醜悪な終末に花束を   作:夏之 夾竹桃

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敗北者

【2020/12/31.決着】

 

 その日、僕は負けた。絶対悪として僕はその拳を受けたのだ。誰もがこれで良かったと、幸福な結末が待っていると、そう思っていた。この僕でさえも。悪を背負って、僕は地に付した。

 

【2021/1/4.敗北者】

 

 少年は、その街を歩く。異能力で満ち溢れたその国の路を。長く白い髪、酷く絶望した紅い目。その少年はただ歩く。

 

『僕は、負けたはずだ。決着はついた。僕の全てを………あいつに託し、僕はあの拳を受けた………なのにどうして………。』

 

 自分に問いかけ続け、彼はフラフラと覚束ない足取りで歩く。行く宛などないのだろう。途端、少年の肩に衝撃が走る。だが、その少年はお構いなしに進む。

 

「チッ………おい!」

 

 だが、ぶつかられた側はそうも行かないようだった。電柱などではない、体格差は2倍はあろうかという男であった。

 

「………あ?」

 

 生気のない目で、少年は振り返る。その不気味さに一瞬たじろぐ男だが、引くわけにも行かなかった。

 

「なんだよ、謝ることもできないのかよ?」

 

「あぁ、悪い。気が付かなかった。」

 

 他人のことなどまるでお構いなしというその少年の態度が気に食わなかったのだろう。男は拳を握る。ここはそういう世界だ。結局、力には逆らえない。酷い………酷い世界だ。

 

「その態度………気に食わねェな………教育くらいしてやるよ!」

 

 その拳、常人のそれではなかった。あまりにも早い。彼の体格故か?いや違う。そんな筋肉ごときで弾丸の速度が出せるわけがないだろう。

 ただ、そんな弾丸は空を穿つ。

 

「は?」

 

 素っ頓狂な声を上げる男を横目に少年は最悪な結末を予想する。

 

「もしもさ、僕が格上だったらどうするのさ?」

 

「テメェ………。」

 

 口では吠えているが男の動きは停止していた。自らの拳を避けられるわけがない。彼にはその絶対的な自信があったのだ。だが、これが現実だ。少年は避けて、彼は焦っている。もしかしたら本当に自分よりも格上かもしれない。いや、どころか自分がこのまま死んでしまうのかもしれないとさえ思っていた。それほどまでにその少年の瞳は常軌を逸していた。

 

「まぁ、本当にぶつかったことは悪かったよ。」

 

 それだけ言い残し、少年はまた振り向きあるき始める。その少年に何が見えているのかは誰も知らない。つい数日前の出来事のはずなのに………それは誰の記憶にも残っていない。たった2人きりの終末戦争の記憶………。

 

 川辺の道をあるき、住宅街を歩き、公園を歩き………少年はただ絶望する。何もかも、変わっていなかったから。そして………何処にもその姿を見つけられなかったから………。

 

「暗いぞ、そこの少年。」

 

 そんな声が少年の耳に届く。ゆっくりとその方向を向くと………公園のジャングルジムの上に腕を組み仁王立ちをしている制服の少女を、見つけてしまった。

 

「………危ないぞ?」

 

「平気よ。私はそういう能力者だし。」

 

「いや、そうじゃない。」

 

 悪戯な風が一迅、過ぎ去った。

 

「見えてるぞ、下着。」

 

 あくまで淡々と、そう告げる少年。

 

「え?」

 

 数秒、沈黙が流れやがて少女は全てを理解したように紅く染まっていく。そして―――――。

 

「へ………変態!!」

 

『理不尽だ………。』

 

 そんなことを少年は思いながら、その少女の姿を見ているのだった。

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