殺し屋JKと異端なDS   作:りこりこ・りこりこ

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04 Awakening of S

 

 

「やっほーーー! おまたせ~~千束が出勤してきましたよ―――――って」

 

「やだやだやだやだぁっ!! たきな姉ちゃんやめてーーー!!」

「我儘言わないでください。あなたは、重要参考人なのですから、共に来る必要があるんです」

 

「おおぅ……」

 

 

 

 

今日も今日とて、【喫茶リコリコ】は開店前から賑やかだ。

 

その賑やかさは、店の外にまで聞こえてくる程に。道行く人達は足を止めてはクスクス~と笑いながら立ち去る。

リコリコが賑やかなのは、皆が知っているから。

 

特に最近リコリコで手伝いをし始めたと言う男の子が、若者からおば様層まで人気があったりする。

 

 

 

 

このリコリコにやってきて数週間。

 

 

 

今やすっかりと龍は馴染んだ筈――――何だけど、なんだか様子がおかしい。

 

リコリコの賑やかの中心と言って良い千束はと言うと、漸く到着して店内に入ろうとした所で、その音圧を受けて倒れそうになってしまっていた。

 

 

「ちょーいちょいちょい。そこのお2人さんや。一体何騒いでんの?」

「あっ、千束ねえちゃん! ねえちゃんからも何とか言ってーー!」

「ほいほい、わかったわかった。取り敢えず、まずは説明求ム! ってな訳で、たきなさんよろしくどーぞ!」

 

 

取り合えず騒動の中心に居るたきな、龍の方を見て状況把握に努めようとした。

たきなも龍も極めて優秀な部類に入る人材だと言って良いのは解ってるが……、正直色んな意味でズレてる所もある。

まぁ、他人の事言えないのは千束も同じなのだが。

 

 

「本日、DA本部に向かおうと思います。そこで、この龍を一緒に連れて行こうと思いまして」

「だから、やぁーーだぁーーー!! そんなとこになんか行ーきーたーくーなーいーーーっ!」

「ちょい待ち、どーして龍を? 何でDAに連れてくの?」

 

 

たきなお姉さんに手をぎゅっ、と握って貰えてよかったねぇ~~と軽口の1つや2つ飛ばして茶化したかった千束だったが、内容が内容なので茶化す事はせず、たきなに確認をとる。

たきなは、真剣な顔つきのまま、流れる様に淀みなくその質問に返答をする。

 

 

「あの四国地方の件。数多ある噂の真相の数々。龍が当事者である事は明白です。本部に報告を、と。迷惑をかけてしまったのも事実ですし、DAとしてもお詫びも必要でしょう。何か問題でしょうか?」

「んっん~~、たきなぁ? それって、DA(あっち)じゃもう解決した、って事になってる話じゃん? 結局、龍の事は伏せといて、町ぐるみ+警察の皆さんの頑張りで治安悪化を阻止。悪党の皆さんは涙目。警視庁の方でも表彰した~って形に。そもそも、解決してもう日も立ってるし」

「しかしそれは事実に反しますよ。龍は幼いながらも、地方で悪党を捕まえ、捕縛し、抑止となり、貢献していた。全て間違いなく龍の功績ではありませんか。リコリスとしても、龍の功績を見過ごすのは胸が痛みます!」

 

 

痛むのは、握ってる龍の腕だ! と言う悲痛な痛みによる叫びはこの際置いといて……。

ワーワーキャーキャー言っても、今のたきなの耳には入らない。馬耳東風……、馬の耳に念仏な様なので、取り合えず龍は図星を突く事にした。

 

 

「うう、僕の名出してるけど、それって絶対姉ちゃんの都合でしょ? 僕を出汁にしてDA復帰とか姉ちゃん考えてない? 絶対に??」

「………………ぅ」

 

 

一瞬、息が詰まる様な声がしたのを龍は見逃さない。

ここぞとばかりに、声を上げた。

 

 

「ほらやっぱりぃ!! 姉ちゃん僕をDAに売っちゃうんだっ! ここの一員になれた、って漸く思えたのにヒドイ! それに話が違うよっ! 元々僕が東京(こっち)に来たのは千束姉ちゃん、たきな姉ちゃん、皆が居るリコリコに行くから、って出てきたんだよっ!? なのに何好き好んで、DA(殺人鬼の巣窟)に行かなきゃ駄目なのさっ!?」

「誤解です。売るなんて、そんな非道な事は考えてません。それにDAはそんな無法で物騒な場所ではありません。龍も一緒にくれば解ります!」

「わーかーりーまーすーーっ!! 実体験です! 何せ会うなりお姉さんたちから一斉射撃頂きましたから!! それについては僕の方から先に攻めたから文句は言い難いケド!」

 

 

ビル内を通信障害(ジャマ―)し、照明も全て切って、暗闇からの奇襲。

これまでの経緯もあったから、そもそも武装集団がやってきた事でもある、とある程度は同情して貰いたい気持ちはあるにはあるけど、それでも先制に打って出たのは自分自身。

ある程度は仕方ないとも思える。

 

でも、ここからは違う。

 

 

「判断はDAがしたんだったよねっ!? 僕の事捕獲(オンリーアライブ)だ、って言ってた筈なのに、異常事態と見るや否や、現場判断とかじゃなくて、本部から直々に生死問わず(デッドオアアライブ)! それで撃ってきたんだよねっ!? だから、そんなトコに行きたくありませんっ、って言ってるの! 【気分が変わった。確保して殺せ!】 ってされちゃったらどうするのさ! 人を殺そうとする女の子たちに囲まれるのはもう嫌ーーー!!」

「お~~っ!? 龍の今のひょっとして声マネ? 楠木さんに似てる気がするよ!」

「姉ちゃんうっさいよ! その人に僕あった事無いから!」

 

 

千束はわかったわかった、と頷くとたきなの方を見た。

 

 

「たきなー。悔しい気持ちは分かるよ? だって、龍を捕獲する任務(ミッション)で功績を上げて、成功までさせたら復帰の道がある~~なんて言われちゃってたらさ? 幾らカバーストーリーで筋書き替えられたとしても、直談判したくなっちゃうよね」

「いえ………そのようなことは……」

「それ、バレバレだから。顔にも声にも出てるから。龍でも解っちゃってるから」

「でも、って何さ! そんなの解るよ!」

 

 

そう、元々たきなが四国の任務に赴く事になった切っ掛けはDAに復帰できるかもしれない、と言う一縷の望みがあったからだ。

命令違反は認めるが、それでもどうしても理不尽だと思っている。本部のゴタゴタの帳尻を合わせる為に、捨てられたのだと思っている。

リコリコに転属させられたが、いつの日かは本部に戻りたいと言う希望はまだ捨ててない。

 

 

でも、現在それは叶わない。

何故なら、根底から間違えているから。

 

 

「……でもさぁ、たきなだって解ってるでしょ? そもそもの復帰の可能性自体ウソ(・・)だったって。あんの性格悪い乙女ってコが、負けた腹いせに流したデマだった、って。あんにゃろ、何処が乙女だっつーの! 私のたきなを誑かして!! 今度あったらまたギッタンギッタンにしてやるっ!!」

「……ギッタンギッタンって、きょうび……、ちょっと待って? それは初耳だよ。何かあったの?」

 

 

ここで、龍はチーム・リコリコ 千束&たきなvsチーム・DA フキ&サクラの模擬戦、DA本部で何があったかを聞いた。

 

 

「………ますます、僕を連れてかない方が良いよ。だって攻撃された上に、姉ちゃんたち馬鹿にした人たちもいるのなら、凄く暴れちゃいそうです」

「っかぁ~~~! コイツめぇ! カワイイんだからもうっっ! 姉さん嬉しいゾ!」

「あ、でも千束姉さんみたいな人がたくさんいるなら、頑張って暴れても、あっさり返り討ちになります。間違いなく」

「って、こら! そりゃどーいう意味だっ!?」

 

 

龍が怒ってくれた。それを聞いて、千束は抱きしめてその頭をなでなでなでなで~~。

で、次は千束レベルが居れば簡単に負けてしまう。

以前やり合った事を思い返せば……千束レベルの戦力がたくさんいれば、負けるのは自明の理と言えるが……、何となく千束は気に入らなかったから、今度は頭をぐりぐり~~とした。

 

 

「……アレで、おあいこだった筈、なんですけどね」

「サクラ、ってお姉さんはそう思ってなかった、って事だね。………」

 

 

たきなは、頬を触った。

 

思う所は沢山ある。

 

あの時の事を知る1人として、千束もたきなの気持ちも解る。

 

でも、それでも申し訳ないがDA本部に足を運ぶのは止めておいた方が良い、と判断したい。

恐らくは、先生も同じ意見な筈。つれていくにしても、まだまだ時期尚早だ。

 

 

 

怒ってる龍を見たら冗談抜きで、DAとの全面戦争になってしまいそうだから。向こうのリコリスたちが空気読むわけもないから。

 

 

 

 

 

「ほんっと、あんたたちはいつも、いつでもやっかましいわね~~。外まで聞こえてきてたわよ」

 

 

ガラガラ~~とリコリコの扉が開き、従業員の1人にして元DA情報部のミズキがやってきた。

 

 

「あ、ミズキ『おばさん』、おはようございま――――って」

「誰がおばさんだコラぁぁ!!」

「いだだだだ!! ぼ、ぼくじゃなっっ―――!!」

 

 

ミズキに対して挨拶をしようとしたら……、一瞬の内に龍の背後に隠れた千束が龍の声マネしながら、ミズキの事を『おばさん』と呼んだ。

これがまた結構似ている。だから、ミズキ自身も龍が自分に対して禁句(おばさん)呼びした……と思ってしまったのである。

 

 

「まだそのネタ引っ張ってるのか。飽きないな、お前ら」

「おっ、クルミじゃーん、珍しく押し入れから出てたんだね~~」

「ミズキに連れられてた」

 

 

そしてもう1人。ミズキの影にいて気付かなかったが、同じく従業員にして世界にも名が轟くウォールナットの名で活躍していた天才ハッカー、クルミもやってきた。

 

 

「いだだだっ、く、クルミちゃんもわかってるなら止めてよーー!」

「誰がおばさんだクラァ!!」

「だから僕じゃないってばっ! もーーー、千束姉ぇ!!」

「おお、姉ちゃんも良いけど、姉ぇ! も良いかも?」

「そろそろ助けた方が良いかと。……嫌われてしまいますよ?」

「わっ、それはヤダ! こらこら、ミズキおばさん! 若さへの嫉妬は見苦しいゾ?」

「喧しいわ!!」

「ぎゃぴっっ!!」

 

 

漸く助け舟である千束を差し向けたたきなだったが、全然お仕置き(理不尽)結局をやめる気が無いミズキ。

クルミは、それらを一瞥すると、つかつかつか~と歩み寄り。

 

 

「おい、何呼び方変えてるんだ龍」

「ふぇ?」

「クルミ、先輩(・・)だろ?」

「………………」

 

 

にやりっ、と笑うクルミ。笑うと言うよりはドヤ顔だろうか。

そういえば、確かにここに初めて来た時、そんな事言われたような気がしたなぁ………。と、頭が痛い龍は、そろそろ意識をフェードアウトしようとするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな賑やかな一時を店内の奥、人知れず準備をしていた店主にして、元訓練教官のミカは微笑んでいた。

まだ、龍がこの店にやってきてほんの数日程度。

嵐がやってくる……と思っていた筈なのに、ふたを開けてみればこの快晴の空の様な陽気さ。

本当に僅かな期間でよくここまで馴染めたモノだ。

 

 

【心配は杞憂だ。ミカ】

 

 

そして、結果的に(・・・・)龍をここへと導いてくれた男の言葉が頭を過ぎる。

 

千束との戦闘を見て、あのとんでもない技量、能力を見て、暴走した時の事を考えたら気が気じゃなかったのだが、本当に彼はこの店にも、そしてこの店に訪れる常連客とも馴染んでいる。

 

 

【何故、そう(・・)したんだ?】

【いや、なに、大した事ではないさ。……・私は定説が覆された(・・・・・・・)瞬間を視ただけだ。―――少し前までは、私も(・・)信じて疑ってなかった】

 

 

くっくっくっ、と低く笑う声が頭の中で響く。

 

 

【もうじき、シン坊もそっちに行くだろう。……あの子を、千束らと一緒に見届けてやってくれミカ】

【秀さん。……アンタもこっちで見届けるべきだろう? 導いてくれるのは子供たちなんだ。……覆されたと言う今のアンタなら、オレの言う事が解る筈だ】

 

 

そのミカの言葉にまた笑みを零す。

 

 

 

【私は、――――故郷(・・)を守らねばならぬのでな】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい、そろそろ開店だ」

 

 

ミカは皆に声をかける。

その声に反応し、陽気な声が重なって返事となって帰ってくる。

 

 

さぁ、子供たちを見届けようか――――。

 

 

ミカは改めてそう思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日も今日とて喫茶リコリコは大盛況。

やはり、千束は勿論な事、この短期間で3人も新人が入った事が強く影響しているのだろう。ラインナップが見事にバラエティ豊かだ。そしてカワイイが売りになってる所もまた良い。

 

そして、夜になってする事は勿論――――。

 

 

「射撃訓練です」

「えぇぇ、もっとやろうよゲーム! あのムカつく名前のヤツ、もっとぶっとばそうよ!」

「千束姉ちゃん。もう向こうはログアウトしたっぽいよ?」

「ああっ、逃げやがったなッッ!! 次は、撃ちゲーでぼっこぼこにしてやる! 今日のは準備運動だ!!」

「主に千束だけだったら負け越しだったからな。ボクと龍のおかげで勝ち越し出来た」

「だね!」

 

 

クルミと龍は、ヘーイ! とハイタッチを交わした。

忘れがちになりそうだが、龍は転生者で、ゲーム関連は大好物だった。つまり、前世の杵柄~と言う事だろう。ゲームの内容自体は全くの別物になっているが、その本質部分は変わらない。だから、あっと言う間に千束より上手くなり、クルミと勝負する様になって――――オンライン対戦へと移行した。

 

そこで目を付けたのが、HN:FUKI。

 

名前がムカつくから、と絡んでいった結果、相手も受けて立ってくれて結構白熱出来たのである。

 

 

「うぐぐぐぐ、つ、次は得意分野! シューティング系だもんね!! ほら、たきなも一緒にやろう!」

「明日にしてください。私は今日下で射撃訓練をするつもりでしたので」

「う~~~、わかった! 約束だかんね!」

「ええ。……龍も一緒にしませんか?」

 

 

たきなさん。子供を射撃訓練に誘うとはコレ如何に? って考えなくもないが、それは一般論。龍という子を知ってる者ならば、なんの不自然も違和感もない。

そして龍自身も別に断る必要もないので。

 

 

「良いよー」

 

 

二つ返事でOKをした。

拳銃なんて日本で見るなんてほんの1年前……この日本にやってきた時は思いもしなかったなぁ、と何処か遠くを見据える様な顔になった。

 

 

「どうかしました?」

「ううん。何でもない。一緒に行くよ」

 

 

ひょい、っと立ち上がるとたきなの方へと歩を進めた。

 

 

「しゃーない。保護者として私も一緒に向かいますかねぇ」

「千束の方が面倒みられてないのか?」

「そんな事は~~~、ありまっせ~~~んっ! 龍ちゃんは、可愛い可愛いウチの子でーす!」

 

 

千束は龍に向かって抱き着こうとする―――が、ひらりっと回避。

 

 

「なーんで避けるのかなぁ?? 姉ちゃんの優しさが沢山なんだよ?」

「え? でも姉ちゃんもよく避けてるでしょ? ()

「私は凶器か!?」

「ほらほら、さっさといってこーい」

 

 

クルミもゲームを終えたので、元の定位置へと戻っていった。

そして、3人を見送った後、ミカが視界の中に入ったので一声かけた。

 

 

(アイツ)、力使う時は電気代結構喰うって言ってたけど、その辺は大丈夫なのか?」

「その辺は大丈夫だ。店の売り上げだけじゃ厳しくなるかもしれんが」

 

 

電気をバチバチと喰ってるその時にかかる電気代は結構デカい。(一般的な金銭感覚で)

その情報は事前に入手しているので、ミカも特に問題視していないのである。

 

 

「やっぱり興味は尽きないな。……何故、あんな力が(・・・・・)この世にあるのか(・・・・・・・・)。無知とは嫌なもんだ」

「…………」

 

 

クルミが言う通り、ミカも右に同じ。

とんでもない能力を引っ提げてやってきた龍と言う少年。才能(・・)と言う言葉で片付けれるような代物じゃない。

 

他にどんな事が出来るか等、興味が尽きる事も無いが………。

 

 

「まぁ、加減はしてもらわなければ、な」

 

 

叩きだした最高電気料金もちゃんと聞いているので、そこまでは流石に―――と、ミカは苦笑いをする。

 

 

「それにしても、店の地下に射撃場って、そっちの方に懸けた金を考えれば、龍の電気代なんて可愛いもんか? いまだにボクはアホだと思ってるが」

「主に金がかかったのは防音対策くらいだ。後は何とでもなる。……それに、近くに射撃場(そういうの)があるからこそ、見れるだろ?」

「……まぁ、な」

 

 

ちらりとモニターを見た。

 

そこには千束とたきな、そして龍の姿もある。まだまだ、千束やたきなよりも上背が無いので、中々撃ち辛そうだが、なんとかなっているだろう。

それに、千束が言っていた放電現象? もしっかりと視認出来たので……。

 

 

「龍の能力。他にも見れるかもな」

「お前も結構楽しんでるみたいだな?」

「そりゃそうさ。知る事は楽しいもんだぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

射撃場で千束は自前の非殺傷弾(ゴム)を使用する。……そして、いつも通り命中率が悪い。

それは仕方がない事なのだ。ゴム弾は基本的に軽く、距離があると急激にパワーが減衰し、そもそもな話、正確なで精密な射撃は不可能なのだ。

着弾した所に、彼岸花の様に花開く姿は、まさにリコリスの名に相応しい風景、と言えなくもない。

 

 

「やはり、少数の弾丸で済む様に、実弾の方が良いですよ。45口径1発で終わりますし」

「千束姉ちゃんのスタイル的に、実弾撃つ姿が想像できないけどね」

「おお、解ってますなぁ。そっ、たきなは勿論、龍にも頑張って信じさせたよーに、私は殺さないやり方を貫くんだから。便利な所だってあるしね」

「理解に苦しみます」

「……なんだか、殺しに染まっちゃってるって感じなたきな姉ちゃん、正直怖いよ?」

「染まってませんし、怖くもないですよ。ただ、それが仕事なだけだと言うだけです」

 

 

殺さぬ様に立ち回る千束に対し、実弾を推すんだから十分怖い分類に入るんだけど……一先ずもう言わない様にした。

この喫茶リコリコに転属する様になった切っ掛けの事件を、龍も聞いている。

合理的だ、と言う理由だけで機銃掃射でテロリストたちを一掃したのだから。……正直、ちょっと前までニンゲンだった筈なのに……ミンチと化した凄惨な現場が想像できたから。

 

 

「龍も勿論、殺しはなしだからね?」

「わかってるよ。と言うか、最初っからそれ言ってるよね? 人殺しはしないし、した事ないし、するつもりもないよ。……(童貞喪失(殺人経験)。そんなのは嫌だしね………)」

 

 

龍はそういうと、千束の使う弾丸を手に取った。

弾頭が赤くなっている特殊な弾。

 

 

「じゃあ、龍君の必殺技! 披露してもらおっかな? たきな」

「訓練の目的はそれでしたから」

「え、そうだったの?」

「ええ、そうですよ」

 

 

自分の訓練よりも、龍の能力についてが気になってる様子。

確かに気持ちは解る。たった一人でリコリスの部隊を圧倒したその力の一端。可能な限り自分の目で見ておきたいのだろう。

 

龍も別に躊躇いなどはない。

自身の能力を明かす事の愚行! とか言ってみたい気はあるが、千束やたきな、このリコリコの皆であれば大丈夫だ、と何処かで思っているからこそ躊躇いは無いのだ

 

 

「僕は拳銃なんて持ってないからね。……こうやって」

 

 

左手の人差し指と親指で千束の弾丸を摘まむ。

そして、僅かにスパークするその指先。場に緊張が走り――――そして右手で丁度デコピンをするように弾丸をはじくと……。

 

 

ドキュンッッ!!

 

「うおっっ!!?」

「ッッ!!」

 

 

勢いよく弾丸が撃ち放たれた。

距離が伸びれば伸びる程軽い弾丸の勢いが落ち、命中精度が駄々下がりする銃弾の筈なのだが………そのまま貫いてしまった。

 

 

「ぁ……ちょっと加減が難しいかも。折角の非殺傷弾(ゴム)なのに」

 

 

この威力だと、人体を貫いてしまう、と思った龍は。

 

 

「今後は今のは使わないので」

 

 

封印する事にした。

以前はちょっとした小石をはじいて、遠くにいる狙撃手(スナイパー)の足を撃ったりしたが、明らかにそれ以上の威力が出ているから。銃弾と小石を一緒にしてはいけないんだな、と1つ勉強になった龍だ。

 

 

「なになに! 今のすっげーーー!! すっげーー龍すっげーーー!!」

「千束姉ちゃん、語彙力どこいったの?」

 

 

すげーすげーを連呼する千束。これ自分より幼くなったのでは? と思う龍。

確かに、それに少女ではなく少年の様な目を向けているから。

 

 

「っかぁぁ、可愛い癖に、可愛げない事を! 今のなに? なんなの!??」

「……上手く説明できないんだけど、電磁砲(レールガン)を意識して、えいっ! ってやったら、勝手に想像通りの弾が撃てた、ってだけなんだ。だから、原理とかその他もろもろは聞かないでね?」

「……凄い、と言うより出鱈目な力、と称した方が良いかもしれません。……理不尽、とも言えます」

「たきな姉ちゃん……やっぱり怖いよ? 僕に言わないでね。なんでこんな能力持てたのかもよく解ってないから」

 

 

龍はそういうと苦笑いをした。

自身が転生者である事は2人には打ち明けていない。

この世界に降りて、打ち明けたのはたった1人だけで………。

 

 

「千束にも言えますね」

「まさかの飛び火だ!」

 

 

銃弾を躱してしまう千束の力もまた常人からすれば理不尽極まりない。

拳銃だけでなく、アサルトライフルの弾丸まで楽に躱し、あっという間に接近して不殺と言う殺しよりも遥かに難しいやり方で圧倒してしまう。

 

そもそも、この2人は五分の力量を持ち、引き分けたと言うのだから同じだと言えばそうだ。

 

 

「どうしてお二人はそんなに強いのですか? 私にもその位の力があれば………」

「出来る事と出来ない事がある、ってだけでしょ? たきな。それぞれが出来ない事を補い合う! それがチーム(・・・)ってヤツだよ」

 

 

千束はニコリと笑った。

欲しいモノは、欲しいと思って頑張ったとしても、なかなか届かない。

でも、だからと言って自分を見失ってはならないし、周りを見失ってもダメだ。

 

1人じゃないんだから。

 

 

「たきな姉ちゃんだって凄いんだよ? 見てよアレ」

 

 

龍は指をさす。

指示された場所は、たきなが少し前に撃った実弾の後。

 

ターゲットの急所を全て的確に貫いているのだ。寸分の狂いもなく正確無比に。

 

 

「連射であの精度。……僕、真似出来る気がしないもん。それに僕の場合は充電切れちゃったら大変だし」

「そうそう。だから、龍が大変な時は私たちでしっかりと守る! そんでもって、私たちが大変になっちゃったら、龍に守ってもらうっ! 頼りにしてるゾ! 2人ともっ!」

「むぎゅっ!!」

「……はい」

 

 

千束は2人を抱き寄せた。

まだ結成して間もないトリオ。

でもこれまでで一番、最高のチームだと自信を持って言える。

 

 

「ってな訳で、訓練も良い感じで終わりだよね? さっ、次いこ次!」

「? 何か急ぐ事がありましたか?」

「僕は何も聞いてないよ」

「ふっふっふ~~、龍には内緒にしてたからね~~♪」

「私も聞いてませんよ」

「そだっけ?」

 

 

千束はイヤらしい笑みを浮かべた。

付き合った時間はまだまだ短いけども、この笑みを浮かべる千束は何か面倒な事をする! と直感した龍は逃げの一手。

 

 

「僕、先戻ってるね。ミカさんのお手伝いしないと~~~」

「ちょーーっと待った! 龍~~? ボドゲの件忘れてないよね~~? 負けちゃったから1つ言う事を聞く、って」

「………常識の範囲内、って言ったつもりでもあるけど?」

 

 

逃げてもしかし、まわりこまれてしまった―――状態になった。

嫌な予感しかしないが、確かに以前の約束は覚えている。反故にするのは正直気が引ける、と言うものだ。

 

 

「ふっふっふ~~、この間 土井さんと一緒にみた映画を一緒にみようか~~って思ってサ?」

「……それって」

「断ります!!」

「だ~~~めっ! えいっ、捕まえた!!」

「わぁっ!?」

 

 

もう一度逃げようとした龍だったが、あっさりと確保されてしまった。

どうやら、充電が切れてしまった様なので、本気でエスケープ! と言うのも難しい。

 

 

「土井さんと言えば、ジョー・ロメロ監督の作品、ですか?」

「そうそう! 皆で一緒に見たくてね?? 丁度夜だし~~」

「常識ないよ! 姉ちゃん!! だって、それ絶対!! R指定って意味わかんない訳ないよねっ!??」

 

 

必至に説き伏せる龍。

 

確かに、以前接客業をしていた時に聞かれてしまった。

苦手なモノはないのか? と言う質問に対し、答えた事を。

 

龍が苦手なのは……ズバリ、ホラー映画。特にゾンビ物は最悪だ。

 

 

「Rは、restrictedの略だよ! 年齢制限に引っかかる!!」

「だいじょびだいじょび。ちょっとくらい火遊びしても大丈夫だよ~~」

「いーやーだーーー!!」

「…………」

 

 

何だろう?

たきなは、龍の姿を見ていて、沸々とこれまで感じた事が無い、考えた事も無い感情が湧き上がってきて……。

 

 

「ほら、たきなも一緒に! 龍は両手に花だよ~~? 美少女な2人に囲まれて嬉しくない訳ないよね??」

「……指示であれば、仕方ありませんね」

「なんで!? ちょっとまってたきな姉ちゃん!? 聞いてた!? ルール破るの良くないよね!?」

「確かにそうですが、私の目には龍は子供の様に見えないのです。……私と同い年に見えます。なので、問題ないかと」

「なにそれ!??」

 

 

たきなが目覚めたモノ。

それはSッ気。

 

 

その後突如始まってしまった映画上映会。

どこに置いてあったのか……、プロジェクターまで用意して、映画館……とは言わないが、圧倒的な大画面で……。

 

 

 

 

 

その夜、男の子の悲鳴が木霊するのだった。

 

 

 

 

 

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