ナンバー1ヒーローの娘になった、悪の組織の改人系ヒロインのヒーローアカデミア 作:カゲムチャ(虎馬チキン)
「制限時間は15分。振り当てられたポイントの合計が騎馬のポイントとなり、騎手はそのポイント数が表示されたハチマキを装着!
終了までにハチマキを奪い合い、最終保持ポイントの上位4チームが最終種目に進出よ!」
そして、とミッドナイトは続け。
「重要なのはハチマキを取られても、また騎馬が崩れても、アウトにはならないというところ!」
つまり、43名からなる、おおよそ10組くらいになるであろう騎馬が、ずっとフィールドに残り続けることになる。
その特殊ルールを、ミッドナイトは続けて説明した。
「個性発動ありの残虐ファイト! でも、あくまでも騎馬戦! 悪質な崩し目的での攻撃などはレッドカード! 一発退場とします!」
「うげっ」
魔美子が嫌そうに顔を歪めた。
そういう手加減系の制約は常日頃からかけられているので、大分うんざりしているのだ。
「それじゃ、これより15分! チーム決めの交渉タイムスタートよ!」
「八木! 私と組もう!」
「僕でしょ? ねぇ?」
「おお。人気だ」
交渉タイムがスタートした瞬間、即行で魔美子の周りに人が集まり出した。
特にその実力をよく知っているクラスメイト達が。
そりゃそうだ。
ポイント数ゆえに狙われはするだろうが、それ以上に魔美子と組むことのメリットは大きい。
「うーむ」
寄ってきたクラスメイト達を見ながら、魔美子はちょっと真剣に頭を使った。
崩しプレイ禁止の更なる縛りプレイ状態となると、チームメンバーをちゃんと考えておかないと負けるかもしれないからだ。
まして騎馬戦ともなれば、ワンマンプレーで全てを解決することもできない。
彼女は数秒ほど頭を回した後、
「よし、決めた」
チームメンバー候補を見定め、彼らに声をかけに行った。
「緑谷少年、飯田少年、麗日少女。私と組まないかい?」
「え? 僕?」
「む?」
「わ、私も!?」
声をかけられた三人は、飯田以外、意外そうな顔をした。
緑谷は上下関係を叩き込まれたあの超人が、自分ごときの力を必要とするのが予想外だったから。
麗日は個性把握テストのボール投げで勝って以来、そこそこ仲良くしているという自覚はあったが、やはり緑谷同様、この重要な局面で彼女に頼られるというのは想定していなかった。
「えっと……忖度で選んだわけじゃないよね?」
「違うわ」
魔美子のファザコンを知っているだけに、もしや後継者である自分を勝たせるために声をかけてきたのではと疑った緑谷。
そういう気持ちも無いとは言わないが、この三人を選んだのにはちゃんとした理由がある。
「私は騎手やりたいから、緑谷少年は支えるの担当。パワーのある騎馬じゃないと、衝撃波打った時に反動で崩れそうだし。
麗日少女は機動力補助兼、いざって時のための保険。私は衝撃波で空中移動できるから、麗日少女の個性で浮いちゃえば、落ちる心配もなく無限に空中を逃げていられる。
飯田少年は機動力と牽引力。さすがに無限空中逃げ戦法は反則食らう可能性が高いし、あくまでも万が一の時の逃げ道としてだけ使って、すぐに安全地帯で騎馬を再構成したい。そのためには、即座に安全地帯まで他二人を連れて移動できる飯田少年の機動力と牽引力がいる」
理路騒然とした回答が飛び出してきた。
脳筋の力押しを好む魔美子だが、別に頭が悪いわけでも、物事を考えられないわけでもない。
むしろ、演技力一つで怪物の本性を隠し、感性の違いを思考で埋め、クラスに上手く溶け込めるくらいには頭が回る。
その回る頭で考えたベストな布陣が、この三人だったのだ。
「あ、えと、支える担当は僕でいいの? 障子くんとか砂藤くんの方が体格もパワーもあるけど……」
「それも考えた。でも、私の挙動を一番理解してるのは緑谷少年でしょ? 衝撃波打った時の反動がどれくらいかも知ってるし、今回はそっちを優先した」
「私の無重力なくても、魔美ちゃんなら自力で空中逃げ回れると思うけど……」
「衝撃波移動だけだと、空中を自由自在に動き回るとかは無理なんだ。
爆豪少年と違って、私のこれはあくまでも翼が使えない時限定のサブウェポンだから熟練度も低いし。
だから、無重力で自然落下を気にしなくて済むようになるっていうのはデカいよ」
「そ、そっか」
自分達の力の必要性を説かれて、緑谷と麗日は照れた。
最強に認められて頼りにされるというのは、思ったより嬉しかった。
「なるほど。作戦の有用性はわかった。勝てる確率が高いことも理解した。……だが、すまない。断る」
しかし、飯田だけは魔美子の申し出を断った。
「初めての戦闘訓練で君に完膚なきまでに叩きのめされた時、誓ったんだ。
いつの日か、必ずや再挑戦すると。
この体育祭は一つの機会。━━俺は君に挑戦させてもらう」
そうして、飯田は魔美子のもとを去っていった。
向かった先は轟のチーム。
騎馬戦という種目で飯田の機動力なら引っ張りだこだろう。
これは中々に手強いライバルになりそうだ。
「あーあ、振られちゃった。残念」
「飯田くん……」
作戦に必要不可欠な人材を獲得し損ねた。
割と冗談抜きで痛い。
魔美子は再び頭を回して飯田の代わり、もしくは違う形でこのチームを活かせる人物を考える。
「八木さん、常闇くんはどうかな?」
と、そこで緑谷が意見を出した。
「常闇少年?」
「うん。機動力に優れたタイプじゃないから飯田くんの代わりにはならないけど、最低限で良いなら僕が飯田くんの代わりを兼任できるし、個性を知ってるクラスメイトの中に、僕以上に飯田くんの代わりをやれそうな人もいない。だったら、機動力は
「そこで常闇くんなん?」
「そう。八木さんの衝撃波で牽制、それを抜けてきた相手には常闇くんの力で対処して、その隙に麗日さんの無重力で軽くした皆を僕が引っ張って逃げる。どうかな?
他の候補だと八百万さんの『創造』で不測の事態に備えたりとかしたいけど、八百万さんは轟くんのチームに入っちゃったし、耳郎さんや障子くんの索敵能力も捨てがたいけど、全ての騎馬がフィールド内にいて見えてる状態なら、常闇くんの視野の広さで充分に対処可能。加えて物理的な中距離防御ができるって点はかなりの魅力だ。ああでも、八木さんのパワーで制圧して、峰田くんの拘束で一つずつ騎馬を制圧していくって手も……」
「OK。常闇少年でいこう」
ちょっと生理的にチームを組みたくないエロ小僧の名前が出てきたので、それを遮る意味でも即決即断。
急いてはことを仕損じるとは言うが、先んずれば人を制すとも言う。
今の状況は後者を優先すべきだろう。
モタモタしていたら、他のチームに引き抜かれるだけなのだから。
「おーい、常闇少年! 私達と組まないかい?」
「む?」
個性『
伸縮自在の影のようなモンスターを身に宿し、操作しての戦闘が可能。
モンスターは知性を持ち会話もできる。
彼の勧誘に成功し、魔美子のチームは出来上がった。
前騎馬は飯田が抜けたことで、牽引力担当も兼任することになった緑谷。
右が麗日で、左が常闇。
他のチームも続々と出来上がっていき、合計12チームの騎馬が出揃った。
『さぁ、上げてけ鬨の声! 血で血を洗う雄英の合戦が今、狼煙を上げる!!』
雄英体育祭第二種目『騎馬戦』。
開幕。