大海原そこは深海棲艦が出現した時から人類の領域では無くなった。
艦娘を用いて反撃を行った今でも一部の海域以外では深海棲艦の艦隊が跋扈し、一般船舶が護衛なしで航行する事はほぼ不可能になっている。
例え艦娘だとしても艦隊を組まなければ複数の深海棲艦に囲まれて一瞬で轟沈してしまうだろう。
そんな危険な海を私、不知火は一人で航行していた。
なぜこんな事になったんだろうか・・・
『不知火、そろそろ会敵ですよ』
原因の艦娘が無線で私に話しかけてきた。
「了解しました・・・ですが本当にイ級が二隻だけですか?」
『本当ですよ、貴方は大事な成功例何ですから直ぐに沈むような真似はさせませんよ』
「信用出来ませんね」
事の始まりは定期検査の時だった。
「そろそろ実戦時のデータが欲しいですね」
検査が終わると夕張がそんな事を言い出したのだ。
私は嫌々ながらも契約を盾にされては何も出来ず、データを取る為の特殊艤装と夕張がこちらを確認するためのカメラをを装備して出撃する事になった。
「そう言えば何で私一隻だけ何ですか?普通はもう二隻ほど付けてデータの収集なりもしもの時の護衛などをさせるのでは?」
『それをすると他の艦娘に貴方の右腕の事がばれるじゃないですか、一応極秘事項何ですよ』
自分の右腕を見てみると痛々しい包帯が巻かれていた。
この包帯の下には深海棲艦の様な肌や細胞がひしめいている。
普通の艦娘に知られれば卒倒ものなのだろう。
まあ随伴艦なしと言うのは正直言って感謝している。
私には、面識のない艦娘との連携も、共同もできるとは思えない。
『まあ何かあったとしても、この近海には遠征艦隊もいますから彼女らに助けを求めれば最悪いいでしょう』
まあそんな事ないでしょうが、と夕張が付け加える。
本当に大丈夫だろうか?
『見えてきましたよ』
その言葉を聞き妖精さんたちが慌ただしく準備し始める。
私も気持ちを切り替え、艤装を確認していく。
機関は問題なし、右肩と腰の主砲も問題なし。
そうこうしていると肉眼でも敵艦が見えてきた。
イ級が二隻
どうやら情報に間違いはないらしい。
私はそのことに安堵しつつも一抹の不安を抱えながら戦闘を開始した。
何でこんなことに、砲撃戦のなか木曽の頭の中に疑問が浮かんでいた。
普通の遠征任務のはずだった。
それなのになぜ?なぜ自分は沈み掛けている?
答えは簡単だ。
任務の途中でル級flagshipを主力とした深海棲艦の艦隊に遭遇したから、そして他の艦娘を逃がすために自分がおとりになったからだ。
艦隊の中では自分が一番戦闘力があった、他はまだ改にもなっていない駆逐艦ばかりだった、だから自分は迷わずおとりになった。
だから自分は沈み掛けている。
・・・なんで今更になってこんな事を自分は考えているんだ。
自分で決めたことだ、他の奴らを逃がすために自分がおとりになる。
そう決めたはずだ。
「決めたはずなのになんで俺はっ!」
木曽のそんな思考は敵の砲撃によって打ち切られた。
砲撃が命中したことで木曽は吹き飛ばされ水面を転がった。
「はぁ・・・はぁ・・・うっ」
木曽は何とか片膝をつきながら立ち上がったが、その姿は満身創痍であった。
主砲は機能を失い、体の所々が焦げつき肩で息をしながら左手で脇腹を抑えている。
その姿に深海棲艦は脅威を感じておらず、ル級以外はもはや動いてすらいなかった。
だがル級はゆっくりと木曽に近づいていった。
木曽は近づいてくる、ル級に対して反撃しようとしたが魚雷は撃ち尽くし、主砲も機能を停止していた。
最後の頼みである体も損耗しつくし、震えるだけで全く動かない。
それを見てル級は薄ら笑いを浮かべながら、更に近づいてくる。
木曽の頭の中を無力感と恐怖が支配していくなか木曽は自分が疑問を感じった理由を悟った。
「俺は沈みたくなかったんだ・・・」
どれだけ気取っても沈むのは怖い、しかも何か戦果を残すでもなく、何もなせず沈んでゆく。
怖くない訳が無かったんだ。
木曽のそんな思考はル級が目の前で主砲を構えたことで、終わりを迎えた。
あと数秒で自分は沈む、最後に思うのは球磨型の姉たち、仲のいい天龍、そして提督・・・
走馬灯のように浮かぶ親しい者たちの顔、その中につい最近の物があった。
近くを通り過ぎようとした時にいきなり頭を抑えて、声を掛けても無視してそそくさと行ってしまった艦娘。
半年ほど前に陽炎が拾った問題艦。
確か名前は
「不知火・・・」
その瞬間ル級が砲撃する・・はずだった。
ル級の砲撃は小さな爆発音によってさいぎられた。
ル級と木曽が目を見開き驚愕しながら爆発音の方向を向けば
「大丈夫ですか?」
主砲を深海棲艦達に向ける不知火の姿があった。
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