ジョジョの奇妙な冒険〜プロジェクトセカイ〜   作:エターナルロード

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7.覚める暇もなく

 あれが鳳えむかぁ……

 

 まだぁ……スタンドには目覚めてないぃ……ようだぁ……

 

 パッキ・ユーの情報にあったぁ……

 

 朝比奈……まふゆぅ……も……いるようだなぁ……

 

 感情を矢で植え付ける能力ぅ……

 

 あはぁん……強力ぅ……だけど……

 

 二人まとめてぇ……ぼ、ぼ、ぼくのぉ……

 

 スタンドでぇ……ズタズタにしてやるぅぅ……! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 宮女 放課後

 

「〜〜♪ 〜〜♪」

 鳳えむは今日も今日とてワンダーステージへ向かう。

 が、今日はいつになく気分が良い。

 …………正確には先週あたり、ずばり朝比奈まふゆに自身が何らかの“能力者”であるという事実を聞かされた日からである。スタンド使いだっただろうか。

 彼女の〈ジャックポット・サッド・ガール〉というものを見てからというもの、ワクワクが止まらない。

 自分にはどのような能力が目覚めるのか? 

 確か彼女はスタンドと呼んでいた。

 鳳えむにとって、それは楽しみで楽しみでしょうがないことであったのだ。

 

 しかし、そんなウキウキ気分を一瞬で吹き飛ばされてしまう……

 

 シダァァン!! 

「痛っ……!」

 

 突然、何かムチのようなもので叩かれた感覚に襲われる。

 

「ふえっ? なになにっ?」

 彼女もこれには驚き、笑顔が消える。

 

 すると突然、先程自身を叩いたであろうたくさんの、”触手”のようなモノが、一斉にこちらに向かってきたのだ。

 

「うえぇぇぇ!!!???」

 

 何が起こったんだろう? あれはなんだろう? 今何をされたんだろう? 

 そんな思考すら浮かばず、彼女がとった行動はたった一つ。

 

「うわあああああぁぁぁ!!!」

 逃亡。それもそうだ。

 純粋無垢な女子高生が得体の知れないものに攻撃されたのだ。当然の行動だ。

 

「えへあへっ……こうして追い詰めていくだけぇ……けけきくっ……かんたんなぁ……お仕事だなぁ……うへうへ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 高慢。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「た、た、たすけて〜〜〜〜!!!!」

 そう叫びながら自慢の運動神経と体力で逃げていく鳳えむ。

 もはや学校の事なども頭になく、ただひたすらに走ってきた。

 スタンドの事も今ので考える余裕もなくなった。

 

「あれっ!? あれれ!!??」

 そして気づく。

「私、どこに来ちゃったんだろう……」

 完全に迷ってしまったようだ。

 周りに人はいない。

 昼だというのに、暗い空気の漂う路地だ。

 えむのような明るい娘は立ち入らないし、そもそも似合わない場所だ。

 

 シダァァン!! シダァァン!! シダァァン!! 

 

 ムチのような音が聴こえてくる。

 戸惑っていたら、ついに追いつかれてしまったようだ。

 背中からたくさんの触手が生えている男が近づいてきた。

 

「ひぃぃっ…………!!」

「追い付いたぞぉ……おおとりえむぅ……きさまをぉ……抹殺っ!! …………するぅ……」

「ど、どうしてですか……」

 涙目で質問をしてくるえむに男は困惑する。

「しつもん、出来るくらいにはまだ余裕なのかぁ……いい度胸だなぁ…………?」

「ひっ……! ご、ごめんなさいぃ!!」

「まぁいい……ころすぅ……ころすぞぉ……」

 

 シュンッ!!! 

 触手の一本が向かってくる。

「わわっ!」

 ギリギリで避ける。

 流石の身体能力と反射神経、いや、第六感といったところだろうか。

 しかし……

 

 シュンッ!! シュンッ!! シュンッ!! 

 

 さらに多くの触手がえむを仕留めようと跳んでくる。

 

「僕のぉ……スタンドであるこの触手たちは時速180kmだぁ……!! さっきは外したが…………たっくさん当たればぁ……絶対にぃ………………しぬぅぅ!!!」

 

「ほっ! てやっ! うわわっ!!」

 だがこれらも素早く避ける。

 その上まだ体力もあるようだ。

 

「ぎぐぐ……ちょこまかとぉ……よけたりとんだりうんざりだっ!!! こうしてやるぅ!!」

 

 シュンッ!! シュンッ!! シュンッ!! シュンッ!! 

 新たに向かってきた触手達は一斉にバラけた。

「ええっ!?」

 ガシッ! ガシッ! ガシッ! ガシッ! 

 これも避けようとしたが、それらはえむの四肢を掴んだ。

 跳んで避けようとしたのが失敗だった。

 一瞬の無防備になる瞬間を掴まれてしまったのだ。

 

「これでぇぇ!! キサマは動けなィィ!! こうしてぇ……こうだっ!!」

 

 シュッ! 

 

 一本の触手が真っ直ぐに跳んできた。

 そして……

 

「ん゛っ……! げ、えほっ……! けほっ……! いたい……」

 えむの腹部に(ムチ)のように打撃を与える。

 そして彼女は途端に抵抗力を失ってしまった。

(なんだぁ……? おしまいかぁ……おしまいだなぁ……つまらんなぁ……ほんとに、ほんとうに、つまらんなぁ……ならぁ……)

 あっけない結果にガッカリした男はトドメを刺そうとする。

 

「しねぇぇ!!」

「ふっ……!」

(いやっ……まだっ……)

 えむから涙が溢れたその時だった。

 

 ガシッ! 

 

「なにぃぃ……?」

「へっ……?」

 それは、それらは、宙に浮いているように見えた。

 男にも、えむにも、ハッキリと見えていた。

 

 触手を掴む、二本の腕を。

 

「これ……もしかして……」

 えむは天性の適応力で理解する。

 男も、状況から分析し、察した。

 

「こ、こ、こいつぅ……このタイミングでぇ……す、す、スタンドに目覚めたなぁ…………!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「てえぇりゃあぁ!!」

 えむの叫び声と共に腕は大きく振り下ろされた。

「げふぅ……!」

 触手を攻撃されたことで男にもダメージがいく。

 当然だ。この触手達が男のスタンドなのだから。

(ぎぐっ……! 中々のパワーだぁ……とってもおおきく強いわけじゃあないがぁ……中々の中々だぁ……)

「うりゃああ!!!」

 触手が一瞬離れた隙に、今度は男に向かってラッシュを放つ。

 男は攻撃を触手で防ぐが……

 ドゴォ! ドゴォ! ドゴォ! 

「ぎふぅ……!!」

 本体へのダメージは少なくなるが、ダメージを受ける事には何ら変わりない。

(こいつぅ……! もうスタンドを制御できやがるぅうぅ……! お、おかしぃだろぉ……! だがぁ……)

 

 シュンッ! シュンッ! 

 ガシッ! ガシッ! 

 

「っ……!」

「まだ能力も発現してなあいぃ……覚醒途中ぅぅ……ってやつだぁ……腕さえ掴んでしまえばぁぁ……? さっきとおんなじだなぁ…………なぁ……? なぁ……?!」

「い、いやっ……!」

 彼女の抵抗も虚しく、触手がさらに跳んでくる。

 シュッ! シュッ! 

 一回だけではない。同じ攻撃が次々に跳んでくる。

「ぐふっ……! いたい……あがっ……! いたいよぉ……」

「きふきふきふっ……ここでお前を痛めつけるのもぉぉとてもっ! いいがぁ……こぉろぉすぅ……」

 

 シュンッ! 

 

 今度はえむの頭に跳んでくる。

 

「いやっ…………!」

 ようやくだったのに、もうダメか、その時だった。

 

 

 

 

 

 

「が、がはっ……!!! い、いた、いたぁいぃ!!」

「へ……?」

 

 えむは困惑する。

 予想していた痛みがこない。

 突如、触手の男が悶え始める。

 倒れた男の後ろで弓を構えているその人は、もっとも会いたかった人物だった。

 

「鳳さん」

 

「っ……!!!」

 

「助けに来た」

 

「せ、せんぱぁぁぁい!!!!」

 

 朝比奈まふゆの登場だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どぉ……してだぁ……? なぜ鳳えむが、お、お、襲われているとわかったぁ……?」

 

 朝比奈まふゆは、冷たい目で静かに告げる。

「鳳さんの悲鳴が聞こえた。何かあったと思った。でも最初はただ叫んでるだけだと思った。鳳さんはいつも叫ぶくらい元気だから。でも、鳳さんを見つけた時、後ろにあなたがいた。背中からたくさんの触手を生やしているあなたが。それで、試しに打ち込んでみたのそしたら…………」

「…………??」

 

「“高慢”」

 

「なにぃぃ……?」

「あなたから得た感情よ。間違いなく、あなたは悪。そう感じとることが出来たわ」

「ぎぐぎぐぐぎぃぃ……」

「あさひなせんぱあぁぁぁいぃぃ!!!」

「鳳さん。大丈夫?」

「こわかったよおぉぉ!!」

 大泣きだ。まるで子供のように。

「うん。もう大丈夫。私が助ける」

 正義感に溢れたようなセリフをまふゆが喋ったとなったら、ニーゴのメンバー(特に絵名)が仰天するに違いないだろう。

「なぁめるなよぉ…………! 僕のスタンドにぃ……かぁてると思うなぁ……!!!」

(あら、私も舐められたくはないわね)

 

「うん。じゃあいくよ。ジャックポット・サッド・ガール。聞かせて、心臓のビートを」

(ええ。楽しみましょう)

 

「か、カッコいい!!! ☆」

「鳳さん。私はこの男の相手をするけど、攻撃がとんでくるかもしれないから、それはスタンドを使って防いでほしい」

「は、はいぃ!」

「おまえらまとめてぇ…………ぶ、ぶ、ころすぅっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 始まったのは触手も拳の打ち合いだった。

 無数の触手と2本の腕の激しい攻防である。

 

 ジャックポット・サッド・ガールの近距離形態はまふゆも完全に制御出来るようになった。

 そう難しい事ではなかった。

「心臓のビートを聞かせて」

 この合言葉のようなものを唱えれば自ら形態変化してくれるのだ。

 

 ドゴォッ! ドゴォッ! ドゴォッ! 

 

 銃が撃たれたような音が鳴り響いているが、実際危険なのはこっちではなかった。

 

 ガシッ! ドゴォッ! 

 

「ほっ! てやっ! とうっ! わんだほーいっ!!」

 言われた通りに、時々こぼれ出てくる攻撃を掴んではいなしたり、避けたりする鳳えむ。

 強力な味方が付いた事で、今は完全に楽しんでいる。

 

「はぁ……ふぅ…………」

「ひへっ……もう、もう、おつかれなのかぁ……?」

「っ……!」

 無理も無い。既に10分以上戦っている。

 例えスタンドが殴っているとしても、疲れるものは疲れるのだ。

「なぁらぁ…………こうだなぁ……」

 

 シュンッ! 

 

 また触手たちがとんでくる。

 しかしどれもまふゆも狙っていない。

「っ! 鳳さんっ!」

「うわあっ!」

 えむも防ごうとはするが、2本の腕だけでは流石に何本も防ぐことは出来ない。

「危ないっ!」

 まふゆがえむの前に立ち、庇おうとした。

 しかし…………

 

 触手たちは、まふゆ、ジャックポット・サッド・ガールの四肢を掴んだのだ。

 

「っ……! これ、は」

(まさ、か)

「うしし、まんまとひっか、ひっか、引っかかったなぁ…………お前が庇う事はよそう、予測していたぁ……狙いはお前だよぉ……朝比奈まふゆぅぅ…………!!」

「朝比奈先輩っ!!」

「っ…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 触手は、捕えたまふゆを男の方に引き寄せている。

 そして今、完全に男本体の方に取り押さえられた。

「う──ーん…………いい、おんなだぁ……おれは、あんまりっ! 女に興味ないがぁ……いい女だってのは、わ、かるぅ…………おっぱい、も、これ、大きいぃ……」

「……………………」

「だが、どうでもいい……どうせ、死ぬ……鳳えむぅっ!!」

「はっ……はい……」

「選べっ!! お前が死ぬかっ!! この女が死ぬかだぁ!! 選ばれた方、の、頭を俺のスタンドでふっ飛ばすっ!」

「ひっ……ひっく……やだ、やだよぉ……」

「選べぇっ! お前のたかが腕だけのスタンドじゃぁ……この女を助ける事もできないだようがよぉ…………!!!」

「で、でも……」

(私、どうすればいいの……? こんなに、怖いよ、全然、気持ちがわんだほいになれなくて……先輩……司くん……皆……どうしよう……)

 

「鳳さん」

「っ……!」

 人質になっているにも関わらず、ひどく冷静なまふゆが真っ直ぐな目で語りかけてくる。

「あなたはいつも元気で、ちょっと図々しい。でも、それが周りの皆に色んなものを与えてる。笑顔や、勇気や、心を……鳳さん。あなたは何でも出来る。あなたのような人が、出来ないって思ったことは少ない筈。信じて」

 

「っ……!」

 その時、鳳えむの中で何か決意が固まったようだ。

 

「朝比奈先輩……私、やりますっ!」

「感動的ぃぃ……な、シーンはもういらねぇんだよぉ…………!! お前が先に死ねぇぇ!!」

 まふゆを捕えていない触手の全てがえむに向かう。

 

 シュンッ! シュンッ! シュンッ! シュンッ! シュンッ! 

 しかし……

 

 ドゴォォォォォォッ!!! 

 

「ぎふっ……!」

 その全てがえむのスタンドの腕により弾かれた。

 が、

「むむむぅぅ……?? いたく、ねぇ……」

 安堵よりも困惑が先に来た男だが、次の瞬間、目に入った光景にその感情も吹き飛ぶ。

 

「わんだほーい…………だね☆」

 鳳えむは笑みを浮かべている。

 いつもの、元気と明るさに満ちた、あの笑顔だ。

 しかし男の目を引いたのはそちらではない。

 

 先程まで腕であったそれだ。

 

 全身が多彩なバルーンで出来ているようで、人型ながら、熊のような造形をしている、そいつ。

 

 瞬時、男は理解する。

 あいつは覚醒した、と。

 

 そう、これこそが、鳳えむのスタンド。

 

 名づけて………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ワンス・アポン・ア・ドリーム…………」

 この夢に、覚める暇などない。

 

 

 

 

 

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