殺し屋JKと異端なDS   作:りこりこ・りこりこ

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03 Just do it

摩訶不思議現象が目の前で広がっている。

ニンゲンが発光する事なんてあるだろうか? それも周囲は明るいのにも関わらずハッキリと視認出来る青白い光。……放射線の類? この場にいて大丈夫?

 

それはそうと、千束は一歩前に踏み出して小首を傾ける。

 

現象云々よりも前に、奇妙な事を目の前の男の子が言っていたから。

 

 

「充電する? どゆこと??」

 

 

そう、それ。

日常会話の中で、充電する~なんてありふれた文言ではあるのは間違いないが、……全くと言って良い程、この場で持ち出されるのは適さないと断言できるから。

今も尚、発光続けている男の子。あっさりと教えてくれるかどうかが問題ではあったけど……。

 

 

「うーん。そのまんまの意味なんだけど」

 

 

あっけらかんとした様子で説明してくれた。

いや、説明にはなってない気もするが……取り敢えず千束は考えてみる。そのまんまの意味を。

 

 

考えながら、自称・充電中のこの子は輝き続けてる。比喩じゃなく、実際に青白く。いや怪奇現象だ。

 

それが意味するそのまんま(・・・・・)とは……?

 

 

「あ、そうだ。ほらほら、充電しないと動けないでしょ? んーっと、あっ、ル◎バとかペ◎パーくんみたいに! そんな感じだよ」

 

 

続いて無茶苦茶な事を言いだした。

確かに、それらは充電が切れたら動けなくなるだろうけれども……。

 

 

「いやいやそれ機械、つーか家電ロボットの話でしょー!? えええ? ってことはロボット系なの!? なんなのきみぃ、実はニンゲンじゃなくてロボットだったってーの? サイボーグなの?? 未来から人類抹殺に来た、エネミー・ターミネーターなのっ?」

「!」

 

 

結構好きな映画を思い返しながら千束は言う。

千束の方は大分混乱しているんだけど、上手く会話を繋げる事が出来ているのはある意味流石、なのだ。

そして、当の元凶な人物はと言うと、何かに納得した様にうんうん、と頷きながら言った。

 

 

「へぇ、こっちにもそれあるんだ? ……題名若干違うけど、中身は一緒っぽそう。機会があれば観てみたいかな」

「あー……ちょいちょい待って待って。映画観たいならまた見せてあげるよ。だからシンギングタイムプリーズ、おーけー?」

「ん? 良いよー。こっちも待ってくれてるしね。その間に充電させてもらうね」

 

 

どことなく楽しそうに言う姿はまさに無邪気。

そして、これまた気になる事を言っていたが、今起きてる事の全てが気になってるので、些細な事は聞かなかった事にする千束。

 

なので、解ってる事を整理しよう。

 

混乱の原因は、間違いなく充電する~から始まった身体の発光現象。

 

思い出してみると……直ぐ横に有る配電盤を開けてケーブル引っ張り出して、コードの束やらプラグやらを握った瞬間から始まった。

 

それに、バチバチッ、と何かがショートしてる様な音まで聞こえてくる。

つまり、充電と言うのはこの子が言う通りそのまんまの意味。比喩の類ではなく、本当に充電していると言う事。

 

 

「うん。つまり、私ン中での結論は、やっぱりキミは機械仕掛けの超高性能な子供型ロボットって事になるかなぁ。……いやぁ、私あのシリーズ全部見てるケド、男・女ターミネーターも居たし、お爺ちゃんターミネーターも居たけど、流石に子供ターミネーターは無いわ~。倫理的にどうなの? って感じで」

「………さっきから、ヒトの事[殺人機械(ターミネーター)][殺人機械(ターミネーター)]言ってるケド、どっちかと言えば、お姉さんたちの方がソレじゃないの? 倫理云々も、思いっきりブーメランだと思うんだけど。……だって女子高生の姿をした殺し屋軍団なんでしょ?」

「うぐっっ」

 

 

子供相手に痛い所を突かれてしまった―――と、思わず千束は咽た。

 

確かに、リコリスは世間一般には周知されていないが、その目的は国を護る事を前提とした殺しの許可を得ている公的機密組織のエージェント。

文面的にも内面的にも解るかと思うが、凶悪犯だと見るや否や、危険因子と判断するや否や、かたっぱしから殺して処刑して回ってる殺し屋だと言われても決して否定は出来ない。

何なら、千束自身もたきなに、『凶悪犯を処刑して回ってる殺し屋』と言った程だから。

 

 

「んよしっ! 充電完了!」

 

 

うーんうーん、と唸っている間に、元気の良い声と共にさっきまで鳴り響いていたスパーク音、身体の発光も収まっていた。

 

 

「待っててくれてありがとうお姉さん。それと一応、僕の方からも言っておくね? お姉さんたちの所には行かないよ。だって、行かなきゃ駄目なこと、何もしてないもん」

「―――そりゃ、殺し屋集団に捕まったら何されるか~なんて簡単に解るよねぇ、幾ら子供な男の子だったとしてもさ? でも、信じて欲しいかな。確かに所属は同じ。でも、私達の(・・・)部署は違う、って」

「【アメ玉あげるから付いてきて~~】みたいに言われて【うん、欲しいから行くよっ!】って言ったりすると思う?」

「ぜーんぜん! 言ってみただけ~」

 

 

今度は千束が思わず笑った。

 

確かにその通りだ。銃で武装した集団で押しかけてきといて、なにもしないは説得力の欠片も無い。

 

子供にはちゃんと教育している、まさに日本の教育の賜物である、と変に誇らしくもあった。

 

 

「あ、後。お母さんが事故に遭った!! 病院へ行こう!! って言うヤツにもついて言ったら駄目だからね?? 絶対について行かず、手段があるなら自分で。なければおまわりさんを頼りましょう!」

「勿論っ! ………それで、話はそろそろ終わりって事で良いかな?」

 

 

チャッ……と、銃身が持ち上がり、その銃口が自分の方に向きあがったのを視認すると、ゆっくりとした動作で言った。

 

 

「うん。信じて貰う為にまずは捕まえなきゃ、だからね。色々聞きたい事は沢山あれど、そんなヒドイ事は何もしてない、って。――――あぁ、でも 何もしてない、ってのは流石に無理ない? だって色々と聞いてるし? 火の無い所に煙は~って感じで結構な噂で持ち切りだよ。……なので、ちょっと交番でお話を聞かせてください。これは任意です~、じゃなくて、強制でーす!」

 

 

子供相手に、実弾入りではないとはいえ、非殺傷弾ではないとはいえ、銃口を向けるのは正直良い気はしない。と言うか、子供にあんなの当てたら怪我どころか本当に死んでしまうかもしれない。だから、拘束用のワイヤー銃を主体で様子を見るつもりだった。

 

……でも、こればかりはどうしようもない。

今も感じてるこの物凄い危険信号は。

 

 

「じゃあ、僕の方も、お姉さんには、強制退去して貰います! あっ、確かに何もしてない、って言うのは確かに嘘だったから訂正するね? 僕は【何も悪い事(・・・)してない】って自分では思ってるから」

 

 

そして次の瞬間には、目の前のコは動いた。

羽織っていたパーカーのフードをしっかりとかぶり、続いて信じられない速度であっという間に室外へと飛び出していったのだ。

強制退去、と言っておいてまさかの逃げの選択に驚く千束。

 

 

「(すげーはやっ! しかも2階だぞここ!? 私じゃなきゃ、見逃してるねっ!)じゃなくってぇぇ、ちょっと待てコラ~~! 逃げるな、逮捕しちゃうぞーーー!!」

 

 

千束も直ぐに追いかける。

 

外ではリコリスの別動隊が待機している筈だ。如何に相手が子供の姿をしていると言っても、ビルの2階から飛び出して来る子供なんて要る訳がない。目立たない訳がない。

少なくとも指令通り、捕獲に走るのは間違いないだろう。

 

 

「ちょっ!?」

 

 

そして、割れた窓の外を見て、また驚愕(ぎょっと)した。

 

千束が考えていた通り、下の階にはリコリスたちが居た。

割れた窓の音、降りてくる影、それに気付かない様な者はエージェントとは呼べない。リコリスとは呼べない。

全員が即座に反応し、あろう事か実弾を上に向けて発砲し出したのだ。

 

 

―———ちょいちょいちょい! 捕獲指令はどーしたよ!?

 

 

と思わず声に出そうになった。

DAからの指令は千束は、ハッキリと覚えている。捕獲と言う不殺。それは自分自身の信条とも合致していて、普段より気合が入った任務だったのだから。

 

でも、下のリコリスのコたちはお構いなく銃を乱射している。

 

 

 

「んなっっ!!」

 

 

そして更に更に驚いた。ビックリした。仰天した。

 

 

 

「ほらやっぱりぃ!! やっぱり、メチャクチャ撃ってくるじゃん!!」

 

 

飛び降りたあの子供は、弾丸の雨の中を突き進んでいたから。

それも、ただ突き進んでいるだけじゃない。何か、短刀の様なモノで銃弾を弾きながら進んでいるのだ。

 

 

五ェ門(ごえもん)かよ、おいっ!!」

 

 

思わずそうツッコんでしまった。

弾く弾く弾く。その足元には弾かれた弾丸がコロコロと転がっている。一体何の映画を、アニメを見てるんだ? と目を疑いたくなる光景が広がっている。

 

当然、対峙しているリコリスたちもその異常性には気付いているだろう。

幾ら死国と言う物騒な名の原因とはいえ、幾ら未知との遭遇とはいえ、銃弾が効かない様な相手を生け捕る、なんて、想定外も想定外。

 

 

「――――はいっ終わり!」

 

 

半ばヤケクソな気がしないでもない。

そして、千束が驚きのあまり暫く放心している間に、戦闘は終わった様だ。

全リコリスは倒れている。これで終結したチームは、自分達を除いて全滅だ。

 

 

「お姉さんも戦う気、有ったりする? ……僕としては、このまま撤収して貰う方がありがたいんだけど。もちろん、このお姉さんたちも一緒にね」

 

 

見上げながらそんな事を言ってきた。

一体何をされたのか、皆地に伏したまま動かなくなってしまってる。

 

だけど、何となく……何となくわかった気がした。

 

 

千束は、ひょいと割れた窓から外に出ると、雨水パイプを伝って下に降りる。

地面に到着した所で、目の前の子供とは思えない存在と向き合った。

 

 

「皆キミに気絶させられちゃった、って事かな? さっきの充電は 電気銃(スタンガン)の事だった、で良い?」

「うーん。アタリでもあるし、ハズレでもある、かな?」

「あっちゃぁ、ハズしちゃったかぁぁ、当たってると思ったんだけど………」

 

 

そう言うと、千束は真面目な顔をして、真っ直ぐ射貫く様に彼の目を見た。

そして同じく彼も……龍も千束の目を真っ向から見返す。

ここから、千束は真剣に(・・・)当ててくる、と感じられたから。

 

 

「異常体質。帯電体質、って言った方が良いか。その短刀は相手に感電させる。いやいや短刀ってか警棒だね。だから、スタンガンじゃなくスタンロッドだ」

「だね。……充電してる所、やっぱり見られない方が良かったかな」

「そうそう。おかげで~だよ。こんなん初見じゃ絶対わからないし、いきなりだったら私も皆と一緒に眠っちゃってても不思議じゃないよ。(……ま、私の場合眠っちゃうだけじゃ済まない気がするけど)」

 

 

高圧電流でも流されたら? と考えたら正直笑えない。でも、彼は今のところ接近して直接電撃を与えているから対処のしようはあるだろう。

 

 

そして、千束は手をぽんっと叩いて指を立てながら続けて聞いた。これが、こっちの方が重要だ。

 

 

「って、それよかさ? 弾丸(たま)弾くって一体どういうこったぃ?」

「石川五ェ門に憧れてて」

「かぁぁぁ、やっぱりか!! 私も思わず口にしちゃったもんね~~って、ちゃうちゃう! 何でそんなこと出来るの!? って聞いてんの! 弾丸を斬る……弾くなんてフツー出来ないからね!? 憧れてるからって、つまらぬモノを斬っちゃえないからね!? 出来る理由になんか無んないからね??」

「でも、憧れてるのは本当だし……、出来ちゃってるし……」

「なんか、私が間違えてます~みたいな空気作んないで! ふつー無理だから!!」

 

 

銃弾を弾き落とすなんて超人技、それこそテレビの中でしか見た事が無い。

それを憧れてる、だけでやってのけるなんて人間業とは到底思えない。

……正直、千束の事を知る者からすれば、己も十分人間業じゃない事やってる、と言われるかもしれないが、それはご愛敬。

 

 

「じゃあさじゃあさ 突然顔隠しちゃったのは何で? 今度はスペース・ウォーズかな??? 私も大ファンっ!」

「それは違うよ。一応、お姉さんだけだからさ。僕の顔見たの。……隠して置いた方が無難でしょ? お姉さんに見られた時点であまり意味ない気もするけど、一応……ね」

「なーる。通信障害(ジャマ―)もキミかな? 映像すら残さない様に、って」

「外だったら完璧に、は多分無理だと思うけどね。……でも、あの狭い所で、お姉さんに襲われる方が大変そうだって思ったから」

「うーーわーーー! 襲われるなんて、人聞き悪い事言わないでよっ! 間違っちゃないかもだけど!」

 

 

ここまで話した所で、千束は、ゆっくりと銃を構えた。

そして、バンッっ!! と彼に向けて敢えて当てない様(・・・・・)に撃った。

 

 

「! あれ? これって……」

 

 

それは、相手にただ、確認させる為だけの行為。

そして、言いたい事、その意図が伝わったのだろう。地面に激突して周囲に飛散したそれを見て目を丸くさせていた。

 

 

非殺傷弾(ゴム)だよ。私が使うのは」

「………そう言って実は油断させる為のウソだったり?

仕留める為に 」

「そりゃ、あんだけバンバン撃たれてたらそう思っちゃうのも無理は無いよね~~。でも、誓ってウソじゃない。そんでもって~~~……帰る気も無いよ。キミのこと逮捕するっ、って言ったのもウソじゃないから」

 

 

そして、目つきが変わった。

違う種類の真剣なモノに。

戦う前の兵士の目に。

 

 

「はい、お話タイムは終わり終わり。今から始めるよ。最初っから本気で、ね。但しこの通り非殺傷弾(ゴム)で。……だから、思いっきり行くからね? さぁさぁ、ただただやってやりますよ!」

「んっ。僕も捕まりたくない。全力で抵抗させて貰います!」

「よっしゃ! 公務執行妨害で逮捕だ~~!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千束とぶつかり合う刹那の時の狭間で、沢山感じられた。

 

 

本当に不思議だった。

 

 

物騒なやり取りの筈なのに、殺伐としていた筈なのに、何処か和んでる。

 

今外で倒れているほかの女の子たちの様に、悠長に話をするのではなく、直ぐにでも攻撃して、無力化するのが最善だと頭では思っていたのに、出来なかった。

相手の力量がとんでもないと言われた事と身に纏う雰囲気も本物だと感じた事もあるだろうけど、それ以上に長く話していたい、と思った。

 

話すの、本当に楽しかったから。

ひょっとしたら、ぶつかり合ってるのも楽しいのかもしれない。

気迫は感じる。威圧感も凄い。でも、これまで襲ってきた人たちの殆んどから感じられた殺してやる、と言う殺気は見えないから。

 

 

でも、この人とは、こうやって戦い合うより、笑って話して、トモダチになる方が良い、とこの時凄く思ったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいおいおい、待て待て待て。なんだいあれ……??」

「ドローンの映像、ようやく観れる!? 直ったか!?」

「それどころじゃない。これ見てみろ。外で千束が戦ってる様子とその相手」

 

 

クルミのPC画面をミズキ、ミカは覗き込んだ。

するとその画面の中には、千束と一回りは小さな子供の姿があった。

 

何故こんな子供が? と思うよりも先に千束は子供を攻撃する。その攻撃を子供は躱す。或いはあの非殺傷弾を叩き落とすと言った離れ業を見せる。

上手く距離を取って銃のエリアで千束は戦っている様で、子供の方はどうにか距離を潰し近接戦闘で戦いたい、と言うのがこの映像から良く伝わってくる。トンデモアクション映像となってしまっていた。

 

 

「「「…………」」」

 

 

 

暫くの間、誰も何も言えず、見ろと言ったクルミでさえ、圧倒されるこの超アクションに何も言えず言葉を失うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そーーいっ! ふっふっふ。効~かない! 何せこの制服は、電気を遮る! 絶縁出来るのだから!」

「うわっ! ずっるい! 大人げないっ!」

「へへーん。大人はズルいモノなのだよ。よく勉強するが良いぞ? 少年よっ!」

 

 

接近されて、感電させられるか! と思いきや、千束は素肌には絶対に触らせず、手を引っ込めて袖の部分で受けた。宣言通り絶縁体故に電気は通さず、千束はノーダメージ。

でも、千束の攻撃も全くと言って良い程当たらない。

なのでお互いにノーダメージ。

 

もう何発撃ったのか解らない。周囲に赤い塵が飛び散り地面を赤く染めているところを視ると……下手したら3桁か。ありったけの予備弾倉(マガジン)も、もうそろそろ………。

それよりも、店で経理もしているミカの顔が頭を過った。

 

 

「う~~、この弾丸、めっちゃ高いらしいんだけどなぁ。お店ダイジョウブかな?」

「千束姉ちゃんのお給料から天引きだね」

「あっ、いったな? 龍! べんしょーしてもらうからねっ! タダ働きの刑だー!」

「僕は防いでるだけだもん。メチャクチャ撃ってくるのは姉ちゃんの方でしょ! 子供に集るなんてみっともないっ!」

 

 

ちゃっかり打ち合いながらも自己紹介を済ませている2人。

最初こそは真剣な顔つきだったのだが、今は時折笑みも魅せている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして――――遊び疲れたかの様に、2人は最後に隣合わせで座っていた。

疲れた、とは言い得て妙。もう、千束は弾切れ。龍も充電枯渇だから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、何でこんなことになっちゃったのかな。僕、連れて行かれちゃうのか……。千束姉ちゃんはウソ言ってないのは何となく解ったけど、他の女の子たちは違うでしょ」

「んーー、それは確かにそうだね。リコリスって組織は極悪人を殺して回ってる処刑人だし。……でも、龍は違うでしょ? ここまでやり合って、清々しいって思えたのも初めてだし。月並みな言葉だけど、思いっきりぶつかったから龍の事何となくわかったんだ。……キミは悪い子じゃない。悪い事なんてしてない、ってね?」

 

 

ほっぺたをぷにっ、と抓んで、その後はわしゃわしゃと頭を撫でる千束。

そんな千束に対し龍はぷくっ、と頬を膨らませ、恥ずかしそうにしながら言う。

 

 

「だから最初から言ってるじゃん。僕は何もしてないよ。でもわかんない。……ただ、困ってる人達を助けてたらいつの間にか、こうなっちゃってた」

「へ? 困ってるひとって?」

 

 

龍は千束にこれまでの経緯————と言うより、秀爺に愚痴ったままの事をぶつけた。

ちょっとしたひったくり犯を捕まえて、誘拐されそうな子供も助けた。町で手伝いもしたし、とある日、今の協力者(秀爺)のおかげ? でそれで何となく雲行きが怪しくなってきた、と。

 

明らかに裏な人物。人相悪い連中に絡まれ始めて……それでも追い返して追い返してを続けてたら、今に至る。

 

 

「なんでか僕には力があって、なんでか僕の周りでは困ったこと色んなことが沢山起きてた。そんな人たちの為に力になろう~~って、頑張ってきたつもりなんだけど」

 

 

今日は多分一番大変だったと思う。

規模やその戦闘力、DAと言う巨大な国の機関の存在、色々を考慮しても、間違いなく過去一番の危機だ。

 

 

よくよく考えたら、DA~と言うより千束1人のせいで大変だったのだが、そこは取り合えず横に置いておこう。

 

 

「姉ちゃんたちが来る前にも、変な人達沢山きた。色んな人追い返して追い返して………。何だか最近さ、ちょっと自信無くしてきちゃったんだ」

 

 

異世界転生、と思ったら現代日本。

ただの生まれ変わり~と言う訳ではなく、こういった特殊能力(チート)も得ている所を見ても、今流行りの転生モノ展開なのは間違いない。

異世界じゃなくても、誰かの為に何かをしてあげられる、と言うのは思いの他気分が良いものだった。

ありがとうと言ってくれるのが嬉しかった。

子供だから驚かれる事が多かったけど、殆どの人が感謝をしてくれた。……変な目で、奇怪な目で見てきたのは、所謂裏の連中だけだから。

 

 

「やってきたこと、全部駄目だったのかなぁ」

「そんな事ないっ!!」

「わぷっ!?」

 

 

気落ちしている龍を思いっきり抱きしめるのは千束。

 

 

「凄いよ! 龍は凄い!! それに、私は好き! だって私の仕事がまさに今龍がやってきた事だもん!」

「え? え?」

「会ったばっかりで、何なら戦った相手かもしれない、でも私はこう言えるよ!」

 

 

抱きしめた後、立ち上がり龍を持ち上げた。

 

 

「私は、龍に会えてよかった。凄く良かった! 嬉しいっ! って」

「ちょ、わっ、お、おろして! おーろーしーてー!」

「へっへっへ~~暫く高い高―いをされてなさいな!」

 

 

暫く高い高いをした後、また抱き着く。

 

 

「龍は、やっぱりウチに来るべきだよ! そりゃ、ここ離れちゃったら皆の事が心配になっちゃうかもしれない。でも、そうやって自信が無くなっちゃうくらいなら、ウチで頑張ってみる! そんでもって、晴れてリコリコ2号店を四国の地に、龍の手で! どう? この壮大で隙の無い、パーペキな計画っ!」

「ね、ねえちゃんっ、くる、くるしっ、それに あ、あたってる、ってば!!」

 

 

もぞもぞ、と胸からどうにか脱出しようとしている様だが上手くいかず、ただただ埋めてしまっている。

 

 

「なーに顔赤くさせてんのさ~。おマセさんだね~! こいつめっ!」

「むぎゅっ」

 

 

その姿が愛らしくて、可愛らしくて……千束は抱きしめ続けていると――――。

 

 

 

 

「千束!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「って言うのが事の経緯。龍は私がスカウトしたからリコリコの従業員になる予定だよ。因みに、たきなと合流した後説明いらないでしょ?」

「………………………………」

 

 

予想以上に、想像以上にトンデモナイ話だった。

 

たきなは、戦線離脱してからは倒れた千束と合流する前に、倒れているリコリスたちを発見し保護していたから、遅れてしまったのだ。

 

 

「たきな姉ちゃん。その――――……ごめんね」

 

 

全部千束が話しきった所で、うどんを食べ終わった龍はペコリと頭を下げるのだった。

 

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