不知火は疲れている。   作:覚醒不知火

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初めて重い話を書いてみます。


第一話 不知火

艦娘

 

 

それは深海棲艦から人類を守り、深海棲艦から海を取り戻す為に作られた者達。

皆性格は違えど深海棲艦から海を取り戻す為に努力し成長して提督の指揮のもと深海棲艦を倒す。

艦娘としての誇りを持ち深海棲艦と戦う事が彼女達の目的。

 

駆逐艦不知火彼女もそうなのだろう。

彼女を指揮する提督も彼女と共に戦う艦娘達もそして姉妹艦でさえも彼女が自分達と同じ目的を持ち同じように戦っていると思っていた。

 

しかし彼女は疲れていた。

 

別に鎮守府がブラックなのではない。

彼女の提督はかなり良い人だ。

 

では何故彼女は、疲れているのだろうか?

 

他の艦娘そして他の鎮守府の不知火は、彼女ほど疲れてなどいない。

 

彼女だけが疲れているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「寒い」

 

私こと陽炎型駆逐艦不知火は冬の夜鎮守府の外にある波止場に来ていた。

 

「防寒着を着てくるべきでした」

 

冬の海風は冷たくこんな日に任務には就きたくないなと思いながら私は寒い中夜間哨戒中だろう艦娘達を想像し少しばかり同情しながら夜の海を見る。

 

「まあ別にいいか」

 

私は考えを頭から消し左ポケットから白い箱を取り出し中にある一本を口に加えポケットに戻す。

 

今度は右ポケットからライダーを取り出し煙草に火を付けた。

ライターをしまい一服する。

 

「ふうー・・・やっぱり民生品が一番美味しいですね」

 

意図的にニコチンを減らした軍用品よりも民生品の方が数段美味しい。

最近煙草自体、陽炎に止められてあまり吸えていなかったのもあって少し笑いがこぼれた。

 

私は久しぶりに手に入れた民生品の煙草を暫く楽しむ。

 

 

駆逐艦や軽巡洋艦の艦娘は身体年齢的には、未成年者が殆どでタバコを吸うのは禁止されている。

それに軽巡洋艦や駆逐艦達は、一部を除き精神的にも幼いためタバコなど吸わないし吸っても不味いだけだ。

しかし彼女は定期的に抜け出してタバコを吸っている。

しかも艦娘にはタバコが支給されないため憲兵の支給品から盗んでさえもいるのだ。

 

普通ならば有り得ない行為である。

 

艦娘は基本彼女の様な非行には走らない。

個人個人の差異はあれどみな一様に国を守る為、深海棲艦を倒す為、仲間を守る為にお互い切磋琢磨し努力するものだ。

だが彼女にはそれが一切感じられず、訓練には最低限しか参加せずかと言って勉学をするわけでも他の艦娘と積極的にコミュニケーションをとるわけでもない。

そのせいか彼女は鎮守府でも浮いた存在であり、交友関係も姉や提督を除いてほんとんどないと言えるだろう。

更に彼女の目や雰囲気も理由の一つである。

彼女の目は新米艦の目でも歴戦艦の目とも違いまるで光を失った様な死んだ魚の様な目をしているのだ。

雰囲気もどこか疲れを感じさせており、煙草を吸っている姿はどこか休憩中のやつれたサラリーマンを彷彿とさせる。

 

 

 

 

 

 

 

海を見ながらタバコを楽しんでいると。

 

「不知火何やってるの!」

 

私の姉である陽炎が来た。

陽炎は随分怒っているようで私を確認すると駆け足で目の前に立った。

 

「またタバコなんか吸って!」

 

陽炎は私の近くまで来ると吸っていたタバコを無理やり取り上げた。

 

「陽炎返してください」

 

「ダメよ!いい加減こう言うことはやめて」

 

陽炎はそう言うと吸いかけの煙草を海に捨てた。

 

「嫌です」

 

私は陽炎の言葉に明確に拒否の意思を示し、ポケットから煙草の箱を取り出しまた一本吸い始めた。

私に煙草を止める気はない。

 

「どうしていつもいつも・・・」

 

陽炎は悲しい様な表情をしてくる。

だがいつもの事なので特に私の心には響かない。

 

 

 

 

 

 

「こらっ、また吸って!」

 

不知火はいつもこうだ。

いつもマイペースでいつも真面目にやらない。

 

私の姉妹艦不知火は不真面目だ。

それは致命的な程で規則も平気で破るし訓練だって殆どさぼる。

本気で頑張ればもっと強くなれるのに殆ど努力しない。

 

聞く話によれば他の鎮守府の不知火はこの様な性格ではないらしい。

他の鎮守府ではクールで規則を絶対に守り戦闘ではいつも本気で敵を徹底的に追い詰める。それが不知火だそうだ。

 

しかしこの子はクールなこと以外性格は全然違う。

 

私は別に不知火が嫌いなわけでも他の不知火がいいと言う訳ではない。

ただ心配なのだ。

 

規則を破り罰を受けることが不健康な生活のせいで体を壊してしまう事が努力を怠ったせいで轟沈してしまう事が。

 

 

 

 

 

 

 

 

二本目を吸おうとしたが今度は、箱ごと取り上げられてしまった。

 

「こんな物!」

 

陽炎はタバコを海に投げ捨てる。

もったいない貴重な民生品だと言うのに。

 

「早く帰るわよ!」

 

陽炎は私の手を強引に掴み引っ張る。

似たような取りを今まで何回したことか。

 

「分かりました陽炎、でもその前に少し散策に行っていいですか?私は余り外に出る機会が無いので」

 

「それくらいならいいけど・・・」

 

「ありがとうございます・・・陽炎」

 

 

 

 

私は少し離れた波止場に向かう。

そして内ポケットからタバコを取り出し口に加える。

 

散策に行くと言うのは建前で、本当は隠して置いたもう一つの煙草を吸うためだ。

歩きながら火を付け一服する。

 

暫くタバコを吸いながら歩いていると消波ブロックに何かが引っ掛かているのを見つけた。

 

気になったのでジャンプして消波ブロックに着地する。

艦娘の身体能力は高い為、足場がかなり悪いが少しずつで近ずいていく。

 

 

 

 

ようやくだどりつき引っ掛かった物を手に取る。

それは黒い布だった。

 

「何だ布か」と思い落胆した次の瞬間私は、言葉を失った。

さっきまでは消波ブロックで見えなかったが移動したことで私は彼女を見つけた。

 

 

戦艦レ級、姫や鬼に匹敵する危険な深海棲艦が大破した状態で意識を失っていた。




むずいな。


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