負けヒロイン、即ち死 作:獅子志士姫
春。柔らかな風桜を揺らし、散り落ちる花弁が鮮やかな軌跡を描いて空を舞う。
足元に落ちた何枚もの花弁を踏み締め、俺…いや、
学園都市と銘打っているだけあって、巨大な校舎はこの距離では全貌を見ることも出来ない。
その圧巻の景色に感動を覚えるものは、オレ同様に新入生と思わしき者たちであった。
しばらく歩き、学園の入り口の門がすぐそばにまで近づいて来た所でオレは歩を止める。
後ろを振り向き、視界に真新しい制服に身を包んだ生徒が映る。
門を通り抜ける生徒の邪魔にならないよう、桜の並木の立つ道の端に移動し、腰をおろす。目の前を通る生徒一人一人の顔を、逃さず確認をする。
_黒髪短髪中肉中背のパッとしない男、黒髪短髪中肉中背のパッとしない男、黒髪…
心の中で何度も
しかし、現代日本の高校に通う生徒の中で、たった一人の没個性と形容できる人物を見つけることは至難の業だ。
多くの生徒が過ぎ去ること十数分。
「…っ!来た!」
春の日差しが誘う眠気が、一気に吹き飛ぶ。目当ての男の姿が目に映った。
立ち上がり、右腕から左腕、制服の着こなしに問題が無いことを確認する。前髪を整え、心の中で用意したセリフを呟く。
「いける…いける!」
恥を捨てろ。そんなものは十年前に置いて来た!
深呼吸の後、大きく一歩を踏み出し、目当ての男子生徒の前に勢いよく飛び出した。
ダンっ、地面から乾いた煉瓦の音が響いた。オレの両足がヤツの、
驚いた表情でこちらを見つめる主人公、そしてその隣を歩く同じく黒髪の美少女。
オレはその二人に向かって右手を顔に、左手をその下に通すようにして、昨日考えた渾身の
「ふ、ふははは!彷徨う輪廻の末、
ひゅう、と風の切る音がやけに大きく聞こえた。
まるで時が止まったかのように動きを一斉に止める生徒たち。
これは…静寂?
…いやああああああああああああああああああああ!!!!
見ないでぇぇぇぇぇ!
あああああああああああああああああああ、メッッッチャ人見てるぅぅぅ!?辺りにすごい人居るぅぅ!
突然のオレの純度100の厨二病ムーブを見て、固まる周囲の人々、苦笑いの主人公。
周囲からの視線が、凍えるように刺してきた。
しかしオレは、なるべく強い覇気でその場に構え続けた。
そう、これは覚悟の物語だ。
死ぬほど恥ずかしい
そして何より、
誓いの物語である。
そしてその物語がすでに想定外な方向に進んでることに気づくのは、もう少し後の出来事である。