修羅の覇道   作:せご曇(せごどん)

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故郷 しばしの別れ

レイスらは、一度解散する事になった。11月27日にホルロスを発ち、パキンスタ共和国へ行く。それまでに支度を済ませる必要があった。

 

「まずは母さんに帰りの連絡を入れないとな…」

 

レイスは、10日程家に帰っていない。夜も遅くなりつつあったので、ひとまず母に電話をすることにした。

 

「もしもし、母さん?」

 

「もしもし、レイス?どうしたの?」

 

「今から家に帰ることになった。詳しい事は、家で話すよ」

 

「…分かったわ。じゃあ、また後でね」

 

連絡は手短に済んだ。

そして、最も重要な仕事が残っていた。リリィへ、自分たちに同行して欲しい旨を伝えねばならなかった。この同行には、危険が多く伴うだろう。それを頼むのは気が進まなかったが、事態は急を有していた。

 

「明後日に出発だ。今伝えた方が良いだろうな…」

 

レイスは深呼吸をして、リリィへと電話をかける。

 

「出てくれるかな…」

 

リリィは今日、かなり辛い思いをした。電話に出るか否か、少し不安であった。

だが、カチリという音が聞こえた。着信に応じた音だ。

 

「もしもし…」

 

リリィの声がした。あまり元気の無い声であったが、電話には出てくれた。

 

「もしもし、リリィ?」

 

レイスは少し安心した。完全に塞ぎ込んでいる訳ではないようだった。

 

「レイくん、さっきはごめん…。私、レイくんたちの立場を考えないで、自分の思ってることばっかり…」

 

リリィは最初に謝罪を述べた。先程、半ばヤケになってレイスたちのもとから去った事が、ずっと心に引っかかっていた。

 

「いや、謝ることはないよ。むしろ、俺たちのことをそこまで心配してくれてて、嬉しかった」

 

「…レイくんは優しいね」

 

リリィの声は弱々しいながらも、少しだけ明るくなった。

 

「リリィ、これから話すことはいきなりでビックリすると思うけど、よく聞いてくれ」

 

「…うん、分かった」

 

リリィは、レイスの真剣な声を聞き、それに応えるように彼の話へと耳を傾ける。

 

「俺たちは明後日、パキンスタ共和国に行く事になった」

 

「パキンスタ…?どうして急に?」

 

「そこに、聖煌流の凄く強い人がいて、その人の助けを借りに行くんだ」

 

「そうなんだ…」

 

「それで…リリィにも、俺たちと一緒に来て欲しいんだ」

 

「えっ…」

 

リリィは一瞬戸惑った。だが、すぐに平静を取り戻し、レイスの言葉に返事をする。

 

「私が、レイくんたちと?」

 

「うん。急なことで、驚いたと思うけど…」

 

「…理由を聞いても良い?」

 

「うん。実は…」

 

レイスは、リリィが波動使いとなってしまい、このまま街に残していくと、グレイドの仲間たちに襲われる危険がある事を説明した。

同行させないと、ザークがリリィを殺すことは、ひとまず伏せておいた。

 

「私が、波動使い…」

 

「その…」

 

レイスは、バツの悪そうな面持ちとなった。

 

「ううん。レイくんたちを助けるためにそうなったわけだし、私は大丈夫だよ」

 

「リリィ…」

 

「レイくんの言う通り、私がこのまま街に残っていたら、私は狙われる可能性がある。そうなったら、お父さんやお母さん、学校の皆も危険な目に遭う…。そうはなりたくない。そうなるぐらいなら、私一人が危険な目に遭った方がいい」

 

リリィから、決意めいたものが感じられた。だが、レイスとしては「自分が危険な目に遭った方が良い」という言葉は、あまり聞きたくはなかった。そんな自己犠牲的な決断を、リリィに下させるしかない現状を理不尽に思い、詰りたくなった。

 

「私ね…こんなこと言っちゃだめなんだと思うけど、少しだけ嬉しいの」

 

「嬉しい…?」

 

予想外の言葉を聞き、レイスは少し驚いた。

 

「この10日間、ずっとレイくんたちのことが心配で、心配で、どうにかなりそうだった。レイくんたちは命がけで闘うことになってるのに、私には何もできないで、ただ無事を祈るだけ…。でも、私もレイくんたちと同じ力を手に入れた。レイくんたちを治すことができた。もうただ見てるだけなんじゃなくて、私も2人を助けることができるんだ、って思えたんだ…」

 

「…」

 

レイスは黙したままだ。

 

「だから、2人に着いていくことで、私にも何か役割が与えられた感じがして、嬉しかった。2人には、足手まといかもしれない。闘い方も分からないただの女の子だし、邪魔だと思う…それでも」

「それでも、2人と一緒にいられるのが、嬉しい…」

 

「…」

 

しばし沈黙が続く。だが、レイスがそれを破った。

 

「リリィ、お父さんとお母さんに、うまく話せるか…?」

 

「…今どうやって話そうか、考えてる。ま、まぁ何とか話してみるから、安心してよ」

 

リリィは声を明るくした。

 

「明日、テオと会ってチケットの購入とか、色々やることがあるんだ。リリィにも、一緒に来て欲しい」

 

「うん、分かった。何時に待ち合わせ?」

 

「お昼頃…12時にこの前のレストランで待ち合わせすることになってる。俺たちは2人で一緒に行きたいんだけど…」

 

「OKだよ。それまでに、何とかお父さんたちに話をつけてくるね…」

 

「頼んだ。それじゃあ、伝えることはもう無いかな」

 

「うん。私の方も無いよ」

 

「それじゃあ、おやすみ…」

 

「うん、おやすみ…」

 

レイスはスマホを耳から離し、通話を切った。

夜は冷え込む。レイスの手は、夜風に長くさらされて、少し痛くなっていた。

 

「今日はもう休もう…」

 

そしてレイスは、家へと歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

「ただいま」

 

レイスは自宅の扉を開き、玄関へと入った。8日ぶりの帰宅だ。何だか、懐かしい気分になった。

 

「おかえり〜」

 

そして、母・ローラが台所から姿を現した。最後に会った時と変わらない、いつものローラの姿がそこにあった。綺麗な黒髪に、青い瞳。年齢よりもかなり若く見える母の姿。だが、最後に会ったのが何年も前であるかのような感じがした。

 

「一応、お風呂沸かしてるけどどうする?」

 

「ありがとう。じゃあ、先に風呂に入るよ」

 

外は肌寒かった。レイスは冷え込んだ身体を温めたかった。

 

荷物を自室に運び、その後浴槽へと向かう。目に映る家のあらゆるものが、遥か昔の物のように感じられた。

 

「…」

 

まずは、シャワーで身体を洗い流す。温かい水が、レイスの頭に勢いよく放出される。水がダラダラと流れる中、レイスは物思いにふけていた。

 

「ガルーダさんが死んだ事とか、俺たちが死にかけた事は言わない方が良いよな…」

 

これから、国を出て闘う事になる。母親の立場からすれば、引き止めたいだろう。そんな所に自分たちが一度は殺されかけた話などしたら、余計に心配をかける事になる。

 

「ガルーダさん…」

 

ガルーダは、レイスらに自分の死を気に留めるなと書いた。だが、首だけとなっていたガルーダの姿は衝撃的だった。短い付き合いではあったが、彼に波動の修行をつけてくれた男である。レイスは、とてもいたたまれない気分となっていた。

 

「グレイド…!」

 

故に、ガルーダを殺したグレイドへの怒りも込み上げていた。今までに多くの波動使いを殺し、今度は自分たちをも殺そうとしている男。

だが、グレイドは強い。今のレイスらでは、足元にも及ばない程に強い。

 

「強くならなくちゃ…。俺たちは、もっと強く…!」

 

レイスの身体から湧き上がるのは、湯気なのか。それとも波動なのか。

一人だけの浴槽で、レイスの闘志が静かに燃えていた。

 

 

 

 

 

風呂からあがり、身体をタオルで拭く。ふと、洗面台の鏡で自分の姿を見てみる。

激動の10日間であった。様々な事が起こった。だが、見た目の上では特に変化は見られなかった。髪も、腕も、胸も。10日前までと何も変わらないように思えた。

 

「あれ…?」

 

ただ、一つだけ変わったように思えた所があった。顔だ。今は特に何も無い、身体を拭くだけの作業をしている時間だ。故に、真顔である。その真顔が、10日前より心なしか険しいように思えた。疲弊故か、怒り故か、不安故か。思い当たるフシはいくらでもあるが、何となく前より暗く思えた。

 

「…まぁ、仕方ないか」

 

 

 

 

 

「お待たせ」

 

レイスは寝間着に着替え、ローラのいる居間に入った。

 

「急に帰ってきて、何かあったの?」

 

「うん。実は、明後日からパキンスタ共和国に行くんだ。聖煌流の強い人がそこにはいて、その人の助けを借りる事になったんだ」

 

「えっ」

 

ローラは、驚いた表情を浮かべた。

 

「パキンスタって…結構遠いじゃない。そんな所に行く事になったの?」

 

「…うん」

 

「…そこまで大変な事になっているの?」

 

「…」

 

レイスは黙った。状況は確かに悪い。レイスらよりも強い味方であるガルーダまで死に、現在の戦力はレイス・テオのみとなってしまっている。

 

「強い人の助けが必要なほど、あなたたちの敵も強いって事なのね」

 

ローラは、レイスの沈黙から答えを得た。彼女の表情にも陰りが見えている。

 

「もう、敵は俺たちだけの手に負えるレベルじゃないんだ。このままだと、俺たちは全員倒される。この街を守る事も、出来なくなる…」

 

「…」

 

重い沈黙が続いた。レイスを笑って修行に送り出したローラでも、事態を重く見ていた。

 

「…大体」

 

「うん」

 

「大体、どれくらいいるの?パキンスタには」

 

沈黙を破ったのはローラであった。

 

「…分からない。その人も、実際に協力してくれるかはまだ分からないんだ。その人に会って、その人が協力してくれるってなったら、戻って来られるかもしれない」

 

「…そう」

 

ローラは、元気の無い顔をしながらもレイスの方をまっすぐと向いた。

 

「分かった。あなたたちが、そこまで辛い状態ってことも、よく分かった。私が行かないでって言っても、状況は良くならないもんね…」

 

「母さん」

 

「レイス、こっちに来て」

 

「…うん」

 

レイスは、ローラが座っている位置まで行き、座った。

ローラは、そんなレイスの頬に手を伸ばし、そっと触れた。

 

「大きくなったわね…。あなたと初めて会った時は、まだ本当に小さい赤ちゃんだった」

 

「…」

 

「それが、今では私たちを守るために旅に出るって言い出してるのね。立派になったわ…本当に…」

 

ローラの青い瞳に、うっすらと涙が浮かんだ。

 

「母さん…」

 

「レイス…無事で帰ってきて。絶対にまた、この家に戻ってきて」

 

ローラは、レイスに抱きついた。レイスも、それに応えるように彼女の背に手を回す。

 

「約束するよ。俺、絶対に帰ってくる…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

11月26日、土曜日。丁度リリィも休みなので、学校に行く時のように家の前で待ち合わせてからテオのもとへと向かう事になっている。

 

「行ってきます」

 

「はい、いってらっしゃい」

 

11時30分。リリィとの待ち合わせの時間になった。レイスは靴を履き、外に出た。

 

家の前には、リリィの姿があった。だが、彼女だけではなかった。

 

「あっ…」

 

リリィの父と母、アイバーとレミィが、リリィの後ろにいた。

 

「こんにちは…」

 

レイスは、テルヌーラ夫妻に挨拶をした。だが、2人は固い表情のまま、挨拶には応じなかった。

 

「レイス君…リリィから話は聞いたわ。…本当なの、レイス君たちが誰かに狙われてるって」

 

話を切り出したのはレミィであった。

 

「本当です。信じられないかもしれませんが…」

 

「リリィも狙われるかもしれないというのも、本当なのかな?」

 

続けて、アイバーが口を開く。

 

「はい、本当です。リリィにも、俺たちと同じような力が目覚めました。リリィも俺たちと同様、狙われる可能性があります」

 

「その、レイス君の力っていうのを見せてくれないかしら…?」

 

「…分かりました。少し下がってください」

 

リリィたちは、レイスから少し距離を取った。

 

「…」

 

レイスは、右腕に波動を集中させ、それを電気へと変えてみせた。バチバチと電流がほとばしっている。

 

「信じられない……本当にレイス君が……」

 

アイバーもレミィも、開いた口が塞がらないといった感じであった。リリィ本人も、レイスの波動を見るのは初めてであったので、目を大きく見開いていた。

 

「俺は電気を操ることが出来ます。この力の事を『波動』と言い、波動を使う人間を『波動使い』と言うんです。リリィも今は、『波動使い』になってしまったんです」

 

「…それで、この街にいたままだと危険だから、君たちの旅に同行するしかないと」

 

「…はい」

 

アイバーとレミィは、かなり考え込んでいた。娘の命が危ないというのだから、当然である。

 

「現実離れしている話だが、なんとか理解はできた。だがそれなら、リリィをしばらくは家の中から出さずに生活させれば、なんとか凌げたりはしないのか…?」

 

「それは…」

 

ここで、それではザークに殺される、と率直に言う事は、レイスには出来なかった。

 

「敵の中に、探索みたいな事が出来る奴がいました。そういう、波動使いがいるかを調べる人間がいてもおかしくないです。だから、リリィを一人にしておくのは危険なんです」

 

その為、レイスはザークについては伏せておくことにした。これ以上、リリィを不安にさせる訳にはいかなかった。

 

「そう…か」

 

アイバーは俯いたまま、しばし黙った。リリィもレミィも、何も喋らなかった。

 

「分かったよ。とても不安だが、レイス君たちが守ってくれるというのなら、リリィと共に行ってくれ」

 

「アイバーさん…」

 

「レイス君、どうかリリィを宜しくね…」

 

苦渋の決断だ。だが、彼らも娘の命が一番大事だ。リリィが最も助かる選択肢に、望みをかける他は無かった。

 

「お父さん、お母さん。そろそろ行かないと…」

 

「…分かった。気をつけて行って来いよ」

 

「うん…」

 

こうしてリリィは両親から離れ、レイスと共にテオが待っているレストランへと向かい始めた。

 

 

 

 

 

 

レストランは、休日の昼頃だというのにそこまでは混んでいなかった。4人用のテーブル席も空いており、テオは入口から見て奥の方に座っていた。ノートパソコンを開いている。

 

「テオ、来たぞ」

 

「レイス…リリィもいるな。事情は話したか?」

 

「うん。リリィも、俺たちと一緒に行くって話になった」

 

「…そうか」

 

テオも思うのところがあるのか、少し溜めがあった。

 

「テオ君…私、大丈夫だよ。むしろ、足手まといになるんじゃないかって方が心配で…」

 

「とりあえず、座ってくれ。明日以降の予定を話したいと思う」

 

テオに促され、レイスとリリィは上着と荷物を座席に下ろす。レイスはテオの隣に座り、リリィはその向かいに座った。

 

「これを見てくれ」

 

テオは、パソコンの向きを変え、画面をレイスとリリィに見えるようにした。

 

「飛行機のチケットは3人分買っておいた。昨日買ったが、2日前でも購入は出来た。金は俺が払ってあるから、気にしないでくれ」

 

「ありがとう、テオ君。お代は後で…」

 

「いや、払う必要は無い。リリィには一度説明しておくが、俺たちは『ゼクト・レギレウス』という男に会いに、パキンスタに行く。ゼクトさんの勤め先や住所は分かっているから、そこは問題無い」

 

「その人が、聖煌流の強い人…なんだよね」

 

「そうだ。俺は今、口座に1億ルネがある。道中の費用は全て俺が負担するから、金銭面で気にすることはない」

 

「い、いち!?」

 

リリィは一瞬大きな声を出してしまい、慌てて口を押さえていた。

 

「そんなにあるの…?」

 

「あぁ。だからレイスもリリィも、大金を持ってくる必要は無い」

 

 

そしてテオは、画面上に地図を表示させた。

 

「俺たちはまず、パキンスタの首都・エレーカに行く。エレーカ国際空港に着いたら、そこからは電車移動だ。エレーカ国際空港駅から電車に乗り、シーラ駅で降りる。シーラには、オフィスビルが多く立ち並んでいて、ゼクトさんの勤め先もそこにある。そして、ゼクトさんに会うことが出来れば、俺たちの目的は達成される。早ければ2〜3日で済むかもしれない」

 

「大まかな計画は分かったよ。でも、敵の波動使いがパキンスタにいる可能性もある。十分注意しながら進もう」

 

「そうだな。そして、もし勤め先で会うことが出来なければ、ゼクトさんの自宅へと向かう。急に押しかけるようで悪いが、こちらもかなり急ぎだからな」

 

「ゼクトさんの家はどこにあるんだ?」

 

「シーラから1時間程の距離にある、ロイスという街にある。シーラ駅から電車で行くことができる」

 

「なるほどな。分かった、その計画でとりあえず行こう」

 

「リリィも、何か気になる事はあるか?」

 

「うーん…もし、その人が引っ越しちゃってたり、勤め先を変えてたらどうするの?」

 

テオは、少し考えるような仕草を見せた。

 

「それが問題だ。ゼクトさんの電話に何度かかけてみたんだが、全く繋がらなかった。いや、切られたというのが正しいな。彼が着信を確認したのは確かだから、勤め先の人に話を聞いたり、電話を何度もかけてみるしかないだろう」

 

「そうなんだ…」

 

「あまり計画的な旅とは言えないが、いち早く彼と合流する必要がある。何かあったら、現地で考えるしかない」

 

「…そうだね。とりあえず、今後のことは分かったよ。家に帰ったら、明日の準備をしておくね」

 

「頼む」

 

 

 

 

 

 

そして、11月27日の早朝。出発の時が来た。

 

「レイス…絶対に無事でいてね」

 

「母さん…約束するよ。また戻ってくる。早ければ、2,3日で戻れるかもしれないしね」

 

レイスは微笑んでみせた。ローラは、そんなレイスの笑顔を見て、少し温かい気分となった。

 

「じゃあ、行ってきます…」

 

「いってらっしゃい……」

 

そしてレイスは、ドアの向こうへと足を踏み出した。

 

 

 

「リリィ」

 

家の前には、キャリーバッグを携えたリリィがいた。ホルロスよりも寒いパキンスタに合わせた厚着をしていた。

 

「じゃあレイくん、行こ?」

 

「お父さんとお母さんに挨拶は…」

 

「もう済ませたよ。それに、二度と会えなくなるわけじゃない、でしょ?」

 

リリィの言葉には、絶対に無事で帰るという意志が込められめいた。

 

「…そうだな。またすぐに帰ってくる。お別れなんかじゃないんだ」

 

「そうだよ!だから、今は前だけ向こう」

 

そうして彼らは、ライムシティを発っていった。朝日の煌めきが、若き2人を照らしていた。

 

 

 

 

 

 

 

ここまでは、地獄の序章に過ぎない。彼らを待ち受ける本当の地獄は、これからであった。

 

 

 

 

 

 

 




パキンスタ共和国

ホルロスから飛行機で7時間程かかる位置にある大陸国。領土面積は約520万km²、人口は約1億5千万人で、世界有数の経済国である。
冬はかなり冷え込み、11月の時点で氷点下を下回る事も多々ある。
波動御三家の一角「ゼルフォード家」が拠点を置く国でもある。
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