負けヒロイン、即ち死 作:夜行練習電車予行中
一年一くみ ゆう川 星か
ひみつの日記です。見ないでね。
見たらのろいます。許しません。
星かとの約束です。
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□月○日
今日は入学しきがありました。
お友達の仁くんと、ひいろちゃんも体いくかんにいました。
明日から小学校せいかつです。
がんばりたいです。
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□月○日
今日から俺の第二の小学校生活が始まった。
と言っても、前世ではこの時期から病院で過ごす事が増えたから、俺にとっては新鮮だ。
小学生になるのを機に、今日から日記帳を変えてみた。
記念すべき初日ということで、これまでの俺が転生してからの出来事を整理していきたいと思う。
幼少期に関して、保育園に通うまでは大した出来事はなかった。
普通の子供として普通に過ごしていただけだった。
それまで、あまりに暇ですることがなかったから日記に記す事を決めたんだったか。
そこから俺のヒロイン対策を前の日記で練ったり、覚えてる原作知識を書き留めたりしていった。
まぁ、ここまでは順調(当社比)だったな。
問題は俺が東京に越してから、つまり主人公もとい
想定外が過ぎたね。ほんとに。
あれからの日々は地獄だったぜぇ…。ほんと、なんで厨二病なんてキャラに舵を切ったんだよ…風呂上がりの俺ぇ。
過ぎたことを悔いても仕方がない。それからはむしろこの機会を好機に変えるべく積極的に仁たちと行動を共にしたんだったな。
詳しく何があったかとか、自分の厨二言動に悶えてる前の日記はトラウマレベルだからもう見たくないから詳しく覚えてないけど、なかなか仁と仲良くなれたのではと勝手に思ってる。
園内では常に仁とあと飛彩と過ごすことが多かった。当然この二人と過ごす上で俺はいちいち格好つけた台詞を話す必要がある訳だ。これが一番辛かったが、その甲斐あってか原作知識だけでは知り得なかった情報を得た。
それは、飛彩と仁が思ってるより仲がいいということだ!
全然役に立たないね。むしろ危機感増すだけだったわ。
一応、同年代にしては奇妙な話し方をする友達として仁に印象付けることには成功したが、それ以上に仁と飛彩の仲が深いのだ。
家が隣という関係は、強い。
そのことが嫌というほど分かった。まだ小学生低学年という年齢であるから本人たちの間に恋愛意識などは皆無なのだろうが、それでも彼らの関係は結びつきが強く、今後障壁となることは間違い無いだろう。
休日には隣の家に移動して一緒に遊び、隣り合い眠り、二人きりで楽しく過ごすと飛彩の口から聞いたことがある。
もうお家デートやん。俺が「あれ?そもそも友達とどうやって過ごせばいいの?」とかヒロインレースに全く関係ないところで悩んでた時にもうカップルみたいな領域に行ってんじゃん。
まだ幼いながらに可愛い美少女が常に隣にいる状況。俺だったら惚れて中学あたりで告白して振られてたね。
俺もその話を聞いてから慌てて仁と飛彩を休日には連れ回すようにした。
こうすることで俺という不純物を混ぜ、二人の思い出を薄く濁らせるという、人道的に終わってる対策だ。効果があるかは知らない。
このように、俺はこの一年ちょいの期間で飛彩のヒロイン力の高さに幼いながらに驚愕し、あの手この手で妨害した訳だが。
これ以上後手に回るのは不味い。折角主人公の仁の少年時代を身近で過ごしているのだ。ここからは飛彩に劣らない俺のヒロイン力を見せつけていく必要がある。
付け入る隙は見当がついてる。それは彼らの間に恋愛的関係が明確に浮かんで無い点だ。
確かにお互いによく知る相手であるし、好きでもあるだろう。しかしそれは幼馴染としての範疇を抜けない。
確か俺が確認した範囲では、まだ仁と飛彩のプロポーズイベントは踏んで無いっぽい。
つまり、仁の初恋枠はまだ残ってるということだ!
隙は、今しかねぇ!なんとか俺の前世知識をフル活用して仁の初恋を奪うのだ。
ほら、小さい頃に近所のお姉ちゃんにときめいちゃうアレ!近過ぎないからこそ生じるチャンスをものにするのだ。
その肝心な方法が、全く浮かばないんですけどね。
第一、俺の厨二病言動が邪魔してとてもじゃないがキュンキュンするシチュエーションにならない。
誰だよ、厨二病キャラにしようとか言い出したやつ。俺だわ。凹む。
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□月■日
今日は一くみのお友達と会いました。
知らないお友達がいっぱいでしたが、ひいろちゃんがいっしょで心づよかったです。
いろんなお友達をつくりたいです。
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□月■日
今日は一応初めての登校となった。道は事前に母さんと確認していたから問題なかったが、俺にとって大事なのは正しい道のりでは無い、仁との接触時間が増える道のりだ。
ただでさえ時間的遅れを被ってるのだ。ここから取り戻さなくてはいけない。
学校では一組に配属され、初めての顔合わせとなった。
仁は三組らしく教室には居なかったが、代わりに飛彩がおり、嬉しそうな様子で俺の席まで話しかけにきてくれた。
違う、君じゃない。
それと今回の自己紹介は反省を活かし抑えめな厨二としました。
詳しくは省くが、俺の「みんなと仲良くしたい(意訳)」という意思はクラスメイトには伝わったようで良かった。疑心な目を向ける担任なんていなかった。いいね?
最近いい事かはわからないが厨二病の役が自然とできるようになってる。地味に成長だ。
しかし同時に話す度に感じる羞恥心を伴うこの痛み、成長痛かな。
あと、今週末は病院に行って検査を受けるらしい。
あー、なんか忘れてることがあったような…思い出せん。
大事なことだった気がするが、思い出し次第この日記に書くとしよう。
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□月$日
今日はびょういんに行きました。
まほうのけんさでした。
わたしは火をつかえるらしいです。
うれしくて、ぽろぽろ涙が落ちてしまいました。
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□月$日
マズイ、マズイですよ!!
完っっ全に忘れてた!魔法!まじっく!
ああああ!なにヒロインレースとか真面目に考えてんだよ!今までの自分全て殴り飛ばしたい!
そもそも蒼聖煌学園に入れるかすら怪しいじゃねぇか!
やばい。今日病院で検査受けて、お医者さんが「次魔法検査しますよ」とか言って採血し始めた時点で嫌な予感がしていた。
その瞬間、忘れてた事を思い出して、そして検査結果を見ると同時に絶望しました。
俺、魔法の才能無いらしい。
なんだよ、Dって、最高ランクが何か聞いたらAらしい。ゴミやん。
家帰って、母さんの目を盗んで調べたら蒼聖煌学園に入学する生徒はB以上の生徒が八割らしい。
さすが日本トップの魔法教育施設ですねぇ!クソが!!
や、やばい。そもそも俺自分が舞台の上にいる前提で書いてたけど、マズイですよ!
な、何か考えなくては…俺のDを覆す方法を。
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□月○日
今日はまほうのおべんきょうをしました。
まほうはすごくきちょうなぎじゅつで、少ない人しか持ってないらしいです。
仁くんとひいろちゃんは少ない人らしく、くらすのヒーローでした。
わたしもがんばりたいです。
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□月○日
気持ちを整えました。どうも、一般才能なし転生者です。
昨日は取り乱したが、冷静に考えてみたところ、やはりヤバいと結論に至った。
何も解決してねぇじゃねぇか。
俺の『フラグ撲滅計画』では中学生時点で既に魔法で無双出来るレベルまで成長してる予定だったんだけど。
マズイ、もうフラグ折るとか言ってるレベルじゃねぇ。
今日だって授業の一環で魔法科学の授業になったのだが、もちろん高い適性を持ちその上白魔法とか言うレア属性の魔法適性を持つ飛彩はクラスの生徒たちから注目の的だった。飛彩さんマジ強すぎ問題。
飛彩ほどでないが、水魔法の適性がBであった仁もクラスで魔法の話になると話題の中心になるらしい。漫画では魔法能力での高度なバトルが当たり前のように繰り広げられてたけど、この世界基準だとC以下の適性の人がほとんどで、Aは一握りの人間のみなのだ。
なぜ俺はその一握りになれると錯覚していたのか。この世界を理解してるという全能感からの傲慢か油断か。
どちらにせよ、これからは知ってることと侮らずにしなくては。
とりあえず、『フラグ撲滅計画』は一時停止。当面の目的としては二つ。
・魔法
・中学生になるまでに戦闘可能なレベルにする
この二点だろうか。
前点に関しては、まぁあまりやりたくないが
これは原作突入したら最低限身を守るための魔法を使った戦闘ができるようになる必要があるのだが。
それとは別に、前に考えたハイラちゃんのフラグを折るためにも必要なのだ。
あー、無双できる前提で考えてたからこの作戦もやり遂げられるか不安だ…原作始まる前に
戦闘訓練…とにかく、この肉体年齢で本格的な戦闘は難しそうだ。
まずは魔法適性の方をなんとかするか。
よし、善は急げだ。今日から開始するか、
□■□■
サイレンの音が一頻り鳴り終え、現場は通報を受けて出動した警察官により立ち入り禁止のテープが引かれ、その黄色のテープの向こうでは鑑識の職員が何名か作業を行っているのが見えるだろう。
男は気怠げに首にかけていた自分の右手を下ろし、これまた気怠そうにため息を吐いた。
「ちょっと、そこまで嫌そうな反応しないでくださいよ。こっちまで嫌気さすじゃ無いですか。」
その男の横に立つスーツ姿の女性がそんな男に小言を吐く。
横目で女性の姿を確認した男は、もう一度ため息を吐くと、現場の方向へと歩を進めた。
「へいへい、気をつけますよっと。」
「あ!ちょっと!」
置いてかれた女性も遅れて小走りで男の後ろを追いかける。
横一直線に引かれたテープを一歩、大きく踏み越えて男はその中に入る。
近くにいた鑑識が男に気付き、そして男の腕に同僚の証がないことを確認して訝しげな表情を浮かべる。
「あのー、関係者以外の方は立ち入りを控えていただくようお願いしているのですが。警察の方でしょうか?」
何も言わず入ったのだ、当然の反応である。
男は胸ポッケとから自分の手帳を取り出しその中身を開いて見せる。
「警視庁から来た。
その男の顔写真の下、
何度も見た反応だ。男はその顔が自分たちを煙たがる表情だと知っていた。
「対魔課の、私が
男の後ろから現れた女性、葵は言葉足らずな神坂の補足をするように話した。
魔法による火災被害。言葉を聞いた鑑識の職員と思われる男が後ろを振り返り、焼け焦げ半壊した建物を見上げた。
「魔法電化に乗り遅れたタイプの廃ビルか?」
神坂の発言に男は頷いて答えた。
「えぇ。何年か前爆発的に増えた旧式の建物です。付近の住人が火事の確認をして、警察と消防に連絡。消火活動が終わり現在調査を行ってますが…。」
「魔法による出火、もしくは魔装兵器の確認がされましたか?」
もの鬱気に話す職員に対して言い当てるように葵が答えた。
ため息を吐く、職員のものだ。
「はい、そのようです。今回も魔法使用の形跡が見られました。それも、連日起きてる類似事件の魔力波が一致してます。」
その言葉に男がため息をまた吐く。今度は神坂のものだ。
葵と神坂は、自然と顔を見合わせた。
「ま、
仮面。特定の人物を指す言葉に葵も頷いた。
「仮面…いい加減にしてもらいたいですね。」
さて、どこから調べれば良いものか。
二人がビルの方へ視線を移して考えてると、鑑識の男が声をかけた。
「あの、捜査の助けになるかは不明ですが。現場からこれらが。」
そう言うと、鑑識の男は持ってきた写真を神坂に受け渡す。
葵も見えるよう、写真を持つ手を少し下げて見る。
「これは…これ、写真にあるだけか?」
神坂の問いに鑑識は答える。
「まだ確認できてる範囲だけですが、これと同じものが二箇所ほどで確認できてます。」
その言葉に神坂は顔を顰める。
写真には五丁のライフルが写し出されていた。
「…これ、
葵の言葉に神坂は視線を写真に向けたまま答える。
「詳しくは何とも言えんが、俺が見たやつと似ている。」
ありがとう。写真を受け取った職員に礼を告げると神坂はビルの方へ歩き出した。
「まだ何とも言えん、中を調べてから結論づけるぞ。だが、もしこの事件に関連性があり、ヤツらにこのレベルの破壊を行える魔法能力者がいるのなら…」
風が吹き、神坂のコートが揺れてその下に隠された
「そん時は、東京が火の海になるぞ。」
今月に入り、神坂が仮面と赫に関する事件の現場に入ったのは、今日で五回目であった。
〜覚えてる範囲の原作知識〜
忘れないようにメモる
『魔法適性』…F〜Aの間でつけられる魔力量の格付け。どうやらこれは生まれつきで決まるとされてるらしく、遺伝性など謎が多いらしい。ま、俺は原作知識でこれの上げ方知ってるけど。けど。やりたくありません。でもやる必要があるらしいです。くそ。あと、魔力量は属性ごとに別で、大体の人は魔力量が多くても一つの属性のみしか持たない。稀に二つの属性を併せ持つタイプもいるらしい。そして紫苑パイセンはこれを気合いで後天的に全属性手に入れた。努力の化け物。
『魔力欠乏訓練』…紫苑パイセンが編み出した後天的に適性を上げるための訓練方法。ぶっちゃけ魔法適性は魔力量の多さで決まるので、この訓練方法は魔力量をぶち上げる方法です。やり方は極めて簡単、魔力量がすっからかんになるまで使い果たす。これを繰り返す。するとあら不思議、魔力量が少しづつ増えますわ!すごい!簡単!くそが。