醜悪な終末に花束を   作:夏之 夾竹桃

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明野原

【2021/1/9】

 

「なんで僕が………。」

 

「うん、いいじゃない。よく似合ってる。」

 

 制服を着た2人の男女は、とある屋敷の玄関でそんな会話をしている。もっとも、その屋敷こそ結城 翼の実家なのだが。

 

「しかし………まさか本当にコネだけで僕を入学させるとは思わなかった………どういう人脈なんだか。」

 

「まぁ、ちょっとね。ほら、それより遅れちゃうよ?」

 

「あ、あぁ解った。」

 

 何処か楽しげな翼に手を引かれ、灯也はその屋敷をあとにするのだった。

 そうして、2人はその道を歩いていく。ふと、灯也が質問をする。

 

「………こんなに賑わうもんなのか?」

 

「え?普通でしょ?」

 

「いや、もっと殺伐としてるもんだと思ってたが………。」

 

「なんで?」

 

「なんでってそりゃあ―――――。」

 

 そこまで言いかけたとき、後から呼びかける声があった。

 

「おはようございます、結城さん。」

 

「あぁ、明野原(あけのはら)さん。おはよう。」

 

「その人が、あなたの言ってた旧宮さんね?」

 

「うん。そうだよ。」

 

 その返答を聞くと、明野原と呼ばれた少女は灯也のことを見つめる。そうして少し考え、やがて発言をする。

 

「これからよろしく、旧宮さん。」

 

「は、はぁ。よろしく。」

 

 それだけ言って、その少女は去って行ってしまった。

 

「あれは………。」

 

 ぼんやりと呟く灯也に翼は返答をする。

 

「明野原 (ゆき)よ。この辺一帯の元締めみたいなものね。灯也を入学させることができたのは彼女のおかげよ。」

 

「………なるほどな。しかし、個人が元締めってのはどうなんだ?」

 

「今平和なのが、成功してる証じゃない?」

 

「………まぁ、ならいいんだけどな。」

 

 そうして、また2人が歩き出そうとした矢先の出来事であった。耳をつんざくような爆発音が鳴り響く。それを聞くと同時に灯也の体は自然と動いていた。爆発音のした方向。それが丁度、明野原 雪の向かった方向であったからだ。直近の交差点を左に曲がる。

 

『僕はまだ能力を発動させていない………つまりは、この近くにまだ犯人が………。』

 

 そう思考を巡らせ、辺りを見渡す。だが誰もいない。怪我人は居なかったと解釈し、その上で疑問が生じる。

 

『こんな通路で何が爆発したんだ?』

 

 そう、そこには本当に何もなかったのだ。何かが燃えているわけでもなく、ましてや何か焦げた痕跡もない。

 

『爆弾の類いじゃない………やっぱりこれは異能力と見て間違いなさそうだな。ともすれば………。』

 

「と、灯也?大丈夫?」

 

 そんな声が後ろからかけられる。

 

「まぁ、見ての通りだ。」

 

「………誰もいない。」

 

「怪我人はなし。危険物の痕跡もなし………。」

 

 そうこうしている内に騒ぎを聞き付け人々が集まってくる。

 

「まぁ、僕たち以外にも聞こえているってことは確実に起こった事象だ。」

 

「でもここには何も………。」

 

「異能力なら可能だ。」

 

「それはあり得ないよ。」

 

 帰ってきたのは意外な言葉だった。

 

「どうしてだ?」

 

「だって異能力犯罪って言うのは現代じゃ厳罰に取り締まられるものだよ。対犯罪組織の人たちだってかなり優秀………しかもこの町の支部のトップは現場を再現できる異能力を持ってる。何をしようが無駄なんだよ。だから異能力犯罪はあり得ないよ。っていうか、常識でしょ?」

 

「あぁ、いや………そうか。」

 

『対犯罪組織?どう言うことだ?そんなもの去年まで無かった。それは間違いない。なら、ここは………一体………。』

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