修羅の覇道   作:せご曇(せごどん)

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爆砕・エレーカ鉄道③

クレアにより、鉄道は爆破された。

 

「何!?リリィ!!」

 

「えっ?」

 

テオは、クレアが波動を高めた瞬間に波動使いの存在を感知し、リリィを抱えて列車外に脱出した。

波動で身体をガードしても、かなり遠くまで吹き飛ばされた。だが、反応が早かったことが幸いし、彼らのダメージは無かった。

 

「…?……!?」

 

リリィはあまりに突然の事だったので、状況を理解できておらず、ただただ怯えていた。

 

「リリィ、別車両に波動使いがいた。そいつが電車を吹っ飛ばしたんだ」

 

テオは状況を説明するも、リリィの戸惑いは収まらない。

 

「…!?レ、レイくんは?レイくんは大丈夫なの!?」

 

「近くには見当たらない。レイスとフィーリアを探しに行くぞ」

 

テオは走りながら、言い様のない違和感を感じていた。

 

「強い波動は感じなかった……一体何故?」

 

 

 

 

「……」

 

「あ……なんで………?」

 

フィーリアの身体には、自身を爆発から救い、そして爆発によって右腕を失ったレイスがいた。右腕は根本から消えており、出血が酷い。

 

フィーリアは身体を起こし、レイスの胸に手を当てる。

 

「し、心臓は…動いてる……。でも、出血が……!腕が………」

 

フィーリアは顔面蒼白となっている。

彼女は、クレアが波動使いであると気付かなかった。そして、呆気にとられている隙を突かれて波動による攻撃を仕掛けられ、レイスに庇われた。その結果が、目の前の凄惨な光景である。

 

「私が、油断していたから………」

 

レイスとは、会って間もない関係である。そんな彼に命を救われ、それと引き換えに彼は満身創痍となっている。

自分のせいでレイスが腕を失い、そして死にかけているという状況が、彼女の心を串刺しにしていた。

 

「レイス!フィーリア!」

 

フィーリアは、背後から自分を呼ぶ声にはっとした。テオの声だった。彼の後ろにはリリィが続いている。

 

「……!?何、これ……」

 

リリィの足が止まった。彼女の目には、血まみれのレイスが映っていた。右腕の無い、血まみれのレイスが。

 

「うそ……どうして……どうしてレイくんが!?!?」

 

リリィの頭が真っ白になる。刺激の強すぎる絶望的な光景に、頭をぐちゃぐちゃかき回され、発狂する寸前になっていた。

 

「…リリィ」

 

「…!」

 

だが、テオが彼女を引き戻した。優しく彼女の両肩に置かれたテオの手が、彼女を前後不覚の状況から辛うじて救い出した。

 

「レイスは満身創痍だが、生きている。辛いとは思うが、お前の能力で傷を癒やして欲しい。恐らく、敵はまだ近くにいる…」

 

この状況の中、テオだけが冷静であった。今も現れないクレアの襲撃を見越している。

 

「レイくんっ!」

 

リリィは急いでレイスに駆け寄った。彼の身体に手を置く。

 

「お願い…!どうか治って……!!」

 

そして、目を固く瞑り、彼を治そうと強く、強く念じた。すると、彼の身体が光に包まれた。

 

「…!フィーリア、これは……」

 

光が最高潮に達すると、それからは徐々に弱まっていく。

 

「……!う、腕が……」

 

フィーリアは開いた口が塞がらなかった。リリィが能力を発動すると、レイスの身体の傷が元に戻っていた。

それだけではない。失われた右腕までもが再生していたのだ。回復能力で欠損した部位の再生まで出来た事に、フィーリアは心の底から驚いていた。

 

「はぁ……はぁ……」

 

能力を使用したからか、リリィは息を切らしていた。まるで、全速力で長距離走を走り切ったかの如く、リリィの息は荒かった。

 

「まさか、これ程とは…」

 

テオも、リリィの回復能力の高さに目を見張った。

 

「レ、レイくん……治って……良かった……」

 

リリィはホッとして、少しだけ表情が緩んでいた。

 

「あら?まだ生きていたの?しぶといこと」

 

一安心したのも束の間、電車を爆破した張本人であるクレアが彼らの前に歩いて来た。

 

「貴様…」

 

「っ!」

 

テオとフィーリアは、クレアを鋭く睨みつけた。特にフィーリアは、歯を食いしばる程に怒りをあらわにしている。

 

「レイスはまだ気を失ったままか」

 

傷は治ったものの、レイスは今もなお気を失ったたまま、動かない。リリィを除き、その場で闘える者はテオとフィーリアの2人であった。

 

「関係無い人まで巻き込んで……あなたは許さないわ」

 

「あなたの許しなんて請う気は無いわよ。だって、あなたたちはこれから死ぬんだもの」

 

クレアは目を大きく見開き、口が裂けるばかりの狂気の笑みを浮かべていた。

 

「でも、ここで闘うのは面白くないわ。場所を変えましょう……フフフフ……」

 

不敵に笑いながら、クレアは右手を真上に上げた。すると、彼女の手に爆発的に波動が集まり、煌めきを放つ。

 

「…!まさか!」

 

クレアから天井へ向けて波動が放たれた。それは最早、光線のような波動であり、地上まで続く大きな円を天井に空けた。月明かりが薄っすらとトンネルの中を照らす。

 

「もっと広い場所で闘いましょ……」

 

そしてクレアは、素早く地上へと駆け上がっていった。

 

「テオ、これは…」

 

「まずいな……奴は民間人を巻き込んでの地上戦を展開するつもりだ。早急に仕留めなければ、被害は電車の比ではない…!」

 

「まさかこんな事になるとはね…!」

 

「レイスとリリィには地上にいて欲しくはないが、ここもトンネルの中だ。安全な場所とは言えない。フィーリア、2人を先程の駅まで連れて行ってくれ。俺は先に奴を追う」

 

「ええ、分かったわ。リリィ、急ぎましょう!」

 

「う、うん……」

 

フィーリアはレイスをおぶり、リリィの手を引っ張って走って行った。

 

「まさか、初日からこうなるとは……」

 

1人残されたテオは刀を鞘から抜き、穴から地上へと上っていった。

 

 

 

 

 

地上は、ビルの建ち並ぶ都会であった。夜の都会は、ビルの放つ光によってある種のゴージャスな雰囲気を醸し出す。

だが、それは人々がまだ大勢建物に残っている事を意味する。そしてそれは、波動使いの戦闘においては、極めて深刻な問題となる。

 

「フフフ…爆ぜなさい」

 

クレアは手を正面に突き出すと、掌から波動の弾を生み出し、ビルの一角に放った。着弾と同時に轟々たる爆音を響かせながら、ビルから煙が立ち上がる。地上には瓦礫が落下し、人々の悲鳴が夜の街に木霊した。

クレアはその後も数発の弾を無差別に放ち、都市の一部を火の海に変えた。メラメラと燃え盛る炎が、クレアの瞳に映る。彼女はそれを見て、恍惚の笑みを浮かべる。

 

「おっと、危ないわね」

 

ビルが燃え上がる景色を楽しげに眺めていたクレアに、地下から上がってきたテオがすかさず斬りかかった。彼の斬撃は、クレアに紙一重の所で躱される。

 

「貴様…人間の命を弄ぶか」

 

「悪い?虫けらが死のうとどうでもいいわ」

 

「そうか」

 

テオは再び斬りかかるが、クレアはまたもやこれを躱す。そして、彼女は空中へと跳んだ。高さ20メートル程の建物の屋上に着地する。

テオもそれを追うべく跳んだ。そして彼は、手に波動を込める。すると、炎が砲丸のように形作られていき、クレアに向けて放たれた。

 

「何それ?私の真似事?」

 

クレアは嘲笑うかのように炎の弾を見据えると、テオと同様に自身も波動能力の込められた弾を放つ。

2つの弾はぶつかり合い、爆発を起こした。黒い煙が宙に広がる。

 

その煙から飛び出した、テオが猛スピードでクレアに接近した。彼は刀に炎を込めると、それをクレアの首をめがけて勢いよく振る。

 

「芸が無いわね。そんなものが私に通用するとでも?」

 

クレアはまたも嘲りの表情を浮かべ、これを避ける。

だが、テオの狙いは別にあった。

刀を振った時に、既に炎の波動を鎖の形へと変化させ、クレアの右足に巻き付けていた。

 

「…っ!」

 

刀にだけ気を取られていたクレアは、テオの炎の鎖に意表を突かれ、反応が遅れた。

テオは鎖を掴んだまま建物から飛び降りる。クレアは足を払われたように体勢を崩し、テオは彼女をそのまま地上へと叩きつけた。

 

「ぐっ!」

 

そして、間髪をいれずに次の攻撃。刀を真下に向け、クレアの胸を目掛けて突き刺す。

クレアは、テオの刃に串刺しにされる寸前に身体を起こし、横に転がることでそれを避けた。一進一退の緊迫した攻防である。

 

「やってくれたわね……」

 

クレアは、テオを鋭く睨みつけた。赤く光るその瞳は、テオをガッチリと捉えている。

 

「あなたは殺すわ。滅茶苦茶にしてあげる」

 

「その前に、俺が貴様を殺す」

 

 

 

 

クレアが両手に波動を込めようとすると、奇妙な気配があたりを包んだ。

 

「…!これは…」

 

妙な気配。それは、冷気であった。思わず身震いしそうになる冷たい空気は、そのまま彼女の両手に纏わりつき、腕は氷に覆われた。

 

「何…?」

 

テオも、何が起きたのか分からずに一瞬戸惑った。だが、それも一瞬に過ぎない。彼は刀を強く握り、クレアに向かって一直線。そのまま彼女に止めを刺そうとしていた。

 

「どうなっているのよ…!」

 

クレアはひとまず彼から距離を取ろうとするが、それは叶わなかった。今度は冷気が彼女の足元を包み込み、地面と共に凍りつかせた。彼女の身動きは封じられたのだ。

 

「!!」

 

そして、その隙をテオが見逃すはずもなく、彼の一太刀が放たれる。

 

「くっ!」

 

クレアは足に波動を込め、自身の能力で爆発を起こした。凍りついた足は、爆発によって地面から離すことに成功し、爆発の勢いを利用してテオから距離を取った。再び建造物の屋上に降り立つ。

 

「一体何なのよ…!」

 

クレアは、思いもよらぬ攻撃に苛立ちを覚えていた。

 

「あの攻撃は…」

 

テオが振り向くと、そこにはフィーリアがいた。

 

「レイスたちは」

 

「駅に連れて行ったわ。今、爆発が起きたことでざわついているけど、あそこならまだ安全のはず」

 

「先程の冷気、あれは」

 

「私の波動能力よ。私は、冷気を操る波動使いなの」

 

「なるほどな。俺も一応言っておく。俺は炎を操る波動使いだ。そしてあの女は、恐らく爆破の波動能力を操る」

 

「あのビルの煙…あの女がやったのね」

 

「そうだ。奴は民間人の犠牲を全く厭わない。ここで仕留めなければ」

 

「私があの女の動きを封じるわ。あなたは、そこを狙って」

 

「分かった」

 

そして、テオとフィーリアが二手に分かれた。

 

「さっきの女ね……良いわ。まとめて殺してあげる…」

 

クレアの瞳が、赤く、黒く沈んでいく。凍えた両手も、爆破能力で解放する。

 

フィーリアは建物伝いにクレアに近付くと、接近戦を仕掛けた。足払いを狙ったローキックを仕掛ける。

クレアはこれを後方に退くことで躱すが、二撃目の素早い後ろ回し蹴りは避け切れず、手でガードした。

軽く吹っ飛ばされるクレアは、蹴りの威力よりもそれを受けた腕に注目した。蹴られた部分が凍っている。

 

「あの女…」

 

着地しようとすると、足が滑って転びそうになった。フィーリアが能力で地面を凍らせたのである。

 

「!」

 

その際に生じた隙を、フィーリアは見逃さなかった。すばやくクレアのもとに近づき、両手を彼女の腹に突き出した。発勁である。波動が込められた発勁は、クレアを屋上から突き飛ばした。

 

「この……!」

 

攻撃を受けた腹部もまた凍りついている。空中で身動きが取りづらくなることは、極めて不利である。

気づくと、クレアの上にテオがいた。刀を下に向けて握り、刃はクレアの首に向いていた。

 

「これで終いだ」

 

テオは鋒をクレアの首に突き刺そうとした。だが、首の部分で刃が止まる。

 

「させないわ……!」

 

クレアは、首に波動を全集中させ、テオの刃を防いだのであった。

 

「ならば」

 

テオは素早く身体を回転させ、クレアを回し蹴りにした。波動でのガードが間に合わなかったクレアは、地上へと勢いよく叩きつけられる。

 

クレアが地面に激突し、地面にヒビが入る。間髪入れず、フィーリアは素早く飛び立っていった。彼女は冷気を氷の刃にし、クレアの首元を狙った。

 

「終わりよ!」

 

だが、フィーリアの右手は、クレアに握られたことで止まってしまう。

 

「調子に乗るのもいい加減にしなさい……」

 

怒気を孕むクレアの眼光。彼女の手に波動に瞬く間に波動が集まった。

 

「まずいっ!」

 

そして、爆発。

 

「フフ、ざまあないわね」

 

もくもくと立ち込める黒い煙は徐々に晴れてゆき、フィーリアの姿が見える。

波動でのガードは間に合った。だが、爆破の威力が少々高く、彼女は右腕から血をダラダラと流していた。

 

「これは…っ!少し痛手ね…」

 

右腕を押さえ、痛みに顔を歪ませながらも、彼女はクレアへの警戒を怠らない。

 

「炎の男はどこかしら?不意討ちで私を殺そうという気ね。……そうだ」

 

クレアは何かを思いつくと、その場から跳んだ。そして、見晴らしのいい高い建物の頂上に上ると、再び波動の弾を作り出し、それを地上へと放った。

今度は、ビルではなく地上である。既に逃げ惑う人々にクレアの弾が直撃し、大爆発を引き起こした。

 

そして、彼女は大きな声で叫んだ。

 

「今すぐ私の前に現れなさい!さもないと、5秒ごとに地上を爆破するわ。今みたいにね」

 

「最低ね……!」

 

フィーリアは、クレアの悪辣な所業に激しい怒りを覚えた。だが、怒りだけではクレアを止められない。クレアの非道を制圧出来ない、自身の無力さにも苛立ちを感じていた。

 

「5…4…3…2…1…」

 

クレアが指を一つずつ折って時間を数えていると、彼女の前にテオが現れた。

 

「良い心がけね……。まずは武器を捨てなさい」

 

クレアの指示通り、テオは刀を地に置いた。

 

「両手を後ろに回して、前へ出なさい。少しでも妙な動きを見せたら、また下の人間どもを殺すわよ」

 

テオは言われるがままにし、クレアの前へと出た。

 

「あなたには2度も殺されかけたのよ。痛い目に遭って死んでもらうわ…」

 

クレアはニヤニヤと笑いながら、テオの左肩に手を置く。

 

「ドカンっ」

 

そう呟くと、彼の左肩を小さく爆破した。かなりの量の血が流れ、地に滴り落ちる。

だが、テオの表情は少しも変わっていなかった。痛みに顔を歪めることはない。

 

「痩せ我慢のつもり?すぐにその仏頂面をぐちゃぐちゃにしてあげる」

 

今度は右肩に手を置き、能力を発動。先程と同様に、爆ぜたテオの肩から血が大量に流れ出た。

 

「……まだ強がる気?」

 

テオの表情は、それでも変わらなかった。クレアは、そんな彼を見て苛立ちを募らせる。

 

「いつまで保つかしら?」

 

今度は、テオの胸に手を当てようとした。

 

「!?」

 

だが、それは叶わなかった。テオは、すばやくクレアの手を掴むと、力を込める。

 

「…ぅあっ!?何なの、これ…!?」

 

クレアは、テオの凄まじい握力に苦悶の表情を浮かべる。そして、遂にクレアに限界が来た。

 

「ぬかったな」

 

「あっ!?」

 

ゴキリ、という音を立てて、クレアの手首は折れたのだ。冷や汗が額を伝う。激しい痛みが身体を駆け巡る。だが、テオは彼女の手首が折れた後も、手を放さなかった。

 

テオは、即席の条件を設けた。翌日、丸一日間波動を使えなくする代わりに、これより5分間は通常以上の波動を使えるようにした。

そして、完全に油断した彼女の、ガードの弱った腕を潰すつもりでいた。

条件により強化された波動で、無理矢理に腕を動かしたのだ。

 

「いくぞ」

 

テオは、クレアの腹に炎の波動を込めた拳を激しく打ち付ける。

 

「ごはっ!?」

 

血を吐くクレア。そのまま空中へと突き上げられる。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ………」

 

全身に炎の波動を纏い、それを極限まで高める。そして、クレアの所まで跳び上がった。

 

「くっ!」

 

何とか体勢を立て直そうとするクレアだが、攻撃の手を緩めず攻めてきたテオに抵抗できなかった。

 

「爆ぜろ…!」

 

火だるまのごとく炎を纏うテオがクレアに激突すると、空中で大爆発が起きた。

 

 

「テオ!!」

 

フィーリアは空を見上げる。そして、少しすると煙から誰かが降りてきた。テオだ。両腕ともに血まみれで、息切れを起こしている。

 

「あいつは…?」

 

「分からん…だが、ただでは済まないはずだ」

 

そして、クレアもまた煙から姿を見せた。こちらは、ボロボロの姿で落下し、着地の体勢はとれていなかった。

どこかのビルの屋上に大きな音を立てて落下した。

 

「がはっ…!はぁ……」

 

クレアは、生きていた。だが、既に満身創痍に近い。

 

「許さない……許さない……!!」

 

彼女の中では、ダメージとは裏腹にテオへの怒りが凄まじく燃え滾っていた。

 

「もういいわ……何もかも滅茶苦茶にしてやる。1年じゃない……私の一生分の波動を………!」

 

彼女はゆっくりと立ち上がると、鬼の形相となり、左手を高く上げた。

 

「何もかも炭クズになれ!!!皆死ねばいいのよ!!アハハハハハハハ!!!!」

 

「何っ…!?」

 

「このパワー……今までとは比べ物にならないわ…!」

 

クレアに、これまでの闘いで見せた波動とは比にならない程に凄まじい量の波動が集まる。そしてそれは、巨大な波動の球となり、夜の空に煌めいた。さながら太陽であるその波動の球は、どんどんと大きさを増していった。

 

「まさか…自分もろともこの街を爆破する気か…!」

 

「こんなの、防ぎようが……」

 

 

「アハハハハハハハハハハハ!!!!」

 

険しい顔を浮かべる2人を見て、心地良さげに笑うクレア。

 

だが、彼女の高笑いはすぐに止んだ。彼女から少し遠くに、白い髪の男が立っていた。何者かは分からないが、異様な雰囲気を漂わせていた。

 

男は、突如動き始めた。何の動きかは分からないが、それを見た彼女は背筋が凍る思いとなった。

 

「……っ!?」

 

クレアの身体の動きが完全に止まった。波動すらも停止し、球は消えてなくなっていた。金縛りに遭ったかのように動けなくなっている。

 

「なんっ…!?これは……!?」

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!!」

 

けたたましい大声をあげながら、クレアに急接近する男がいた。

レイスだ。レイスが、電気を纏いながらクレアに突進していたのだ。

 

「レイス…!?」

 

テオもフィーリアも、目を見開いた。

 

「まっ…!?」

 

「喰らえっ!!!」

 

レイスは、渾身の力を込めた拳を、クレアの背中にぶち込んだ。そして、レイスの全力の電流が彼女にも流れ、雷のようなスパークが走った。

 

「あああっ!?!?」

 

そして、クレアはそのまま勢いよく吹っ飛ばされ、かなり遠くの場所で落下した音が聞こえた。

 

「テオ!フィーリア!」

 

レイスはすぐさま、2人のもとへと降りていった。テオもフィーリアも、ダメージを受けていた。

 

「レイス…もう動けるのか」

 

「あぁ。もう何ともないよ」

 

「レイス」

 

フィーリアの方に顔を向けると、俯いて暗い表情をしているフィーリアがいた。

 

「ごめんなさい…。私が油断していたから、あなたは……」

 

「気にすることじゃないよ。フィーリアは悪くない。悪いのは、全部あの女なんだ」

 

フィーリアの表情は、まだ暗いままであった。

 

「…奴の状況を確認しに行くぞ。あれ程の波動を操ったんだ、かなりの条件を自らに課しているはずだ」

 

そして、3人はクレアが落下した地点まで駆け出していった。

 

「……ほお」

 

そんな3人を見下ろす、白髪の男に気付くことなく。

 

 

 

 

「確かこの辺のはず…」

 

レイスたちは、クレアの落下地点付近にたどり着いた。

 

「…いない?」

 

クレアは、激しく地面に激突した。その為に、激突部分は大きなヒビが入っており、円状に周囲にヒビ割れが見られた。地面に付着した、結構な量の血も確認できた。

だが、そこにクレアの姿は無かった。

 

「おかしいわ…。あれ程のダメージを受けて、すぐに身動きが取れるはずがない…」

 

「…」

 

3人は、再び警戒を強めた。だが、周囲に波動使いの気配は感じられず、冷たい夜風が吹いているのみである。

 

「…奴の姿を確認出来ない以上、危機が去ったとは言えない。だが、奴のあの波動から察するに、1年…いや、それ以上の期間、波動能力を封じる条件を設けていたと思われる。少なくとも俺たちがここにいる間には、奴は攻めて来られないだろう」

 

「…」

 

歯切れの悪い終わりにはなったが、クレアとの闘いはこれにて幕を下ろすことになった。

3人の耳には、遠方で被害を収めんと大急ぎで走り巡る消防車のサイレン音が鳴り響くのであった。

 

 

 

 

 

「……………続いてのニュースです。昨日の、エレーカ国際空港発のエレーカ鉄道の爆発事故で、乗客およそ2400名の死亡が確認されました。また、メレルシティ周辺においても、同様の爆発が複数箇所で発生しており、警察は現在、死者・行方不明者の確認を急いでいます」

 

 

 

 

 

 

 

 

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