負けヒロイン、即ち死 作:獅子志士姫
▲がつ◇にち
きょうはおうちでひとりあそびました。
おそとにあそびにいきたいけど、なれないばしょでひとりはあぶないと、おかあさんにいわれました。
あしたからは、ほいくえんです。
おともだちを、いっぱいつくりたいです。
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▲月◇日
厨二病カワイイ系ヒロインに、俺はなる!(ドンっ!)
はい、どうも先日から厨二病ヒロインとして生きていくことを決めた一般転生者です。
いやー、なかなか名案だと思いますね。
ある程度個性があり、可愛らしさもあり、何より俺がやり切れそうなキャラクター性だ。
まぁ、こんな意味不明なキャラ付けにするのにも理由がある。
というのも、今世は女性として生まれたのだが、あまり乙女として過ごせる自信がないからだ。
なんというか、趣味嗜好や物事の感性が前世のまま、つまり男としての精神が残っているのだ。
将来的に男である主人公のヒロイン、つまり恋人になる事が必要である、そんな状況で男の精神を持っていて大丈夫なのかという不安点もあるが。
まぁ、俺主人公の事どちらかと言うと好きだったし、いけるでしょ。
精神が肉体に引っ張られると言う可能性もまだある。どうしようも無いことを考えていてもどうしようも無いので、この問題は先送りにしよう。
さて、そんな外見は女の子、中身は男の俺が演じれるキャラクターを模索した結果が厨二病キャラだ。
前世見たアニメや漫画にもそう言った可愛らしいキャラクターが居たはずだ。前世の俺が急に深淵を覗き込み始めてもただの思春期継続中の小僧であるが、今世の俺ならば可愛らしいの範疇で収まる深淵の覗き込み方を披露できるはずだ。
それにこの世界、一般人の皮を被ったサイコパスとか、強者との戦闘のために右腕を差し出す戦闘サイコパスとかが普通にいるし、ちょっと発言が痛々しい少女くらい、むしろ没個性に近いくらいだろう。
なんかいける気がしてきたな。厨二病は前世の俺が既に通過した地点だ。そのノウハウを活かして完璧な厨二病具合を表現できるはずだ。
よし!丁度いいし、明日行く保育園で軽く予行演習と行くか!
でも、保育園児が言いそうな厨二台詞ってなんだろうか。明日までに考えて、今日は寝よう。
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▲がつ+にち
ききようは、ほいくえんに、いきました、
たくあんのおともだちにあえてよかった。
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▲月+日
主人公たちが居た
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流れ出るエンジンの音を響かせながら赤に変わった信号に動きを止める、車の音だ。運転席でハンドルを握る彼女は、初めての登園に向けて娘を後部座席に乗せて移動していた。朝の東京郊外はどことなく爽やかな雰囲気と、それを忘れさせる程の車で溢れかえっていた。
彼女、
「東京、混むわね〜。」
忙しない街の風景とは対照的に、彼女の声はのびやかで緩やかであった。
気の抜けて穏やかな人、幽川星華は彼女をそう評価したが、それは正しく、彼女の言動からはその一片を感じ取ることができた。
そしてその評価を下した張本人は、後部座席でちょこんと座り、その場で俯いていた。
「お友達、出来るといいね星華ちゃん?」
長い間ひとりで過ごすことが多く、ある意味放置気味であった自身の娘に対して彼女は話しかけた。
星華はよくできた娘であった。彼女が自分の娘になって以来約四年と半分ほど。季節は秋であった。泣き出し、花蓮の手を煩わせることも、我儘を言い両親の時間を奪う事も無い、花蓮はおよそ予測していた子育てでの障害をあまり感じることが無かった。
唯一、星華が物をねだった事があるとすれば、それは日記帳とペンだけであった。
テレビに放送されていたドラマにでも影響されたのか、星華はある日唐突にそれを求めた。
小学生にも満たない幼児が要求するには些か高尚すぎる物であったが、星華は教えたひらがなや語彙たちを驚くほど早く飲み込んでいたため、花蓮やその夫はあまり疑問には思わず、むしろ初めての星華へのプレゼントに喜ぶ親心があった。
さて、物覚えもよく粗相も起こさない星華はよくできた娘であった。しかし、そんな星華にも懸念点があった。
それは、対人関係だ。それも、同世代に対するものが欲しかった。
両親が共働きである関係上、親戚の大人に預けることや、家の中に一人で放置することも多かった。これは一般的な教育観点から見ても由々しき事態であり、この解決と、それに付随した星華の「お友達」の確保をする必要性のため、遅いながら住居の転移を機に、娘を保育園へ通わせることを決意したのだ。
「うん」
そんな想いで娘に問いかけた花蓮の声に、星華はそう答えた。生返事である。
この幼女、見た目は真面目でおとなしそうな少女。母親に似た深みのある茶髪に、それらの要素に押し潰されないだけのはっきりとした容姿を持っていた。
傍目に将来可愛らしい姿が想像される少女、しかし本人はこの世界有数の美少女四人と比べているため、この時点で容姿に敗北を感じてるのであった。
そんな星華は車両の中である一つのことにずっと悩んでいた。
_園児に相応しい厨二病って、なんだ?
この少女、
幽川星華は転生者である。その前世の経験から幼児レベルの問題に悩むことは無かった。自制心を持ち、理性的に思考し行動する姿は誰の姿から見ても秀でた物だったろう。
しかし、その優秀さは前世の経験や知識からである。幼少期で必要な知識など多くも難しくも無く。星華は問題の突破を繰り返してきた。
逆に考えれば、前世にて経験してないことには弱いのだ。
幽川星華が持っていない経験や知識とは、即ち対人経験であった。
幼い頃から虚弱な体質であった彼女の前世には同世代との関わりが薄く、故に会話も少なかった。
それ故この世界の原典『蒼焔の星』に登場するキャラクターたちの関わりに深く興味を示したのだ。
(高笑いから入るか?それとも意味深な台詞で印象を強める…あえてミステリアスな方が…。)
そんな彼女は気づかない、一般園児は厨二病的で怪奇な言い回しを理解できない事を。
自己紹介の場でそのような発言をしても多くのものは頭上に疑問符を浮かべ、彼女の
そしてこれから彼女に訪れる幸とも不幸とも捉えられる出会いのことも。
信号の色が赤から緑へと変わる。
大量の車が動きを再開させ、花蓮もそのアクセルに足を落とす。
全ては加速する、幽川星華を連れて。
車は保育園へと進み出した。
_____
チューリップの模様。それが窓ガラスの上についており、明るいピンクや黄色の色が建物の色を彩っていた。
「じゃあ、星華ちゃん!今日の朝の会で自己紹介するから、みんなが集まるまでここで待っててね。」
元気の良い保育士の一人にそう言われたことを思い出しながら、星華は扉の側で控えていた。
自分はチューリップ組であるらしい。この保育園では花の種類によってクラス分けされることも同時に星華は理解した。
園児の元気の良い声が扉越しに聞こえる。自分が入る時にはこの扉から先ほどの保育士が現れ、自分の入るタイミングを指示する。
それまでの待機時間だが、自分と同世代の園児たちの声が彼女を冷静にする時間へと変えた。それは、怯えでもあった。
_あれ?よくよく考えたら俺厨二病になる必要ある?むしろ今やっても違和感じゃない?
ようやく気づいた
各ヒロインに打ち勝つための強力な個性。それを考えて得た結論が厨二病キャラであった。
しかし、本当に厨二病キャラでやっていけるのか、襲いかかる大量の羞恥に自分が耐えれるのか。
気づくのにかかった時間の長さは、星華の対人経験の少なさからであった。
しかしこの世界で生き残るためにキャラクター性は大切である。そのためなら多少の羞恥に耐えれると踏んだ星華であったが、彼女の挑戦する厨二病はただの
そしてその難易度は彼女の想定より高い。故に気づく、厨二病キャラのリスクに。
しかし、幽川星華は焦らない。なぜなら彼女はこの想定に至ると同時にもう一つの結論に至ったのだ。
所詮、保育園での少しの期間だ、と。
星華が本日から通うこの保育園は、彼女の年齢から考えて一年と少し。ならば、ここは嫌われるリスクを取ってでも厨二病キャラを演じるのもアリであろうと。
主人公と出会うまでに他の属性も検証。小学校、中学と併せて環境の変化は何度かある。それまでに模索するのが賢いのではと。
仮に主人公とファーストコンタクトをいずれかの個性で行なってしまったら、その個性で貫く必要がある。キャラクターがころころと変わるのは魅力云々以前に不安定である。
故にその初対面の時までに熟成させればいい。
勝った。星華は勝利を確信した。
それと同時に目の前の扉は開く。先の保育士の女性も現れる。
「はい、じゃあ、今からみんなに新しいお友達を紹介するよー!…よし、行こっか星華ちゃん。」
部屋内部に星華の登場を予告した彼女に従うよう、星華は堂々とした表情で教室に歩く。ドヤ顔だ。
急にドヤ顔を浮かべる目の前の少女に保育士は困惑する、今からとびきりの厨二病ムーブを披露することも知らずに。
ガラッ、カン、カンカン。意味もなく扉を大きく開けて歩を進める星華。彼女は憑依型の役者だ。心は完全に深淵の闇に呑まれた勇士。
注目の頂点、立ち入った教室で一番目立つであろう部屋の正面に立つと、彼女は徐に目を閉じ、一つ深呼吸。
そして心の中で復唱する、とびきりの台詞を。
_フハハ。オレは
八割型、いや、園児たちには全く理解できない単語の羅列。
というより、この少女自己紹介のはずが自身の名前は一切明かさないという暴挙に出るらしい。
しかし、もうこの少女を止めれる者はいなかった。
謎の自信に満ち溢れる星華は衝動のまま、右手を顔に、左手もその右腕の下に潜り込ませるよう交差させる…彼女の考えた渾身の厨二病ポーズだ。
誰も予測できなかった星華のパフォーマンスに、園児は純粋に意味がわからず、見守る保育士はその意味不明な行動に先ほどまでの笑みを落として真顔であった。
そんな全てを置き去って、時は来てしまった。
星華は勢いよく声に出した。
「フハハハハ。オレは
明るく、底抜けた声が場にこだました。
しかし、目の前に訪れた“想定外“な光景に星華は思考が止まり、意味わからない口上に園児たちは首をひねり、保育士は重なる意味不明な光景に口を開けて呆けて、遅刻してきたであろう
しかし、幽川星華には一つだけ分かったことがある。
「あれ?あなた、だぁれ?難しいこと言ってたから先生だと思ったけど。仁知ってる?」
小首を傾げ、可愛らしく尋ねる少女に、それに応える黒髪短髪の少年。
どこかで見覚えがある光景であった。
「えー、わかんないけど…ほら、先生が言ってた、新しく来る子って言ってた気がする。」
困惑しながらも元気よく尋ねる少女に、仁と呼ばれた少年は答えた。
幽川星華には一つだけ分かったことがある。それは…。
「あー!君が新しいお友達かぁ!ねね、よろしくね!私、
この二人が、己の運命を大きく狂わせる存在になる事、それと。
「あ…えと、星華。オレ、
自分は厨二病として生きるその
〜覚えてる範囲の原作知識〜
忘れないようにメモる
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