殺し屋JKと異端なDS   作:りこりこ・りこりこ

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11 Good morning

 

 

龍が突然倒れた。

店は当然騒然となった。開店前だったのが不幸中の幸いだろう。顔は青白く、息もしてない様に見えて更に大パニック。

特に、千束とたきなの2人の取り乱しようはこれまで見た事が無かった。

いつの間にか逸れたかと思えば、龍が単身テロリストとDAの戦場? に向かったと言う事実もあってか特に拍車をかけ、医者だ病院だ、と慌ただしくなる。

クルミとミカの伝手で腕の立つ医者を確保し、至急病院へと搬送された——が。

 

 

「ただ、眠ってるだけってどーいう事だよ、このやろー」

 

 

診断結果は過労? からくるモノだったらしい。

この小さな身体でやってきた事を考えれば当然ともいえなくもない……けど、腑に落ちない点も幾つかある。

 

龍は、四国では犯罪者、テロリスト側にとってすれば【死】とも称され恐れられた存在だ。

※実際は誰一人死んでおらず、ただ捕まっただけ。処刑された者もいるので強ち間違いではないかもだが。

その期間と活動内容を鑑みたら……それ程までの運動量仕事量ではなかった筈なのだが……。

 

 

「………心配だよぅ」

 

 

千束は、龍の頬をぷにっ、とつついた。モチモチとした柔らかい感触でまさに年相応のモノだと実感できる。

幼稚園や小学校にも通っている千束だからこそ、よく解ると言うモノ。本来なら龍はあの場所に居る筈なのに……。

 

 

「ムリ、させちゃったのかな………」

 

 

リコリコに龍を連れてきた事自体が間違っていたのだろうか? とも千束は思ってしまう。

でも、そう思ったと同時に、まるで龍自身が千束の思考を操ってきた? と錯覚してしまう程に、リコリコに来てからの日々の光景が鮮明に頭を過った。

 

楽しそうに店の手伝いをしている龍。

ボドゲ大会ではクルミに続いて上位入賞を連続で果たしている龍。

美少女2人に囲まれて両手に花な状態の龍。

映画を見て怖がってる龍。

DAに連れて行こうとされて……本当に嫌がってる龍。

嫌い、と言った顔の龍。

 

 

「あーーあーーあーー! 後半部分ダメダメ! カットカット!!」

 

 

リコリコに来て、楽しい思い出に浸る筈だったのに、ホラー映画を見せた時の龍は本気で怖がってしまっていて、【嫌い】と言われた。地味に大ダメージだったんだな、と千束は頭を抱える。

 

 

「ん……っ」

「お!?」

 

 

煩くし過ぎた事がある意味良かったのか、龍から反応が視えた。もう、かれこれ丸1日は眠っているから、段々と心配が蘇ってきた所だった千束だったが、顔をぱぁっ! と明るくさせて龍の顔を覗き込む。

 

でも、また すぅすぅ、と寝息を立ててしまっていた

 

 

「………無理に起こすのは、流石に」

「駄目です」

「うぉわぉぅ!?」

 

 

いつの間にやら、たきなが千束の真後ろにまでやってきていて、千束の肩を掴んだ。

突然の事に思わず変な声を上げてしまう。

でも、龍は起きそうに無い。

 

 

「千束。静かに」

「わ、解ってるよぅ。って言うか、今のはたきなのせいだかんね!」

「千束……」

「うぅ……、わ、解ってるってばぁ」

 

 

人差し指を口元に当てられてしまえば、千束も従う他ない。

これだけ騒いで、今更静かに~も無い気がするが……。

 

 

「千束。龍が心配なのは皆同じです。……特異体質でもありますし、病院での検査がどこまで正確なのかはわかりません。でも、顔色も戻って今は眠っているだけのようですから。勿論、あまりに長く眠る様ならまた病院に、とも考えてますがまだ時期尚早、今は様子をみましょう」

 

 

たきなはそう言うと、懐からスマホを取り出した。

それは龍のモノだ。以前、病院に向かった際に龍のポケットから落ちたのをたきなが拾っていて、そのままにしていたのを思い出したのだ。

 

枕元にそれを置いて、そして立ち上がる。

 

 

「龍はきっと直ぐに元気になりますよ。私は信じてますから。千束は違うのですか?」

「そんな訳無いじゃん。……当然! 何せ、この千束さんと互角の戦いをやってのけた、スーパーboyだよ?」

 

 

千束はニッ、と笑う。さっきまで笑顔が消えていたので、漸く千束にも笑顔が戻ったとたきなは、ほっと胸を撫でおろす。

 

 

「では、仕事を手伝って下さい。今大変です」

「ぎょぎょっ! 忘れてたぁ~~! ん? 忘れてたと言えば……」

 

 

たきなが後ろを向いた時、ふと思い出した千束はたきなのスカートを摘まみ上げる。

 

 

「何するんですか」

 

 

当然、たくし上げられる前に、たきなはスカートをブロック。

 

 

「いや、そう言えば買ったパンツちゃんとはいてくれてるかなぁ~って」

「履いてます」

「そかそか。良かった良かった。……んじゃあ、男物のパンツは全て処分した?」

「いいえ。それはまだロッカーの中に———」

「駄目です! 男物は全部処分、捨てまーす」

 

 

千束はびゅんっ! と飛びあがって凄いスピードで更衣室へと向かっていった。

内容はどうであれ、千束もこれでいつも通りに戻ってくれたら良い、とたきなは思う。

 

でも、本当の意味でいつも通りに戻る為には、まだ足りない。

 

 

「貴方が起きてくれないと、ですよ。……龍」

 

 

たきなは、龍の頬に触れた。

まだここに来て日も浅いと言うのに、龍はリコリコに無くてはならない存在となってしまっている。

それは、たきな自身にも言える事。たきな自身も思っている事でもあった。

 

そっと、額を掬い、たきなは微笑みを向ける。すると龍の表情が少し和らいだ様にも見えた。決して気のせいではない。

たきなは、少しだけ満足すると、千束の後を追って持ち場へと戻っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢を―――見ていた気がする。

 

 

いや、今この瞬間も夢ではないだろうか……、現実と夢の差が解らなくなっている。

それも仕方がない話なのかもしれない。……本当に異世界転生があったのだから。想像していた異世界とは多少異なるが、人非ざる能力を経て、異なる世界に降り立ったのだから。

 

でも、何の為にこの世界に来たのだろう?

何か意味があるのだろうか?

 

それだけが心の内に燻ぶっている。二度目の生を、ただ自分の為だけに生きていれば良いだけなのだろうか? 治安を守る為に戦ってきたけれど、答えは見つかってない。

何も示されてない。ただただ頑張って一日一日を戦って、戦って………今、自分が本当にしたい事は一体………?

 

 

 

 

「――――――……ぁ」

 

 

 

 

突然、目の前に光が広がった。

あまりに眩しくて、眩しくて……気が付いたら意識が完全に覚醒して、天井を眺めていた。

 

 

「ここ、リコリコ……、あれ? どうなってたんだっけ……?」

 

 

意識が覚醒するに伴って、状況整理が全く出来てない。

だから、ゆっくりと記憶を遡る事にした。

覚えているのは、千束やたきなと服を買いに行った事。

水族館、スイーツと、本来なら男女で楽しみそうなイベントを、3人で思いっきり楽しんだ事。

そんな平和な空気感だったと言うのに、不穏な気配を察知した事。

四国に居た時、いつも張り詰めていた危険センサーみたいなモノが此処へきて反応を見せた。

こんなにも明確に、こんなにも大きな悪意は初めてだった。

だから、急いでその発生源に向かって………。

 

 

「ぁ………おもいだした」

 

 

テロリストとDAの間に入って、双方の矛を抑えようと動いたんだった。

でも……………

 

 

 

『ぎゃあああああああ!! 破廉恥ぃぃぃぃぃぃぃ!!』

『わあああああ!! ちがうちがうちがうちがう!!』

 

「ッッ!!?」

 

 

思い出して、思い出して、物思いに耽りそうになったその時だ。

店の奥……更衣室からとてつもない声量。悲鳴の様なモノが響き渡って、龍の耳にも届いたのは。

 

その悲鳴の主は、ミズキ。

そして、千束のもの。

 

 

「……賑やかだなぁ、リコリコって。寝てる暇なんて無いね」

 

 

龍はゆっくりと身体を起こした。

身体が結構だるい。物凄くだるい。何でこんなにだるいんだ……? と身体を回して考えてみると……。

 

 

「あ……、充電切れてた、って事か」

 

 

直ぐに合点がいった。

時々、充電をさせて貰っているけれど、最近じゃ電気代もバカにならないし、四国で秀爺に貰った虎の子も、早々に使い切ってしまうのも宜しくない。アレはもしもの時の切り札なのだから。

 

 

「……よいしょ………っと、あっ。スマホ」

 

 

龍はゆっくりと立ち上がると、枕元に自分のスマホが置いてある事に気付く。

無いよりは断然マシだ、とそのスマホを手に取り、少し強めに握りしめた。淡い光が少しだけ龍の身体に入っていき————目も完全に覚める。

 

 

「これでヨシ」

 

 

龍はスマホを充電器に接続し、店内飲食スペースへ。

 

一番先にミカと目が合って、あ———っという間も無く。

 

 

「みなさーーーん! このお店に裏切者の嘘つきヤロウがいますよ~~!」

「わあああああ!! ヤメロヤメロヤメロ~~!!」

 

 

続けざまにいつもに増して賑やかな声が聞こえてくる。

一体何事なのか? と扉を開いた先に見えたのは、それなりに衝撃的な光景。

 

 

「ちょいちょいちょいちょい~~~!!」

「らっしゃいませ~~♪」

 

 

盛大にスカートの中をおっぴろげられてる千束の姿だ。

男に餓え過ぎたが故に、とうとうミズキは百合属性にも目覚めたのだろうか……? と思うよりも早くに脳内に刻まれたのは千束のスカートの中の情報。

 

 

「………何でねーちゃん、男物(トランクス)履いてんの??」

 

 

昨日(龍はどれだけ寝てたか解らない)は、あれだけたきなに言っていたのに。

何なら、最年長者であり大人でもあるミカに対して公開説教までした上で、たきなの下着を買いに行く~となった筈なのに。

 

自分が男物を履いているとはいかがなモノか?

 

いや、他人の趣味、性癖に口出すつもりは毛頭ないが、如何せん 龍は当然ながら千束のパンツを見たのは初めて。

何ならたきなのトランクスも見た事が無い。

 

なので、自分の事を棚に上げてたきなに言っていたのではなかろうか? と顎に指をあてて深読みをしていた時だ。

 

 

「おはよう。身体は大事ないかい?」

「あ、ミカさん。……すみません、お騒がせしましたが、取り合えず大丈夫……みたいです」

 

 

ミカから声を掛けられた。

いつもより、少々声色が違うのはそれだけ心配をしてくれたからなのだろう、と龍はミカの声から感じたようで、頭を下げた。

視線を切ってしまったのが不味かったのだろう。

 

 

「りゅーだから! りゅーが起きちゃったから!!」

「はぁ!? ……あんた、女に目覚めたかと思えば、ショタに手ぇ出したって言うの? 流石の私でもひくわぁ………」

「ちがうちがうちがう!! 龍が目、覚めたの!! ビックリしたの!!」

「あん?」

 

 

千束は龍が目を覚ましてくれて嬉しい反面、ミズキからの猛攻を止めたいとも思っていて、自分でもナニ言ってるか解らなくなってしまっていた……が、取り合えずミズキからの猛攻は一時ストップ。

 

 

「おはよ、この寝坊助」

「いたっ。……ごめんなさい、ミズキさん」

 

 

ミズキはニコッと笑って龍の頭に軽い拳骨を落とした。

ミズキにも心配をかけてしまったのか、と同じく頭を下げて居たら……。

 

 

「聞いて聞いて~~りゅう~~。あの子ったら、あんたが眠っているのを良い事に、パンツ盗んで履いてたのよ~~?」

「へ?」

「ちょおおおおおお!!」

「むぎゅっっ!??」

 

 

ぎゅんっっ! と千束はミズキを止める~~~のではなく、何故か龍をヘッドロック。

 

 

「違う違う! 龍も知ってるよねっ!? 私が穿いてたの、龍のと違うっっ!」

「むぐ、むぐ、んんんっっ(息っ、息っっ!!)」

「いくら、歳下が好みだからって、限度があるでしょ? あんた……」

「だーかーら、ちーがーうーーー!! これ、たきな! たきなのだから!! 仮に、ほんと仮に! 龍のだとしたら、おっきすぎるでしょ!!」

「…………んっん~~~~」

 

 

改めて、公衆の面前で千束のスカートを捲るミズキ。

また、SNSでアップされちゃうぞ……と、思う間も無く。

 

 

「確かに、アンタの尻のデカさじゃ入らないわね」

「うっせーーーわ!!」

 

 

乙女に向かってデカい尻とはなんだ!! と盛大に抗議を入れる。

どうにかこうにかしている間に、たきなもやってきて。

 

 

「目を覚ましたんですね。本当に良かったです」

「むぎゅ、むぎゅぎゅ、むーむーー!!」

 

 

龍の事を気遣ってくれた。

たきなとミカだけだな……と思いつつ、龍はそろそろ酸欠になりそうだったので、千束の腰辺りにタップをし続ける。

 

 

「……んじゃ、こっちも確認」

「え?」

「!」

 

 

ミズキがバサッ、とたきなの下着チェック。

千束が言う様に、その男物(トランクス)がたきなの物だと言うのなら………今たきなも同じ系統の物を履いているに違いない! と言うのがミズキの推理。

その答え合わせをすべく、盛大に中身を確認。……龍の至近距離で。

 

 

「カワイイじゃねぇか」

「っ~~~~~!!!」

「………………………………」

 

 

リアクションこそ対照的ではあるが、類似点があるとするなら、2人ともが盛大に顔を赤く染めていた、と言う所にあるだろう。

千束の乳に埋もれるのは、結構恒例になっているし、最早アレは凶器の一種と言う考えも有ったので、そこまで思わないのだが……中々にたきなの至近距離での下着は威力が高かった。

 

 

「だから違うって言ってるでしょーー!! 昨日、昨日買ったの!!」

「みなさーーーん、私と千束、どっちを信じますかぁ~~~?? 私はぁ、コイツは破廉恥になっちゃったんだ~~って思ってま~~す!! 私と同じ考えの人、挙手っっ!!」

「やーーーーー!!! やめやめやめ~~~!!」

 

 

ぽいっ、と龍を解放。

沢山のお客さんの前で行われるオーディエンス。そのミズキの暴挙を止めるべく、千束は飛び掛かる~~が、こういう時のミズキの身体能力を侮るなかれ。

 

ひらり~とそれを躱して再び摘まみ上げる。

 

 

「なーに、顔赤くしてんだ? 朝っぱらからマセてるな」

「………お、おはようございます」

「初心過ぎるだろ。たかだかパンツくらいで」

 

 

クルミがこれ見よがしに、龍を弄ってきた。

……クルミも例外ではない。目を覚まさない龍の事が心配だった。起きてくれて嬉しかった。それを誤魔化そうとしているのだ。

 

 

「……こほんっ」

 

 

たきなは、咳を1つ入れると改めて龍の方を見た。

 

 

 

「改めて、おはようございます。龍」

 

 

 

爽やかで騒がしい……いつも通りのリコリコだった。

 

 

 

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