単純に申鶴と綾華引けちゃって育成とかで時間がないだけだヨ
異世界の侵食を防ぐため半覚醒状態のまま長い間が過ぎた。
もはや時間の感覚はなく、微睡みの中で世界の綻びを修繕し悪意ある存在を虚無に葬り去る作業を続けていた。
次第に侵食は苛烈さを増していったが、特に覚えていることはなく単純作業を繰り返しテイワットを守っていた。
アビス教団のモノが現れた時もあったが、この空間に耐えられるような能力も持っていないために動くことすらできずに虚無に呑まれた。
俺が揺蕩う空間はあらゆる存在が溶け合い虚無に呑まれていくと形容できる場所だ。そのようにしないと異世界からの侵食をすべて自動迎撃などできない。
そもそも迎撃というよりも敵の出現位置を確定で特大のスリップダメージを食らう場所に固定しているというのが正しい。マハールッカデヴァータが頭を抱えていた死域のような、溶岩地帯のような、高濃度の元素力が蔓延する場所のようなといえば分かりやすいか。
この空間に呑まれないためには無銘剣虚無に対する耐性、つまり無銘剣虚無の使用者としての資格が必要だ。ただしどの神も資格は持っていなかった。だからこの聖剣は貸し出せなかったと言える。資格なしに扱おうとすれば神であろうと死んでしまうだろう。
ふと、侵食が弱まっていることに気付いた。
理由はわからない。これが嵐の前の静けさという可能性もある。念のため、数百年様子を見るとしよう。
異世界の侵食には特に知的生命体が関わっているわけではない。世界は常に揺蕩っていて、どこかの世界とぶつかりそうな時に融合する。ただし世界の揺蕩いかたを知的生命体が変更することはできるし融合を止めることができる。
世界の融合では片方の世界が犠牲になる。犠牲になる世界は一部を奪われて死んだ世界になり忘れ去られる。
こんなことは許すことはできない。だからといって他の世界に犠牲になってもらうのは嫌だと思った。だからこそ、刃王剣によって世界を保護した。互いに侵食の影響が出ないように侵食の際に現れる魔神や怪物をこの空間に取り込んだ。
侵食の影響で生まれる存在がその世界の生命体を殺せば殺すほど世界の防衛力が下がり侵食の速度が上がる。初動が大事だったからこそ月闇の予知には感謝しなければならないな。
侵食が止まった。
世界のすれ違いが収まったのか、それとも何かしらこの空間を避けて侵食の影響が出ているのか、それはまだ判断できない。ここを俺が離れると空間が数年で消滅してしまうだろう。
逆に言えば数年は保つのだ。少しの間離れるくらいならどうにかなるだろう。
「さて、空間から出たら落下しているわけだが、どうするか」
座標が高空で良かったと言ったほうがいいか?
水中ならばまだいい。だが地面の中に埋まることすら可能性としてはあったのならば、高空に出現したのは悪いことではない。そう結論を出して、唯一持ってきた聖剣を取り出す。
刃王剣は要だ。気軽に使うことはできない以上俺が使える聖剣は虚無しかない。
「変身」
《ETERNAL PHENIX》
《虚無、漆黒の剣が無に帰す》
覇剣ブレードライバーに世界樹の断片を本と化した物、ワンダーライドブックを装填。そして虚無を引き抜くことで聖剣の力とワンダーライドブックの力を融合し増幅させる。結果として鎧を纏うがこれは副次的な効果だったりする。
虚無を使って変身した姿はファルシオンが正式名称だが、だいたいの知り合いはフェネクスと呼んできていたのと虚無を使うことは少なかったためファルシオンと知っているやつは…マハールッカデヴァータくらいだろう。
「飛べるんだよなこの姿だと。いや、最光とかも飛べるが」
翼を広げて地上を見る。
特徴的な地形から望風山地だというのは特定した。若干地形が変わっているような気がしないでもないが、まあここはモンドだろう。
「ああ、変わってないなこの風は」
モンドは常に風が吹いている。そよ風だが、とても安心できる風だ。
「探索して、モラを探すか…」
昔はモラを貰いまくってたから色んな場所に宝箱に入れて隠していた。誰かが見つけて持っていってもいいし死蔵するよりも経済を回してくれたほうがいい。それなりに探すことが試練にもなるから報酬としてもいい具合だろう。宝盗団に渡ることもあるだろうが強いやつは国が雇って囲い込んだりしてるだろうし結局やりすぎれば宝盗団は壊滅させられる運命にある。悪人が栄え続けることはないのだ、やはり。
──────────
「思っていたよりも多かったな…」
30箱ほど精巧な宝箱を開けてモラを確保。いくつか門番役にしていたトリックフラワーが急凍樹、爆炎樹、迅雷樹になっていたあたり、放っておかれた結果試練の難易度が高くなりすぎたのだろう。それと謎の巨人兵器が周りを回っていたりしたのも気になった。なんだあれ。
「うん?アビスのやつらの臭いがするな」
30万ほどのモラといくらかの宝石をしまって臭いの元に飛んでいく。アビスは駆除しないと碌なことにならない。崖から飛び降りながら金髪の少年と白い小動物がアビスの魔術師に追われているのを見つけた。
「使徒やらではないからマシか」
どうやら弄んでいるようで笑いながら瞬間移動を繰り返しているようだ。性格悪いなアビスの魔術師。
「元素力を扱えても属性によってはアビスの魔術師のシールドは割れないからな…不幸と言うべきか」
だがまあ、死にそうなやつを見過ごすなんてのは嫌いな行為だ。助けるか。
「カラミティストライク!」
回転しながら突進して切り刻む。無銘剣虚無はその特性上、シールドのダメージ吸収が効かない。シールドを貼って油断していたアビスの魔術師は驚愕しながら最期の光景に俺を焼き付けただろう。
「大丈夫か?」
金髪の少年と白い小動物に声をかける。小動物と思っていたら小さい精霊みたいなやつだったな。
「お、おう!ありがとな!」
「ありがとう。君は?」
ふむ、名前を言っていいものか。いやまずは変身を解くべきか。ブレードライバーは外して仕舞っておこう。元素力を扱えると収納が楽だったりする。理屈はわからないが。
「俺のことはデザストと呼んでくれ」
魔神としての名前を言うのは避けた。伝承が残っていたりしてどう扱われているのかわからない以上は、本来の名前を言うことで影響が出るかもしれない。
偽名に選んだのは昔弟子にした人間の名前だ。カラミティストライクを共に考えた男だ。
「オイラはパイモン!それでこっちが旅人の空!」
「よろしく」
「ああ、こちらこそ」
旅人の空くんと握手をする。
うん?なんか人間にしては…何かが違う気がするな。
「君たちはどこに行くつもりだ?」
「とりあえずモンド城に行くつもりなんだ」
「モンド城ね。俺も着いていっていいか?」
「いいぞ!」
このパイモンというやつは元気だな。なんか幼児みたいというか。
「あ、でもその前に七天神像に行くんだけどいいか?」
「まあ俺もここは久しぶりでいろいろ巡りたいからいいぞ」
ここに来るのは久しぶりのはず。いや俺は何年あの空間に居たのかわからないが。
「じゃあ行こうか」
「おう!デザストもオイラに着いてきてくれよな!」
「わかった」
空くんは少々無口に感じる。まあそのくらいなら苦痛には感じないな。
「デザストは久しぶりって言ってたけどどのくらいここを離れてたの?」
「そうだな、だいたい…10年以上だな」
嘘は言っていないはずだ。感覚的には千年以上は離れていたと思うが。
「10年も離れてたのか!でもどうして戻ってきたんだ?」
「今は生きてるかわからないけど友達に会いに、な」
「連絡は取ってないの?」
「結構自由人だからな。たぶん生きてるとは思うけど連絡とかは取れた試しがない」
バルバトスはなぁ…神出鬼没で住所不定なやつだから手紙とかはなかなか出せない。モラクスはいくつかの仙郷を回れば会えるし固定の場所に住んでる神は多いが。
──────────
「やっぱりか」
七天神像で空くんが風の元素力を扱えるようになったのを見て確信した。恐らく空くんはこの世界の外側から来た存在。そして普通の人間ではないのだろう。とはいえ少しの話で善性の存在なのはわかっているためどうこうしようとは思わない。
「風元素はかなり汎用的に使える。空くんは使いこなせるようになるといい」
拡散反応が起こせるため4属性の神の目持ちの支援などができる。あとは邪魔なものを吹き飛ばしたり風の種を起動したりと使いやすい。
「デザストって神の目を持ってる知り合いがいるのか?」
「それなりに多くは居たさ」
魔神戦争の間は悲劇も多く、その分強い願いも多かった。悲劇があるから強い願望が産まれるのか、強い願望のために悲劇が起きるのかはわからないが神の目を持つ存在は多かった。
「ま、神の目は神に認められた願望の象徴。そんだけの願いを抱くのは並大抵のことじゃない」
とはいえ、七神がすべて管理しているとは思えない。恐らく天理側がシステムを組んでいるのだろう。俺は天理には関わったことも関わりたいと思ったこともないが。
「願望、夢、目標、憧憬。よく言えばこうなるが結局のところ欲が関わってくるからな。神の目を持つやつがいいやつとは限らない」
「悪人にも神の目は授けられるのか?」
「神にとっては悪人も人なんだろ。それに神の目を与えられたあとに悪に堕ちたやつもいるだろうしな」
何人か堕ちてしまったやつらを知っている。神の目を持った存在には一般人は太刀打ちできない。だからこそ神の目を利用する悪人はどうしてものさばる。
「神の目を持ったやつには気を付けろよ?強すぎる願望は時に周りの人間を傷付ける」
「強すぎる願望か…」
「願望…」
まあそうならないためにも元素力を扱える武器を作ったりしたんだが。
「そういえばデザストは元素力を使えるんだよな?でも神の目は持ってないのか?」
「いや、この剣は元素力を扱える特別製でな。炎元素だがちょっと特殊なんだ」
「ええ!?元素力を扱える武器って高価なんだろ?い、いくらするんだ?」
「さあ?」
「さあ、ってなんだよ!」
やっぱり高価か。ホントに作るのに手間がかかるんだよな。そもそもの素材も高いしモラも湯水のごとくを使うしでコスト面が悩みどころだったが今もそんな感じか。
「元素力を扱える武器ってあるんだ」
「えっとな、確か魔神フェネクスが考えた方法とそれを簡略化した方法があって簡略化したのは比較的安く作れるんだけど元素力が使える期間は半年くらいなんだ。それでもモラがすごいかかって一般人じゃ買えないんだ」
「魔神フェネクス?」
おっと、俺の話題。少し話を聞くためにも黙っておこう。
「剣の魔神って呼ばれてるんだけどな。最強の魔神らしいぞ。活躍したのが2000年以上前の魔神戦争時代で20以上の魔神を倒したりアビス教団の魔物を殲滅したりめちゃくちゃな伝承が残ってるんだ」
2000年も経ってるのか…。大丈夫か?バルバトスは死んでも死ななそうだしモラクスも死なないように立ち回るがそれ以外の知り合いは死んでるとかはあり得るぞ。
「ま、めちゃくちゃな伝承すぎて複数の魔神が同一視されてるとかが一般的だな。それと魔神フェネクスが考えたほうのは永続的な元素力武器を作れるけど安く作れるほうの100倍近くのモラがかかるらしいぞ。モラは触媒にも使われるからな」
人間が使うなら安く作れる簡略版のほうがコスパがいいな。技術が発展してより安く大量に作れれば軍だとか騎士団だとかに供給しても安上がりか…?いやそれだけの素材の採集が大変か。
「じゃあデザストはお金持ちってこと?」
「あ!そうなるな。へへっ、デザスト~。おいらモンド城に着いたら何か食べたいぞ!」
「まあ今手持ちはそれなりにあるから奢ってもいいぞ」
30万モラもあれば1ヶ月は生活できたはず。昔よりもモラの価値が下がっていなければの話だが。
申鶴綾華と組み合わせるならやっぱりスクロースディオナでいいですかね?そんなにキャラも聖遺物も持ってないんで悩んでます。あとアビサルヴィシャップの群れはクソすぎる