殺し屋JKと異端なDS   作:りこりこ・りこりこ

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05 Shocking scene

 

ホクホク顔の千束。

満足したようで、たきなと映画感想を語っている。

龍は魂が抜けたかのように、虚空を見つめている……。

 

 

「うむうむ。昔のはともかく、最近のゾンビ映画でさ? 暗い画面にするのって正直《逃げてる》って思わない? 低予算とかそういう理由もきっとあると思うけど、やっぱり細部はしっかりと見せて、誤魔化しゼロで、その上怖いヤツが最強だと思うんだよね。今ならそのくらいの技術あるっしょ??」

「私は雰囲気だと思いますよ。暗さとは人間が持つ本能的な恐怖心を煽ります。なので、必要不可欠な要素である、と言えます。そもそも映画ですが、もしも自分達が巻き込まれたとするなら、都合よく照明がついて視界良好で行動を起こせる、とは限りません。そこにリアルさも出て、更に引き立てるのではないでしょうか」

「そーこ言っちゃうかぁ~~。それで龍くんの感想は? ど~だった? どう? この贅沢! 豪華二本立て! ロメロ監督傑作集!」

「…………………え? かんそう?」

 

 

無理矢理な上に、まさかの二本立てゾンビ映画鑑賞後の雑談。

 

原作とリメイクの2本だてだ。旧作には旧作の、そしてリメイクにはリメイクの良い所がある。リメイク作品は確かに映像が圧倒的に綺麗になった。昔であればあんなにスムーズに、ハッキリと、細部まで見せられる部位折損なんて、肉体が腐って落ちる描写なんて表現しきれなかっただろう。

 

なんでも、昔の臓器露出といったグロテスクな場面は、豚や牛の内蔵などを使って昔は表現したらしい。

でもやはり人間のモノではないのは間違いないので、昨今の映像ほどまでには到達しない。

 

でも、それでも低予算とアイディアを駆使して、恐怖心を煽る旧作品にも脱帽モノだ。

 

原作あってのリメイク。皆が先人たちに敬意を払い、越えようと頑張る意味が解ると言うもの。

 

と言う訳で、聞かれた以上は答えるが筋だろう。

なので、今回の感想をボソリと一言。

 

 

 

「ぼくは………姉ちゃんたちが嫌いになりそうです」

 

 

 

 

これを聞いて、2人はぎょっとした。

『ちょっとやり過ぎた!?』と大慌てで、ご機嫌取りに勤しむ。

色々と攻めた結果だし、全くないとは思ってないが、この雰囲気、声のトーン、……流石にガチ嫌われは勘弁だったようだ。

 

 

 

 

 

「ですが、何故龍はそんなに駄目なのですか? 実際に現場で相対する相手の方が怖いと思うのですが。所詮映画は作り物です。過剰に怖がる必要はありませんよ」

「理屈じゃないのっ! ……僕、ビックリ系は、ホラー系は全般苦手。嫌なのっ!!」

「……解りませんね。あんなに龍は強いのに」

 

 

千束と互角にやり合える力。

四国地方に居て、テロリストたちを退け、畏怖される存在となりえたと言うのに、そんな存在が顔を青くさせている。

 

 

「宇宙人とか、怪物とかが襲ってくるパニック系は全然大丈夫なんだけど……、ゾンビとかのホラー系は嫌。姉ちゃんももう嫌」

「わ~~っ、ごめんごめんってば! 許してよりゅ~~!」

「苦手は克服しましょう。私で良ければ付き合いますから」

 

 

色々とズレてるたきな。

ごめん、と言いつつ笑顔が眩しい千束。

嫌い嫌いと言いつつ多分本気で言ってないんだろうな、な龍。

 

リコリコ閉店後も本当に賑やかだ。

ただ、常連さん達と一緒に行うボードゲーム大会が本日ないのは残念。それがあれば、こんな怖い思いをする事無かっただろうから……。

 

 

「な~~に、イジメてんのよ、あんたら。絵面が悪いわよ? 寄ってたかって幼児イジメるJKの絵ってサイアクじゃん」

「幼児に絡むおばさんの方がヤバいと思うんだけど~~~??」

「だから、誰がおばさんだクラぁ!! わたしゃ、まだ20代だ!」

「四捨五入したら?」

「誰がするか!! う~~、絶対良い男捕まえて、おばさん呼びした事後悔させてやる!」

 

「幼児って………、僕そこまで小さくないし。それにミズキさんが男捕まえたら千束姉ちゃんが後悔するの……? なんで?」

「さあ?」

 

 

楽しそうに絡みだした2人を見ながら小首を傾げる龍とたきなだった。

恐怖心でいっぱいだったのは、もう薄れている様だ。

 

 

「さぁさぁ! 夜はまだまだ終わらないよ~~! 戻らない時間を嘆いても前に進めない! って事で、ちょ~っとお腹空いたので次は皆で仲良くタコパ開催決定!!」

「「「え?」」」

 

 

一体いつの間に持ってきたと言うのか、ドンッ! と効果音・擬音をつけながら、テーブルの上に置いたのはたこ焼き器。

 

 

「へっへ~実は織元さんのとこのリサイクル店で、投げ売りされてたから買っちゃったんだー!」

「おっしゃああ! 酒の宛てになる! 千束にしちゃ、グッチョイス!」

「……たこ焼き? ここって、甘味処じゃなかったのか?」

 

 

ひょい、と現れた影に、龍は驚いて後ろに下がった。

 

 

「うわっ! クルミちゃ……センパイ! 一体いつの間にそこに!?」

「あれだけ騒いでいたらな。ボクが来た事に気づかないのも無理ないだろ。見てたよ(・・・・)。……それにしてもお前、怖がり過ぎだろ」

「っ~~~~~!!」

 

 

正直、自分と同じくらいか歳下であるクルミから言われるとダメージは更に倍率ドン! だ。

 

呆れた様子でいつの間にか現れていたのはクルミ。

流れる様な動きでそのまま座敷席に直行しているところを視ると、苦言を呈してはいてもたこ焼きは食べたい様だ。

 

 

「それで、これはどうやるんだ?」

「あ、たこ焼きは初めてだったんだ」

「まぁな。興味はある」

 

 

知らない事が知れる。

たかが料理と言えど本質部分は同じなので、思いの他クルミは楽しそう。

 

 

「ふっふ~ん。まぁここは千束さんに任せときなさいって! まずは鉄板をガンガンに熱して、油を多めに加えて~~♪」

 

 

鼻歌混じりに軽快な動きで続けていく千束。

気付けばジュッジュッ~~と焼ける音も軽快に聞こえてくるし、何だかリズミカルな気もする。生地が焦げ焼かれる匂いも店内に広がっていき――――。

 

 

「全く。するならすると、先に言ってくれ。……仕方ない。焼け石に水だとは思うが」

 

 

ミカは換気扇をフルパワーで回し始めた―――が、言う通りまさに焼け石に水。あっと言う間に、甘味処とは思えない揮発した油の匂いが店内を支配していった。

 

 

「これ、明日は大丈夫ですか? 匂いとか取れるものなんですか?」

「まぁ……千束がやった、と言えば大体の常連さんたちは納得するだろうし、何なら、たこ焼きを欲しがる様子も鮮明に見えてくる。………大丈夫だろう。と言うか今更遅いと言うのが本音な所だ」

「……ですよね。ついさっきまで映画見てたかと思えば、次はたこ焼き。このフットワークの軽さが千束姉ちゃんですか。うん。改めて混乱します」

「私としては、時たまに見せる大人びた姿とその達観し過ぎてる面が出るキミの方が混乱だがね。とても児童とは思えない瞬間があるよ」

「……それはどうも。よく言われてました。あ、でも秀爺から色々と聞いたのでは?」

「大まかな程度は、な。……後は自分の目で見極めなさい、と言われたよ。あの人には頭があがらんな。どれだけ歳を取っても」

 

 

ミカは苦笑いしながらいった。

こんな小さな体にどれ程のモノが内包しているのか、と想像するとやはり恐ろしくも思う。畏怖し、触らぬ神に祟りなし、と言う気持ちも解る。

DAであれば、排除の方向へと進んでも不思議ではない程に。

 

それと、秀爺とミカに何か関係性があることは知ってたが、まだしっかりと聞けてはいない。聞いてみようか? と思ったが……。

 

 

「ホラー映画嫌いと言っていたキミは年相応に可愛らしいと思ったがね」

「ぅぐ………」

 

先程の件をネタにされたので、龍はタイミングを失った。

 

そして、ミカはそんな龍を見て笑う。

時折見せる素の姿が微笑ましいと言うのもまた、事実だ。

娘も同然な子供たちばかりに囲まれていたからか、息子もまた悪くない、と思えてきたりもしている。

 

 

 

「くっはぁっ! うんまぁ! 焼きたてたこ焼きに冷え切ったビール……、これ以上ない至福の時!!」

 

 

ミズキが我さきにと食いついたたこ焼き。そこからクルミも手を伸ばして食べてみる。

やる事成す事色々と無茶苦茶な千束だけど、料理の腕は見事と言う他ない。

 

 

「はふっ、はふっ、うっまっ」

 

 

口の中が熱くなるが、それを必死に抑えて、堪能する。

 

 

「店長」

 

 

そんな時、たきなもミカや龍の方へと近づいてきた。

 

 

「大丈夫でしょうか? 匂いが付きますよ」

「ああ。たきなも同じ事を思ったか。どうせ今更だ。龍もたきなも、食べてきなさい。もたもたしていると、全て平らげられてしまうよ」

 

 

甘味処でたこ焼きの匂いとは、何ともまぁ、とため息が出なくもないがそれこそがリコリコらしい。

 

 

「こっちに来てまだまだ日も浅いが。どうだ? 喫茶リコリコ(この場所)は」

「!」

 

 

龍の頭にぽんっ、と手が乗る感触。

ミカのその手は大きくて、温かかった。

 

 

「うん。好きになったよ。大好き」

 

 

その温かさは心地よかった。

自然と笑みが零れでた。

確かにまだまだ日が浅いかもしれないが、それでも混じりっ気のない本音で本心だ。

リコリコが好き、と自信を持って言える。

 

 

「………つまり嫌われたのは私達だけ、と言う事でしょうか」

「姉ちゃん姉ちゃん。そんな落ち込まないでよ。何だか僕が悪い事したみたいじゃんか。ヒドイ事したのは無理矢理観せてきた姉ちゃんたちの方なのに」

「はっはっはっは。龍は千束やたきなを前にすると、また違う一面が出てくるな?」

「う~~~ん……、姉ちゃんたちを前にしたら、こんな感じになるって言うか、なんていうか……」

 

 

今の外見年齢の倍くらいは精神年齢はある筈、なのだが……徐々に精神も肉体の影響化にあったとでも言うのか、時折自分が本当に児童の様に幼くなってしまっているのが分かり、それが自然で、嫌ではない思えてくるのが本当に不思議だ。

 

※因みに前世でも、まだまだ子供と言って良い年齢なのだが、本人は違うつもりである。

 

以前は相手を油断させる為の演技~な部分はあったんだけど……もうそれも境界線が解らない。

 

中途半端な姿で、中途半端な能力(チート)(笑)でこの世界に落とされた弊害とでも言えば良いか?

 

等と、色々考えていると《くぅ~~~》と、腹の虫が鳴いた。

間違いなく美味しいだろうたこ焼きの匂いが、腹の虫を刺激した様だ。

 

 

「ほら、行きなさい。力を使うと腹が減る(・・・・・・・・・)のだろう? 遠慮はいらないさ。あの千束相手には尚更無用だよ」

「! はいっ!」

 

 

龍はたこ焼きの匂いの中心へ、空腹の身体を満たす為に向かった。

充電しているのは電気で、消耗しているのも電気……な筈なのに、副作用と言うか代償と言うか、何故か解らないが、何故だか異様に腹が減る。

小さな身体なのに、一体どこに入るのか? と思われるくらい食べたのは間違いなくあのうどん店巡りの時だろう。

千束とのデッドヒートを楽しみ、乙女の身体に体重と言う天敵を植え付ける気か~~! と文句を言われたのは最早懐かしい思い出だろう。

 

 

 

その後———何故か甘味処な筈のリコリコでは、たまにたこ焼きが出て、これまた大盛況したりするのは別の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日も今日とていつも通りの喫茶リコリコは無事営業終了。

看板も仕舞われて、さぁさぁこれからアナログゲーム大会……ボードゲーム大会が開催される! と思いきや、違った。

 

 

「約束したでしょ! さぁさぁ、FPS(シューティング系)だよ! さあさあ盛り上がろうっ!」

 

 

以前約束していたVRゲームを千束はやろうっ! と取り出していた。

取り出してセッティングまでの時間が異様に早く、どれだけゲームしたかったんだ? と思わずにはいられないが……別にツッコんだりはしない。

 

 

「そう言えば、腹立つ~~って言ってた対戦相手の人、今日もするとは限らないよね?」

「その辺はぬかってないよぉ! 準備万端! ……意地でも探し出してぼっこぼこにする!!」

「え? ………ぬかってない? 準備万端……とは?」

 

 

オンライン上で意中の相手と意図的に対戦するのはフレンドになったりして、ログイン状況を確認するなりしなければならない。

実際の知り合いが相手だったとするなら、直接連絡を取れば良いだろうけど、聞いた所野良プレイしてて腹が立ったとの事。それで相手も相手でかなり好戦的だったとの事。

 

 

「ぜーーったいぼこぼこにしてやるっ!!」

「そんな簡単に見つかるなんて「いたーーーっっ!」ゑ? はやっ」

 

 

なんと!

同じ時間帯で先日のプレイヤーがいたとの事だ。

示し会わせてたのではないか? と疑うレベルだ。

 

 

「あいっ変わらずムカつく名前してんじゃねーぞコラぁ!!」

 

 

或いは本当に互いに波長が合ってたのか……。

どこのチンピラだ? と言いたくなる因縁付け。

 

 

ともかく、オラオラオラ! と千束は雄叫びを上げながら対戦開始。

 

 

プレイ状況は、しっかりとモニター出来ているので、取り合えず最初は観戦モードに移行だ。

 

丁度、クルミも観戦をしに、こっちへとやってきたので、茶菓子を用意して2人で食べる。

 

 

「今日のはどう思う?」

「うーん、良くて千束姉ちゃんの2勝5敗くらいじゃないかなぁ?」

「ま、同感だな。千束はゲームでは直情型の脳筋だ。搦め手で来られたとしたなら、分が悪い」

 

 

お茶を頂きながら観戦するのも面白い。

千束のリアクションの1つ1つが見事にモニターの中で戦ってるアバターとリンクしているので、益々面白い。

 

 

「そう言えば たきなはどうした?」

「ちょっとコンビニまで。直ぐ帰ってくるよ」

 

 

たきなも一緒にゲームの約束をして、たきな自身も了承をしているのだ。

約束を違える様な事はしないので、たきなも面倒くさいからこのままボイコット~と言う訳にはいかないだろう。

 

 

「このっ、くっそっっ!! うっきゃーーーーー!!! キーキー!!」

 

 

そして、千束の奇声が木霊する。

画面を見てみると案の定劣勢。

基本的なゲームスキルは似たり寄ったりではあるが、アイテムの配置や使用感覚など、ゲームで勝つための要素の使い方の上手さはあちらが上。千束はやっぱりゴリ押し。

数手は上手くいくかもしれないが、バトルフィールドの構成、配置がゲームをする度に解ってくるから、やればやる程千束は劣勢になってくる。……ゴリ押しが通用したのは最初だけだ。

 

 

「いつお前は猿になったんだ?」

「千束姉ちゃん語彙力どこに~じゃなくて、退化しちゃったんだ……」

「はぁ、この分じゃこっちの声は聞こえないだろうな。……よし、龍。こっちも勝負するか? ここ、こう言うの無駄に揃ってるし」

「! 良いよ! ゲームは横で見てるだけじゃやっぱり物足りないからね」

「ふふふ。……お前には本物と言うモノを、魅せてやろう」

「……負けないよ! センパイいざ勝負っ!」

 

「ぬおおおおお!! うおおおおおお!!!」

 

 

千束のプレイ姿を眺めつつ~リコリコにある携帯ゲームも引っ張り出してきて、クルミVS龍のゲーム対決も始まるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し、遅くなってしまっただろうか………と、考えつつたきなは、リコリコへと向かう。

 

今日はゲームをする事、つまり遊ぶこと。仕事や任務、指令じゃない。

ないとは言え、約束は約束。反故にするなんて出来ないし、するつもりは無かったのだが、思いの外遅くなってしまった。

時間指定されてないとはいえ、謝罪の1つくらいは必要だろうか~とも考えていたその時だ。

 

 

 

 

 

 

『ぬっがあああああああああああ!!!』

 

 

 

 

 

 

外にまで奇声が、絶叫が響いてきたのは。

その声の主が誰なのかは想像に難くない。間違いなく千束のモノ。遅れてしまったせいか、とも思い少し速度を上げてもう目と鼻の先のリコリコへと向かい、その扉を開けてみると………。

 

 

「むきーー!! 悔しいぃぃぃ!! って、ああああ! なーに2人で別ゲームしてんのさ! 華麗な私のゲームさばき無視してんの!?」

「華麗な全敗だったがな。安心しろ、合間合間の暇潰し程度だ。ちゃんと見てたよ」

「うん。千束姉ちゃんの見事な負けっぷり。予想外しちゃった」

「にゃんだとぉ! キサマら~~」

 

 

戦績は5-0

一応フォローしておくと、別に千束がボロ負けしてる~と言うわけではない。かなり競った戦いだった。意気込みがゲームに反映してたと言って良い。

 

でも、ここぞで競り負けて結果的に見れば全戦全敗なのである。

 

 

「あっ! たきな~~ぁ!!」

 

 

ちらっと見えた視界にたきながいた。

なので、直ぐに千束は飛び付く。

 

 

「たきなが私の仇をうってーー!」

「……??」

 

 

返事をするよりも先に、千束はたきなにVRゴーグルを装着させた。

状況がいまいち解ってないが、千束に付けられたゴーグルを通して、仮想世界が目の前に広がり……少し感動。

 

 

「おぉ……凄い。リアルですね」

 

 

アナログ系のゲームばかり付き合ってきたから。

今は戦う前の準備中の時間。しっかりと視界把握し、ある程度の輪郭を捉えたところで、千束はガンコントローラーを渡す。

 

 

「はい! これ持って~がんばって!!」

「たきな姉ちゃんファイトー」

「相手、千束ぼこぼこにしてノってると思うから、気を付けろよ」

 

 

流れは間違いなく全勝の相手。

ここから巻き返せるか否か、たきなの腕に掛かっている。

 

 

「にゃにおう! 生意気なヤツめ!! 名前以外もムカツク~~……って、なんじゃかんじゃで見てたんかい!」

「だから、そう言ったろ? 因みにボクと龍の戦いはボクの勝利だ」

「……むっ」

「2人の熱い応援が無かったから負けたんだーーー!!」

 

 

千束は憤慨。

間違いなく、レベルが高そうな戦いが繰り広げられていただろう、と簡単に想像できるのも腹が立つ。

なので、2人に腹いせで抱き締め付けるのだった。

 

 

「も、もう姉ちゃん! 今はたきな姉ちゃんでしょ! 応援するんじゃないの!?」

「おーーっとっと、そうだった!」

 

 

オシオキ? に夢中になりかけてた。

画面を見直してみると、まだ待機時間。……後5秒。

 

 

「よっしゃ! たきながんばってーーーースタート!!」

 

 

そして、Round.1 3分間の死闘が幕を開けた。

 

開始と同時に、相手のアバターが撃ってくる。

5度の勝利にやはり調子をあげてきているのだろう。今までで一番早いタイミングだ。

 

 

だが、それが通用したのは千束だったから。

 

現実の撃ち合いには無類の強さを誇る千束でもゲームは精々中の中程度。

単純な速攻は、直ぐに順応し始めた たきなには通じなくなる。

 

 

躱す避ける躱す避ける。

 

 

調子を更に上げてリズミカルに、小刻みに、フェイントも混ぜて動くたきなの姿はまるで舞踊の様だ。

そして、動く範囲も広い。

つまり、結構危ない。

 

VRゲームを体験してる人の回りには安全のため近づかないようにするのがセオリー。

千束とは明らかに稼働範囲が違うたきなだったので、あわてて動くのは千束。

 

 

「あーヤバイヤバイ! 危ない!」

「場所確保ー!」

「おっとっと」

 

 

ミニテーブル、小棚、座椅子など、手分けして3人で端によせた。

これで、少なくとも今の動く範囲内からは出すことが出来たので、踏んだり当たったりして怪我する事はないだろう。

 

 

ただ―――ここで予想だにしなかったことが起きる。

 

 

鮮やかなアクロバティックを決めるたきな。被弾率も激下がり、相手の方はボロボロに。歓声の1つや2つ、あげたくなってくる展開なのだが……、後方倒立回転飛び(バク転)を決めた瞬間を、千束は観てしまったのだ。

たきなは、今リコリス支給の制服を着ている。つまりスカート姿。

そんな状態で飛び技決めた日にはどうなるか。

 

 

 

パンチラーーーーいや チラっと~どころでは無くモロに見える。つまりパンモロだ。

 

 

「いだだだだ!!」

 

 

千束は反射的に、両手で龍の目を閉じさせる事は出来た。それはそれでファインプレー。如何に幼子とは言え、お姉さんのスカートの中を覗くのは情操教育に悪い。

 

龍はたきなの方は見てなかった。突然視界を遮られた形だ。

ちょこっと、手に力が入って、訳が解らないままダメージが入ってしまってるのはご愛敬。

 

 

それはともかく、この瞬間千束は見てしまったのだ。

たきなのスカートの秘密をーーーーー!

 

 

 

その衝撃故に、軽く驚き声を上げた後固まった。

龍は目を押されてタップしてるのに、解放されるまで暫く時間が掛かるのだった。

 

 

「おー、一戦取ったな」

 

 

そしてクルミの声でどうにか正気に戻る。

違う所に視線が釘付けだったが、見事な勝利を上げた時はテレビ画面の方に目を向けた。

 

そこにはWINNER の文字が多数、踊り出ている。

 

 

「やった!! やったあぁ!! 流石たきなーー!」

「もう!! 見えないし痛い!! いい加減そろそろ離してよ!!」

「いたっ!!」

 

 

喜ぶ時も龍の目を押さえたまま。

離してくれる気配がない理不尽な仕置きに反発する龍は、手のひらを千束の顔めがけて強引にふって、パチン! とビンタをするのだった。

 

 

「喜び過ぎでしょう……」

「まあ、今日のは全敗だったしな」

 

 

VRゴーグルを外し、腰に手を当ててるたきな。表現力は乏しいかもしれないが、そこには満足感があるようにも思える。ただ、千束のオーバーリアクションのせいで、薄くなってしまってるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてそして、別の場所、対戦相手はと言うと……。

 

 

「クソが!! 急に戦い方変えやがった!!」

「1勝くらい良いじゃないっスか。まだまだこっから、っスよ? まあ、次は私スけど」

「1回でもコイツに殺られんのは腹立つ! 腹立つもんは腹立つんだよ!」

「ムキになりすぎっスね~。たかだかネットゲームっスよ?」

 

 

 

そしてそして、ここでリンクする。

遠く離れた場所にいる2人は、まるで示し合わせたかのように、息ぴったりで。

 

 

「「だってコイツ、名前がムカツクんだよ!!」」

 

 

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