スイープ、エミヤを召喚する   作:日高昆布

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前回はお騒がせしてしまい申し訳ありませんでした。
今後は同様のことを起こさないように注意していきたいと思いますので、よろしくお願いします




その12

 1 

 

 

 6月に入り初夏を感じたのも束の間。あっという間に夏本番になっていく。

 これからの時期、どうしても屋外トレーニングの数は少なくなってしまう。それと比例するように増加するのが、プールを使用したトレーニングだ。勿論暑さから逃れるためだけではなく、きちんとした計画に基づいている。中には屋外トレーニングが嫌と言うことでやっている者もいるのだが……。

 ともかくプールトレーニングの数が本格化する前に、済ませておかなければならない事がある。

 掃除である。無論、毎日消毒は行なっているし、屋内施設ということもあり、屋外と比較すれば汚れにくくはある。しかしとは言え、最も利用者の多いシーズン中での掃除はスケジュール的に厳しく、この時期を逃すと一度も掃除ができないまま2〜3ヶ月経ってしまうのだ。

 そう言う訳で水の抜かれたプールに士郎は立っているのだ。ハーフパンツに半袖、デッキブラシを肩に担いだ出立ち。

 その横にはデッキブラシに跨がったスイープ、委員長、堂々と水鉄砲持った命知らずの悪戯っ子、怪力姫と言う何故その人選? と言う面々がいる。皆自主的に手伝いに来てくれているのだが、何とも不安な面々であった。たづなからも頻りに「別日でいいんですよ?」と言われたことも不安を煽る。

 

「えー……本日は集まってくれてありがとう。水は抜いてあるが、濡れているし、洗剤も使うから足を滑らせないように気を付けてやってくれ。いや、走らずにゆっくりとやってくれ」

 

「了解ですっ!」

 

 全身から迸るやる気が、まるで号砲を待つF1マシンのように大気を揺らしているサクラバクシンオー。

 

「ふっふっふ。今日こそウインディちゃんの悪戯で悲鳴を上げさせてやるのだ」

 

 バケツの水で堂々と水鉄砲のタンクを補充しながら不敵に笑うシンコウウインディ。

 

「魔法少女とその使い魔さんとお話できる日が来るとは……! 感激ですわ!」

 

 そう言いつつ、何故か空を切る音を出す程にキレのあるワンツーを繰り出すカワカミプリンセス。

 

「……」

 

「士郎。手伝いを呼ぶにしても、もっと適任がいたと思うけど」

 

「いや呼んではいないのだ。どうも私とスイープの会話を聞いて、サクラバクシンオーとカワカミプリンセスは自主的に手伝いに来たようだ」

 

「もう1人は?」

 

「所狭しと仕掛けられた彼女の落とし穴を回避した事で目を付けられたようだ」

 

「……何か全員に帰ってもらった方が早く終わりそうなんだけど」

 

「奇遇だな。私もそう思っているところだ」

 

 2人が視線を向けた先ではサクラバクシンオーが、バクシンバクシンという謎の掛け声と共にプール底を全力疾走していた。彼女の視線は底を見ておらず、真っ直ぐ前を見ている。斬新なスタイルであった。

 

「サクラバクシンオー。まず止まりたまえ」

 

「ちょわ?」

 

「君がやる気に満ち満ちているのは分かった。しかし掃除については、速さと丁寧さを両立するのは難しくてね。往復ではなく汚れを落とす速さを競ってみないかね。あと、走ると危ないしな」

 

「なるほど! 確かに素早くピカピカに出来た方がバクシン的ですね!」

 

「……そうだな、バクシンだな。しかし簡単に落ちる汚れではないから、しっかり目視しながらやるんだ」

 

「分かりました!」

 

 カーリング選手のように高速スイーピングを披露するバクシンオー。

 そしてその横で走っている最中にデッキブラシをへし折り、底を派手に転がるカワカミ。

 ギョッとして駆け寄る士郎。しかし当の本人は何ともないように起き上がり、真ん中からへし折れたデッキブラシを手に慟哭していた。

 

「やっちまいましたわー!」

 

「だ、大丈夫かね」

 

「大丈夫じゃないですわー! ブラシがお亡くなりになってしまいましたわ!」

 

「ブラシは構わんよ。君は怪我してないかね」

 

「!! こ、こんな私を心配して下さるのですか?」

 

「あれだけ派手に転がっていればな。とにかく怪我がないようで何よりだ。ブラシはこちらを使いたまえ」

 

「でもきっとまた折ってしまいますわ」

 

「それは特別製でね。力を入れて握ってみるといい」

 

 握り潰さんばかりに腕の筋肉を膨張させるカワカミプリンセス。しかしびくともしない強固さに、目を輝かせる。……何か反応がおかしい気がするが。

 

「こちらを使ってもよろしいんですの?!」

 

「勿論だとも。今度は転ばないように気をつけるんだぞ」

 

「分かりましたわ!」

 

 残っている水を、トラックのように弾き飛ばすカワカミ。哀れ、その水をまともに受けるバクシンオー。

 ひょい、と頭を下げる士郎。

 

「あっ」

 

「私は目がいいのでね。コソコソした動きは却って見付けやすい」

 

「ぬぬ」

 

「それに狙うなら作業中の方がいい。今のように一息ついているタイミングでは気付かれやすい」

 

「ぬぬぬ」

 

「あと、その水鉄砲では勢いが足りないな」

 

「ぬぬぬっ」

 

「近い距離で一緒に行動して油断してる時を狙うしかないだろうな」

 

「ぬぬぬっ……!」

 

 転がしていたデッキブラシを手に取り、飛び降りるウインディ。

 

「ウインディちゃんに塩を送ったことを後悔すると良いのだ! ワワッ!」

 

 バクシントラックとカワカミトラックにより迫り来る跳ね水を回避すべく、小脇にスイープとウインディを抱えて移動。何故かそれに追従する2人。旋毛に目があるのかと問い質したくなる程に、全く前を向いていない2人。底の汚れを注視することに集中し過ぎているようだ。シングルタスクにも程がある。

 ひょい、とプールサイドに飛び上がる。着地した瞬間、士郎の頭を大量の水が濡らした。

 

「フッフッフッフ」

 

 水鉄砲のタンクを片手に不敵に笑うウインディ。

 

「おっと、これは見事にやられたな」

 

「ああ〜〜! 何やられてるのよ?! 『大魔女スイーピーと剣の使い魔』の名折れじゃない!」

 

「……初めて聞いたな。それはまさか言い触らしているのか?」

 

「私も聞いたことありましてよ〜〜!」

 

「そうか……」

 

「コラー! ウインディちゃんを無視するな! 勝ったんだからちゃんと子分になるんだぞ!」

 

「何言ってるのよ! アタシの使い魔なんだから、上げるわけないでしょ!」

 

「すまないが私も主人を変える気はないのでね。今日の礼を多めに渡すからそれで勘弁してくれ」

 

「ん〜〜……仕方ない。今日はそれで勘弁してやるのだ。使い魔クビになったら子分にしてやるのだ」

 

「勘弁じゃなくて諦めなさいよ!」

 

 ・

 

 水を張り、プール掃除は完了。

 何故かデッキブラシをウキウキで持ち帰るカワカミと、補習を忘れていたと言って走っていくバクシンオーと別れ、士郎の処遇を巡ってウニャウニャとキャットファイトしている2人を引き連れて仕事部屋に向かう士郎。

 因みに、髪を下ろした士郎というレアリティの高い姿はそこそこ衝撃を与えたらしい。

 

 ・

 

 2

 

 

「そ、それは本当かたづな?!」

 

「ええ、今しがた分かった事です……」

 

「危機……! 学園を揺るがしかねない圧倒的危機!」

 

「ええ、担当の方達も頭を抱えています。このままでは今日を乗り越えられないと」

 

「どうするどうする?? 唸れ我が脳細胞達よ!」

 

「……いっそのこと、生徒さんの中から得意な子に頼むしか」

 

『あ!』

 

 2人が同時に名案の誕生を告げる声を上げた。

 

「こうしてはおれん! たづな、今すぐ衛宮殿を探しに行くぞ!」

 

「分かりました!」

 

 真っ先に向かうは士郎の仕事部屋。しかし残念ながら鍵が掛かっていた。最短の道が潰えたことに落胆してしまうが、動きを止めている暇はない。手分けしてこの広大な学園の中から士郎を見付け出さなければならないのだ。

 

「衛宮殿──!」

 

「衛宮さ──ん!」

 

 放送で呼び出せば一発なのだが、焦りに焦っている2人の脳細胞の動きは非常に鈍かった。

 

 ・

 

「あん?」

 

 廊下を歩いていたシリウスシンボリの前方から、泣きの入った声を上げながら理事長が走って来た。露悪的な言動と態度で知られる彼女だが、流石に無視をすることが憚られる様相であった。尤も彼女に気付いた理事長が、文字通り縋り付いてきたので僅かな葛藤も意味はなかったのだが。

 

「衛宮殿を見なかったかね?!」

 

「え、えみや殿?」

 

 必死な形相に軽く引きつつ、名前だけしか知らないことを告げる。

 

「長身、白髪、筋骨隆々の男性だ。もし見かけたら、私とたづなが探していると言ってくれ! 頼んだぞ!」

 

 選挙カーのような喧しさで、再び廊下を走り出し階段を下っていった理事長。

 ふと、窓から外の向かいの校舎を見ると、たづなも走っていた。

 

「……2人とも探してたらそいつ、どこに向かわせりゃいいんだよ」

 

 至極もっともなツッコミであった。

 積極的に探す気はないが、道中で件の男を見たら声ぐらいは掛けてやるか、と思っていた。曲がり角の向こうでルドルフと何やら話し込んでいる場面を見るまでは。

 

「ではお願いします衛宮さん」

 

「構わんよ。君らにも世話になったからな」

 

「既にその『世話』以上に活躍されてると思いますよ」

 

「用事を引き受けるに、ちょうど良い口実だからな」

 

「……筋金入りですね」

 

「反面教師にしてくれて構わんよ」

 

「できませんよ、そんな事。では、申し訳ありませんがお願いします」

 

 会話が終わり、士郎がシリウスの方に向かって歩き出す。角を曲がる、と言うタイミングでルドルフが躊躇した様子の声色で声を掛けた。

 

「あの、衛宮さん……」

 

「何かね」

 

「──……いえ、何でもないです」

 

 誰が聞いても何でもないと言う様子ではないが、士郎は深く尋ねることはしなかった。

 

「そうかね。まあ気苦労の多い立場だろうからな。何かあれば話くらいは聞こう」

 

「ありがとうございます。呼び止めてしまってすみません」

 

 ルドルフの足音が遠ざかっていく。士郎はそれを見送り、ある程度の所で踵を返す。今度こそ士郎が姿を見せた。

 

「衛宮ってのはアンタか?」

 

「その通りだが、そこで聞いていたのだから知ってるだろうに」 

 

 気付いていたのか、それとも状況を見て推測して言ったのか。どちらにせよ、不意打ちで主導権を握る目論みは失敗したようだ。

 

「君とは初めましてだな。名前を聞いても? 私は衛宮士郎だ」

 

「……シリウスシンボリだ」

 

「シリウスシンボリ……」

 

「何だ? 皇帝サマと同じ名前でビビったのか?」

 

「皇帝?」

 

「……アンタがさっきまで話してた奴だよ」

 

「それはまた大胆不敵な二つ名だな」

 

「……この学園で働いてて知らないのかよ」

 

「長いこと外国にいたのでね。ここで働き始めて初めてウマ娘と接しているのでね、偶に面食らうことがあるのだよ。特に名前に関しては中々慣れないな」

 

「……そうかよ」

 

「それで何か私に用事があったのではないのかね」

 

「アンタを探してる人がいた」

 

「そうか。ありがとう。それで誰かね」

 

「教える代わりに、皇帝サマがアンタに何相談しようとしてたのか教えてくれよ。何を言おうとしてたのか見当がついてたから、あんな事言ったんだろ?」

 

 随分と難儀な感情を抱いているようだった。好き嫌いの二元論では語れない感情。正しく『気になる』相手なのだろう。そしてそれすら素直に曝け出したくないから、回りくどい手管で聞き出そうとしているのだ。

 

「ふむ。確かに何を言おうとしていたのかは大凡見当が付いている。しかし彼女と私のプライベートに関わることなのでね、おいそれと教えるわけにはいかない。そこでだ、誰が私を探していたのかを1回で当ててみせよう」

 

「へえ? 真面目な奴かと思えば面白えこと言うじゃねえか。でもそんな安請け合いしちまっていいのかよ」

 

「問題ないとも。既にヒントは貰っているからな」

 

「……面白え。じゃあ早速答えを言ってもらおうか」

 

「まず私はここに勤め始めて日が浅く、壇上で自己紹介もしていない。私も積極的に名乗っているわけではないし、大勢の生徒と接する立場でもないから、顔と名前が一致している者は意外と少ない。その上ある生徒が気まぐれで呼び名をコロコロ変えるし、最近は私も注意しなくなったのでごちゃ混ぜになった名前で覚えている者も多い。つまりちゃんとした名前を知っていて、顔も知っていると言う時点でかなり絞られるわけだ。そこで最後の一押しになるのが、君が口にした言葉だ」

 

「……記憶にねえな」

 

「君は探してる『人』と言ったな。そうなると、職員になる訳だ。そして頼み事をしてくるとなると、たづなか理事長のどちらかだな」

 

「トレーナーかもしれないぜ?」

 

「私のことを知っているトレーナーは1人だけだ。それに君が奴と会ったとしたら、今のような対応はしないと思うのでな。さて、2人のどちらかだが」

 

「……」

 

「ここはたづなにしておこう」

 

「……残念だったな。理事長だよ」

 

「ふむ、外してしまったか。先になってすまないが、理事長は何と?」

 

「用件もどこにいるかも言わずに行っちまったよ」

 

「余程の用件か。行き違いになっても面倒だな……。さて私は行くが、君はどうする」

 

「あ?」

 

「相談内容について聞きたかったのではないのかね」

 

「────いらねえよ。アンタ、わざと外しただろ」

 

 笑っているが、噛み付く直前のような獰猛な笑みだった。

 

「とんだ過大評価だな」

 

「そのしたり顔、腹立つな」

 

「生まれつき、ではないが、もう変えられないのでな。勘弁してほしい」

 

 そう言うと、踵を返し歩き始める士郎。区切りの良いタイミングではなく、唐突に立ち去ろうとする彼を思わず呼び止めてしまうシリウス。

 

「何かね」

 

「……気が変わった。教えろ」

 

「良いとも。だが歩きながらで構わんかね」

 

「良いぜ」

 

 どこに向かうのかは知らないが、ゆったりとした足取りの士郎に合わせてシリウスも歩き出す。

 

「君は彼女の夢を知っているかね」

 

「は、これ見よがしに色んなトコであんな夢を本気で語ってるんだぜ? 日陰者の連中だって知ってるだろうぜ」

 

「君は彼女が本気でそれを目指していると思ってるんだな」

 

「あ?」

 

「よく見ているな、と思っただけだ。……全てのウマ娘が幸福である。途方もなく、限りなく不可能に近い夢だ」

 

「よく分かってるじゃねえか。それで? そんな馬鹿げた夢を持つ皇帝サマは、アンタに何を相談しようってんだ」

 

「私は彼女にとって反面教師だ。己を犠牲にし続けた果てにどんな結末が待っているのかを知り、夢との向き合い方に迷いが生じているのさ。だからどう向き合えば良いのかを相談しようとしたのだろう」

 

「……アンタは何て答えるつもりだったんだ」

 

「特に何も」

 

「あ?」

 

「彼女が自分で見付けなければ意味がない。幸い、彼女は私ほど頑固ではないし、夢を否定してくれる者もいるから、私のようにはならんだろうよ」

 

「……アンタはどうなったんだよ」

 

「到着だ」

 

「?」

 

 職員室横にある放送室。すぐに察しがついた。理事長を呼び出す算段なのだろう。

 

「さて、満足して頂けたかね」

 

「……全然だな」

 

「それは残念だ。ただ今日はこれ以上は時間がない。それに、今日の賞品はあくまでシンボリルドルフの相談内容だからな。もしどうしても聞きたいと言うなら、別の勝負で私を負かすことだな」

 

「まるで勝った奴みたいなセリフだな?」

 

「そうかね? これでも負けて悔しがっているつもりだがね」

 

「ハッ、大した演技だな」

 

 ・

 

 教員に放送で理事長を呼び出してもらい、待つこと数分。たづなを引き連れた理事長が息を切らしながら現れた。と言うより、息も絶え絶えの方が正しいか。士郎の下に辿り着いたはいいものの、そのままへたり込んでしまう。

 

「シリウスさんが見付けてくれたんですね、ありがとうございます」

 

「良い暇潰しになったからいいさ」

 

「それで、血相を変えて探していたそうだが何があったのかね」

 

「一大事なのだ! 急病による休みが重なって厨房の人員が不足しているのだ! 代替人員もおらんのだ!」

 

「そりゃ一大事だな」

 

「それは一大事だな」

 

「無茶を承知で頼む! 厨房のヘルプに入ってはもらえんだろうか?!」

 

「構わんぞ」

 

 ノータイムの返答。群れることは好まないが、昼時の食堂、ひいては厨房の地獄具合を知っているシリウスからすれば正気を疑いたくなる返答であった。

 

「おいおいマジか」

 

「ありがとう! ありがとう!」

 

「これで学園が崩壊せずに済みます!」

 

「大袈裟……いや、強ち大袈裟でもないのか? まあ良い。私も食堂を利用しているしな」

 

「そもそもアンタ料理できるのか」

 

「そうだな。数少ない特技だ」

 

「……そうかよ」

 

 何となくだが、謙遜ではなく本気で自分のこと過小評価してそうだな、と感じた。

 

「調理が始まる前に厨房を見せてもらうことは出来るか? まずはどこに何があるかを把握せねばならんからな」

 

「勿論だとも! 早速行こうではないか!」

 

「分かった。ではな、シリウスシンボリ」

 

「勝負のこと忘れんなよ」

 

 ・

 

 

 昼休み。いつもの面々と絡んでいる時に、ふと士郎のことを思い出し、どうなったのかが気になり始めたシリウス。食事ついでに冷やかしに行くことにした。

 食堂はいつも通りの光景。ちらほらと大食い選手が見えることから、厨房は問題なく機能しているようだった。厨房の方に視線を向ける。澄まし顔がひーこらと崩れている所でも見られたら、との考えだったが、予想外の光景があった。

 

「スパゲティがごっそり持ってかれたから最優先だ! いやハンバーグの列にスペシャルウィークが並んでいるから同時並行だ!」

 

 配膳された料理の量を確認し優先順位を伝えつつ、調理から配膳、食器の洗浄をマルチにこなしている。

 

「む、メジロマックイーンが大皿を手に席を立った! デザートの貯蔵は十分か!!」

 

 当初の思惑とは外れたが、先刻に見た澄まし顔が崩れているから良しとすることにした。

 

 目が合う。僅かに笑い掛けて来たのも束の間、すぐに修羅に戻る。

 

「あの、シリウスさんどうしたんですか」

 

「いや、ただおもしれー奴がいたから見てただけだ」

 

 ・

 

 因みに、初めて且つ人数の足りない厨房を見事に仕切り、一説にはプロ級とも噂される調理の腕を遺憾なく発揮し、その上で「良い経験ができた。楽しかった」と宣った士郎は厨房から熱烈なスカウトを受け続けることになる。

 更に因みに、スイープは厨房の近くで士郎の働きぶりを見て、腕を組みながら何度も頷いていたらしい。

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