「やあ、フェネクス」
「あん?バルバトスか」
気付けば12本の聖剣を従えてこの地に生まれ落ちて数年。俺は魔神フェネクスとしてテイワットを気ままに旅をしていた。
魔神戦争真っ只中だが、常に魔神同士の争いが発生してるわけではない。だからこそ魔神モラクスの統治する璃月にこの自由神がやってきても不思議ではない。
不思議ではないが、こいつがこうやって笑顔で近付いて来ている点からして不審だ。
「何企んでやがる」
「いやいや。ちょっとね?君に剣を貸して欲しいな~!って」
「…ほとんどの魔神を倒したあとだろう?」
「いやデカラピアンのあとにまたあそこに魔神が生まれ落ちてね。めちゃくちゃ暴れててね」
「ふーん。生まれたてならお前でも倒せるだろ」
魔神バルバトスは既に400年以上活動する魔神だ。比較的新人、もとい新神の部類だがたかが発生してから一年も経たない魔神に劣るような存在ではない。
「相性めっちゃ悪いんだよ。無風状態にされてさー」
「もしかしてだが風元素を消す魔神か?」
「うーんまあたぶんね。凪の魔神って言ってたし風元素を打ち消したりする権能持っているとは思うよ」
この世界の魔神は七元素のうち1つか2つを操る。それは絶対の法則だ。モラクスは純粋な岩元素の魔神でどこぞの竈の魔神は炎元素を主体に岩元素も含む複合だ。
つまり元素力を操ることは出来ても打ち消すには元素反応を起こすか同質で同出力の元素をぶつけるかだ。
そして風元素は打ち消せる元素反応はない。むしろ風元素が草元素と岩元素以外を拡散反応で打ち消す側だ。そして風元素の魔神としては強力なこの目の前の自由神に生まれたての魔神が拮抗できることはあり得ない。
「だから君に剣を借りに来たんだよ。残念ながら弓はないけど錫音なら扱いに慣れてるし」
「まあお前には2番目に相性がいい聖剣だが」
音は空気の振動。必然的に風元素とは相性がいい聖剣として上げられる。
「なんだったら俺が出向いてもいいぞ?死ねない身体だしな」
「君の力を借りると僕に着いてきてくれてる子達に示しがつかないでしょ?」
「別に隠密行動すればいいだろ?」
「爺さんもそうだけどずっと頼ってるしね。借りれるだけでも御の字なんだよ」
「お前自分の民を守ることには真摯だな」
その癖酒はツケで呑む。こいつ自由だな。
「とりあえず、翠風も貸してやる。ちゃんと生きて返せよ」
「報酬は唄でいいかい?」
「…まあいいだろう。モラクスのとこで宴の席の見世物にしてやる」
「よかった。今モラ持ってないんだよねぇ」
「俺がモラ持ちすぎてることは知ってるだろうが」
「持ちすぎて各地に隠してるもんね」
モラクスのところでいくつか仕事をこなしてモラを渡される。契約の神と自由の神は遠くて近い存在だ。
「そういえば今聖剣はいくつ持ってるんだい?」
「狼煙と最光はマハールッカデヴァータに。烈火は炎神のところに。黄雷は稲妻に。流水は水神のところ。モラクスには激土。氷のところには月闇と界時を渡してあるから…」
「いやほぼ全部貸し出ししてるのかい…」
本来ならそんな大盤振る舞いはしないが、俺に残された時間は少ない。それもこれもアレのせいだが…。
「まあ理由があってな。モラクスとマハールッカデヴァータには言ったが…お前にも伝えておくか。俺はあと数日でこの地を去る」
「え…」
「正確には神としての姿を保てなくなる。月闇にある未来予知能力で俺はそうならざるを得ないことを知った」
「どういうこと…?君がそんなことをする必要は」
「あるんだよ。異なる世界の侵食が既に始まってる。おそらく凪の魔神もその一環だ。璃月にも砕嵐の魔神を名乗る勢力が現れた。岩元素を抉り散らすモラクスの天敵だ。このままでは他の神のところにもそれぞれの天敵となる魔神を名乗る謎の勢力が現れるだろう」
世界の侵食によって俺が動かなければテイワットの元素力は完全に消え、死の大地になるのが月闇の予知だ。
「異なる世界の侵食…それはアビスとは関係」
「ないな。アレは世界の癌であって世界同士の争いではない」
「そっか…」
「俺は刃王剣と俺自身を使ってこの世界を守る礎となる。それが俺のテイワットに剣の魔神として生まれた理由だろう」
「寂しくなるね」
「何。数千年経って侵食が収まれば力を落として再度会うことが出来るだろう。それまでの長い別れだ」
「君は数年しか生きてないのに爺さんみたいなことを言うね」
数年テイワットで魔神として生きたが、モラクスやバルバトスと言った友ができた。ならば別に友とその仲間のために数千年を擲ってもいいだろう。
「モラクスに影響されたのかもな」
「そういえば最初にテイワットで君と会ったのは爺さんだったもんね」
「なんだかんだで一番付き合いが長いな」
「そうだね…」
「…ほら、残りの4本の聖剣のうちの2本だ。次会ったときには返してくれ」
「うん、そうするよ」
風に乗ってバルバトスが去っていく。これで残った聖剣は虚無と刃王剣だ。
「さて、世界を救うか」
魔神フェネクスについて
魔神フェネクスとはテイワット中に痕跡が記されている剣の魔神である。
璃月のモラクス、モンドのバルバトス、そして我らがスメールのマハールッカデヴァータ様について記された資料や様々な遺跡、果ては田舎の農村にもその名前が出てくる魔神ではあるが、その実態は要として知れない。
魔神の中でも最強と呼ばれ彼の魔神を敬う人々は多い一方、果たしてどこまでが本当の逸話なのか調査が進んではいない。
その逸話は資料によって様々だ。
ある遺跡の石碑には『その身を剣と化し目にも止まらぬ速度でアビスの使徒を数百体切り刻んだ』『世界に散らばる宝箱の半分は魔神フェネクスの隠し財産』と書かれており、またスメールに保管されている資料だけでも『炎の竜を従えた剣士』としてや『蒼き獅子に変貌し水流によってスメールに現れた火災の魔神を倒した』などの記述があり全てが魔神フェネクスとして語られている。
しかしその場合は魔神としては異例の全元素を扱う、いやそれどころか七元素が関わらない能力(注釈:光、闇、時といったもの)をも持つ魔神となるため現在ではいくつかの魔神がフェネクスという魔神と同一視されているという説が一般的である。
また、テイワット上空に浮かぶ青い剣こと星の聖剣と呼ばれるモノが魔神フェネクスの剣とされるが調査するためには空を飛ばざるを得ず飛空船などでは到底届かない高度にあるため調査できていない。
現在予算を申請し、より高高度に届く乗り物を開発するようにプロジェクトを進めてはいるが成果は芳しくない。
魔神フェネクスの剣として七国それぞれに保管されているモノが10本ある。それぞれ火炎剣烈火、水勢剣流水、雷鳴剣黄雷、土豪剣激土、風双剣翠風、音銃剣錫音、闇黒剣月闇、光剛剣最光、煙叡剣狼煙、時国剣界時と呼ばれている。しかし魔神フェネクスは12本の聖剣を使っていたとの記述があり、星の聖剣を含めても残り1本の行方がわからない。
また、ある時期から唐突に魔神フェネクスに関する記述が消え星の聖剣に関する記述が現れたことから星の聖剣そのものが魔神フェネクスとする説もある。
未だ謎が多い神であり因論派の大きな研究テーマの1つとされている。
編集者 因論派 シェイガン・ヘイロー
原神楽しいね。でもセノくんは聖金虫要求しないでね…?君しか使わないのに集めにくいんだから。
経験値アイテム集まらないネ…ツライツライネ…