異様
私が夕張の部屋を一言で表すならそれであった。
部屋の中には何か生物の様な物や何かの体の一部が浮かんでいる試験管が幾つもあり、まるでマッドサイエンティストの研究所の様である。
「なにぼーっとしてるんですか、遅れてるんですから早くしてください」
夕張の声を聞いた私は部屋を見回すのを止めて夕張の前の椅子に座った。
「では、経過を確認するので右腕を出してください」
私は右腕を首から吊り下げるのを止めて前の机に腕を置いた。
すると夕張はカッターを使い手際よくギプスを外していった。
夕張がギプスを外すと包帯に包まれた腕が出現した。
包帯は一部が血か何かによって黒くなっていたが夕張はギプスと同様に手際よく包帯を外していった。
そうしてすべてが外された不知火の右腕は耐性の無い物が見ればすぐに嘔吐してしまうようなありさまだった。
前腕や二の腕の一部が黒い痣の様なもので覆われ、さらに通常の肌との間からは黒い血の様な物があふれ出ている。
「なるほど・・・」
夕張はそれを興味深そうに見つめると注射器を使い血の様な物を採取していった。
更に一二本血を採取すると血をシャーレに移し顕微鏡で血を確認する。
「予想以上ですね・・・」
夕張は顕微鏡を覗くのを止めて手元のノートに色々と書き連ねながらそう言った。
「幾つか質問をします」
文字を書くのを止め夕張は不知火に問いかけた。
「まず右腕の痛覚は?」
「少し前までは何ともありませんでしたが最近は少し痛いです」
「味覚に変化は?」
「ありません」
「あと・・・」
夕張の質問に答える傍ら不知火はあることを考えていた。
正直に言ってサインしたくは無かった。
サインすれば助かって、しなければ助からない?
怪しいにも程がある。
けれども死にかけて右腕の感覚もなくなっていた以上、私に拒否すると言う選択肢は無かった。
サインをして書類を返した後、夕張は具体的に何をするかを説明した。
色々言っていたが要約すると深海棲艦の生体組織を私に移植するらしい。
これを聞いた時私は安心した。
何故安心したのかは私にも分からない。
深海棲艦の身体の一部をを自分の身体に入れるなんて普通なら忌避すべき事だ。
だが不思議と拒否感は無かった。
もっと最悪な事を想像していたと言うのもあるだろうが、大丈夫だと言う謎の安心感が私にはあった。
「・・・まあ今日はこんな所ですかね」
質問と検査を終えた夕張は紙に幾らか書き込んだあと不知火に向き直る。
「血はもう出ていませんし、組織の癒着もいい感じです。ギプスはもうとって大丈夫そうですね・・・ただその右腕を一般の艦娘に見られると面倒なので包帯は付けておいて下さいね」
夕張はそう言いながら包帯を巻いた。
包帯が巻き終わると不知火は立ち上がり出口に向かって歩き出した。
「ちょっと待ってください、最後にもう一つだけ質問させてください」
しかし夕張の声に不知火は歩を止めた。
「なんです?まだ何か?」
不知火が振り返ると夕張は質問を発した。
「最近自分の記憶にないはずの事がフラッシュバックしたりしましたか?」
不定期投稿で本当にすみません。