殺し屋JKと異端なDS   作:りこりこ・りこりこ

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01 Most difficult??

死国(・・)

 

 

一体いつからだろうか。

日本列島を構成する島の1つがそう呼ばれる様になったのは……。

 

四つの県から成り立つ故に四国。

そして付随する多数の島々を全て合わせて《四国地方》と呼ばれる場所。

 

当然、都心と比べたら大分距離が離れてるし、田舎だと言われるし、そもそも四国の県名を言えない日本人も多数見受けられるが、それでも素晴らしい場所だ。

温泉だって良いし、うどんだって美味しいし、踊りだって楽しいし、砂浜だって綺麗。

 

四国の魅力なんて知る人が上げ出したらキリがない。そんな素敵な場所の筈なのに、一体いつからなのだろうか?

死国なんてホラー映画のタイトルの様な異名で呼ばれる様になったのは。

 

 

 

 

 

 

因みに、当然ながら普通の人、一般人は四国を死国(そんな風)な物騒な異名で呼んではいない。

敢えて呼ぶとするなら……四国の中で有名どころで言えばギネス記録にも載った世界一長い鉄道道路併用橋の瀬戸大橋から直ぐ降りた県、香川県。人呼んで《うどん県》とかだろうか? 日本一面積が小さい県でもあったりして、そっち方面でも周知されているかもしれない。

いやいや、徳島だって愛媛だって高知だって、負けてない。書き出したら止まらない、止められない、知れば知る程魅力のある場所だから。

 

 

兎にも角にも、四国地方の事を死の国なんて呼ぶ者は限られている。

 

 

 

 

そう―――()の人間だけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな不名誉な名付けをした者に、盛大な恨み節を頭に浮かべながら長~~いため息を吐く者が此処四国のとある建物の中に居た。

 

 

「はぁぁぁぁ……、初めての四国なのにぃぃ……、うどん県~、瀬戸大橋ぃ~、鳴門海峡ぉ~、渦潮ぉ~、桂浜ぁ~、道後温泉ンンン~~~」

 

 

本日、何度目になるか解らないため息を吐き、愚痴を零している。

そんな愚痴に反応するかの様に、装備している無線から声が聞こえてきた。

 

 

『おい千束。愚痴愚痴馬鹿馬鹿言ってないで集中しておけ。連中の動きがあった様だぞ』

「………うどん~~」

 

 

叱責する様に言うのだが、当の本人には聞こえてない様なので続けざまに言う。

ゆっくりしている場合じゃないから。

 

 

『そんなもの終わったら幾らでも食えば良いだろ。着くまでは たきなの心配ばかりしてた癖に、もうすっかり忘れたのか? 地方支部(こっち)との絡みはゼロで、即興のチームだから、連携取れるかどうかって課題もあるんだろ? たきな(アイツ)は大丈夫だと断言してたが』

「そんな事無いもん!! 心配じゃなくて私もたきなの事、信用と信頼をしてるだけだもんっ! とっとと終わらせたら、一緒に観光して帰れるんだよねっ!? 私下調べとかバッチリだから、思う存分堪能して帰るよ!? メッチャ時間かけるよ!?」

『……まぁ、今回の結果次第じゃ、たきなはDAに戻る手筈。最初で最後の観光かもしれないが、さっさと終わらせて、その分楽しんで来れば良い』

「…………ぅぅ~」

 

 

最初で最後かもしれない。

その言葉を聞いて、千束の口が吊り上がり尖る。

 

 

DA———正式名称《Direct Attack》

 

直訳で、直接攻撃。

テロリスト等の犯罪者を暗殺する事で、テロ・犯罪を未然に防ぐ治安維持組織である。

国を護る公的機密組織であり、政府に協力をするが表舞台には姿を見せない。故に警察などの一般的な治安維持組織とは異なり、独立した特権を有する。

 

彼女は……千束は、そこに帰ってしまう相棒の事を想い、憂いているのだ。

勿論、四国地方を楽しめない現状にも同様にだが。

 

 

 

―——たきなの望みはDAへの復帰。本人もずっと望んでいるし願っているし、それを叶えて上げれるというのなら、何とかしてあげたい気持ちだってある。でも、たきなは私達の所に来てほんの数日程度……折角来て相棒になって、仲良くもなったのに……。

 

 

 

仲良く云々は千束の感想に過ぎない心情。

でも、ヤッパリ、お別れともなると寂しいし辛くもなる、と言うものだ。

 

 

「んっん~~~、暗い気持ち止め止め!!」

 

 

バチンッ! と両頬を千束は叩いた。

これでずっとお別れ、と言う訳ではない筈。

たきなは、きっとまた遊びに来てくれる筈。

たきなが戻る部隊。DAの実働部隊通称【リコリス】の面子(フキ)もたまに顔を見せる事だってあるのだから、それと同じだ。

直ぐにまた会える。そう無理矢理にでも納得し、信じてことに当たろう! と気合を入れる。

 

 

 

この時の千束は信じて疑わなかった。

 

 

 

 

死国なんて物騒な名をつけられて、色々と情報不足で、未知数な相手だったとしても。かなりヤバい任務だったとしても。

 

己の力量、そしてたきなの力量、リコリスと言う組織の強さ。

全てが合わさってると言って良いこの布陣で挑むこの指令(ミッション)は成功で終わる、と。

そして、やっぱり悲しいかな……別れの時が直ぐにやってくると。

 

 

「さぁ~~て、折角の初めての四国地方! 物騒な名にしちゃった人でも拝みに行きますかねぇ」

 

 

グッ、と身体に力を入れた。

 

心情的には色々と嫌な気分ではあるが、実は任務そのものは嫌じゃなかったりする。

 

何故なら、あのDAから下される指令と言えば基本的に《抹殺(ターミネイト)》だと言うのに、今回は例外中の例外《不殺(オンリーアライブ)》だったから。

 

DAは凶悪犯を処刑し回ってる殺し屋とも揶揄される組織。

 

因みに支部が違えど同じ所属である千束の信条は、DAのそれをヨシとはせず、絶対に《いのちをだいじに》の不殺(オンリーアライブ)

※これは彼女が雇い主(DA)からの指示を無視できるだけの能力を持っているからこそできる芸当でもある。

 

今回に限っては生け捕りをメインとしているから、不殺な千束にとっては正直願ったり叶ったりで、余計にヤル気が出るというモノなのだ。

そして、不殺だからこそ早く終わらせたい、と言う気持ちもある。

 

想定外な事が少しでも起きれば、直ぐに抹殺に切り替える可能性も捨てきれないから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁぁぁ………」

 

 

場面は変わって、ここでも長い長いため息が1つあった。

モニターの画面を見ながら長い長いため息を吐き続ける男が居た。

そんな彼の事をここで紹介しようと思う。……いや、自己紹介してもらおう、と言うのが正しい。

 

 

 

―――突然で申し訳ないが、わたしは転生者だ(・・・・・・・・)

 

 

 

何をラノベみたいな事言ってんだ? 

誰に説明してんだ? 

 

と頭の心配をされるかもしれないが、スルーを推奨する。と言うより願いたい。

 

そして、とあるビルの一室、そのパイプ椅子に深く腰掛けて、モニターを見つつため息を吐く男……見た目少年? は間違いなく転生者、と断言させて頂こう。

 

 

 

【転生者】

 

 

 

つまり、一度死んで神様が色々と宜しくしてくれて、再び別の世界に落とされる、と言うありふれた異世界転生モノが今生の彼の始まりである。

 

最初の死こそ知覚出来なかったが、そこから先は全部覚えている。

 

この世界に落ちてくるその瞬間まで全てを覚えてる。

だから、異世界モノの定番であるチート(笑)な力も神様(笑)の気まぐれも全部覚えて、テンションは当然最高潮(MAX)

一度や二度どころではない。あの憧れた事のある展開がまさか実在して、自分自身の身に起きるなんてまさに夢の様だ。

確かに死んでしまったのはショックだった。それなりにショックだったが、充実していた訳でもなければ、親ももう居なかったので、直ぐに消し飛び、意気揚々とこの世界に降り立ったのだが………、ものの数日で落胆していた。

 

 

何故なら、異世界転生モノだと思っていたのに、降りてきたのが明らかに地元……厳密に言えば違うが、自分が生まれ育った国、日本だったから。

 

 

異世界転生したつもりが、まさかの日本へリターン。

チート能力駆使して無双! とか息巻いてたのに、まさかの顔なじみな日本人の皆さん。

地方出身だから、正直心のゆとりは持てた気もしなくはないが激しく落胆した。

 

そして更にもう1つ落胆要素を言えば、転生モノの定番。授かるチート能力の事。

……最初に聞いていたチート能力とまた違う、と言う事が判明した。神様(笑)は怠惰だったらしい。

 

 

無敵で楽勝で、無双できるとワクワクしてた部分も無いとは言えない。……と言うより、そればかり考えていたのに、どうやらそれは難しいらしい。調子に乗ると危ないらしい。

仮に最強無双(笑)能力を得たとしても、現代日本でソレが発揮されるか? 使う場面あるか? と聞かれたら、首を横に振る……。

 

ああいう能力は、異世界でのモンスターや敵国に発揮してなんぼのモノ。

平和な日本でそんな事しないし出来ないし、物凄く萎える。流石に国家権力にケンカを売る様な真似はしたくない。

 

 

そしてそして更に更にもう1つ落胆要素を言うと……、この見た目。

明らかに小学生? と見紛う容姿。周りの建物は勿論、周囲の人達が巨人に見えると思ったのは気のせいなんかじゃない。いきなりこの容姿でこの世界に生み落とされたのだ。いや、放り出された、の方が正しい。

 

騒ぎにならなくて良かったと安堵したのは事実だが、流石にこれは無いのではないか? と強く思った。

そして、その後の事は本当に大変だった。言葉では言い表せれないくらい、文章にすれば超超超長文となる事間違いなし。語彙力が乏しく無ければ自伝として書き記したくなる様な濃く、長い時を経て、今に至っている。

でも、だからこそ落とされた先が日本で良かった、と言えるのかもしれない。

 

別の場所だったら、上手く立ち回れていた自信がある……とは言えないから。

いきなり転生して、そこからあれよあれよと言う内に、何でもかんでもご都合主義の如く上手くいくとは思えなかったから。

 

 

 

能力といい、転生先といい、見た目といい正直、怠惰と言うか明らかな手抜きと言うか……、どれだけてきとーな神様だ! とも思えて頭を抱えた。

それで、紆余曲折あり今に至るのだ。

 

 

「はぁ~~~~~~~~~~~」

「なんじゃい、何度も何度もクソ長いため息吐いて」

 

 

そして、そんな大変だった彼にも協力者……と言うより、彼の見てくれから鑑みると、所謂保護者になってくれた様な人は居た。そんな2人を紹介する前に―――目の前の緊急事態の対処が先だ。

 

 

「いーや、また何か来たからだよ秀爺(ヒデじい)。反応あった。……ヤクザっぽい人の次はグラサン似合う外国人。……それで今回は何が……って、えぇぇぇ? アレって……………女の子?」

 

 

何かが来た、とゲンナリしつつよーく監視モニターを見てみたら……ビックリ。そこに現れたのは、制服姿の……沢山の女の子たちだったから。

 

 

全員が同じの制服を身に纏っていて、ぱっと見何処かの女子高生? なのだが、ここの見てくれは廃ビル。そんな場所に女子高生が来るわけがないし、その装備は明らかに普通の女子高生のモノじゃない。

何せその手にバッチリ握られてるのは黒光りしているのは拳銃だから。

 

 

「おお~、攻めてきた組織の規模が以前とは数の桁が1つくらい違うかのぉ? つまり、ここを本気で調査しにきた(攻めてきた)、と言うヤツたみたいじゃな。……国が(・・)

「規模どころか性別変わっちゃってるよ。……って、そんな面白おかしく言わないで。これまでだって、撃ってきてるのって、実弾だったんだよ? ひょっとしたら秀爺撃たれちゃうかもしれないんだよ? わかってる? いや、ちょっとまって最後なんていった?」

「そんな事にはならんわい。……ここにゃお前さんが居る。それだけで十分」

 

 

かっかっか、と豪快に笑ってみせる秀爺と呼ばれた初老の男。

短髪の白髪と、蓄えた顎鬚がトレードマークの現地人。

 

少し説明すると、彼がこの日本に降り立ち、これもまた紆余曲折あって知り合いってからと言うもの、色々助けて貰ってる。

助けてるのは自分も同じなので、ある意味対等な関係とも言えるだろう。

でも、見た目完全に子供だから、と殆ど保護者の様な立ち位置も振舞ってくれてたりする。それはそれで都合が良いから。

 

 

 

 

「あの女子(おなご)たちは通称《DA》。日本の警察とも公安とも違う独立治安維持組織じゃな」

 

 

 

決してスルー出来ない内容の話をポロっと口にした秀爺。

なので、ちょっと強めに問い詰めてみると、あっけらかんと説明してくれた。

これまでの様な相手ではなく………

 

 

「………つまり、国がここ攻めてきたって事でOK? いや、何で!??」

「蛇の道は蛇。色々と調べはつくもんじゃよ。寄る年波。……でも、まだまだ(こっち)は冴えとるぞい」

「全然答えになってない! 話聞いて! どーしてお国様が攻めてくんのさ!? ってか、物騒過ぎない!? あの子達!! 一体何なのアレ!」

「平たく言えば殺人許可書を持っとる部隊じゃな」

「俺の知ってる日本に、そんな物騒な部隊は無い!!」

「それはそれは随分齟齬があるのぉ~」

 

 

薄々感じては居たが、やはり自分が知る日本とは違うという事を実感する。

 

 

その間も、秀爺はPCをカタカタと叩きながら説明してくれた。

 

それにしても、日本であっても自分の知る日本じゃないという事実は、結構驚愕な事だ。

勿論、幾ら裏社会とは言っても、基本的には銃社会な筈がない日本。

あの妙な連中に押し寄せられてる時点で、変な気はしていたが、ある意味ハッキリしたのでスッキリもしている。

 

 

「日本屈指———と言うよりは最高峰だと言って良い情報統制。……相変わらずの凄まじいの一言。世間一般的には非公開って事になっとるが、DAの戦闘・任務で起きた損害、つまり殺人も破壊も表向きは全て事故、はたまた美談の類って事で処理されとるらしいの」

 

 

饒舌に説明に入る秀爺を横目に深くため息を吐きながら言う。

 

 

 

「………へぇ。流石は元ヤクザで、組長もやってて、更にライセンス持ちのガンスミスで、料理人もやってて、警察にも伝手があって、弁護士から検事から医者から……etc。……なんでも人な秀爺。正直、ここで色々やってたら、あんなの(・・・・)がやってくる、って解ってた上で、放置してた様な気がしてならないんだけど?」

「おおおお、あの電波塔もDAの仕事らしいぞ。それも6~8歳の子供の仕事らしいぞぃ! これは知らんかったなぁ!」

「だから話聞いて!! あの(・・)とか言われても知らんから! おれ、四国(ここ)から出た事ないし!!」

 

 

この陽気な爺さんの底は本当に知れない。

何せ、得体のしれないこの転生者に色々と世話をやいたりやかれたり……。転生先のこの世界案内人か? と思ったくらいだ。

 

それは兎も角……悠長に遊んでる時間はもう無さそうだ。

監視モニターを一瞥すると、頭を掻きながら重い腰を上げた。

 

 

「まったく。この話はとりあえず後でね。……はぁ、折角秀爺に紹介して貰った此処だけど………流石に住むとこ変えた方が良いって事なのかなぁ? 結構気に入ってたのに……。大騒ぎしても周囲にバレないのって、よくよく考えたら、あちらさんにとっても好都合、って事だよね……」

 

 

それなりに郊外から離れた場所に位置している。でも車があれば全然不便じゃないし、たまに遊びに行くのも程よい距離で………なのだけど、攻めて来られる事を想定したとすれば、余計な心配かけなくて済む、と言う点もある。

 

そもそも、攻めてこられる事なんて想定する訳がないけど。

 

 

「ふむふむ。成る程—————。お前さんが活躍し過ぎたせいも有った様じゃな? こっちで暗躍してた犯罪者、根こそぎ絶滅させたから、その余波でこういう事態になってる、って感じじゃ。本来ならばDAの仕事。犯罪組織やテロ行為は速攻抹殺されてる国であるのにも関わらず、認知していない勢力が潰しているとでもなれば………まぁ、御察しじゃな」

「絶滅させたって、物騒で失敬な。オレはただ国民の義務を果たしたまでだよ。そもそも命まで奪ってないし!」

「連中からすれば、死屍累々……。恰好の隠蓑の筈だった田舎地方での潜伏が全て台無し。引き渡された末路は言うまでも無し。……成る程、死の国(・・・)か。言い得て妙じゃ。宛ら、死の国の王はお前さんじゃな?」

「失敬な!!」

 

 

物騒な物言いに、抗議の手を挙げる。

話から分かる通り、悪いヤツを引っ捕まえているだけなのだ。

転生してきているから、戸籍不明、住所不明、と怪しいヤツには変わりないのは事実だけど、その辺りは秀爺のおかげでクリアしている。

 

だから、治安維持と言うのなら結構勲章ものの活躍していると言って良い筈なのに、このありさま。

 

 

「ちょっと待ってちょっと待って! 何度も言うけど、ふつーにオレ良い事してるんだからね? 最初はひったくりからだったけど、しっかり捕まえたし、誘拐犯も捕まえた! その後らへんから何かその後は黒づくめな連中が出てきたから、かたっぱしから返り討ちにして………年齢が年齢だから雲隠れしたけど、これって表彰ものなのに、何で国側から攻め込まれなきゃならないわけ!? 人助けして国から狙われるとか意味わかんない! 結構凄いんじゃない? 治安維持ってヤツに貢献してんじゃない!?」

「言った筈じゃ。本来ならば、それはDAが対処すべき事。犯罪発生率が極小の日本。その肝であるDAより先に、の。……短時間でここまでやってしまった事があまりに凄すぎた。って事じゃろう。上手く情報遮断も出来てたって事でもあるか。現地に乗り込んでくる程じゃからのー」

「……補導される見てくれだから、その辺は意識してたけど、それが仇になった、ってこと……?」

 

 

何度目か解らないため息を吐いたのを見届けた後、秀爺は開いていたPCを閉じた。

もうフザケンなし、真面目な顔で眼鏡をはずして説明をする。

 

 

「お前さんは、確かに凄い事をやったよ。こんな片田舎の町でなんかしようって連中は少ないと思われがちじゃが、決してゼロではない。木を隠すなら森、ではないが、田舎だからこそ隠れて出来る事がある。……ほんの些細な事から始まり、積み重ねていけば、軈てはより大きな存在になる。ここで国内外問わずの裏の者を処理続けた結果――――その力は相手方にとって、……()にとって脅威に映ったんじゃろ。雲隠れして明かしていない以上は、正体不明(・・・・)で通ってるから猶更な」

「……始まりは偶然居合わせたのばっかりだった筈なのに。ただの人助け、ちょっとした人助けだったのに。……ひょっとしてだけど、秀爺を助けた時に主に目ぇつけられたんじゃない? アレがターニングポイントだったりした?」

「強過ぎる力は当然お上の目に止まる。活かすも殺すも上次第で正直早計とは思うんじゃが……、まぁ DA(アレ)を見たらそういう事じゃろ」

「うんうん。いい加減解る解る。都合が悪いと、話全然聞いてくれなくなるよね、秀爺って」

 

 

腰を上げたのに、降ろしたくなってくる。

まだまだ若い……と言うより、幼いのに何で年寄りみたいな感覚になるのだろうか。

勿論、目の前のお爺様のせいだ。

 

 

「あ、入ってきた。……もういいや。招待してここでドンパチやる?」

「それは御免被る。……終わったら色々と話してやる。けむに巻く事はせずにの。これでどうじゃ?」

「りょーかい。それ楽しみにしてるよ」

 

 

ぱちんっ、と指を鳴らせると、彼はゆっくりと扉を開けて、外へと出て行った。

そんな後ろ姿を目に焼き付け、軽く息を吐く。

 

 

女子(おなご)の暗殺軍団か、(わらべ)の怪物か。……果たしてどっちが異常なのか。――――久方ぶりにミカから連絡があった事もそう。……もしかしたら、もしかしなくとも鉢合わせ(・・・・)……か。どうなる事やら……」

 

 

年甲斐も無く燥いでる自分が居る。

こんな気分になったのは長い人生でも初めてのこと。

もしかしたら、若い頃にあの少年と出会っていたとしたら、周囲と同じく恐れていたかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Αチームにて行動をしている たきなは仲間たちと共に細心の注意を払いながら奥へ奥へと侵入。

 

 

「(…………問題なし)」

 

 

このビルに突入した後も順調だと思う。

 

内部構造は頭の中に叩き込んでいたし、監視カメラをハッキングし、DA本部がそれを確認、的確な指示を出す事によってしっかりと統制もとれている。武器の手入れも問題ない。

一抹の不安が有ったのは、部隊の熟練度も申し分なし。

自分が以前まで居た部隊とも何ら遜色ない。

以前の任務で、人質に取られてしまった事が有り、それなりには たきなも心配していたのだが、その心配は杞憂に思えている。

 

加えて、後から千束が合流する。

まさに完璧な布陣だ。DAの本気が伝わってくる、と言うものだろう。

 

 

「(でも、油断は決して出来ない。……あの話が本当だったら、って考えたら……)」

 

 

四国が死国と呼ばれる所以。

 

ある時期から、この四国で活動をしていた犯罪者たちが軒並み消されたとの話。

警察関係が捕まえた、と言う情報も上がってきているが、その数が極めて異例。

 

巨大なナニカが、小さな闇を食い漁り、大きく、大きくなっていってる様にも思えるのだ。

 

 

「どうした新入り。不安か?」

「いいえ。違います」

 

 

この部隊のリーダー、秋がたきなに話かけた。

 

 

「じゃあ武者震いってヤツか? この任務を完遂させる事が出来たら無条件で元の場所に戻れるって話は私も聞いてる。……それにあんたは、前の武器密輸の事件で暴走したリコリスだって話もな」

「…………」

 

 

一度のミス。

否、たきなはアレが最も合理的な手段であり、結果的に言えば仲間も死なせずに済んだのだからミスだとは思っていない。

ただ、唯一言えるのは司令の無視をしたと言う点。

でも、それは後に聞かされた話ではあるが、DA本部がハッキングされ、無線通信が不可能になってしまった、と言う考えられないトラブルが原因だとも聞いている。

 

 

【仲間を救えた】

 

 

千束もそう言ってくれた。

だからこそ、自分は間違っていない。と強く思っている。

 

 

「司令からの指示を無視したスタンドプレー紛いな事をするのは容認出来ない。解っているな?」

「勿論です」

「なら良い。過去に何をやらかそうが、()問題を起こさなかったらそれで良い。忠実に任務を遂行する。それだけを頭に入れておけ」

「!」

 

 

それを聞いて少しだけ驚きの表情をするたきな。

過去を聞いてきた時、少なからずそれ関係でなじられたりするだろう、責められたりするだろう、と思っていたのだが、拍子抜けするくらい何も無いから。

 

 

「実はね? リーダーは貴女の事気に入ってるんだよ」

「?」

 

 

ぼそっ、と教えてくれたのはさっきまで前に居た眼鏡をかけ、髪をボブカットにしてる少女だ。

 

 

「命令違反云々よりも、仲間を救った事が重要だって。勿論表立っては言わないけどウチのリーダーは、仲間を失う事を極端に嫌うからさ? こんなご時世で、それも無理な話って分かってても、それでもやっぱり誰も死なせたくないみたいで。……メリハリはつけるけど、情に厚い所もある、って事だよ」

 

 

うんうん、と頷きながら説明をする。

それを聞いた たきなは、以前千束に言われた事を、また思い返していた。

 

 

【仲間を救った!! かっこいいって!】

 

 

他の誰もそうは思わず、当時のリーダーであるフキには殴られた。

他の面子には小馬鹿にされた。自分は間違っていないと自信を持って言えるし、人事異動も適正じゃないとも言える。

 

でも、また肯定してくれた事が無性に嬉しくてたまらなくなってくる。

そして初めての経験だ。メリハリは着けているとはいえ、情に厚いリコリスの部隊に所属……と言うのは。

 

 

「ばかやろっ。集中しろ」

「あいたっっ!!」

 

 

いつの間にか、こちらに寄ってきて お喋りな彼女に対してゴツンッ、と頭にげん骨を落とす。

たきなは、ハッキリとその顔を、その表情を見た訳ではないから解らないが………。

 

 

「ふん。命令違反はするなよ」

 

 

そう言ってるこのチームのリーダーの顔は何処か赤いモノになってるだろう、と思ってしまっていた。そして、自分も自然と笑みを零す。

 

 

教えてくれた様に、願っている様に、……誰一人欠ける事なく任務を遂行する、と言う強い決意を持てた。

 

 

あの時(・・・)とは違う意味で、誰一人欠ける事無く、全員で任務を遂行しよう、と。

 

 

 

だが、そんな彼女の決意は、期待の全ては……一瞬で霧散してしまう。

 

 

 

 

 

 

「!!」

 

 

初めに照明が全て完全に落ちて周辺は闇に包まれた。

 

警戒する間もなく同時に、あっという間に窓のシャッターの全て降りてきて、外の光も完全に遮断された。

 

 

「防御陣形!」

 

 

その一言で、皆が機敏に動く。

装備の武器備え、暗闇でも対応できる暗視ゴーグルを手早く装備し、最大級の警戒をした。

 

 

訓練された兵士であるリコリスはこの程度で動揺する事は無い。……でも、今回ばかりは勝手が違う。

 

 

 

何せ、ここは魔窟———死の国であると畏怖されてきた場所への攻勢なのだから。

 

 

 

「(……全部、セキュリティは無力化した筈だったのに、見られてた?)」

 

 

突入前に、監視(セキュリティ)の類は全て網羅し無力化した筈だった。

日本一と称される凄腕ハッカーのお墨付きまで貰った上での突入、と言うより潜入だ。なのに、バレるにしても早すぎる。あまりにも早すぎる。

つまり、機械で視ているのではなく――――。

 

 

「ゃ―――――」

 

 

そして、気づいた次の瞬間には、後方を陣取っていたリコリスの1人が崩れ落ちた。

あまりの早業。人の気配など微塵も無かった筈なのにも関わらず、一瞬の内に相応に鍛えているリコリスを昏倒してみせた。

 

 

「くッッ、サツ――――」

 

 

リーダーが手を伸ばすが、続きざまに左右の守りを崩された。

 

1人、1人、と何も抵抗出来ずに崩れ落ちていく。

何が起きているのか、全く知覚出来ない。視界はハッキリ見えている筈なのに。

 

 

「(一体なにが!? 狙撃、サプレッサー? いや、ここまで無音なのは有りえない)」

 

 

 

今、一体何が起きているのか。

それを理解する間もなく、瞬く間にΑチームがリーダーとたきなを残し壊滅。

倒れているリコリスたちの安否の確認も出来ず、ただただ、たきなとリーダーは素早く背中合わせになって死角を潰した。

 

 

そして、慌てる事なく、じりじりと動き始め―――後ほんの少し先に非常口がある場所にまで歩を進める。ゆっくり、ゆっくりと。

仲間たちが倒され、生死は不明。……でも、どうにか気を落ち着ける事が出来ているのは流石の一言。ここで自分達までやられたら、助けれるモノも助けられなくなる。人一倍仲間想いだからこそ、必ず助ける為に冷静に、最善を選ぶ事が出来る。

 

 

そして数秒経過。

どうやら、襲ってこない所を見ると、ある程度のクールタイムはある様だ。

 

 

 

「ちぃ、ここまでヘビィなのは初めてだよ。……無線も繋がらない。一体どーなってやがんだ。怪奇現象だって言うのか?」

「……私も初めてです。相手の人数も解らない。武器も解らない。彼女達が何故倒れたのかも解らない。……こんなこと、初めてです」

 

 

軽口を飛ばしでもしないとやってられない。

幾ら落ち着ける、冷静になれるとは言っても限度がある。

 

そして、久しく忘れていた恐怖心が、襲ってきている事にもある。

 

ニンゲン相手ならやりようがあるし、対応してやる気概を持ってるが、ここまで神出鬼没な早業でこれだけの人数を…………ともなれば話は別だ。

 

最善を尽くす。仲間たちを諦めてない。……最後の手段には玉砕覚悟をも選択肢に入れている。

 

でも、相手がどこにいるかも解らないのであれば特攻も何もない。玉砕ではなくただの自殺、無駄死にだ。

 

 

「そういや、ここは死国、だったっけか……? 言い得て妙だよ」

 

 

息遣いが荒くなる。

恐怖を何とか押し殺し、敵の正体をどうにか掴もう、それでいて退路も確保しようと目を凝らしつつ、漸くたどりついた非常口の扉に手を伸ばそうとしたその次の瞬間。

 

 

「ギ―――――!!?」

 

 

次は自分の番が来た。

何をされたか解らないが、それでもこの凶悪なナニカは相手の意識を一瞬で刈り取るだけの威力がある。

 

 

「がぁ!!」

「ッッッ!!?」

 

 

でも、薄れゆく意識の中で、最後の力で思い切りたきなの身体を押し、非常口の扉の向こうへと突き飛ばした。

体格差もそれなりに有った事もあり、たきなは簡単に外にはじき出されてしまう。

 

 

「に、げ―――――」

 

 

 

たきなが、外に出れたのを見届けると――――ぱたり、と倒れ動かなくなった。

 

 

「そんな!!」

 

 

たきなは立ち上がり、手を伸ばそうとしたが、その扉は勢いよく閉じられてしまった。

あの暗闇の世界から、光の差す非常階段に出られたのはそれなりの安堵感があるにはあるが、自分を残して他が全滅してしまった、と言う事実が背にのしかかり、恐怖と混乱が最高潮に達する。

 

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ。ふっ、ふっ、ふっ………」

 

 

魔窟の入り口。

閉じられた扉はまるで怪物の口の様に見えなくもない。

それでもどうにか息を整え、このまま1人で逃げる訳にはいかない、と己を奮い立たせ、背を壁に着けつつ、扉のノブに手をかけた―――が、全く動かないのだ。

蹴破ろうにも、このまま無防備に突入して勝算があるだろうか? 否、有る訳がない。

 

少なくとも、1人では―――――……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はいはい。ゆっくりとお休み。寝心地は保証しないから~~~ってもう。そういう組織があるのは解ったけど、だからって何でこんな女の子たち兵士にさせてんのさ、色々と腐ってんじゃないの、この日本。超武装してるし。治安悪っ」

 

 

1人、また1人をお姫様抱っこの要領で運んでゆく。

運ぶ際にゴロゴロ、ポロポロと彼女達から転がり落ちる物騒なモノを横目にさっさと運ぶ。

 

見た目は子供、能力はチート(笑)、力は超人、その名は――————、

 

 

それは兎も角、こんな小さな男の子でも出来る芸当なのは最初にも語った通り、転生者で、その特典があるから。

だからこそ、バケモノと呼ばれる訳だが―――実のところ、彼は殺しの類は一切していない。

 

最初から人を殺せるだけの気概は持ち合わせていないのである。

異世界無双! とか考えていた時期もあり、もし本当に異世界に降り立ったとしたら解らないけれど……、いや多分実際に違う世界に行ったとしても、殺しまでは出来ないだろう。無意識に納得と自覚もしていた。

 

日本な筈なのに、こんな襲撃があるなんて……せめて、モンスターが来て欲しいと思うのも仕方ない。

ニンゲンじゃなくてゾンビくらいが来てくれたら………とか考えたりもしたが、それはそれだ。

 

 

因みにいきなりの先制攻撃の理由も勿論ある。

話し合いの類を一瞬考えなくも無かったが、運んでいる時に転がった物騒なモノを見れば解る通り。

相手が多人数だったやこのあからさまに武装、決して安くは無いこの場のセキュリティも軽々と突破してきた。

……問答無用の殲滅する気満々に見えたから、気を窺いつつ奇襲をさせて貰ったのである。

誰も怪我させない様に、直ぐに終わる様に。

 

 

 

「全員で6人か。アルファとか何とか言ってたから、ブラヴォーチームとかも居るんだろうなぁ……。あ、さっきの子も諦めて帰ってくれたら嬉しいケド……秀爺が言う様な組織? だし。そう易々帰ってはくれないよね。そもそも、仲間見捨てて帰るのってのも何だか……」

 

 

まずはエレベーターの中に6人を連れてきて、1階へぽちっとな。

降りた先で、エレベーターを1階に固定して開ボタン

 

 

「んしょ、んしょ……」

 

 

宿直室? みたいな所から敷布団を引っ張り出して来て床に敷き、その上に彼女達を寝かせた。

床じゃ身体を痛めてしまうかもしれないから。

勿論、相手が野郎だったらそのまま外に蹴りだすだろうけど、流石に女の子相手に出来ない。例え殺しに来ていたとしても。……チート(笑)な能力を持った強者のちょっとした余裕と過信、とでも思ってくれたまえよ、ファッファッファッ……、と独り言の様に呟きながら

 

 

 

 

 

「ふぅ~~……、後はどうしよ? 取り合えず帰り道は開けといて、向こうは閉めといて――――」

「およっ?? 何でこんなとこに小さい子が?」

「へ?」

「ん?」

 

 

 

 

 

 

―——ヤバい2人、ここに邂逅。

 

 

 

 

 

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