デート・ア・ライブーー交わる無垢と冥暗   作:RASっさん

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変わった再会

 高度一万五〇〇〇メートル上空。天宮市を見下ろすように飛行している〈フラクシナス〉の転移装置に一人の女の子が現れる。

 

 彼女が目を開くと、SFチックな飛行戦艦内部のパイプや前線が歓迎していた。

 その真新しさに思わずポカンとしていると、近くの扉が開き、一人の女性が彼女の所向かって来た。

 

 外見からして二十歳、軍服らしき服を纏っている。目にある分厚い隈や、少し青白い肌から健康面を心配してしまう様相だが、本人も特に気にすることなく彼女へ話しかけて来た。

 

「…………ん。君が今日からここで働いてくれる医療官、件解析官の八雲みたまで間違いないかな?」

 

「えぇ、よろしくお願いします……とは言っても確定はしていないけれど。仮採用ってところかしらぁ……それで、貴方は?」

 

 みたまはそう言いながら女性官に手を出した。相手も表情をあまり変えないで手を握る。

 

「……ここで解析官をやっている、村雨令音だ。解析官に関しては君の上司になるのかな……早速だけど、君に紹介したい人がいる」

 

 そう言いながら令音は先ほど入って来た扉へ向かう。みたまも特に何も言わず後を追った。

 

『調整屋』が天宮市に店を構えることになったのは、様々な組織から雇用、基脅迫じみた連絡が来ていたからだ。〈ラタトスク〉もその一つである。

 

 本来、『調整屋』は中立の立場であり、何処かの組織へ偏ったバックアップはしない。あくまでも自身の利益のために動いている存在だった。

 

 しかしこの組織に仮採用というライン越えギリギリを攻めているのも、この地区に引っ越して来てしまった時点で情が働いてしまったのは侑に想像できる。

 

 それもこれも、独自の情報収集で得た彼の存在だからなのだが……

 

「……それで? 今日は士道君……五河士道が精霊と初めて真っ当なコンタクトを取るって聞いているのだけど?」

「ああ、そうだね。君には迷惑をかけてしまったかもしれないが……何せ、精霊の現界は予測が難しくてね」

「別にいいわぁ……丁度お客さんも居なかったから」

 

 さも繁盛中に隙間時間を見つけられた言い方をしているが、『調整屋』は基本暇だ。常連さんもせいぜい週一程度で、スケジュール表はまばらであったりする。

 

 だが、そんな事を隠すみたまの問いに令音は深く詮索もせずに続けた。

 

「彼のバックアップをするのが私たち〈ラタトスク〉の役割になる……君にも力の限りで彼を支えて欲しいね」

「どうかしらねぇ……正直、精霊という強力な存在にただの人が生き残れるとは思えないのだけど?」

「……彼の特異性は君なら特に理解しているとは思うがね」

「それもそうねぇ……」

 

 みたまは知っている。初めて出会ったあの日から、彼を”診た”あの日から、彼女はこの計画の信憑性を重々理解している。

 

 だからこそ僅かな希望を抱いてしまった。もしかして彼が助けられるのかもしれない、と。

 

「着いたよ」

 

 令音の声で気付けば、新しい扉まで到着していた。流れる動作で扉を開けたら、先ほどとは一変した光景が目の前に現れる。

 

(……ここが司令室ね……確かに雰囲気は良好ね。精霊の好感度や霊力の波形を解析しているわ)

 

 パソコンのスクリーンには様々な精霊のデータが映し出されており、全てに好感度やステータスなどの解析がされていることに気づいた。

 わかっていたことだが、全ての精霊は世界に対する好感度が低い。そこを士道を入れることで解決しようという手だろう。

 

 そして中央の艦長席には一人の女の子が座っていた。そばには金髪、長髪の男が立っていた。

 ……何故か脇腹を抑えながら息を荒くしていたが、みたまを見ると会釈を交わしてきた。

 

(……個性の一つということにしましょう)

 

 見事なポーカーフェイスで返しながら、少女の方に目を移す。

 真紅の軍服を肩掛けした彼女は大きな黒いリボンをツインテールにくくりつけており、口にはチュッパチャップスをくらえている。

 

 側から見ればただのごっこ遊びの範疇にしか思えないが、みたまにはその彼女が司令で間違いないと断言できた。

 

「貴方が新しい助っ人の八雲みたまね。ようこそ、〈ラタトスク〉へ」

 

「えぇ、よろしくお願いします……(本当に司令を務めているのね……確かに納得しちゃうわ)」

 

 言葉を交わすことで確信する。小柄な彼女の内にあるカリスマを、覚悟を。

 少なくとも今の〈ラタトスク〉への印象はみたまの目には強固なものとして写っていた。このチームなら喜んで手を貸してもいい。

 

 ……後は彼がどのように動けるかどうかだ。

 

「えっ……みたまさん!?」

 

 琴里の側で立っていた彼はみたまの目を見るや否やぽかんと口を開いている。彼女の兄にしては、情けない姿に見えるが、これも彼らしいと言えよう。

 見る限り不安が耐えきれないが、実際にどうなるかは今日証明される。

 

 全ては貴方次第よ、五河士道君……勝手に期待させてもらうわねぇ。

 

 彼自身も知ることのない期待を抱え、みたまはいつもの調子で応えるのだった。

 

「こんにちは、士道君〜……この度〈ラタトスク〉へ出張して来ました、『調整屋』さんで〜す♪」

 

 

 

 

 

 ◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯

 

 

 

 

 

 呆然、その言葉が最も似合う顔をしていた士道を一瞥しつつ、彼の妹であり、司令でもある琴里が口を開いた。

 

「何よ、二人は既に知り合いなの?」

 

「ああ……近くで『調整屋』を開いてて……」

 

「そう。そして彼は内の常連さんなのよ〜」

 

 二人の関係はその程度のはずであった。一体誰がその『調整屋』が精霊の解決までに手を出していると考えよう。

 そもそも、いつから知っていたのか? もしかして士道が相談する前から彼女は知っていた……? 

 

 未だに整理がつかない士道をよそに、みたまは琴里の方に興味が湧いているようだ。

 彼女の椅子の前まで来ると、まじまじを観察を始めた。

 

「貴方が琴里ちゃんねぇ〜……彼からは度々聞いていたけど、本当に可愛い女の子ねぇ」

 

「っ!? ……士道、私のことどんな紹介しているのよ!」

 

「ふふっ、毎回彼に完璧な締め技をしていて驚いているわぁ……商売人としては、彼が来てくれる回数が増えて嬉しいけれど♪」

 

「っ〜〜〜〜〜!!」

 

「司令! 是非その絞め技をお願いしてもげふッ」

 

「豚語以外喋らないと言ったでしょう? あんたにはこれで十分よ!」

 

 開始早々、兄への愛情の絞め技を暴露されて音もでない声を出す琴里に、やっぱり可愛いとみたまは感じた。

 

 

 ……少し寂しさも感じながら。

 

 

 それでもしっかりと副司令の神無月に脛蹴りからの罵倒が入っているのを見るに、家と仕事の切り替えが上手くできていると驚いていた。

 

 そして彼の妹を揶揄いすぎたと思いつつ、士道へと振り向く。ようやくことの整理が落ち着いた彼に謝りながら、ことの説明をしたのだった。

 

「ごめんなさいねぇ〜、士道君の事情は実は殆ど知っていたりしたのよ。ここの仕事である程度の情報はもらっていたから」

 

「そうだったんですね……それでも、乗ってくれてありがとうございます」

 

「いいわよぉ、お客さんには精一杯サービスしちゃうものよ?」

 

 あの相談会も、みたまの善意でやってくれたことは疑いようのない事実と承知していた。

 多分、士道の状況を案じてくれたのも本当なのだろう。

 

 そう思い、のほほんと終えた彼女に感謝しつつ、士道は目の前の任務に集中することにした。

 それは琴里も同じであり、椅子に座り直しながら確認を始める。

 

「切り替えていきましょう……士道、インカムは外してないわね?」

 

「ああ」

 

 士道はそう言い耳元のインカムを触る。

 

「よろしい。カメラも一緒に送るから、困った時はサインして、インカムを二回小突いてちょうだい」

 

「ん……了解した。でもなあ……」

 

 士道は半目になって持ち場へ戻っていた令音に視線を送る。思い出されるのは訓練の時のサポート……実践訓練として何人かの先生、生徒へ告白をしたのだが──

 

 一人は危うく結婚ルートへ進もうとして、もう一人はホテル直行ルートへ……

 

 正直彼女だけでは対応できるとは思えない。そんな思考を察した琴里は笑みを浮かべて返した。

 

「安心なさい士道。〈フラクシナス〉クルーには頼もしい人材がいっぱいよ」

 

「そ、そうなのか?」

 

 その言葉に士道のみならず、みたまも静かに耳を傾けていた。 

 正直、これはみたまも疑問に思っていたことだ。彼のサポートメンバーの能力はしっかり”診て”いないから。

 琴理が上着をバサッと翻して立ち上がり、艦橋下段のクルーの1人をビシッと指差す。

 

「たとえば、5度の結婚を経験した恋愛マスター・〈早過ぎた倦怠期(バッドマリッジ)〉川越!」

 

「いやそれ4回は離婚してるってことだよな!?」

(……恋愛のベテランさんねぇ。最後の一歩で躓いちゃうタイプってとことかしらぁ?)

 

 

「夜のお店のフィリピーナに絶大な人気を誇る、〈社長(シャチョサン)〉幹本!」

 

「それ完全に金の魅力だろ!?」

(……お店の常連さんにしたいところねぇ)

 

 

「恋のライバルに次々と不幸が。午前二時の女・〈藁人形(ネイルノッカー)〉椎崎!」

 

「絶対呪いかけてるだろそれ!」

(呪いは調整でなんとかなるかしら? 気になるわねぇ……)

 

 

「100人の嫁を持つ男・〈次元を越える者(ディメンション・ブレイカー)〉中津川!」

 

「ちゃんとz軸のある嫁だろうな!?」

(次元を超え……分野別で彼と考えれば……)

 

 

「その愛の深さゆえに、今や法律で愛する彼の半径500メートル以内に近づけなくなった女・〈保護観察処分(ディープラヴ)〉箕輪!」

 

「なんでそんな奴らばっかなんだよ!」

 

 

「……令音さん?」

 

「……皆、クルーとしての腕は確かなんだ」

 

 上から視線を感じ取った令音の呟きに流石のみたまも顔が引き攣った。士道自身のバックアップは少し心もとないらしい。全員の恋愛状況があまりにも偏りすぎている。

 もしかして自分が呼ばれたのも、常識人枠として? そんなことまで頭によぎった。

 

 ……いよいよ士道の出番だ。艦橋のドアに足を向けた指導が最後に振り向くと、琴里やみたまが見送ってくれていた。

 

「頑張ってねぇ〜」

 

「グッドラック」

 

「おう」

 

 ニコニコと手を振る『調整屋』さんと、親指を立ててくる妹に軽く手を返す士道はまだ世界を救うなど大きな事は考えられていなかった。

 

 今の彼は……あの女の子ともう一度話してみたい。そんな想いを抱いていた。




やっとだ…次回から十香が参戦だ
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