ジョジョの奇妙な冒険〜プロジェクトセカイ〜 作:エターナルロード
あれが鳳えむかぁ……
まだぁ……スタンドには目覚めてないぃ……ようだぁ……
パッキ・ユーの情報にあったぁ……
朝比奈……まふゆぅ……も……いるようだなぁ……
感情を矢で植え付ける能力ぅ……
あはぁん……強力ぅ……だけど……
二人まとめてぇ……ぼ、ぼ、ぼくのぉ……
スタンドでぇ……ズタズタにしてやるぅぅ……!
宮女 放課後
「〜〜♪ 〜〜♪」
鳳えむは今日も今日とてワンダーステージへ向かう。
が、今日はいつになく気分が良い。
…………正確には先週あたり、ずばり朝比奈まふゆに自身が何らかの“能力者”であるという事実を聞かされた日からである。スタンド使いだっただろうか。
彼女の〈ジャックポット・サッド・ガール〉というものを見てからというもの、ワクワクが止まらない。
自分にはどのような能力が目覚めるのか?
確か彼女はスタンドと呼んでいた。
鳳えむにとって、それは楽しみで楽しみでしょうがないことであったのだ。
しかし、そんなウキウキ気分を一瞬で吹き飛ばされてしまう……
シダァァン!!
「痛っ……!」
突然、何かムチのようなもので叩かれた感覚に襲われる。
「ふえっ? なになにっ?」
彼女もこれには驚き、笑顔が消える。
すると突然、先程自身を叩いたであろうたくさんの、”触手”のようなモノが、一斉にこちらに向かってきたのだ。
「うえぇぇぇ!!!???」
何が起こったんだろう? あれはなんだろう? 今何をされたんだろう?
そんな思考すら浮かばず、彼女がとった行動はたった一つ。
「うわあああああぁぁぁ!!!」
逃亡。それもそうだ。
純粋無垢な女子高生が得体の知れないものに攻撃されたのだ。当然の行動だ。
「えへあへっ……こうして追い詰めていくだけぇ……けけきくっ……かんたんなぁ……お仕事だなぁ……うへうへ……」
高慢。
「た、た、たすけて〜〜〜〜!!!!」
そう叫びながら自慢の運動神経と体力で逃げていく鳳えむ。
もはや学校の事なども頭になく、ただひたすらに走ってきた。
スタンドの事も今ので考える余裕もなくなった。
「あれっ!? あれれ!!??」
そして気づく。
「私、どこに来ちゃったんだろう……」
完全に迷ってしまったようだ。
周りに人はいない。
昼だというのに、暗い空気の漂う路地だ。
えむのような明るい娘は立ち入らないし、そもそも似合わない場所だ。
シダァァン!! シダァァン!! シダァァン!!
ムチのような音が聴こえてくる。
戸惑っていたら、ついに追いつかれてしまったようだ。
背中からたくさんの触手が生えている男が近づいてきた。
「ひぃぃっ…………!!」
「追い付いたぞぉ……おおとりえむぅ……きさまをぉ……抹殺っ!! …………するぅ……」
「ど、どうしてですか……」
涙目で質問をしてくるえむに男は困惑する。
「しつもん、出来るくらいにはまだ余裕なのかぁ……いい度胸だなぁ…………?」
「ひっ……! ご、ごめんなさいぃ!!」
「まぁいい……ころすぅ……ころすぞぉ……」
シュンッ!!!
触手の一本が向かってくる。
「わわっ!」
ギリギリで避ける。
流石の身体能力と反射神経、いや、第六感といったところだろうか。
しかし……
シュンッ!! シュンッ!! シュンッ!!
さらに多くの触手がえむを仕留めようと跳んでくる。
「僕のぉ……スタンドであるこの触手たちは時速180kmだぁ……!! さっきは外したが…………たっくさん当たればぁ……絶対にぃ………………しぬぅぅ!!!」
「ほっ! てやっ! うわわっ!!」
だがこれらも素早く避ける。
その上まだ体力もあるようだ。
「ぎぐぐ……ちょこまかとぉ……よけたりとんだりうんざりだっ!!! こうしてやるぅ!!」
シュンッ!! シュンッ!! シュンッ!! シュンッ!!
新たに向かってきた触手達は一斉にバラけた。
「ええっ!?」
ガシッ! ガシッ! ガシッ! ガシッ!
これも避けようとしたが、それらはえむの四肢を掴んだ。
跳んで避けようとしたのが失敗だった。
一瞬の無防備になる瞬間を掴まれてしまったのだ。
「これでぇぇ!! キサマは動けなィィ!! こうしてぇ……こうだっ!!」
シュッ!
一本の触手が真っ直ぐに跳んできた。
そして……
「ん゛っ……! げ、えほっ……! けほっ……! いたい……」
えむの腹部に
そして彼女は途端に抵抗力を失ってしまった。
(なんだぁ……? おしまいかぁ……おしまいだなぁ……つまらんなぁ……ほんとに、ほんとうに、つまらんなぁ……ならぁ……)
あっけない結果にガッカリした男はトドメを刺そうとする。
「しねぇぇ!!」
「ふっ……!」
(いやっ……まだっ……)
えむから涙が溢れたその時だった。
ガシッ!
「なにぃぃ……?」
「へっ……?」
それは、それらは、宙に浮いているように見えた。
男にも、えむにも、ハッキリと見えていた。
触手を掴む、二本の腕を。
「これ……もしかして……」
えむは天性の適応力で理解する。
男も、状況から分析し、察した。
「こ、こ、こいつぅ……このタイミングでぇ……す、す、スタンドに目覚めたなぁ…………!!!」
「てえぇりゃあぁ!!」
えむの叫び声と共に腕は大きく振り下ろされた。
「げふぅ……!」
触手を攻撃されたことで男にもダメージがいく。
当然だ。この触手達が男のスタンドなのだから。
(ぎぐっ……! 中々のパワーだぁ……とってもおおきく強いわけじゃあないがぁ……中々の中々だぁ……)
「うりゃああ!!!」
触手が一瞬離れた隙に、今度は男に向かってラッシュを放つ。
男は攻撃を触手で防ぐが……
ドゴォ! ドゴォ! ドゴォ!
「ぎふぅ……!!」
本体へのダメージは少なくなるが、ダメージを受ける事には何ら変わりない。
(こいつぅ……! もうスタンドを制御できやがるぅうぅ……! お、おかしぃだろぉ……! だがぁ……)
シュンッ! シュンッ!
ガシッ! ガシッ!
「っ……!」
「まだ能力も発現してなあいぃ……覚醒途中ぅぅ……ってやつだぁ……腕さえ掴んでしまえばぁぁ……? さっきとおんなじだなぁ…………なぁ……? なぁ……?!」
「い、いやっ……!」
彼女の抵抗も虚しく、触手がさらに跳んでくる。
シュッ! シュッ!
一回だけではない。同じ攻撃が次々に跳んでくる。
「ぐふっ……! いたい……あがっ……! いたいよぉ……」
「きふきふきふっ……ここでお前を痛めつけるのもぉぉとてもっ! いいがぁ……こぉろぉすぅ……」
シュンッ!
今度はえむの頭に跳んでくる。
「いやっ…………!」
ようやくだったのに、もうダメか、その時だった。
「が、がはっ……!!! い、いた、いたぁいぃ!!」
「へ……?」
えむは困惑する。
予想していた痛みがこない。
突如、触手の男が悶え始める。
倒れた男の後ろで弓を構えているその人は、もっとも会いたかった人物だった。
「鳳さん」
「っ……!!!」
「助けに来た」
「せ、せんぱぁぁぁい!!!!」
朝比奈まふゆの登場だ。
「どぉ……してだぁ……? なぜ鳳えむが、お、お、襲われているとわかったぁ……?」
朝比奈まふゆは、冷たい目で静かに告げる。
「鳳さんの悲鳴が聞こえた。何かあったと思った。でも最初はただ叫んでるだけだと思った。鳳さんはいつも叫ぶくらい元気だから。でも、鳳さんを見つけた時、後ろにあなたがいた。背中からたくさんの触手を生やしているあなたが。それで、試しに打ち込んでみたのそしたら…………」
「…………??」
「“高慢”」
「なにぃぃ……?」
「あなたから得た感情よ。間違いなく、あなたは悪。そう感じとることが出来たわ」
「ぎぐぎぐぐぎぃぃ……」
「あさひなせんぱあぁぁぁいぃぃ!!!」
「鳳さん。大丈夫?」
「こわかったよおぉぉ!!」
大泣きだ。まるで子供のように。
「うん。もう大丈夫。私が助ける」
正義感に溢れたようなセリフをまふゆが喋ったとなったら、ニーゴのメンバー(特に絵名)が仰天するに違いないだろう。
「なぁめるなよぉ…………! 僕のスタンドにぃ……かぁてると思うなぁ……!!!」
(あら、私も舐められたくはないわね)
「うん。じゃあいくよ。ジャックポット・サッド・ガール。聞かせて、心臓のビートを」
(ええ。楽しみましょう)
「か、カッコいい!!! ☆」
「鳳さん。私はこの男の相手をするけど、攻撃がとんでくるかもしれないから、それはスタンドを使って防いでほしい」
「は、はいぃ!」
「おまえらまとめてぇ…………ぶ、ぶ、ころすぅっ!!」
始まったのは触手も拳の打ち合いだった。
無数の触手と2本の腕の激しい攻防である。
ジャックポット・サッド・ガールの近距離形態はまふゆも完全に制御出来るようになった。
そう難しい事ではなかった。
「心臓のビートを聞かせて」
この合言葉のようなものを唱えれば自ら形態変化してくれるのだ。
ドゴォッ! ドゴォッ! ドゴォッ!
銃が撃たれたような音が鳴り響いているが、実際危険なのはこっちではなかった。
ガシッ! ドゴォッ!
「ほっ! てやっ! とうっ! わんだほーいっ!!」
言われた通りに、時々こぼれ出てくる攻撃を掴んではいなしたり、避けたりする鳳えむ。
強力な味方が付いた事で、今は完全に楽しんでいる。
「はぁ……ふぅ…………」
「ひへっ……もう、もう、おつかれなのかぁ……?」
「っ……!」
無理も無い。既に10分以上戦っている。
例えスタンドが殴っているとしても、疲れるものは疲れるのだ。
「なぁらぁ…………こうだなぁ……」
シュンッ!
また触手たちがとんでくる。
しかしどれもまふゆも狙っていない。
「っ! 鳳さんっ!」
「うわあっ!」
えむも防ごうとはするが、2本の腕だけでは流石に何本も防ぐことは出来ない。
「危ないっ!」
まふゆがえむの前に立ち、庇おうとした。
しかし…………
触手たちは、まふゆ、ジャックポット・サッド・ガールの四肢を掴んだのだ。
「っ……! これ、は」
(まさ、か)
「うしし、まんまとひっか、ひっか、引っかかったなぁ…………お前が庇う事はよそう、予測していたぁ……狙いはお前だよぉ……朝比奈まふゆぅぅ…………!!」
「朝比奈先輩っ!!」
「っ…………」
触手は、捕えたまふゆを男の方に引き寄せている。
そして今、完全に男本体の方に取り押さえられた。
「う──ーん…………いい、おんなだぁ……おれは、あんまりっ! 女に興味ないがぁ……いい女だってのは、わ、かるぅ…………おっぱい、も、これ、大きいぃ……」
「……………………」
「だが、どうでもいい……どうせ、死ぬ……鳳えむぅっ!!」
「はっ……はい……」
「選べっ!! お前が死ぬかっ!! この女が死ぬかだぁ!! 選ばれた方、の、頭を俺のスタンドでふっ飛ばすっ!」
「ひっ……ひっく……やだ、やだよぉ……」
「選べぇっ! お前のたかが腕だけのスタンドじゃぁ……この女を助ける事もできないだようがよぉ…………!!!」
「で、でも……」
(私、どうすればいいの……? こんなに、怖いよ、全然、気持ちがわんだほいになれなくて……先輩……司くん……皆……どうしよう……)
「鳳さん」
「っ……!」
人質になっているにも関わらず、ひどく冷静なまふゆが真っ直ぐな目で語りかけてくる。
「あなたはいつも元気で、ちょっと図々しい。でも、それが周りの皆に色んなものを与えてる。笑顔や、勇気や、心を……鳳さん。あなたは何でも出来る。あなたのような人が、出来ないって思ったことは少ない筈。信じて」
「っ……!」
その時、鳳えむの中で何か決意が固まったようだ。
「朝比奈先輩……私、やりますっ!」
「感動的ぃぃ……な、シーンはもういらねぇんだよぉ…………!! お前が先に死ねぇぇ!!」
まふゆを捕えていない触手の全てがえむに向かう。
シュンッ! シュンッ! シュンッ! シュンッ! シュンッ!
しかし……
ドゴォォォォォォッ!!!
「ぎふっ……!」
その全てがえむのスタンドの腕により弾かれた。
が、
「むむむぅぅ……?? いたく、ねぇ……」
安堵よりも困惑が先に来た男だが、次の瞬間、目に入った光景にその感情も吹き飛ぶ。
「わんだほーい…………だね☆」
鳳えむは笑みを浮かべている。
いつもの、元気と明るさに満ちた、あの笑顔だ。
しかし男の目を引いたのはそちらではない。
先程まで腕であったそれだ。
全身が多彩なバルーンで出来ているようで、人型ながら、熊のような造形をしている、そいつ。
瞬時、男は理解する。
あいつは覚醒した、と。
そう、これこそが、鳳えむのスタンド。
名づけて………………
「ワンス・アポン・ア・ドリーム…………」
この夢に、覚める暇などない。