』

 

「おお」

 

 うっかり九尾を怒らせてしまったのでナデナデする。

 あそこの空気はまずかったけど、お前の脳みそは美味しかったよと告げると『ヒュッ!?』と黙ってしまった。許してくれたようだ。

 

本部(ここ)は天下の大陰陽師、安倍晴明が創り上げた疑似世界でしてね。人に巫装を発現させる『陰陽魚』といい、かの存在も平賀と同じく凄まじい技術者だったようです」

 

「なるほど。清明さんのご先祖、すごかったんですね」

 

「まぁ清明はアホですけどね」

 

「怒ってます?」

 

「別に」

 

 やっぱり完全に怒っていた。

 

「ふぅ。ではシオンくん、少々申し訳ないですが――組織の方針で、アナタを拘束させてもらいます」

 

 ぱん、と天草さんは手を叩いた。すると俺の両側に黒ずくめの者らが現れ、腕をがっちり握られてしまう。

 何だこの人たち? 黒い鳥の仮面被ってるし怪しそうだぞ。

 

「ふむ」

 

 

 この状況はもしや……やり返し案件、発生か?

 

 

「なぁ天草さん。これは――俺を()()()と思ってのことか?」

 

「ッ!? ……いえ、違います。これは、妖魔と混ざっているらしきアナタを、健康診断するためですよ……」

 

「なんだ」

 

 

 健康診断か。それならむしろ良いことだな。どうやら『八咫烏』という組織は正義の組織らしい。

 俺はいいところにきちゃったな~と思いました。

 

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