負けヒロイン、即ち死 作:獅子志士姫
○がつ▲にち
きょうは、おかあさんといっしょにおかいものにいきました。
ほしかったにんじんを、おかあさんがかいわすれてたので、おしえてあげたらとてもほめられました。
これからもおてつだいを、がんばりたいです。
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○月▲日
本日も忙しない幼児として穏やかな日々を送った。
今世の、少し気の抜けている母さんと、頼りのない父さんに囲まれ、挨拶したり、自発的に手伝いを行うだけで褒められる生活は、なかなか自尊心を高めてくれる。
しかし、この状況に慣れ、身も心も退行させる訳にはいかないのだ。
日記を綴る事数日、少しずつだが、俺がヒロインレースを駆け上がるための障害に幾つか気付いた。
まず、前提として俺が純粋な魅力で勝負をする場合だ。これでは負ける。
俺の容姿は、前世よりは優れている気はするが、とてもじゃないが原作で数々の名シーンを彩った彼女たちメインヒロインのそれには及ばないだろう。
主人公の心を掴むため、容姿が全てだとは思わないが、彼女たちはまた快い性格の持ち主でもある。一癖あれど、魅力的と言う範囲からは逸れないレベルでだ。
従って、俺がどれだけ性格や趣味、仕草を主人公好みに変えたとしても、同様に内面まで整った彼女たちと同じ土俵に並べば当然、
そして、まだこの世界であった事はないが、彼女たちと
ならば、どうするべきか。
ここ数日はそのことに気付いてからは、食事中も、寝る時ですらこの事で頭を悩ませていた。
なんやかんやこの世界で日々が経過してもう五年は経っているのだ。
原作の記憶が薄れないうちに解決策を見つける必要があるのだが。
まだ明快な回答は出せないままである。
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○がつ□にち
さいきん、おとうさんのおしごとがたいへんになってることをききました。
おかあさんも、おしごとのじかんがながくて、おるすばんがおおいです。
いつもがんばってるおかあさんとおとうさんに、かんしゃです。
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○月□日
ここ最近、母さんと父さんが忙しい様子である。
今世の両親は
無論、文字通りそんなそこらの幼児とは年季が違う俺は、一人での時間があってもそこまで問題がある訳でもない。
しかし、俺が転生者であることも、精神年齢が二十歳を超えてる事も知らない二人はこの状況をよく思ってないらしい。
俺を一人きりにしてる事に対する罪悪感からか、ここ数日間は時間を見つけて母さんが俺に構ってくれる。
よく話を聞いてくれたり、逆に母さんの身の回りにあった出来事の話などだ。
しかし、今日は突然日記の話をされて、中身を見られることになった。
慌ててフェイクの日記の部分だけを見せたが、もちろん母さんは俺が日記をつけてることを知ってるため、毎日身も心も幼女になりきって日記をつける必要がありそうだ。
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○がつ×にち
きょうは、おかあさんと、おとうさんからひっこすことをいわれました。
わたしは、とうきょうにいくようです。
とうきょうについたら、あたらしいおともだちにあえるようです。
たのしみです。
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○月×日
きょうは、違う違う
今日は母さん達から知らせがあった。父さんの職場が都心に近いらしく、母さんの職場の距離も考えつつ、来月引っ越す事になるらしい。
ついでに、そこ付近にある保育園に俺を預けることにもなったようだ。
下見はもうすでに行ってるらしく、俺の入園は確定してるらしい。
東京か。『蒼焔の星』の舞台である蒼聖煌学園も東京に設立された高校であったはずだ。
原作に突入する前に、ある程度学園の下見とかもしてみたいところだ。
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▲がつΔにち
もうすぐ、このおへやともおわかれです。
すこしさびしいけど、とうきょうにはもっとたのしいところがあるとおもいます。
あっちで、いろんなひとにあいたいとおもいます。
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▲月Δ日
閃いた!
俺がヒロインとして勝ち上がる一筋のサーキット!
今日、なんとなく日記を見返していて気付いたことがある。そしてそれこそが、今の俺のための最適解だった。
そう、やはり俺が彼女ら原作ヒロインズを超えることは不可。
彼女達の魅力は計り知れず、それは目の前に
しかし、乗り越えられないのならば、その壁をどうにか撤去してしまえば良いのだ!
そう、魅力あふれる彼女達の裏には、大きな影が張っているのだ。
ありがちな展開だろう。容姿端麗で才気溢れるあの子がもつコンプレックスとか。
その特異な生い立ちから家族からも敬遠され、今まで仲の良い友人などいなかった私。
これから先も誰とも関わらず、孤立無縁な生活を送っていくのね…
そんな中!颯爽と現れた主人公!
主人公特有の
これを喰らった人間関係が希薄なヒロインちゃんは
「な、何よこいつ、いきなり」→「でもまぁ、少し、悪く無いかも…。」→「初めての友達…」→「す、好き(小声)」
みたいなさぁ!!
あ、これもしかしなくても
とにかく、このように、恋愛もの定番のヒロインが抱える黒い過去に、それを取り払う主人公。
この構図は恋愛ものにはありがちとも言えるだろう。
『蒼焔の星』も恋愛作品として看板を掲げるだけあって、この例に漏れず、警戒すべき四天王のうち二人はこんな感じだ。
このタイプで主人公に惚れたヒロインは手強い。
なにしろ、自分にとって主人公は完全に白馬の王子様。抗えぬ運命を感じてしまい、その分主人公に対する恋心も比例して増幅する。
恋する乙女は手強いとはこの事。さらに、その候補がこの世界には二人もいるのだ。
これを放置しては勝ち目は薄い。そう、放置すればね。
逆に考えれば、これらのフラグをへし折りさえすれば、その脅威も恋心に比例して減少していくのだ。
そうつまり、俺の考える
名付けて『フラグ撲滅!強制一択恋愛シュミレーション作戦』である。
か、完璧だ…。自分が恐ろしい…。
前提として主人公を奪り合うライバルという構図、これらを破壊すれば俺の勝利は必然…。
あー、勝っちゃったね。はい、映画化決定。
見てるか?自称神さーん?あなたの仕掛けた戯れとやら、終わっちゃいそうですけどw
よーし、詳しい作戦は明日から立てていくかぁ。
いやー、気分がいいぜ!
■□■□
暗い地下施設、不気味な淡い紫色の光が無機質な廊下を照らしていた。
少しして、何人もの人間が足音と共に廊下を駆けていった。
「おい!侵入者は居たか!」
黒いガスマスク。それに全身を覆うのもまた黒である。
素材は見慣れぬ光沢を放っており、それら同じ衣装で身を固めた全身黒色人間が
ライフル、サブマシンガン、ショットガン…一目で危険物と判断できるそれら銃火器に、一振りの淡い光を放つビームサーベルのような剣。
そういう、
「い、いえ!こちらも特に見当たりません!」
見た目こそ同じであるが、若い男の声が先ほど叫んだ黒マスクと反対から響く。
二つの集団は、廊下の中心で向かい合うようにして足を止めた。
その瞬間、リーダーと思われる男のインカムに通信の声が聞こえた。情報班からのもののようだ。
男は、怒りで震える手で耳元のボタンを押し、報告に耳を澄ませる。
「こちらA班、ただいまB班と合流した。ヤツは見つかってねぇ。」
『…了解、こちらモニター、火薬庫付近での爆破及び、
怒りの温度が、熱を伝って上昇するようであった。男は了解と低い声で通信を切ると、その場で拳を握りしめた。
「くそっ…何処に行きやがったあのクソ野郎…今度こそぶっ殺してやる!!」
ガンっ、その音に何名かの黒マスクがびくりと体を驚きに震わせる。
男が、壁を殴りつけた音だ。
「おい!武器庫に形跡ありだ、ヤツを始末しにいくぞ!」
明らかに熱意の高い男に動揺しながらも、他の黒マスクもその場を去る男に続く。
しばらくして、マスク武装集団の走る音が遠くなった廊下、その上部でひしめき合う鉄パイプの上、その怒りの熱意に震える者が
「ひ、ひぇぇぇ…。」
どうして、こんな目に…と。
そして至るであろう。
『フラグ撲滅!強制一択恋愛シュミレーション作戦』という己が付けた
幽川星華は奮闘する、ただ一つの椅子に向けて。
〜覚えてる範囲の原作知識〜
忘れないようにメモる
『
『