負けヒロイン、即ち死   作:獅子志士姫

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ゆうかわ せいか1

 

チューリプぐみ ゆうかわ せいか

ひみつのにっきです。みないでね。みたらのろいます。ゆるしません。

 

せいかとのやくそくです。

 

〜〜〜〜〜

 

○月×日

 

ようやく何か書けるものを握っても疑われない年齢になったため、今日から駄々をこねて買ってもらったこの日記帳に、情報整理も兼ねて日記を記していこうと思う。

 

まず第一に、オレは死んだらしい。

らしい、と表現するのは、人伝に聞いた話だからだ。人というより、神にだけど。

ライトノベルとかでよくある、神様による転生だ。

 

子供の頃から病気で寝込んでいた事ばかりで、医者からも長く無いことを告げられた身だった。

いつか死ぬのだろうと自覚しながら、毎週母から差し入れられる週刊の漫画雑誌だけが楽しみの人生であった。

 

そんな俺は、目が覚めると全く見知らぬ白い空間で直立していた。

状況が飲み込めない中、神を自称するソイツから話された内容は大きく分けて三つ。

 

・一つ、俺は元の世界で既に亡くなってる事。

これに関しては前述のとおりで、話によるとやはり病気で逝ったらしい。

特に苦痛や痛みの記憶は無かったから、死んだという自覚は薄いが、今こうやって大きな鉛筆を使って、力加減も曖昧なまま拙い文字を綴ってるのがいい根拠だろう。

 

・一つ、神はそんな俺に他の世界に条件付き(・・・・)で新しい人生を歩ませてくれる事。

これについては、正直な話ありがたいとすら思ってる。

唐突に意味のわからない話を話す自称神に好感は持てないが、幸い今世の体に今の所異常は確認できず、久しく疲れるまで走り回ることができた時には少し涙もした。

そう、感謝をしたいのだ。一点を除いて(・・・・・・)

 

・一つ、俺はこの世界の勝ちヒロイン(・・・・・・)にならないと、死ぬ(・・)

この点に関して、現状、意味がわからないが、その言葉が本当であれば何かしらの対策を講じなければいけない。

どうやら、俺が転生したこの世界は、生前俺が愛読していた週刊漫画雑誌に掲載中の『蒼焔の星(せいえんのほし)』であった。

詳しい設定とか、俺の記憶にある限りしか思い出せないけど大筋や世界観は覚えている。

 

本作は学園青春×魔法バトルをテーマとした週刊漫画である。テーマとして独自性があるか否かを論じる前に、圧倒的な画力と王道的で読み応えのあるストーリー、何より、主人公含む魅力的なキャラクターの描写が人気な作品であった。

 

人気投票が毎回異常な盛り上がりを起こすのも、キャラクターグッズの商品化となればすぐさま売り切れとなる程、ファンから根強い人気を持つキャラクターたちが多いからだ。

 

学園がテーマということで、当時まともに学校に通ってなかった俺も、物語の舞台である蒼聖煌(せいせいこう)学園とその生徒たちの様子に胸躍り、気づけば推しキャラについてインターネットで語るほどのファンになっていた。

で、そんな憧れの世界に転生して何がヤバいか。

 

魔法という超越的な能力を持つ人間がいることでもなく、将来的に蒼聖煌学園が国の存続を賭けた戦いの舞台になることでも、俺がその登場人物として生まれたわけでも無い。

それらは特別大した問題にはならない。なぜなら、『蒼焔の星』の連載は最終のその最奥、物語完結まであと一話という場面まで連載が完了しているからだ。

ドラマ溢れる熱いバトルも、ハラハラと目の離せない絶望的なシチュエーションも、全て主人公が解決し、残すは学園青春バトルのうち、“青春”だけとなっているからだ。

 

俺の前世の記憶が正しければ、次号は主要ヒロインたちの中から一人を選ぶという、ファンからしたら世紀の一大イベントで、ネットの様子も荒れに荒れていたはずだ。

 

つまり、俺からすればこの世界は俺が何も干渉しなくても勝手に救われるし、俺は原作知識を活かして自分だけが危険に晒されないよう生き延びればいいのだ。

 

では何が問題か。

答えは単純、条件により俺が死ぬ事が確定してる点(・・・・・・・・・・・・)だ。

 

この世界に転生する際、自称神が提示した条件は一つ、「この世界のヒロインとして最愛の者になる事」であった。

勝ちヒロイン。定義はいろいろあるのだろうが、大体の認識は、物語の中で数多く登場するヒロインの中から主人公や読者の心を奪い、見事パートナーに殿堂入りするヒロインのことだ。

 

つまり、自称神は転生と引き換えに俺にこのヒロインの座を奪い取る事を要求してきたのだ。

詰んだ。はい、終わりです。

 

なんならこの世界を救うため、敵組織を壊滅させるとか、むしろ主人公を倒すとか、その方がよっぽど現実味あったね。

結論から書こう、この世界のヒロイン強すぎ。

 

『蒼焔の星』における人気投票では、上位四位を毎回埋めている不動の人気キャラがいる。

五位と四位の投票数には劇的な開きがあり、しかしその訳にも納得できるのだ。

 

読者たちは彼女らを蒼焔ヒロイン四天王(俺の推し)と呼んだ…。

はい、現実逃避です。でも嘘は書いてません。

 

この作品には四人のヒロインが存在する。最終話目前にしてネットが大荒れしたのも、彼女らの人気故だろう。

個性豊かな彼女らはその魅力で多くの読者を虜にしたし、俺もその一人だった。

 

そして俺はそんな彼女らを押し退け、たった一つのヒロイン(正妻)の座を手にする必要がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無理じゃね?

 

 

〜覚えてる範囲の原作知識〜

忘れないようにメモる。

 

『蒼焔の星』…この世界。割と前世の時代と離れていない。しかも俺がいるのは日本。

 

『蒼聖煌学園』…国内最高峰の、魔法能力者の育成を目的にした学園都市。原作では特異体質の主人公が特に詳しい描写もなく普通に入学してたけど、入るための難易度がバカみたいに高いヤベェところ。原作の舞台だし、ヒロインたちとの出会いも大体ここ。もしかしたら俺も入る必要があるのではと気づいて驚愕してる。凹む。

 

『魔法』…超能力みたいな、そんなやつ。原作だと主にバトルとかに使用されてたけど、この世界だとエネルギー生成とか、軍事開発とか、魔法警察とか、いろいろな組織とかライフラインに重宝されてる。でも才能あるやつしかバトルとか出来ない。もう少しで俺もこの魔法適性?の診断を受けに行くらしい。適性なかったら凹む。

 

秋楽 仁(しゅうらく じん)』…この世界の主人公。闇魔法って言うこの世界で三人しか持ってない魔法の適性を持つ主人公。原作序盤の蒼聖煌入学時は水魔法の適性しか持ってないみたいな設定だったはず。でも、蒼聖煌に入れてる時点で地味に水魔法の練度も高かったはず。なんで後天的の闇に目覚めたかは、設定が難しくて忘れちった。俺が将来的にこいつを惚れさせないといけないらしい。無理では?

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