咲-Side Story-B【凍結】   作:松実宥

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Ep.3「真価」三本場

夢から醒めた玄は、いつも通りに旅館の手伝いをする。そして、仏壇の前に座る。

 

玄「答えは出たけど、まだお披露目とはいかないからもっと頑張ってから、憧ちゃんや穏乃ちゃんと仲直りして私は麻雀をもっと好きになるよ!」

 

手を合わせ、線香に火を着けて消す。侘びしい音も響いて、玄の心が穏やかになる。昨日までの暗さは、今は片隅でくすぶって消えていきそうな程に。

 

玄「あ、急がないと学校遅刻しちゃう!」

 

場所は変わり、とある大学の寮。

 

宥「なんだろう、とっても暖かい夢を見た気がする。寒がりだからね、と手編みでマフラーをくれたお母さんの体温だったような……」

 

玄ちゃんが空元気で話してるのに気づいてたから、それに私も悩んで。でも、どうしようもなくて……だから、お母さんが来てくれたのだろうか。

 

宥「赤い牌の中でも、『中』は特別。それは美人の唇だからだよ、宥は美人さんだから似合うね。……お母さん」

 

私も玄ちゃんも大丈夫だよ。玄ちゃんは正義感や責任感が強くて、今は重荷に潰されてしまいそうだけど、私より強いから。そして、あったかいから。

 

宥「大好きだよ、お母さん」

 

松実姉妹の夢枕に、松実露子が立ってより二週間。4月を迎え、学校には新しい顔が溢れていた。新子憧、高鴨穏乃両名は二年生に進級。松実玄、鷺森灼は三年生となっていた。

 

穏乃「なー、あこー?」

 

憧「なによ、シズ」

 

阿知賀女学院高等部麻雀部の部室では、二年生の二人が細かく丁寧に掃除をしながら談笑をしていた。

 

穏乃「玄さん、もう来ないのかな…」

 

憧「来るに決まってるでしょ、玄は私達がここに来るまで中等部でも麻雀の大会に出ず待ってくれてた。それだけの強い想いがあるのよ。確かに、今は人がいなくなっちゃったけど、玄は多分そこじゃないのよ。嫌だと言ってる部分は」

 

穏乃「分かんない。もうちょっと、簡単に言ってよ」

 

憧「はぁ……。阿知賀のドラゴンロードは絶対に戻って来るって事よ」

 

憧が穏乃に、呆れがちに言葉を言い放ったその時、部室のドアが開いて光が入ってくる。そして、その光の中から一人現れる。

 

玄「二人とも、お待たせなのです。それから、ごめんなさい……この半年の埋め合わせは今年の夏返すから、許して下さい!」

 

開口一番、傲慢に聞こえる言葉から入ったと思えば謝罪の言葉が続き、覚悟をしてきた面持ち。穏乃と憧は若干、気当たりされ、たじろぐ。憧が口を開く。

 

憧「目標は?」

 

憧が厳しい表情をし、玄を見据える。下手な返事をしたら許さない考えであった。対して玄は、表情を柔らかく崩す。そして笑顔で宣言する。

 

玄「今年のインターハイで一番、誰よりも麻雀を好きになって楽しむ!そして、勝つよ!!」ゴォッ!

 

その場にいた二人が圧倒され、後ずさる。望んでいた以上の答えである、けれど少し心配な感じだ。

 

穏乃「はい!玄さん、一緒に楽しみましょう!」

 

やれやれ、と手でアクションを取りながらも憧も結局は了承する。まずは卓上で、話し合いましょうと。

 

玄「新生、松実玄の力を見せるのです!」

 

憧「へぇ、楽しみにしてるわよ」

 

穏乃「二人とも早く場決め牌取ってよー」

 

東を引いた仮親の穏乃が席に着いて待ちくたびれていた。二人も、牌を選び席が決まる。

 

穏「へへー、サイコロまっわれー!」

 

穏乃が起親、南家に玄、西家は憧となった。三人での麻雀の為に、三人麻雀で北家はなし、北は抜きドラ(手牌に組み込まれず、王牌から交換ツモ出来る、使用した際に抜いた北はドラとして換算される)となった。東一局で、玄以外の二人が異常事態に気付く。

 

東一局-5順目-ドラ表示牌・南

親・高鴨穏乃-手牌

一九九九①①②④⑤⑦東東南 ツモ牌→西

抜きドラ→北一枚

穏乃(あれ?玄さんがいるのに、ドラをツモれてる。抜きドラも出来たし……調子悪いのかな?)

打牌→一

 

南家-松実玄-手牌

②③④⑤(赤)⑥⑦⑧⑧ⅲⅳⅴ(赤)ⅵ南 ツモ牌→ⅶ

玄(以前の私ならこの南は切れない、あのインターハイの時の状況でもなければ。でも、私は……あの頃の弱さを認め、変わる事を決めた)

玄「リーチだよ!」ゴッ!

打牌→南 (テンパイ→ⅱ-ⅴ-ⅷ待ち)

 

憧「はや!ってか、それドラじゃん!良いの!?」

 

玄「意味のない打牌をする事をやめたのです」

 

西家-新子憧-手牌

②②③③④④⑥⑦ⅳⅴⅵ南南

抜きドラ→北二枚

憧(最初からおかしかったんだよねぇ、あたしにドラが重なるし北は来るしで。でも、その中でもリーチを掛けてきてる。三麻だからといっても、五巡目っていう早い順目で。でも、この打点ならあたしも引く意味がない!)

憧「ポン!」 鳴き牌→南

打牌→⑥ (テンパイ→⑦単騎)

 

穏乃「うあわ、憧も高そうだね」

ツモ牌→西

打牌→九

 

玄(お披露目には一発をつけて、派手目にしたかったけど、そう上手くはいかないよね。園城寺さんじゃないんだし)

ツモ牌→ⅸ

打牌→ⅸ

 

憧(あちゃー、脂っこいの引いたわー。でも押すって決めたんだ、意地でも通す!)

ツモ牌→ⅵ

打牌→ⅵ

 

穏乃(憧、相当押してるな。まぁ、見えてるだけで満貫だもんな。あと、3順ぐらいあれば山の奥も見えて来るのになぁ…)

ツモ牌→⑤

打牌→南

 

玄「ツモ!メンタンピンツモ赤々、3000-6000です」ゴォッ!

 

ただの跳満、だが和了りを宣言した玄では……普段、今までの玄では作れない手牌。これは、一体どういう事なのかと、二人が首を捻る。不思議で仕方がない、それが今の玄の和了り。

 

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