結月ゆかり「私のマスターは自称神様」   作:またたび日和

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12話でゆかちゃんと別れた後のマスター視点のお話です。
ゆかちゃんの好感度上昇に実は滅茶苦茶振り回されてたマスターは・・・


閑話 好感度の在り方

「よく頑張った。よく耐えた。偉いぞ俺」

 

脱衣所を後にした俺は、自分の理性を激励しながらリビングへと戻る。

ゆかちゃんの髪の毛を手入れする、それだけのはずだった。

まさかゆかちゃんが混浴を前提とした会話をしてくるとは思っていなかった。

 

服を脱ぎ始めた時は本当に焦った。何とか平然を装い毅然とした態度で会話が出来たが、内心は色々大変だった。

数多の経験を積んできたハズなのに、未だにこの程度の事に心が乱される自分の耐性の無さに溜息が出そうだ。

長年培ってきたポーカーフェイスと平常心が無ければ、耳まで真っ赤になってドギマギと挙動不審になっていたことだろう。

まあ、付き合いの永い増田さんや(ましろ)は普通に見破ってくるんだけどさ。

 

今回の出来事を思い返す。こんな早くに髪の手入れができた事は僥倖だが、色々と刺激が強すぎた。

頭皮マッサージで艶めかしい声を出されるのは想定内で、顔や首のマッサージでは少々際どい部分まで触れた事も認める。

その辺で割と限界だったので、夜食を作ったら早々に退室するつもりだった。

裾クイッからの赤面おねだりで「混浴しませんか?」は完全にキャパオーバーですよゆかちゃん。

何とかバスタオル着用で妥協してもらったけど、それで「ありがとうございます」と笑顔で言われるのは色々と複雑だ。それはこっちのセリフですよ。

 

精神統一で何とか平常心を取り戻し、魅惑の大浴場へと舞い戻る。

入浴を満喫しているゆかちゃんの隣にそっと腰を下ろす。

この位置からなら際どい場所は見えない。ここのお湯を濁り湯にした当時の自分は英断であった。

その後は他愛無い会話をして親睦を深めつつ、お風呂を満喫する至福の時間だ。

途中、ちょっと過去に触れられる会話があり、少々変な空気になってしまったが、基本的には穏やかな時間が過ごせたと思う。

 

想定外だったのは退浴の時だ。貼り付いたバスタオルが彼女のプロポーションを引き立て、薄っすらと肌色が見えている。

あまりに刺激的で官能的な姿に、理性を総動員して顔と目線を逸らす。

本能を完全に抑えた自分の理性を褒めながら、足早に浴室から出ていく。

ゆかちゃんの髪を乾かす前にもう一度精神統一を行わなければ。

 

脱衣所に気配がある事を確認し、そちらを見ないように声を掛ける。

問題無さそうなので、椅子に座ってもらい髪を梳いていく。

一切絡むこと無くスルリと櫛の間を流れていく髪の毛。乾かすまでが手入れだぞと、改めて気合を入れ直す。

・・・うん、バッチリだ。流石は自分だと自画自賛しても許される出来栄えだ。

 

「はい、終わりましたよ」

「ありがとうございますマスター、とっても気持ち良かったです」

 

純真無垢な笑顔でそんなことを言われると何て返したら良いか分からなくなる。

気持ち良かった、という単語に反応してしまう節操無しの愚息が見えない位置で良かった。

久遠の時を生きてきて未だにこんなことで感情が振り回されるのだ。

増田さんが見たら某バスケの先生みたく「何も成長してないね君は」と煽り散らしてくることだろう。

その光景が脳裏に浮かび、思わず苦笑してしまう。

 

「・・・ご満足いただけたようで何より」

 

つい感情を表に出してしまい、ゆかちゃんに怪訝な顔をされてしまった。

ごめんよゆかちゃん、こっちの個人的な話だし特に深い意味は無いんだよ。

話を逸らす為にこの後の事を聞く。もう一杯飲んだら就寝するとの事なので、こちらもリビングへと戻る。

 

 

 

そして冒頭へと戻る。

色々と溜まった雑念を振り払い、なるべく普段通りの顔をしながらリビングのドアを開ける。

増田さんがコーヒーを淹れて待っている普段通りの光景だが、何だか妙にソワソワしている。

こちらを知覚してから物凄い「座れ」サインを送ってきてる。言いたいことはネックレスの件かな?

椅子に座ると同時にコーヒーとミルクの割合1:9のカフェオレに角砂糖が1つ入れられる。

「寝る前に一つだけ話をさせて欲しい」か・・・一つだけで良いんですか?

 

「ネックレスの事については増田さんの良い反応が見れたので後悔はしてませんよ」

「その件も色々言いたかったけど、どうせそんな事だろうと思ったから諦めたよ」

 

肩を竦めて大きく溜息を吐く増田さん。

まあ、こっちの思考なんて全部お見通しだろうし、今更文句を言っても無駄に体力を使うだけと分かってますね。

ん-?なら一体何の議題だ?

 

「先程ゆかちゃんに混浴に誘われていたね、どうだった?」

「とても有意義な時間でしたよ。二日目で髪の手入れができたのは僥倖でした。特にあの髪のこだわりが凄くて__」

 

その後は増田さんに、如何にゆかちゃんの髪の毛の質が素晴らしいのかを語る。

毛の一本一本本物そっくりに作られているところに、彼ら職人の拘りを感じた。

(ましろ)の時は考案こそされてたものの、結局量産販売には至らなかったし、

当時の研究結果を見ながら(ましろ)の髪質を上げられないか独学で試行錯誤してたが、満足な結果は出せなかった。

自分が目指した物を実際に目にする感動と共に、時間で埋められない凡人と天才の差に複雑な気持ちになる。

 

「はいはいゆかちゃん可愛いね、じゃあそろそろ本題に入って良いかな?」

「もう少し興味を持ってくれてもいいじゃないですか」

 

言いながらもつい笑ってしまう、こういう塩対応も気さくなやり取りの一環だ。

そう思いながら笑っていると早よ飲めアピールが凄いので、カップを手に取って口を付ける。

 

「アンドロイドの好感度というのは、こんなに上がりやすいものなの?」

 

まあ、増田さんの困惑は理解できる。非正規アンドロイドの好感度絡みの悲劇を昨日話したばかりなのだ。

ゆかちゃんの言動を見ていたら困惑するのも当然だ。

ただ、好感度パラメータの仕様についてはまだ俺も把握できていない。増田さんの疑問に応えられるか分からない。

とりあえず、まだ確定ではありませんがと前置きしておく。

 

「恐らく彼女を作った本社も把握していない、想定外の仕様が原因です」

「どういうこと?」

「今のゆかちゃんは、滅茶苦茶チョロくなってるってことです」

 

マスターの言動で好感度が増減するのは周知の事実だが、その増減幅は知られていない。

ゆかちゃんを直すついでにシステムを確認しようとしたが、ほとんどがブラックボックスの上、無理に開けようとするとシステムが自壊する罠まで仕掛けてあった。

ここまで厳重に管理されてるとは想定外だが、会社の中核技術と考えれば決してやり過ぎとも言えない。

俺もシステムについてはスルーしたので憶測でしか語れないが、今までの情報から推測は十分に可能だ。

 

「昨日、闇サイトのアンドロイドは好感度を上げない様に無下に扱われる話はしましたね」

「一定の好感度を超えると相手を殺傷するプログラムが発動するって話だったね」

「はい、そうしてぞんざいに扱われたアンドロイドの好感度はマイナスに振り切れます。

そうなると、普通では増加しないような些細な優しさでも好感度が上がる様になります」

 

ゆかちゃんは最初の食事で感涙までしていた。その後も食事に執着してる様子から、何かを食べる度に好感度が上がっていてもおかしくない。

目覚めて二日目で混浴に誘うまでになったのだ、今のゆかちゃんの好感度が最大値近くまで上昇していても何ら不思議ではない。

そして、ゆかちゃんの好感度が急増した一番の理由は、彼女が今までの出来事の全てを記憶として持っているからだろう。

 

「ゆかちゃんは今までの、ぞんざいな扱いを受けてきた記憶を保持しています。

そのせいで、自分達にとって些細な言動も、ゆかちゃんにとっては過去と比較して好感度を上げる要因になっているのでしょう。

そして恐らくゆかちゃんの言動から、記憶した俺の言動と過去の扱いの比較を頻繁に行っていると思われます」

 

「君のその時の言動を何度もリピートして過去と比較して、勝手に好感度を上げていってるってこと?」

 

「その通りです。好感度の上がり方をグラフ化すれば、指数関数グラフみたいな曲線になると思いますよ」

 

恐らく、ゆかちゃん自身も相当戸惑っているはずだ。

本来の好感度パラメータは年単位でゆっくり上げていくものであって、一朝一夕でカンストするような代物ではないだろう。

そして彼女を作った本社も、過去のマイナスを補填する様に好感度が加算される動作は想定していないだろう。

通報機能が働かず好感度がマイナスに下がった事、好感度が下がる言動の全てを記憶している事、その状態で好感度がプラスになる言動を多々行った事。

これらの要因が合わさった事で、チョロ可愛い今のゆかちゃんが出来上がってしまったというわけだ。

 

「じゃあ、二年前に起きた殺傷事件は期間切れが原因ってわけだね。被害者とアンドロイドはそこそこ良好な関係を築いてたって話だし」

「そうとも限りませんよ、その子の裏サイトでの稼働歴が短ければ短い分、好感度の上がり方も緩やかになりますから」

「あー、最初の購入者が被害者だった可能性もあるのか」

「調べようと思えば調べられますが、そこまでして得たい情報ではありませんね」

「じゃあやめておこう、君の負担にしかならなそうだ」

 

肩を竦める増田さんに俺は苦笑を返す。否定の言葉を掛けないのは、つまりそういう事だ。

実入りにならない情報を集めてもこっちの精神が擦り減るだけだ。

それならまだ、適当な家庭料理の隠し味でも調べた方がよほど堅実的だ。

 

「けど、好感度の上昇だけじゃ解せない事もあるんだよね。

ゆかちゃんは前マスターに非道な目に遭わされた、言わば性被害者なわけでしょ。

異性に裸を晒す行為自体がトラウマになっててもおかしくないのに、君を混浴に誘うのに抵抗が無いのはどういう事?」

 

言われてみれば確かにと、俺は腕を組んで唸り声を上げる。

性被害に遭った子は基本的に、異性への警戒心が高くなる傾向がある。

だが、ゆかちゃんにそんな傾向は無く、最初の反応から拒絶や警戒よりも諦観に近い感情を持っていた事は分かっている。

アンドロイド特有のものなのかは、流石に俺にも分からない。

 

「その疑問に関しては、本人に聞いてみないと解決しませんね」

「なるほど、明日それとなく聞いてみる事にするよ」

 

ゆかちゃんが何を思っていたのかは分からないが、少なくとも俺への好感度がそれだけ高い事は確かだろう。

知らず知らずのうちに好感度が高くなり、しかも自分にとって完全に無自覚なのだ。

慕ってくれるのは嬉しいが、ゆかちゃんの心境を想うと素直に喜べないな。

 

「ゆかちゃんの好感度上昇は君にとって喜ばしい事だろうけど、それにかこつけて手を出したりしてないよね?」

「酷いなぁ、俺がそんな節操無しに見えるんですか?」

「じゃあゆかちゃんがどんなあられもない姿で迫ってきても毅然とした態度で諭せる?」

「無理ですね、場合によってはそのままベッドインです」

 

先の髪の手入れですら色々と想定外の事態が起こり過ぎて限界だったのだ。

もし官能的な姿で誘われでもしたら本当に理性が崩壊しかねない。

ケラケラと笑う俺を見た増田さんが、わざとらしく大きな溜息を吐く。

 

「君はちゃんと自分の悪癖を理解した方がいい」

「中々治らないから癖って言うんですよ」

「・・・・・・」

 

刹那、俺の頭頂部に鈍痛が走る。端的に言えばぶん殴られた。

いくらイラっとしたからって無言で殴る事ないじゃないですか!

いや、流石に今のは俺が悪かったし、俺が聞く側でも相当イラっとしたとは思うけどさ。

確かに俺も自分の悪癖は理解しているし、増田さんが何を危惧しているのかも理解している。

 

「君は肉体的に密着できる相手への警戒度を無意識に下げるって悪癖をしっかり自認した方が良いね。

困ったことに、性的接触どころか抱擁でも警戒度が下がる節操無しっぷり。本当に困ったものだね全く」

 

先の言葉への当て付けか、わざわざ声に出しながら大袈裟な動きでやれやれと首を振る増田さん。

少々イラっとするが、間違いなく増田さんの言う通りの為、何も言い返せない。

元々の依存気質と女々しさも相まって、体を重ねた相手への信頼度を高くしてしまっているのは重々承知している。

警戒すべきはそれ以降だと再三言われているのだが、相手を警戒し続けるのはしんどい事も考慮してほしいものである。

 

「まあ、俺も不誠実な状態で一線を越える事はしませんよ」

「へぇ、じゃあ全部話すつもりなんだ」

「勿論数日で全部話すつもりはありませんよ。数ヵ月単位でゆっくりと開示していくつもりです」

 

俺だって本当ならこんな面倒な事はしたくないし、ゆかちゃんに全てをさらけ出してしまいたい。

そんな事は思っているが、俺も自分の人生の特異性はちゃんと客観視してる。

昔同じくらいのタイミングで全部喋った事もあったが、結局拒絶されてしまった。

ゆかちゃんが俺の事を知りたがってる事も察しているが、そんな簡単に言えるような過去なら俺だって苦労しない。

 

「それだけゆかちゃんを信用してるんだね」

「増田さんはどうです、まだゆかちゃんは信用できませんか?」

「ふむ・・・君を最優先に考えてる点は評価できるけど、それだけだね」

 

まあ、二日目で相手を信用はできませんよね。

寧ろ、たった二日で思考面が評価されている辺り、増田さんのゆかちゃんへの期待値はかなり高い。

今朝の俺に対する問答や、膝枕されてた俺が寝つきが良かった事も増田さんは高く評価しているようだ。

 

「ゆかちゃんの評価や信用よりも、君が数ヵ月も隠し通せるかが一番の問題なんだけど」

「違いないですね」

 

俺も自分のメンタルの不安定さは自覚している。

悪夢を見て塞ぎ込むならましな方で、自暴自棄になって暴れたりなんてしたら最悪だ。

本気でヤバい時は増田さんが止めてくれるだろうが、そうならない事を祈るばかりだ。

そう思いながら、俺はカップの中身を飲み干した。

 

「それじゃあ、俺は風呂入って寝ますんで」

「ああ、おやすみ、良い夢を」

 

良い夢を、ねぇ。ホント、たまには悪夢以外を見たいよ。

増田さんの言葉は俺を気遣った善意のものなのに、それが皮肉に聞こえてしまうのは俺の性格が悪いからだろうか。

変な事は考えず字面通りに受け取っておこう。

俺は増田さんにおやすみと返し、浴室へと戻る。

 

 

 

 

気休め程度の精神安定剤を一瓶飲み干し、ゆっくりと布団へ入る。

どうせ寝ても悪夢しか見ないのだ、せめて目を閉じている間は楽しい事を思い返そう。

ゆかちゃんの膝枕、人間と遜色ない柔らかさだったな。今日のゲーム配信ではゆかちゃんに羨望の眼差しを向けられた。

好感度のバグと分かっていても混浴に誘われたのは嬉しかったし、そこから髪の手入れを行えたのも良かった。

 

考えながら、直近の楽しかった事が全てゆかちゃんに関連したものだと思い至った。

確かに、ここ二日間は本当に楽しい事だらけだった。

表情がコロコロと変わるゆかちゃんを見ていると癒されるし心が洗われる気分になる。

夢の中でも、ずっとあの笑顔を見ていられたら、そう思いながら俺の思考は薄くなっていった。

 

 

 

 

 

 

俺は、どこにでもありそうな繫華街の中に佇んでいた。

周囲の喧噪が遠くに感じる程、俺の意識は一点に集中している。

驚愕に目を見開いている女性、そしてその女性と仲睦まじく手を繋いでいる男性。

あぁ、またかと内心で溜息を吐きながら、夢の中の俺は笑みを深めて言葉を紡いだ。

 

「随分と仲が良さそうだけど、その人は誰だい?」

 

わざとらしい質問だ。

俺が好き()()()女性が、陰でどれだけ悪態を吐いているか、どれだけ俺を嘲笑っているのか。

全て視え(把握し)ている。その上で俺はこの質問を発したのだ。

 

「ち、違うの、この人は昔からの幼馴染で__」

 

かつて、俺が綺麗だと褒めた声で、慌てて虚言と御託を並べている。

よく回る舌だ。縫ってしまうか、切ってしまうか、地獄の閻魔に倣って引き抜いてしまおうか。

かつて、俺が綺麗だと褒めた目は、内心では俺を見下しているぞと半目になっている。

醜い目だ。潰してしまうか、抜き取ってしまうか、縫い付けて見えなくしてしまうか。

相変わらず虚言を繰り返す女に対し、俺は何をしようかと残虐な行為を脳裏に浮かべ続ける。

 

かつて、増田さんは俺に言った。

どうして君が我慢する必要があるのさ?君が居るからこそ、そいつらは生きている事ができるんだ。

君のおかげで人類が生まれる事、繁栄することが約束されている。君が奪う命よりも、生まれてくる命の方が遥かに多い。

寧ろ、君がストレスを貯める程、全ての生命が危機に瀕する可能性が高まるんだ。

君はこの世界を自由にする権利がある、気に入らない奴を好きにしても、誰も文句は言えないさ。

 

色々な物を溜め込んでいた俺にとって、その言葉は悪魔の囁きであったが、何よりも甘美で抗い難い言葉であった。

あぁそうか、俺は我慢する必要はないのか、好き勝手しても良いのか。

肩の荷が下りた気がした、憑き物が取れるとはこういう事かと感動すら覚えた。

だから俺は、その甘言に乗った。人の道を外れる事を気にするなんて今更過ぎる。

 

「もういい、喋るな」

 

一切の感情が籠っていない声でそう呟く。

相変わらず何やら騒いでいるが、耳にキンキンと響くだけの雑音でしかない。

 

「何を言っても変わらんよ。お前ら   楽に死ねると思うな

 

 

 

 

その言葉で目が覚め、俺はゆっくりと半身を起こす。

かなりマシな方の悪夢だったが、当時を思い出すとやはり気分が悪くなる。

大きな溜息を吐きながら時間を確認すれば、布団に入ってから凡そ2時間経ったところだ。

まだまだ起床する時間ではないので、俺は再び横になる。

 

そっと口と鼻を右手で覆い、力を籠める。

呼吸器周辺から酸素を奪う事で、どんなに寝付けなくても一瞬で眠れる方法だ。

無酸素の空気を思い切り吸い込み、俺の意識は瞬く間に薄れた。

 

 

そしてまた2時間も経たないうちに悪夢で目が覚める。

ほぼ毎日このザマなのだ、悪態の一つでも吐きたくなるというものだ。

汗で濡れて気持ち悪いので風呂に入り直す事にする。こういう時の為に24時間いつでも入浴できるようにしているんだ、活用しないと。

俺は欠伸を噛み殺しながら、着替えを片手に浴室へ向かう。

 

 

入浴を終えて、再び酸素濃度を下げて強制睡眠に入り、そしてまた悪夢を見て起きる。

ふぅっと顔を手で覆い首を振る。寝不足のせいで頭と目の奥が痛むし気分が悪いのもいつも通り、もう慣れてしまった。

時間は6時過ぎ、起きていい時間帯だが、増田さんと約束した睡眠時間には足りないのでもうひと眠りする。

もう一度酸素濃度を下げて意識を飛ばして・・・って__

 

「誰だ勝手に神界に下りたバカは!?」

 

裏口の扉を魂が通った感覚で飛び起き、思わず声を荒げてしまう。

無意識に誰だなんて言ってしまったが、この場所から神界に降りられる存在なんて一人しかいない。

あぁもう全く、どうせゆかちゃんに羊を自慢したくなった故の行動なんだろうけど、神界が飽和状態だって何度も言いましたよね!?

羊が絡むと途端に周りが見えなくなるんですから!いつかホントに消滅しますよ!

 

「はぁ・・・とりあえずシャワー浴びるか」

 

増田さんが神界に居る以上、俺が意識を手放すと存在確定が出来なくなってしまうので、寝直すという選択肢は最初から無い。

普段は俺が起きてる時間にしか移動しないし、俺の在否で変化が無いから油断したのだろう。

増田さんに貸し一つ作ったとポジティブに考えたいが、もう少しリスク面を考えてほしいと思ってしまう。

この貸しで何をお願いしようかと考えながら、俺は浴室へと向かった。




裏方のマスターは色々と大変です。
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