ナンバー1ヒーローの娘になった、悪の組織の改人系ヒロインのヒーローアカデミア 作:カゲムチャ(虎馬チキン)
「なりてぇもん、ちゃんと見ろ!!」
助けに来てくれた轟に一喝されて、飯田はハッと目が覚めるような思いがした。
ヒーロー殺しに挑むも、歴戦のヴィラン相手にヒーロー科1年生の飯田ごときでは為す術もなく、いとも簡単に打ち倒され、殺されかけた時、緑谷が助けに来た。
その緑谷が力及ばず窮地に陥った時、今度は轟が助けに来た。
そして二人は今、飯田を守る為にヒーロー殺しと戦っている。
傷つき、血を流しながら。
あの怪物を相手に必死で戦っている。
(何がヒーロー……!)
飯田は己を責めた。
復讐のためだけに勝手に動いて。
その結果不様に敗れ、倒れ。
友に守られて。血を流させて。
こんな自分のどこがヒーローだというのか。
『あいつをまず助けろよ』
殺してやると叫んだ飯田に、ヒーロー殺しが言った言葉。
奴に体の自由を奪われていた、復讐に走る飯田の目に入らなかったプロヒーローを指差しながら言った言葉。
『自らを省みず他を救い出せ。己のために力を振るうな。目先の憎しみに捉われ『私欲』を満たそうなど……ヒーローから最も遠い行いだ』
(ああ。そうだよ……! お前の言う通りだヒーロー殺し……!)
罪を思い知らせんがために、復讐のために飯田は兄の名を使った。
目の前のことだけ、自分のことだけしか見れていなかった。
(僕は彼らとは違う……!)
緑谷や轟にはまるで及ばない未熟者だ。
立派なヒーローだった兄とは似ても似つかない未熟者だ。
(それでも!!)
今ここで立たなくては、もう二度と彼らや兄に追いつけなくなってしまう!!
「『レシプロ・バースト』!!!」
その思いが強く心を支配した瞬間、ヒーロー殺しの個性に奪われていた体の自由が戻った。
飯田は立ち上がり、二人に襲いかかるヒーロー殺しに蹴りかかる。
あの魔美子すらも一度は捉えた超スピードで。
「む……!」
それがヒーロー殺しの持つ刀を蹴り砕き、追撃で奴を吹き飛ばす。
ガードされたし、ダメージも殆ど入っていないが、轟を斬る寸前だったヒーロー殺しを吹っ飛ばして距離を空けることはできた。
そして━━
「『ダークネス・スマッシュ』!!」
「ぬっ!?」
上空から降ってきた闇のレーザービームが、それを避けたヒーロー殺しを更に後退させた。
「なんだ……?」
「この個性は!」
ヒーロー殺し、飯田、緑谷、轟、殺されかけていたプロの人。
この中で唯一、緑谷だけがその攻撃の正体に気づいた。
学校では何故か一度も見せていないが、修行中に「遠距離タイプ想定訓練」と称して弱めのビームを撃たれまくった緑谷だけが。
彼にとっての恩人で、憧れの人の娘で、トラウマ上下関係を刻み込まれた鬼教官で。
そして何より、誰より頼れるスーパーヒーローである彼女が応援に来てくれたことを悟った。
「嫌な予感を覚えて急いで来たけど、案の定だったね」
空の上から、一人の少女が舞い降りる。
父にダメ出しを食らって作り直してもらったという新しいコスチューム、悪魔っぽい黒のドレスに身を包み、悪魔のような翼をはためかせた金髪の少女が。
重力を感じさせないフワリとした着地で、ヒーロー殺しと少年達の間に舞い降りた。
「状況がイマイチよくわかんないけど……」
その少女、魔美子は血を流している飯田や轟を見て、なんでこんなところにいるのかと首を傾げ、逆にいるはずのグラントリノがいないことにも首を傾げた。
ここに来る途中で『騒ぎ』を目撃したので、そっちに対処するために離れてしまった隙を狙われたとかだろうか?
まあ、なんにせよ。
「もう大丈夫」
ここで自分が言うべき言葉は決まっている。
守られる相手に安心感を与え、大人しく守られておけばいいんだと思わせて、余計なことをさせないための言葉。
父の模倣で、そこに込められた想いまでは継げないからと全部捨て去り、ただ実益のみを求めた薄っぺらい偽物。
それでも、せめて父が安心して後を託せる後継がちゃんと育つまでは、こんな偽物でどうにかなる範囲くらいは受け持って、少しでも父の負担を軽くしようと決意して。
彼女は、平和の象徴の仮面を被ってこう言うのだ。
「私が来た!!」
「「「!」」」
威風堂々と笑顔でそう告げる魔美子に、守られる者達は感じていた恐怖と重圧が軽くなるのを確かに感じた。
一方、
「私が来た、だと……!!」
そんな彼女と対峙する男は。
目の前で不出来な物真似を見せられて、信じる神を冒涜された狂信者のように、ビキビキと額に凄まじい青筋を浮かべた。