不知火は疲れている。   作:覚醒不知火

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第二話 驚愕

不知火

彼女は唯々驚愕する。

いつもはあまり顔に感情を表に出さない彼女だが、現在は目を見開き今までに無い驚愕の表情をしていた。

驚きのあまり吸っていた煙草を落としてしまい、体も少し震えてしまっていた。

 

一方レ級は消波ブロックに寄りかかる様な形で気を失っている。

 

身体の節々には砲撃や爆撃を受けた為だろう焦げ跡や傷が存在しており、このレ級が戦闘で大破したことを示していた。

コートの様な服は所々破れ、尻尾の様な艤装も大きく損傷している。

真っ白な肌も相まって死体にも見えるが、レ級はしっかりと呼吸を行っていた。

 

不知火は驚愕しながらも何故かレ級に手を伸ばしていた。

 

馬鹿げた行動だ。

レ級の危険性を知らない彼女ではないだろうに。

 

レ級は戦艦でありながら魚雷を撃ち航空機を運用する。

たとえ大破していたとしても改にも成っていない一介の駆逐艦が相手できる存在ではない。

しかし不安定な足場に苦戦しつつも彼女は少しずつレ級に手を伸ばしていく。

 

彼女の手がレ級に届くその瞬間

 

「ッ!」

 

レ級が目を覚ました。

目の前には手を伸ばす不知火の姿があり、本能的に彼女が艦娘だと感じたレ級は損傷した艤装を稼働させ不知火を狙う

不知火はいきなりの事に殆ど対応できず、伸ばしていた右腕で顔を守る位しか出来なかった。

 

そしてレ級は目の前の不知火に向けて主砲を撃った。

 

砲弾の爆発を不知火はもろに受け気を失いながら陸地側に吹き飛ばされた。

 

 

 

数分後

 

「うっ・・・」

 

痛い。

身体のあちこちが焼ける様に痛い。

 

痛みを感じながらも私は目をゆっくりと開ける。

 

視界に見えるのは所々雲に隠れた月と星空。

私は仰向けに倒れている様だ。

なぜ私はこんな所で倒れているんだ?

私はたしか陽炎に隠れて煙草を吸おうと・・

ああ、そうだ・・・思い出した。

私はレ級に・・・

 

「馬鹿ですね私も」

 

愚かすぎる自分の行動を振り返り後悔を感じる。

 

まあ失敗を悔やんでも意味はない。

取り敢えず。

 

「んっ」

 

右腕を動かそうとするが激しい痛みが私を襲う、右腕が動く気配もない。

 

首を動かし右腕に目を向ける。

そこには血塗れで所々肉が抉れていたり熱傷している私の腕があった。

もう一度右腕を動かそうとするが肘から先はピクリとも動かない。

 

次は左腕を動かしてみる。

 

すると震えながらではあるが左腕は動く。

 

「よかった・・・」

 

不幸中の幸いか左腕は右腕と違い動く様だ。

私は左腕を使い上半身を起こし周囲を確認する。

 

どうやら私は砲撃でコンクリートの地面まで吹き飛ばされたようだ。

 

先程までいた場所には砲撃によってクレーターの様な物が出来ている。

レ級はもうそこにはおらずどこかしらへ逃げた様だ。

 

周囲を確認し立とうとしたその時

 

「うっ・・・」

 

今まで以上の強烈な痛みが私を襲った。

 

痛みに耐えながら視線を下に向けると腹から出血していた。

腹の傷を左手で抑えるが、その時喉から何かが込み上げてくるような感覚がした。

 

「ゲホ!ゲホ!」

 

込み上げてきた物を吐き出す。

吐いたものを確認するとそれは大量の血だった。

 

「不味いですね」

 

鉄の味が口の中に広がる。

傷からの出血に吐血。

下手したら大量出血で死にそうだ。

 

「急いで鎮守府に戻らないと・・・」

 

痛みを堪え脚に力を込め立ち上がろうとすが・・

上手く力が入らず転んでしまう。

 

脚を見てみると両脚とも右腕よりはかなりいいがかなりの傷を負っていた。

恐らく骨折もしているだろう。

 

本格的に不味い。

 

 

明らかに異常であった。

自分が沈みかけていると言うのに不知火は冷静に・・・いや恐怖や怖れと言った感情を一切出さずにただ淡々と状況を受け入れ始めていた。

彼女は壊れている。

こう表現するのが一番適切だろう。

艦娘として彼女はどこか壊れているのだ。

 

 

立つことが出来ず、紐リボンと服の切れ端で最低限の止血をしていると、今まで以上の寒さを感じた。

恐らく血を失い過ぎたのだろう、陸上だと言うのにまるで深海の様な寒さを感じる。

起こしていた上半身も腕に力が入らなくなり崩れる様に倒れてしまった。

 

また意識を失いなそうだ・・・

 

不知火!

 

駄目だ意識が遠のく・・・

 

不知火!

 

何か声が聞こえる・・

 

不知火!

 

助かるならまだ死にたくないな・・・

 

 

 

 

 

私は妹の不知火を探していた。

散策に行って来ると言って一向に戻らないからだ。

 

夜の寒い波止場を歩く。

夏ならば夜でもかなり熱いのだが、今は冬の季節の為かなり寒い。

 

寒さを感じながら私は考える。

 

「どうすればいいんだろう・・」

 

不知火はいつも不真面目で生活態度も悪い。

そして他の妹や艦娘達と根本的なまでに何かが違う。

 

だから私は悩むのだ。

不知火にどう接すればいいのか。

 

 

考え事しながら歩いていると。

 

「え?」

 

私は見つけてしまった。

小さなクレーターと血塗れでコンクリートに倒れこんでいる不知火を。

 

「不知火!」

 

私はすぐさま駆け寄った。

不知火の身体は傷だらけで酷い状態だ。

地面には不知火の血が大量に広がっており、肌も出血し過ぎだのか体温が低くなり白くなっていた。

 

「不知火!」

 

私は不知火に呼び掛ける。

だけど反応はない。

 

「不知火!」

 

し・・に・た・・く・な

 

三回目で不知火はようやく反応を見せた。

 

「不知火!大丈夫!不知火!」

 

何度も呼び掛けるでも三回目以降反応はない。

 

これ以上ただ呼び掛けても駄目だ。

 

私は不知火を背負う。

 

「絶対に死なせないから」

 

 

 

鎮守府に急ぐ。




やっと2話出せた。
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