さて、状況を整理しよう。
目の前には討伐対象であるファングウルフの死体。
そしてそれに食らいついてるドラゴン。
そしてそんな光景に腰が抜けている俺。
ドラゴンの赤い目がグルン、とこちらを睨む。
翼には赤い炎の様なものを纏い、グルグルと渦巻いているようにも見える。
口からでた息にはまるで瘴気のようなものがあるのではないか?と錯覚するほどに、空気が重い。
そこで問題だ!この状況からどうやって逃げ出すか?
3択の中からひとつだけ選びなさい
答え①聡明である俺は突如逃走のアイデアがひらめく
答え②人が来て助けてくれる
答え③逃げられない。現実は非情である
答えは…
④の爆弾即投げ&即逃げじゃボケ!!!
あ~~!もうムリもうムリ!!なんでドラゴンがこんなところに居るんだ!目撃情報もなけりゃ討伐依頼だって出されてなかっただろうが!?しかもクソデケェ!こんな時は身体強化して逃げ足を早くするしかねぇ!あってよかったサポート魔法!派手さはねぇけど!うおおお!!!逃げろ逃げろ!逃げなきゃ死ぬぞ!
「ゼェ…ゼェ……グッ、フゥ…」
…あっ…ぶねぇ…!なんとか逃げきれた…!今だけはサポート魔法あってよかった思うぜ…てかあの大きさのドラゴン攻撃したのマズかったか…?!
いやまあそうしないと逃げれなかったけど…
とりあえずギルドに報告だな…ファングウルフ狩れなかったし…少し足取りが重いな…それにあの大きさのドラゴンのこともどう報告すりゃ……
そんなこんなで俺はギルドの受付嬢であるメリイさんに報告をしているわけなのだが…
「……は?ドラゴン?……馬鹿も休み休み言ってください…ファングウルフの討伐はできなかった、でいいんですね?」
信じてもらえなかったわ。いや普通そうなんだけどな。でもここで引いちまったらここにも被害出ちまうかもだからな…どうにかして説得するしかない。
「いや本当なんだって…!せめて調査くらいしてくれねぇか?!あのデカさのヤツが街に来たらと思うと夜も眠れねぇよ!」
「本当にドラゴンがいて貴方が遭遇したというのなら何故無傷なんです?装備に大した傷もないようですし…」
「いや…それは…」
そうなのだ。本来、ドラゴンと遭遇したら無傷で逃げ帰ることなんてできないのだ。俺の場合はサポート魔法で身体を強化したうえに爆弾で怯ませたから逃げ切れたが……普通は身体欠損なんて当たり前な状況だろう。いやホント無傷でよかった…!
…ってそんなことは今はいいんだ!とにかくドラゴンのことを信じてもらわねぇ…と……
「騒がしいな…どうかしたのか?」
「アレイさん…」
「ギルマスぅ!!」
「うるさいぞスロウ…なんだ?初めての任務が失敗したのか?」
この人はギルドマスターことアレイさん、フルネームは知らん。スゴく強いらしく、昔は数々の難関任務をこなしていたらしい。全冒険者の憧れといっても過言ではないが経歴に反して結構気さくな人だ。あととにかく筋肉がスゴい。
「いえ…スロウさんが任務中にドラゴンが出た…と報告しまして…」
「…ドラゴンだと?本当なのか?スロウ」
ギルマスも半信半疑って感じだなぁ……いやまぁしょうがないけど…とにかく言い続ければなんとかなるか…
「あぁ!マジなんだよ!ギルマス!こんくらいのでっけぇドラゴンがいたんだ!」
「…どのくらいかは理解できなかったがよっぽとデカいのは分かった。」
ヨシ!あとは信じてもらうだけ…
「ところでだ……スロウ、お前は竜種の…ドラゴンとワイバーンの違いは理解しているな?」
「…?あぁ、もちろん」
ドラゴンとワイバーンの明確な違いは大きさと属性現象が起きているかである。大きさはデカけりゃドラゴン、小さければワイバーン、っていう曖昧なものだが…属性現象ってのは例えば赤いドラゴンなら炎が周囲に発生しているか、青いヤツなら水が、黄色いヤツなら電気が……と簡単にいえばなんか強そうなエフェクトが出てるか、みたいなもんだ。
その点でいえばさっきの竜は確実に炎を纏っていたからドラゴンだな。さすが俺の観察眼だ……確信持ててよかったぜ。
「ならその脅威度の違いも理解しているよな?」
「あぁ、当たり前だ。歴戦の冒険者何十人で討伐するようなヤツなんだよな」
というかなんでさっきからギルマスは当たり前のことを……?
「ならその報告が間違っていたときのコトの重大さも、合っていた時のコトの深刻さも理解しているな?」
あぁ…そういうことか…。
多分ギルマスは、お前のその報告はトンでもない事態であり、もし本当じゃなかったら冒険者としての信頼に関わるぞ。と暗に伝えてくれているのだろう。
おそらくだが嘘なら撤回の機会を、本当ならそれを言いふらすな、という意味だろう。それくらいドラゴンってのは重いからな。
「あぁ、バッチリだ。」
ギルマスと目を合わせる。あのこちらを見透かすような目……怖すぎ…俺じゃなきゃ小便漏らしてたね……
「……分かった、あとで調査隊を派遣して必要に応じて討伐隊を組んでおこう。場所はどのくらいか分かるか?」
「え?あの、アレイさん?」
流石だぜギルマス!切り替えが早すぎる!惚れちまいそうだぜ!いやまぁギルマス奥さんいるけど。
「おう!場所はロークの森の大体…」
「いやあのちょっと?」
メリイさんがなんか急に喋りかけてきた。なんだよ今忙しい時だってのに……
「どうした?メリイ…」
「そうっすよ今大事なコトを話してるんすよ」
「いやどうしたもなにも仕事の邪魔なんで裏で話してくれません?遠くで任務の報告したい人の列ができてるんで」
「「…………あ」」
いや、まぁうん。忙しい時でも配慮は忘れちゃ駄目だよな。
「い、いやしかしこちらも急ぐ必要が……」
食い下がるのかギルマス?!此処は引くべき場所だと思うぞ?!二つの意味で!!
「……いいからさっさとどけよ」
「…はい……すいませんでした…」
ギルマス弱ぇ!いやメリイさんが強いのか?!
「……とりあえず、裏で話すか…スロウ…」
「あ、ウス」
一つだけ言えるのはとりあえずアレだな、うん。
ドラゴンより強い女の人の方が男からしたら怖ぇわ……
メリイっていう名前……いいよね…好き…