ナンバー1ヒーローの娘になった、悪の組織の改人系ヒロインのヒーローアカデミア 作:カゲムチャ(虎馬チキン)
「らぁあああああ!!」
「!!?」
殴る殴る殴る。
魔美子の拳が脳無を滅多打ちにしていく。
当然のように、相手は再生持ち。
しかも、後のことを考えてディザスター・モードを使っていないので、仕留めるのに時間がかかる。
また前みたいに殺人うんぬんで面倒なことになるのも嫌だし、なおさら手間がかかって嫌な感じだ。
それでも、
「ほい、いっちょ上がり!」
魔美子はやり遂げた。
どうせ再生するんだからってことで手足を斬り落とし、悪魔の尻尾で全身を串刺しにして、縫いつけるように雁字搦めにして拘束した。
尻尾を出しっぱなしにしていると破壊衝動の堰が緩んだままになってしまうので、切断して体に繋がっている方は引っ込める。
トカゲでもないのに自切。
彼女もまた再生持ちだからこそできる狂気の手法だ。
「くっそ、死ぬほど時間取られた! 使い魔も結構やられちゃってるし、これ一人くらい殺されててもおかしくないぞ」
イライラした様子でそう呟きながら、魔美子は顔をしかめた。
使い魔は見聞きした情報を本体に伝達するような便利機能こそ無いが、倒されたかどうかくらいはわかる。
生徒の保護のために出した100体のうち、実に70体以上がやられていた。
20体くらいは脳無レーザーでやられたのを確認したが、残りの50体は他のヴィランにやられたことになる。
(今回の連中は、少なくとも数の暴力じゃどうにもならない精鋭揃いか)
なお、そのうちの30体くらいをヤッたのは
(最大数まで出しちゃったから、再使用まではインターバルがいるし……)
「こりゃ、のんびりしてる暇は無いね」
魔美子は雁字搦め脳無を掴み上げ、翼を再展開して飛び立った。
被害が出たら父が叩かれる。
あと、
それを恐れて、魔美子は継戦を選択した。
◆◆◆
「彼らなら、俺のマジックで貰っちゃったよ」
「返せ!!」
一方、常闇の奮闘でムーンフィッシュと脳無を退けた緑谷サイド。
敵の狙いの一つと思われる爆豪を護衛しながら宿泊施設を目指していたのだが、そこへ音もなく忍び寄ったヴィランによって、爆豪と、ついでに常闇が捕らわれてしまった。
「返せ? 妙な話だぜ。爆豪くんは誰のものでもねぇ。彼は彼自身のものだぞ、エゴイストめ!」
それを成したヴィラン、シルクハットを被った仮面の男『Mr.コンプレス』がペラペラと語る。
「我々はただ、凝り固まってしまった価値観に対し、それだけじゃないよと道を示したいだけだ。
今の子らは価値観に道を選ばされている。
爆豪くんも常闇くんも気の毒にと思ってね。
表彰台の上でガッチガチに拘束され、ムーンフィッシュを一方的に蹂躙するあの圧倒的な力を制御することを求められ、実に窮屈そうだ。
彼らは
「返せ!!」
重傷によって脳内麻薬ドバドバ状態の緑谷は、返せとしか言わない。
叫ぶしかできない無力な彼に代わって、轟がMr.コンプレスに向けて氷結攻撃を放った。
みすみす逃がすつもりなど無い。
「おっと!」
しかし、コンプレスはそれを簡単に避ける。
「悪いね! 俺は逃げ足と欺くのだけが取り柄でよ! ヒーロー候補生なんかと戦ってたまるか!」
コンプレスはそう言いながら、耳につけた通信機に手を当て、
「開闢行動隊! 目標回収達成だ! 短い間だったが、これにて幕引き!
予定通り、この通信後5分以内に回収地点へと向かえ!」
迷いない逃走を開始。
森の木の上をピョンピョンと跳ねて、凄い勢いで緑谷達との距離を離していった。
「待て!!」
緑谷達はそれを追いかけて、追いかけて、追いかけた。
合流できていた麗日の個性で無重力状態にしてもらい、『蛙』の個性によって人を投げ飛ばせるほどの力を持つ蛙吹の舌でぶん投げてもらい、緑谷、轟、障子の3人がコンプレスを追撃。
人間砲弾でどうにか追いつき……。
「知ってるぜ、このガキども! 誰だ!?」
「ミスター。避けろ」
既に集結していたヴィラン達に迎撃された。
火傷男『荼毘』の放った蒼い炎が3人に襲いかかり、避け切れなかった緑谷と障子の腕を焼く。
「うあ“!?」
「トガです! さっき思ったんですけど、もっと血出てた方がカッコイイよ出久くん!」
「はぁ!?」
理解不能なことを言い出した女子高生『
学生3人、しかも一人は気絶していないのがおかしい重傷患者では、複数のヴィランを相手にどうにもできない。
そして……。
「5分経ちました。行きますよ、荼毘」
「ワープの……!?」
USJに出てきた黒い靄のヴィラン『黒霧』がヴィラン達を回収していく。
爆豪と常闇を捕らえたままのコンプレスも、黒いワープゲートの中に消えていく。
「そんじゃー、お後がよろしいようで……ッ!?」
だが、その顔面にレーザービームが炸裂した。
震えながら隠れていた青山の攻撃。
それによってコンプレスが口の中に隠していたビー玉のようなもの、彼の個性で圧縮された爆豪と常闇を吐き出させ、2人の入ったビー玉が宙を舞う。
片方は障子が掴んだが、
「哀しいなぁ、轟焦凍」
「ッ!?」
もう片方は、轟の目の前で荼毘が回収した。
「確認だ。解除しろ」
「っだよ、今のレーザー……! 俺のショウが台無しだ!」
愚痴りながらも、コンプレスが個性を解除。
障子の握っていたビー玉が常闇に変わり、荼毘の回収したビー玉が爆豪に変わる。
「問題なし」
「かっちゃん!!」
「来んな、デク……!」
爆豪が闇の中に消えていく。
緑谷の心を絶望が覆った。
体が動かない。
マスキュラー戦で無茶をした代償に、もう彼は動けない。
救けるための
出てくるのは涙だけ……。
「もう大丈夫」
そんな緑谷の耳に、そんな声が届いた。
1年半前にも聞いた。
あの時も今と同じで、爆豪がピンチで、緑谷は無力で。
けれど、その人が全てをひっくり返してくれた。
「私が来た!!」
父の台詞を真似た魔美子が。
翼をはためかせてワープゲートに突撃し、爆豪の首根っこを掴んでいた荼毘の顔面をぶん殴った。
「『テキサス・スマッシュ』!!」
「かっ……!?」
その一撃で荼毘は気絶。
手の力が緩み、更に魔美子に背中を蹴られた爆豪はワープゲートの外へ。
代わりに、突撃の勢いを殺し切れなかった魔美子がゲートの中に突っ込んで……黒い靄は消えた。
「さてと」
ワープゲートを潜った先。
小洒落たバーのような場所で、魔美子はその場に揃った面々を見渡した。
たった今殴って気絶させた火傷男、荼毘。
魔美子に興味ありげな視線を向けている女子高生、トガヒミコ。
青山レーザーに仮面を砕かれた男、Mr.コンプレス。
ラバースーツに身を包んだ男、トゥワイス。
オカマ風の男、マグネ。
トカゲのような男、スピナー。
黒い靄のワープゲート、黒霧。
そして、
「…………は?」
目を丸くしている二十歳くらいの青年。
トレードマークの手のようなものを顔に装備した灰色髪の男。
USJで取り逃がしたチンピラ、死柄木弔。
「今回といい、前回といい、やってくれたね、ヴィラン連合。
私のイライラは結構凄いことになってるよ」
ヴィラン達を見渡して、魔美子は据わった目で告げた。
「覚悟はできてるんだろうね?」
そうして、最強はポキポキと拳を鳴らした。