ナンバー1ヒーローの娘になった、悪の組織の改人系ヒロインのヒーローアカデミア 作:カゲムチャ(虎馬チキン)
「んじゃ、次。
「はーい!」
ホークスが飛び立つ。
常闇も他の
魔美子ですら、素の状態では影も踏めない。
個性解放部位『翼』 出力70%
「そい!」
新しいコスチューム、悪魔っぽい黒のゴスロリドレスから翼を出して(翼や尻尾を出すスペースを確保しつつ、上手いこと露出を無くしてくれた)ホークスを追う。
なお、スカートは父の強い要望でMr.キックブレイクのローブと同じくめくれない工夫が施されており、万が一の場合でも下にあるのは夢も希望も無いスパッツである。
「速いなー」
前を飛ぶホークスを見て、魔美子は思わずそう呟く。
翼を普段使いできるパーセンテージギリギリまで解放して、ようやく同速。
それでいて、小回りは圧倒的にホークスの方が上。
「あれだね」
現場に到着して目標を発見した瞬間、ホークスの翼が細かく飛び散った。
個性『剛翼』
羽根の一枚一枚を分割して飛翔させ、自由自在に操る。
その精密性は他の個性の追随を許さないほど凄まじく、一枚の羽根で人一人を簡単に担ぎ上げ、数百数千の羽根を同時並行処理することで、ビルが倒壊するような現場からでも、膨大な数の人々を瞬時に全員救い出す。
おまけに、羽根には周囲の僅かな振動で音や空間を正確に把握する機能があり、ホークスは羽根が飛び散っている範囲の全てを、己の目と耳で見て聞いているかのように感知できる。
凄まじい速度で飛翔する目耳の機能を搭載した数千の手足を自由自在に操っているようなものだ。
脳筋スタイルを好む魔美子には真似できないし、真似したくない。
ただでさえ破壊衝動の抑制に神経を削られているというのに、あんな細々とした作業をしたら死んでしまう。
「『大雨覆』」
「うおっ!?」
「なんじゃぁ!?」
そんなホークスの無数の羽根が抗争中のヴィラン達の周囲をドーム状に囲い、凄いスピードで攻撃を加えていく。
耐久力に秀でていない個性の者は、それだけで戦闘不能になり、
「うぉおおお! こんな豆鉄砲がなんぼのもん……」
「『デビル・スマッシュ』!」
「ぐっはぁ!?」
耐久力に秀でている者は、魔美子の拳の餌食となって沈黙した。
戦闘時間、僅か1秒。
速すぎる決着である。
「イエーイ。結構相性良いよね、俺達。卒業後は俺のサイドキックにならない?」
「ふふ。口説いてるつもりなら、未成年淫行罪で訴えますよ」
「いいね、その感じ。ユーモラスに返してくるのはポイント高いよ」
「いえ、本気ですけど」
「え?」
ニッコリと笑顔で告げる魔美子に、ホークスはちょっと冷や汗を流した。
たった一日で随分と上達した笑顔の仮面は、もう彼ですら真意を測りづらい。
「ホークス! チャーミーデビル!」
「やっと追いついた……」
「遅いですって。俺達は次のデートに行きますんで、いつも通り後処理お願いします」
「淫行罪」
「デートじゃなくて仕事に行きます」
ホークスと魔美子が飛び去る。
職場体験二日目。
ホークスはいつも通りだというパトロールを開始し、魔美子と常闇にはついてきて手伝えとだけ言った。
ついていけるだけのスピードを持つ魔美子は言われた通り仕事を手伝い、ついてこれない常闇はサイドキック達と後処理に奔走する。
そんな状況に、常闇は不満を溜めているようだ。
時間が経過するほどに、表情が険しくなっていっている。
「おっと、緊急事態。
現地のヒーローが随分手こずってるみたいで、応援要請が来た。
俺はパワーに欠けるから、今回はよろしく頼むよ、チャーミーデビル」
「お任せを!」
ホークスは魔美子の事情を知っているかのように、本日はヴィラン退治の仕事を優先して引き受けてくれる。
圧倒的機動力を活かして、一日で九州全土を股にかけ、下手すれば本州の事件にまで首を突っ込む。
速すぎるコンビだからこその活動範囲と事件解決数だ。
これを処理する事務員は死ねると思うが、そんなことは知ったことではない。
「うん。今日はこのへんにしておこうか。明日は本州の方に呼ばれてるから、朝も早いしね」
「はーい」
という感じで、本日の職場体験は終了。
沢山ヴィランを殴れたし、ホークスのファンやメディアへの対応は大変勉強になった。
後者に関してはとても疲れたけど。
そして、事務所に帰還した後。
「ホークス」
「ん? 何かな、ツクヨミくん?」
サイドキック達と共に後処理だけ任されていた常闇が、とうとう我慢の限界に達した感じでホークスに声をかけた。
「八木はまだわかる。彼女はあなたのスピードについていける稀有な人材だ。
だが、何故俺を指名した? 何故、指名したにも関わらず放置する? 教えてほしい」
常闇の主張は真っ当だった。
ホークスの行動は、あからさまに魔美子を贔屓していると言われても仕方のないものだ。
対して、常闇の方はほったらかし。
これでは文句くらい言われるだろう。
「鳥仲間」
「は?」
「いや、だから君を指名した理由だよ」
ホークスは自分の羽をつまみながら、そんなことをのたまった。
常闇は個性とは別に、普通の人間とは違う体をしていて、カラスのような頭部をしている。
恐らく、異形型個性の先祖の血が出ているのだろう。
そういう人間は、この超人社会では珍しくもない。
一方、ホークスは剛翼という鳥っぽい個性を持っている。
鳥仲間。
まあ、わからなくはない。
それが指名の理由というのはふざけた話だが。
「……お巫山戯で?」
「いーや、二割本音。半分は1年A組の子から話を聞きたくて。君達を襲ったヴィラン連合とかいうチンピラのね」
「それなら八木だけで良かったのでは?」
「彼女は競争率半端ないでしょ? 確実に来てくれるなんて保証は無かったから、他にもう一人、体育祭の順位が上の方の子を適当にね」
ビキビキと、常闇の額に青筋が浮かんだ。
「ヴィラン連合の話ももう八木ちゃんから聞いちゃったし、今んとこ君にやってほしいのは、ウチのサイドキックの手伝いくらいかな」
「ッ!! 失礼する!!」
常闇は怒りに支配されながら、ホークスの前から立ち去った。
あそこまでコケにされれば、常闇でなくとも怒る。
だが、怒った後に泣き寝入りするのではなく「必ずや見返してやる!」と決意して自主練に精を出し始めたのは、さすが雄英体育祭3位と言うべきか。
「常闇少年」
「……八木」
そうして自主練を始めた常闇のところに魔美子が現れた。
時刻は夜。
都会の明かりが照らしているとはいえ、太陽に照らされた日中よりはよほど闇の濃い時間帯。
その分獰猛になり、制御が難しくなったダークシャドウの手綱を握りながら、常闇は自主練をしている。
「ヌォオオオオオ! 滾ルゾォオオオオ!!」
「ダークシャドウくん、昼間とはまるで違うね。でも……」
夜でもそんなもんか。
魔美子はそんな言葉を仮面の下で飲み込んだ。
同じ暴走個性ということで感じていたシンパシーが消えていき、元々無いに等しかった常闇への興味が完全に失せていく。
「常闇少年、ちょっと試してみたいことがあるんだけど、いいかな?」
けれど、最後に一つだけ、ダメ元で試してみよう。
そんなことを思いながら、魔美子は常闇に声をかけた理由であるそれを使った。
個性解放部位『掌』 出力10%
魔美子の掌の上に、靄のように立ち昇る『闇』が発生した。
「闇ィィィィイイイイイ!!!」
「ぐっ!? 静まれダークシャドウ!! 八木! 早くそれを消してくれ!!」
「ああ、やっぱり、これに反応するんだね」
それを確認してから闇を消すと、ダークシャドウは「アッ……」と、目の前でオヤツを他の奴に食べられた犬のような、しょぼんとした反応を見せた。
ちょっと可愛い。
「ハァ……ハァ……。い、今のは……?」
「あれ? 見せたことなかったっけ? 私の個性の一部なんだけど」
「初見だぞ……」
常闇の言葉に、魔美子はちょっと驚いた。
これに関しては特に隠しているつもりはなかったのだが、言われてみれば確かに、学校では一度も見せていなかったかもしれない。
戦闘訓練においても、個性で生徒を直接攻撃することは、教師一同に固く禁じられている。
そして、この技は攻撃にしか使えない技だ。
そう考えると、常闇がこの技を知らないのも不思議ではないのか。
「まあ、いいや。今のを取り込んだりすれば、ダークシャドウくんはもっと強くなると思う?」
「……ああ。なるだろうな。ダークシャドウは闇を活力や体力に変換している。
お前のそれを取り込めば、昼間ですら最高出力を出すことも可能かもしれない」
「ふむふむ」
魔美子は常闇の言葉に頷き、
「じゃあ、今から練習してみようぜ。行っくよー」
「ま、待て八木!? こんな市街地でやったら、制御不能になって町ごと破壊してしまう!!」
「え? ダークシャドウくんの最高出力って、町を破壊できるくらい凄いの?」
「ああ。かつて、探検と称して森に入って遭難し、新月の夜に不安からダークシャドウを出して暴走させてしまった時は、その森を丸ごと吹き飛ばしてしまった」
「ほほう」
その話を聞いて、常闇への興味が少し回復していくのを感じた。
森を吹き飛ばすほどの力。是非とも見てみたい。
ダークシャドウはあのクソとも相性が良いのだ。
その上でそれだけの力があるのなら、もしかしたら轟に次ぐ第二の武器になってくれるかもしれない。
「よし! それじゃあ、人を巻き込まないところでやろう!」
個性解放部位『翼』 出力50%
「ここが福岡で良かった。無人島が割と近くにある」
「無人島!?」
「さあ! 人も都会の光も無い最高のトレーニング場にレッツゴーだ!」
「待っ……!?」
魔美子は有無を言わさず常闇を拉致した。
そして、次の日から、彼女の常闇に対する態度は緑谷や轟に対するそれと同じになっていた。
・常闇踏影
技術促進『+1』