ナンバー1ヒーローの娘になった、悪の組織の改人系ヒロインのヒーローアカデミア   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

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24 体育祭 パート7

 轟との激闘を終え、彼を搬送用ロボに託し、魔美子がステージを降りると、出口ゲートの先に待ち構えている人がいた。

 炎を纏った、マッスルフォームの父と同じくらいに筋骨隆々の中年男性。

 ナンバー2ヒーロー、フレイムヒーロー『エンデヴァー』。

 轟の父親である。

 

 魔美子は彼に向かって、ペコリとお辞儀をした。

 社会に溶け込むのに礼節は大切だ。

 この人相手なら特に。

 

「焦凍は貴様を超えるぞ」

 

 エンデヴァーは、お辞儀をした魔美子に対して、ただそう言った。

 

「焦凍は必ず貴様を超える。俺が超えさせる。貴様もオールマイトも超える最強のヒーローに育て上げてやる。首を洗って待っていろ」

 

 それだけ言って、エンデヴァーは去っていった。

 イラ立ったような背中が完全に見えなくなってから、魔美子はポツリと一言。

 

「それだけなんだ」

 

 そう呟いた。

 エンデヴァー。彼は11年前の事件の対処に当たったヒーローの一人である。

 その事件において、引き連れていた当時の相棒(サイドキック)を全員殺されている。

 なのに、仇を前にして出てきた言葉が、恨み言ではなく息子のことだけとは。

 

「轟少年曰くクソ親父らしいけど、根っこのところはちゃんとヒーローってことかね」

 

 魔美子はエンデヴァーに関して少し考えた。

 彼女はエンデヴァーにも興味があるのだ。

 ナンバー2ヒーロー、つまり父に次ぐ実力者。

 彼が頑張ってくれればくれるほど、父の負担が軽くなる。

 直接的に父の助けになってくれている人なのだから、そりゃ興味くらい湧くというものだ。

 オールマイトコンプレックスをこじらせた彼にこの話をしたら、多分キレるだろうが。

 

「ま、とりあえず今は、次の試合のことを考えよう」

 

 途中で替えの体操服を貰いながら、魔美子は観客席へと戻っていく。

 そして、轟への耳責め&半裸で密着なんかしたせいで、クラスの女子達から大変面倒な絡まれ方をされるのだった。

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 体育祭は続く。

 二回戦第二試合、塩崎VS常闇。

 相性では塩崎が有利。

 常闇の攻撃力では、塩崎の無数のツタによる防御を中々貫けない。

 条件を満たせばガードの上から叩き潰せたかもしれないが、会場や時間帯の都合から考えて難しい。

 

 それでも、常闇は先のA組同士の頂上決戦を見て「負けていられるか!」と奮起し、ガムシャラに塩崎に食らいついた。

 結果、粘りに粘った末に塩崎の僅かな隙を突き、ダークシャドウが塩崎を押し出して、場外に片足を出させることに成功し、勝利をもぎ取った。

 魔美子の次の相手は常闇だ。

 騎馬戦で助けられた仲間が、今度は強力なライバルとなる。

 青春っぽい! と魔美子はテンションを上げた。

 

 

 二回戦第三試合、緑谷VS飯田。

 単純なスピードでは飯田が、小回りでは緑谷が有利。

 開幕速攻では捉えられないと判断した飯田は超加速を温存し、どのタイミングでその切り札を使うかの読み合いが発生した。

 結果、その読み合い勝負を、分析厨ヒーローオタク緑谷が制して、準決勝進出。

 

 

 二回戦第四試合、切島VS爆豪。

 相性では切島が有利。

 硬化の前に爆破ではダメージが通らない。

 これは爆豪の天敵なんじゃないかと思ったが、爆豪は切島の硬化が緩むまでひたすら爆破を連打し続けるという力技でねじ伏せた。

 全身を硬化させ続けるということは、全身に力を入れて気張り続けるということ。

 切島はその状態で、スロースターターの爆豪が調子を上げる前に勝負を決めるべく速攻を仕掛けた。

 結果、無理が生じて硬化が緩み、そこを爆豪に突かれて敗退。

 

 

 これにてベスト4が出揃った。

 魔美子、常闇、緑谷、爆豪。

 まずは準決勝第一試合、魔美子VS常闇。

 その後にとうとう、緑谷VS爆豪の因縁の対決だ。

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

『爆豪、切島戦と同じく、こちらも騎馬戦での頼れる仲間が敵に回った!

 八木 (バーサス) 常闇!!』

 

「八木。全力で挑ませてもらうぞ」

「いいね。君のが今までで一番綺麗な闘志だ。張り合いがある」

 

 奮い立ちこそしたが、完全に腰が引けていた上鳴。

 終盤で一気に印象が変わったとはいえ、序盤は暗くて粘ついた殺気をぶつけてきていた轟。

 あの二人に見習わせたいくらい、常闇は健全な闘志を燃やしている。

 体育祭らしく、立派にスポーツマンしていた。

 

『スタート!!』

「『デトロイト・スマッシュ』!!」

 

 もはやお決まりとなった、初手衝撃波。

 これを防げないのなら、魔美子の前に立つ資格すら無い。

 

「ダークシャドウ!」

「アイヨッ!」

 

 常闇はしっかりとそれを防いだ。

 騎馬戦では大変お世話になった、常闇のヘソのあたりから飛び出している影みたいなモンスター、ダークシャドウが盾になって衝撃波を防ぐ。

 だが、これは第一関門に過ぎない。

 魔美子の恐ろしさが発揮されるのは遠距離戦ではない。

 接近戦だ。

 

「行っくよー!」

『八木が前に出る! どう見ても肉弾戦は不得手な個性の常闇! 凌げるか!?』

「ダークシャドウ!」

「アイヨッ!」

 

 常闇はダークシャドウを前に押し出し、近づかせずに迎撃の構えを取った。

 確かに、他の者達相手なら、ダークシャドウの盾は堅固で厄介な壁だろう。

 しかし、

 

「それ、私相手には悪手じゃないかな! 『テキサス・スマッシュ』!!」

「うぉ!?」

 

 パンチ一発の盾を吹き飛ばす。

 盾が無くなってしまえば、もうどうにもならない。

 

「『デトロイト・スマッシュ』!!」

「くっ!?」

 

 衝撃波で常闇が吹き飛ぶ。

 場外に向かって一直線だ。

 これで終わりだと、会場中の誰もがそう思った。

 ……だが。

 

「む!?」

 

 魔美子の足を何かが掴む。

 ダークシャドウの腕。

 吹き飛ばしたはずのダークシャドウが、どこかのゴム人間のように腕だけ大きく伸ばして、魔美子の足を掴んだのだ。

 突撃と攻撃の直後で、多少なりとも体勢の崩れている魔美子の足を。

 

「ぬぉぉ!?」

 

 そして、その足が凄い力で引っ張られる。

 ダークシャドウは常闇のヘソと繋がっている。

 つまり、衝撃波で常闇が吹っ飛ばされているのなら、ダークシャドウも引っ張られて吹っ飛んでいくのだ。

 そのダークシャドウが掴んだ魔美子も、一緒に場外へと飛んでいった。

 

(これが狙いか!)

 

 衝撃波を、魔美子自身の攻撃力を利用して、そこにダークシャドウの引っ張る力もプラスした、相打ち覚悟の場外狙い。

 実際の戦闘なら吹き飛ばすなんて悠長なことはやらず、拳で肉体を破壊していた。

 場外負けなんてものがある競技だからこそ見い出せる勝ち筋。

 実戦に慣れ過ぎた魔美子だからこそ晒した隙。

 常闇は彼女が衝撃波を打ってくれる可能性に一点賭けしたのだろう。

 素晴らしい勝負根性。

 

『お、おおお!? 常闇と一緒に八木も場外へ吹っ飛んでいく! これはもしかするか!? もしかするのかぁ!?』

 

 実況席のマイクが大興奮していた。

 観客も息を呑む。

 まさかまさかの大金星なのか。

 その期待と共に、常闇踏影という選手の存在がプロヒーロー達の中に刻まれた。

 

「でも、残念!」

 

 それでもやはり、この魔王はスペックが違う。

 

「『ニューハンプシャー・スマッシュ』!!」

 

 魔美子は崩れ切った体勢で、掴まれていない方の足を使って連続蹴りを繰り出した。

 一発一発が衝撃波を発生させる蹴りの連打。

 Mr.キックブレイクとして磨いた足技。

 その反動で彼女は場外へと引きずられる力を相殺し、それどころか蹴りに耐えられなかったダークシャドウの腕を引き剥がし、飛んでいく常闇を尻目に、自分だけステージの上に戻った。

 

「……無念」

「常闇くん、場外! 八木さん、決勝戦進出!」

 

 常闇の健闘を退け、魔美子がまずは決勝戦へのキップを手にした。

 一年生の頂点を賭けて彼女と戦えるのは、この後に控える因縁の対決の勝者のみ。

 緑谷か、爆豪か。

 因縁の準決勝第二試合が始まる。

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