そうして、その少女は落ち着きを取り戻していた。
「わ、悪かったわね。取り乱して。」
「いや、当然の反応だろ。」
2人は、公園のベンチに腰掛けていた。
「それで、どうして僕に話しかけたんだ………?」
「君があまりにも暗い顔してるもんだからさ、どうかしたのかなって。」
「お人好しなんだな。」
「そういうもんじゃない?人間ってさ。」
「そんなもんか………。」
少年はただ呟く。そうして、ただ風が吹いていた。静寂の中、何処か落ち着く朱色を眺めながら少年は次第に口を開く。
「自分を犠牲にしてでも、この人だけは生きていてほしいと………そう願えるような人は居るか?」
「あれ、もしかして難しい話?」
「特段、難しいというわけじゃない。ただ、居るか居ないかそれだけ聞かせてくれ。」
そう言うと少女は少し考え、やがて答えを口にする。
「うーん………いるよ。随分と会ってないけどね。」
「………そうか。」
「君にもいるの?」
「ああ、居た。」
「………そっか。」
全てを察したように彼女はそう呟く。特段珍しいわけではないのだ。この世界で大切なものを失うというのは。
「君、名前は?」
「どうしたんだ、急に。もう関わることだってないだろう?」
「いいや、私は関わり続けるね。君が死にそうなら、何が何でも。」
「いや、僕に関わったって最悪な結末に―――――。」
「うるさい!とっとと名前と住所!」
「な、なんで住所まで………。」
「だって君、そのなりを見る限りじゃ学校に行ってないでしょ?」
「まぁ、行けたものじゃないからな。」
「だから、私が全てのコネを使って私の通ってる学校に編入させる!」
「そんな権力どっから出てくるんだ………というかなんで学校………?」
「このままじゃ、将来ろくな職につけないでしょ?」
「まぁ、そうだな。」
「だから、私は君に全力で関わっていく。だから名前と住所!!」
「いや、支離滅裂すぎてまるで意味がわからないんだが………。」
「まだわからなくて結構!いいから早く!!」
「えぇ………じゃあ名前は
「よし、私の家に来なさい!」
「それ君が決めていいことなの………?」
「構わないッ!」
終始、その少女に圧倒されながら話が進んでいく。灯也と名乗った少年は気怠げにも話を進めていく。そうして………。
「じゃあそうと決まれば帰りましょう?」
「そうと決まればって………だいたい、僕は君の名前を知らないままなんだけど?」
「そう言えばそうだったね。私の名前は、
少女………翼は灯也にそう笑ってみせた。無邪気で何も知らない。この状況に何も疑問を抱かないそんな少女を、やはり虚ろな目で灯也は眺める。そうして2人は歩き出す。
「と、言うかその格好………寒くないのか?今、1月だぞ?」
「え?普通じゃない?」
そんな会話をしながら、灯也は翼の後をついていくのだった。