ナンバー1ヒーローの娘になった、悪の組織の改人系ヒロインのヒーローアカデミア 作:カゲムチャ(虎馬チキン)
「この度は大変お騒がせしました……」
「「「ホントだよ!!」」」
体育祭の二日後。
通常授業が再開された雄英にて、謝る魔美子にクラス一同が総ツッコミを入れていた。
雄英体育祭はかなりのビッグイベントなので、当然その直後の雄英生徒は注目の的になる。
全員が予選を突破したA組など、通学中に多くの人達に声をかけられまくった。
しかし、そんな人達は二言目にはこう言うのだ。
『オールマイトの娘さんってどんな感じ?』と。
「注目全部食われてんじゃん!?」
「俺達はなんのために体育祭を戦ったのかと……!」
一部の目立ちたがり屋達というか、一瞬だけチヤホヤされて、次の瞬間には魔美子と同じ学校の子としか見られなくなり、上げて落とされたような扱いに納得がいかない者達が憤り始めた。
ドンマイ。
「でも、表彰式のあれはちょっと意外だったわ。魔美子ちゃん、思ったよりオールマイトが好きだったのね」
「ねー! 学校ではいっつも辛辣だからビックリだよ!」
「魔美ちゃん、好感度マックスの猫みたいやった」
「めっちゃ可愛かったよ、ゴロにゃんモード!」
「忘れろ!!」
あの日の醜態は、魔美子にとって大分黒歴史だ。
父に注意しておいて、まさか己が最悪の形で秘密をバラすことになろうとは思わなかった。
猛省せねば。
ファザコンも仮面の下に隠せるようにならなければ。
「おはよう」
そんなかしましい騒ぎも、相澤がやってきた時にはピタリと止まって、全員が席につく。
「さて、今日のヒーロー情報学、ちょっと特別だぞ。
コードネーム。ヒーロー名の考案だ」
「「「胸ふくらむやつきたぁあああ!!!」」」
ヒーローを語る上で欠かせないもの、ヒーロー名。
今日び、本名で活動しているヒーローなど殆どいない。
それを決めるとあって、クラスメイト達のテンションはマックスだった。
「というのも、先日話したプロからの
指名が本格化してくるのは、経験を積み、即戦力として判断される2、3年生から。
つまり、今回の指名は将来性に対する興味に近い。
卒業までにその興味が削がれたら、一方的にキャンセルなんてことはよくある」
「大人は勝手だ……!」
こればかりは魔美子も同意である。
「で、その指名の集計結果がこうだ」
八木『7000』
轟『1051』
爆豪『741』
常闇『290』
緑谷『256』
飯田『201』
八百万『100』
上鳴『88』
切島『39』
芦戸『22』
麗日『10』
「例年はもっとバラけるんだが、今年は八木に注目が集まった。まあ、どう考えても最後のあれのせいだな」
「「「ちっくしょーーー!!!」」」
主に指名を貰えなかった者達が嘆きの声を上げた。
一方、爆豪は圧倒的トップの魔美子にイラつき、轟にまで上を行かれた事実に「クソがぁあああ!!」と叫びながらも。
指名数で緑谷には圧勝しているのを見て、少しだけ、ほんの少しだけ溜飲を下げた。
まあ、準決勝は最後の一撃以外緑谷の完敗だったし、こういう評価になるのは妥当だろう。
「これを踏まえ、指名の有無関係なく、いわゆる職場体験ってのに行ってもらう。
お前らはUSJで一足先に経験してしまったが、プロの活動を実際に体験して、より実りある訓練をしようってこった」
「「「!」」」
続く相澤の言葉に、嘆いていた者達の注目もそっちへ逸れた。
「それでヒーロー名だ。まあ、仮ではあるが適当なもんは……」
「付けたら地獄を見ちゃうわよ!」
と、そこで教室に入ってきた一人の教師が、相澤の言葉を奪うように話を続けた。
「ミッドナイト!」
それは体育祭の1年主審を務めたエロいコスチュームの18禁ヒーロー、ミッドナイトだった。
「この時の名が世に認知され、そのままプロ名になってる人多いからね!」
「まあ、そういうことだ。そのへんのセンスをミッドナイトさんに査定してもらう。俺はそういうのできん」
相澤は完全にミッドナイトに投げるつもりのようで、ゴソゴソと寝袋を準備し出した。
「将来自分がどうなるのか。名を付けることでイメージが固まり、そこに近づいていく。それが『名は体を表す』ってことだ。オールマイトとかな」
相澤が寝袋に入り、生徒達はシンキングタイムに入った。
そして、15分後。
「じゃあ、そろそろ。できた人から発表してね!」
「行くよ」
一番手、
ヒーロー名『I Can't stop twinkling.』
長い。
「じゃあ、次あたしね!」
二番手、
ヒーロー名『エイリアンクイーン』
昔の映画にそんな感じの悪役がいた。
ヒーローじゃなくてヴィランの名前なのでボツ。
最初に変なのが続いたせいで、教室内には大喜利のような空気が漂ってしまった。
「じゃあ、次私いいかしら」
三番手、
ヒーロー名『フロッピー』
「可愛い! 親しみやすくていいわ! 皆から愛されるお手本のようなネーミングね!」
(((ありがとう、
一人のヒーローの活躍により、多くの者達が救われた。
早速大活躍のフロッピーであった。
「んじゃ、俺!」
四番手、
ヒーロー名『
「赤の狂騒! これはあれね! 漢気ヒーロー『
「そっす! 大分古いけど、俺の目指すヒーロー像は
「ふふ。憧れの名を背負うってからには、相応の重圧がついて回るわよ」
「覚悟の上っす!」
切島鋭児郎、中々にカッコイイことを言っていた。
魔美子はチラリと緑谷の方を見る。
後継者としてオールマイトリスペクトの名前をつけるんじゃないかと思ったが、弱気な顔をしていた。
どうやら無理そうだ。
クソナードめと、魔美子は珍しく爆豪みたいな感想を抱いた。
その後、クラスメイト達のヒーロー名はどんどん決まっていった。
ヒーロー名『イヤホンジャック』
ヒーロー名『テンタコル』
ヒーロー名『セロファン』
ヒーロー名『テイルマン』
ヒーロー名『シュガーマン』
芦戸 三奈。
再考ヒーロー名『ピンキー』
ヒーロー名『チャージズマ』
ヒーロー名『インビジブルガール』
ヒーロー名『クリエティ』
ヒーロー名『ツクヨミ』
ヒーロー名『グレープジュース』
ヒーロー名『アニマ』
ヒーロー名『ウラビティ』
ヒーロー名『爆殺王』(ボツ)
ヒーロー名『ショート』(本名)
「え? 緑谷、いいのかそれ!?」
「うん。今まで好きじゃなかったけど、ある人に意味を変えられて、僕には結構衝撃で、嬉しかったんだ」
「ああ、そういや体育祭でも叫んでたな」
ヒーロー名『デク』
「これが僕のヒーロー名です」
そうして、緑谷も決定。
残るはボツを食らった爆豪と、随分思い悩んでいる飯田。
それと魔美子だけだ。
「じゃあ、そろそろ私もいこうか」
ヒーロー名『チャーミーデビル』
「あら? オールマイト要素が入ってないけど、いいの?」
「いいんですよ。パパのことは大好きだけど、ああなろうとは思えないので」
ミッドナイトの質問に、魔美子はそう答える。
そっちの方針は挫折したのだ。
とうの昔に。
「私は全てを救うスーパーヒーローじゃなくて、チャーミングな悪魔になりたいんです」
それが偽り100%の姿だったとしても、キュートでポップでチャーミングで、世間様に受け入れられる悪魔でありたい。
父が心配しなくて済む悪魔になりたい。
理想を追って挫折し、開き直った末に辿り着いた結論。
これが自分にできる最大限の譲歩。
「そう。血筋に縛られず、己の望む姿を名に込める。とっても良いと思うわ!」
ミッドナイトはサムズアップで称賛してくれた。
轟がそんな魔美子を眩しそうな目で見ていた。
「……では、俺も」
ラスト二人となり、飯田がヒーロー名を発表する。
ヒーロー名『天哉』(本名)
「あなたも名前ね」
「……はい」
飯田は大分苦悩している様子だった。
その理由はなんとなくわかる。
あのニュースが原因だろう。
魔美子は一切興味ないが。
「『爆殺卿』!!」
「違う。そうじゃない」
で、最後に残った爆豪はボツを食らいまくって結局決まらないまま、ヒーロー名考案の授業は終わった。