謎食いの探偵   作:火西善二郎

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巣【拠点】

「聞いたよ、また殺人事件を解決したって」

 

 幼馴染の三池苗子とレストランで食事を取る桜子は、その言葉に固まる。

 有名人の二人が巻き込まれた事件を解決した美人探偵と報道されていた。

 

「隠されていた真実が顕にされて犯人が捕まるのは確かに良いことだけど、危ないことには首を突っ込まないでほしいな」

「………うん。ありがと、苗ちゃん」

 

 いい友人を持った。そう微笑みながら紅茶を飲む桜子は………天井に張り付くミミングスの姿を見て吹き出した。

 

「ああ!? ご、ごめんね苗ちゃん!!」

「……………うん、気にしないで」

 

 紅茶まみれにされた苗子はまあ色々大変だし、と許すことにした。まだまだマスコミに追われる立場の桜子はサングラスをつけ店の外に飛び出した。

 

 

 

「さあ、早速今日の(メシ)を探しに行くぞ」

 

 昨日もそうだが、彼は『謎』の気配を探る。そのために歩き回り、その時の探偵役としてこれからずっと連れ回されるのだろう。

 

「なに安心しろ、近い内に拠点は手に入れるつもりだ」

「そうなの?」

「食うに困らぬ職につけると言ったはずだ。そして現状、喰うに困って居ないのは俺の方。約束は果たすさ。お前の収入を得るために、探偵事務所を開く」

「事務所かぁ…………あ、掃除とかは私がやっていい? これ、所長命令」

「命令? ………まあ小間使いしてくれるなら、いいか」

 

 めっちゃドキドキした。

 命令って言葉はあまり使わないほうが良さそうだ。

 

「まあその為に必要な立地の選出…………」

 

 と、そこで言葉を止めるミミングス。視線の先には、ビル。一階はペットショップだ。2回は事務所だろうか?

 

「行くぞ桜子、『謎』の匂いだ」

「あ、ちょ!」

 

 ズカズカと我が家のように入っていくミミングス。階段を登り、たどり着いた事務所の扉には『桃之木金融』という看板。

 

「あの、ここはやめておいたほうが」

 

 無視して扉を開けるミミングス。中では社員達が仕事をしていた。

 

「今から金取に行くから用意しとけ! 逃げたら内臓売り飛ばすからな!!」

 

 鳥兼幸村。社員。

 

「ですから、息子さんの病気とか知ったことじゃなくてですね………内臓売り飛ばしますよ?」

 

 猿渡浩二。社員。

 

「母さん、おれおれ、俺だよ! 金ほしーんだよ! 金ない? 内蔵売れよ!」

 

 戌塚海介。社員。

 

「うわぁ……」

 

 二言目には内蔵売れという一段にドンびく桜子。と…

 

「おい、何見てんだお前等」

 

 鬼宮太一。副社長代理。

 厳つい男が二人を睨みつけてきた。

 

「こっちは電話対応で忙しーんだ。とっとと消えろ」

「ア、ハイ」

「帰りたいのはやまやまなんですけど、先生が言って聞かないんですよ」

 

 と、どの口で困っているかのように言ってるのかミミングスが踵を返した桜子を捕まえる。

 

「おい、何騒いでる?」

 

 大神傑。社長代行。

 

「全員そろったようですね。実は先生が貴方方の力になりたいと」

「ああ? 力だぁ!?」

「ええ、ここで起きた殺人事件。その犯人を先生が見事に暴いて見せましょう」

 

 瞬間、空気が凍り付く。疑念の警戒の目を向ける。

 

「てめぇら………」

「よせ鬼宮! お前等何者だ、どこでその情報を………」

「名探偵米原桜子先生の勘ですよ」

「勘? …………ああ、少しテレビで見たことあるぞ。有名人の事件を解いた」

「話が早い! どうです? 先生に任せてみては………それとも、先生の知り合いの警察にここを調べてもらいましょうか?」

 

 それは苗ちゃんの事だろうか? 交通課なんだけどな、彼女。

 

「………確かに先日殺人が起きた。三日前………うちの社長が殺された。まあ心当たりはいくらでもある。内々でけじめをつけようと、仕事の合間に探ってる。で、おたくらはそれを知って何が目的でここに来た」

「ええですから、お前ら低能に解けない事件を解決してやると先生は仰っております」

 

 だからなんで一々煽るの!?

 しかも今回の相手は明らかに時代錯誤のヤクザ。ミミングスからすれば敵でもないだろうが桜子は普通に怖い。

 

「よ〜く解った。つまり死にたいってことだな?」

 

 額に血管を浮かばせながらナイフを抜く鬼宮。

 

「探偵だかなんだか知らねーが、眼の前の相手の危険度も分からねえ女が何を調べようってんだばら!?」

「え……」

 

 鬼宮は()()()()()()()()()()。もちろん桜子に格闘技の経験なんてない。が、鬼宮は壁に減り込むほど吹き飛んでいた。

 

「こう見ても先生は数々の修羅場をくぐっていまして」

(手が勝手に………また、この人…………!)

 

 握られた手がゆっくり開く。カシャンと音を立て歪んだナイフが床に落ちた。

 

「敵にするとこの上なく恐ろしいですが、味方となれば心強い! どうです、この事件、一つ先生に任せてみては? 必ずや、解決してご覧に入れましょう」

「…………………わかった。そもそも会社だけで解決仕様も言い出したのはそこの鬼宮でね。俺としては、犯人がわかるなら手段は問わない。解決できたら、何が望みだ? やはり金か?」

「お金なんてとんでもない」

「え?」

 

 食い扶持を稼いでくれるといったのに?

 いや、そういえば事務所を開くとも言っていたような…………嫌な予感しかしない。

 

「もし解決したら、この場所…………この事務所をいただきましょう」




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