スイープ、エミヤを召喚する   作:日高昆布

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お待たせしましたあ……。
SEED見たりファイズ見たりSEED見たりしてたら遅くなりました

あとお知らせですが、今回の聖蹄祭編で一旦今作は更新をストップします。

モチベがなくなったとかではなく、単にそろそろ戦闘シーンのある作品を描きたくなったからです。
それが終わったらまた再開しますので、よろしくお願いします


その24

 聖蹄祭の開催日が近づき、学園全体がソワソワし始めた今日この頃。

 調理関係の指導もほとんど終わり、当日は絶対に来てくださいね、とチラシを渡され、気付けば束となっていたそれは用務員室でしっかりと保管されており、当日の予定にも組み込まれている。

 聖蹄祭は2日間に亘って行われる。嘗ては1日だけだったらしいが、来場者数の増加に伴い今の形になったようだ。さもありなん、ではあるが、学校行事の範疇を越えすぎだろう、とも思う。

 そして士郎は今、タキオンとカフェが共有している私室に向かっていた。手には甘味。もてなしの相手はタキオンである。

 

「待っていたよぉ使い魔君」

 

 椅子に座っているタキオンが言う。急かすように、白衣の余った袖をブンブンと振り回す。それをジト目で見詰めるカフェと『お友達』。

 

「いやはや、実験にいくらでも付き合ってくれるモルモット君も得難いが、ここまで美味しいものを作れる使い魔君も実に惜しいねえ。転職する気はないかねイタタタタ何か抓られてる!」

 

「スイープさんが悲しみますから冗談でもそんなこと言わないで下さい」

 

「冗談だから『お友達』を止めてくれよお!」

 

 自分のことを目視できて触れて、カフェとも仲が良く、肩に乗っかっても怒らない士郎のことを『お友達』は非常に気に入っている。そして自然と見る機会の多くなったスイープのことも気に入っている。つまりは2人が一緒にいるところを見ているのが好きなのである。そんな2人の仲を裂こうとするのは冗談でも好きではなかったので、タキオンの脇腹を抓っていた。それを抜きにしても常々カフェに迷惑を掛けているので、長めに抓っている。

 

「スイープから暇を出されない限りは鞍替えをするつもりはないから、『お友達』もそこら辺で止めてあげるといい」

 

「ふう、酷い目にあった。ただの冗談じゃないか」

 

「自業自得です。それにいつまで士郎さんに甘えてるんですか」

 

「おやおや〜。君達のミスをフォローしたのは誰だったかなあ?」

 

「…………」

 

「まあまあ2人とも。私がミスをしたのも、アグネスタキオンにその尻拭いをさせてしまったのも事実だからな。気にしなくて大丈夫だ」

 

「確かにそうですけど……」

 

 口を揃えて言うミスとは、つい先日起きた『骨格標本疾走事件』である。

 理事長とたづなからの依頼で、幽霊達に大人しくしているように頼みに行った時のことである。

 士郎は自分が幽霊達から怖がられていること自体は自覚していたが、実際よりだいぶ過小に見積もっていた。

 幽霊達から見た士郎は恐竜であり、自分たちはアリ。何がどうひっくり返っても勝てるはずのない相手なのだ。そんな相手が突然、普段から根城にしている理科室に出現したことで大パニックに。そして手近にあった骨格標本に全員で逃げ込み、教室から逃走。

 聖蹄祭の準備期間中であり、校舎内にいる生徒の数は多い。不幸中の幸いと言うには弱いが、特別教室の区画は4階にあり普通教室までは階数で隔てており距離がある。階段を降りる前に確保すれば、衆目に晒されずに済む。

 廊下を壊さない程度の速度で走る。

 本気を出していないとは言え、普通に並走していることに驚くカフェ。

 そんな2人に追われ、距離がどんどん縮まっていることにますますパニックになる幽霊達は、予想外の逃走経路を選択。窓からダイブ。

 

「はあっ?!」

 

 カフェは驚きの声を上げた。しかしそれは骨がダイブしたからではない。士郎もそれを追ってダイブしたからだ。

 士郎は校舎の壁を蹴り加速。空中にて骨を確保し、着地。

 

「士郎さん! 大丈夫ですか?!」

 

「全く問題ない」

 

 どうにか拘束から抜け出そうと踠く骨。しかし悲しいかな僅かに士郎の体を揺するだけで、拘束に些少の緩みもない。

 

「何かすんげえ音したな」

 

 窓からひょっこりと顔を出すゴルシ。

 何故数多くいる生徒の中で最も見付かってはいけない生徒に見付かってしまうのか。士郎は自身の不運を自覚しているが、こう言う最悪の形で実感するのは久しぶりであった。

 目下興味津々の対象である士郎が抱える、ピチピチと動く骨格標本。一瞬の静寂の後、ゴルシはニンマリと笑った。士郎は血の気が引いた。

 

「衛宮が! 衛宮が何か面白いもの持ってるー!」

 

 そう言って廊下を爆走。

 

「待て! 待つんだ! 待ってくれゴールドシップ!」

 

「衛宮がマグロ人間の骨格持ってるぅ!」

 

「ゴールドシップゥゥウ!」

 

 その結果生徒会が出張ってくる事態にまで発展。しかしゴルシに見付かった時点で展開を予想していたカフェは、先んじてタキオンに取引を持ち掛けたのだ。1週間タキオンの言うことを聞くことを引き換えに、主犯として名乗り出てくれ、と。カフェとしては迷惑を掛けられる事の方が圧倒的に多いとは言え、友人にそんな頼み事をするには非常に忸怩たる思いであったが、幽霊の子達を好奇の目に晒したくないと言う思いもあった。

 結果として、タキオンなら動く骨格標本を作りかねない、とのことで事態は何とか収束した。

 尤も、ゴルシの士郎への興味はますます深まることとなったのだが。

 しかし一つだけカフェにとって予想外の展開があった。言うことを聞くのはカフェではなく使い魔君で、とタキオンが言い出したのだ。カフェとしては士郎に迷惑を掛けたくはなかったのだが、士郎自身が承諾したため、不服ではあったが引いたのだ。

 そして今に至る。

 士郎には薬剤が効かないし、注射針も通らないので実験ではなくおさんどんを頼んだのだ。そして見事に嵌まった。

 驚異的な身体能力に疲れ知らずの体力、おまけに料理の腕も一級となれば誘わない手はない。と言うことでスカウトしたのだが、結果はご覧の有り様である。

 

「君分身出来たりしないかな」

 

 しかし諦めきれないタキオンはそんな無茶を言う。余りに頭の悪い物言いに、カフェから冷たい視線が刺さる。流石に自分でも何を言ってるのかと、態とらしく咳払いするタキオン。

 

「所で君達が請け負っていた幽霊達は当日大人しくしてくれそうなのかね」

 

「当日に茶会を開くことで説得に応じてくれたよ」

 

「……茶会??」

 

「茶会だ」

 

「茶会です」

 

「……そうか、茶会か」

 

 堂々と言い切られ納得しかけるが、流石のタキオンもツッコミに回らざるを得なかった。

 

「ええ?! 幽霊って飲食出来るのかい?!」

 

「私が出来るしな」

 

「ああ確かに……。いや、何か腑に落ちないな」

 

 砂糖が飽和状態になったコーヒーをくるくると混ぜながら首を捻る。

 

 

 聖蹄祭の前日。ほとんどの出し物の準備は終わっているが、ギリギリまで準備に追われているところもある。下校時間を過ぎても作業を続けようとする生徒もいるため、数人の職員と手分けして見回りに精を出す士郎。その最中に何組か遭遇したが、校舎を一周するからそれまでには帰ること、と言ってお目溢しで見逃す。

 

「士郎!」

 

 途中からスイープを含め、何人かが後を付けていたことは知っていた。向こうの準備が整うまで待っていたのだが、すでに見回りも折り返しである。決心に相当な時間が掛かっており、明日のことだろうと当たりをつけてはいるが、一体何をするつもりなのか少し心配になる。

 

「明日! あの、劇やるから……見に来て! あと、皆の事は怒らないであげて!」

 

 言うだけ言うと、逃げるように走り出すスイープ。士郎にきちんと会釈してからスイープを追いかける一行。すると同行していたネイチャが引き返して来て当日のパンフレットを差し出した。

 

「ありがとう。すまないがスイープのことは頼んだ」

 

「はい!」

 

 良き友人達に恵まれていることに安心しながら、スイープを見送る。

 その日の夜、士郎は毎晩恒例の念話をしなかった。

 

 

 本日は快晴なり。

 微かな風が、出店の香りを運んで来る。

 士郎は今屋上にいる。サボりではなく、歴とした仕事のために。

 

「さて、準備は出来ているから座ると良い」

 

 白いクロスの引かれたティーテーブル。ポットには琥珀色の液体が注がれている。プレートにはクッキー。どちらも士郎のお手製である。

 椅子は7つ。幽霊4体、カフェとタキオン、そして『お友達』の分である。

 

「もう幽霊達はいるのかい?」

 

「今タキオンさんの横を通りましたよ」

 

「ほんと今首がヒヤッとしたぞ!」

 

 カフェにはタキオンの首筋を指先で突く『お友達』の姿が見えていた。見えない人にちょっかいを出すのは本来なら良くはないが、タキオンに対しては良くも悪くも雑な対応をするカフェであった。

 

「3人も座ると良い」

 

「良いのかい? 流石に今回は遠慮した方がいいと思ってたのだがね」

 

「見ているだけではつまらんだろ」

 

「使い魔君は話が分かるねえ」

 

 テンションが上がった時の癖なのか、腕を回しながら向かうタキオン。

 チャポチャポと角砂糖を投下。胸焼けしそうな光景を見ながら、何やら聞き耳を立てているカフェ。

 

「タキオンさん。自己紹介してほしいそうです」

 

「自己紹介? そうだねえ、発光するモルモット君をトレーナーに持つウマ娘だよ」

 

「……眩しいからやめてほしいそうです」

 

「うーん、それは難しい願いだねえ。まあそれで怒らせてしまっては怖いので、光量を抑える薬を用意しておこうじゃないか」

 

 何か解答の内容がおかしいような気がするが、誰も突っ込まなかった。

 すると今度は、給仕をやっている士郎に質問が投げかけられた。幽霊達からすると、まだまだ恐ろしい存在ではあるが、害を与える存在でないことは分かったのか、以前よりは態度が軟化していた。

 

「私か? 私は君達が感じているように普通の幽霊ではなく、精霊に近い存在だ。悪戯程度でどうこうしたりはせんから安心したまえ。但し、程度は考えるのだぞ?」

 

 タキオンには幽霊達の姿は見えないが、姿勢を正している姿が容易に想像できた。

 

「まあ説教はこれぐらいにしておこう。君達のために用意したのだから味わってくれ」

 

 カフェとタキオンを含め、全員の前にさつまいものブリュレが置かれている。

 初めて見る種類で且つ美味しそうな見た目のスイーツに、幽霊達は興奮を隠しきれていなかった。様々な角度から具に観察している。

 

「これはもしかして手作りですか?」

 

「その通りだ。テレビで偶然見てな。振る舞うのは君達が最初だ」

 

 意図的なのか無意識なのかは判然としないが、幽霊達の心を擽るのが巧いな、とカフェは思った。幽霊達がちょっかいを掛けたり悪戯をするのは、気付いてもらえない孤独感を紛らわすためだ。その瞬間だけは、自分達を見ることの出来ない者達も、自分達を意識してくれる。しかし一時だけ。孤独感が消えることは永遠にない。

 そんな感情を常に抱いている幽霊達に、比較することも烏滸がましい程格上の存在だが、自分達のためだけにこの場を用意してくれ、自分達のためにスイーツまで作ってくれた。喜ばないはずがないのだ。

 

「う〜〜ん。これはスイープ君が羨ましくなってしまう味だねえ」

 

「本当に……これは美味しいです」

 

「それは良かった。君達は如何かな」

 

 どうやって食すのか気になって気になって仕方ないタキオンは、座っているであろう幽霊達に振る舞われたスイーツを見やる。よく観察してみると、何となく先ほどより燻んでいるように見えた。

 

「味わえたなら何よりだ」

 

 安心したように頷く士郎。そして、ならば、とティートローリーのケーキケースから今度はさつまいものモンブランを取り出す。

 

「お茶のおかわりも如何かね」

 

 タキオンは皆のやり取りを見ることは叶わず、想像するしかないのだが、カフェが嬉しそうにしているところを見るに大成功に近いのだろう。自分がそれにあやかれていることを差し引いても、気分はいいものだった。

 

 

「さて、茶会もそろそろお開きだな」

 

「名残惜しいねえ」

 

 食後の余韻を静寂と共に楽しんでいたところに、終わりを告げる士郎の言葉。タキオンの言うことは、皆の代弁でもあった。

 

「そこまで惜しんでくれるのなら、準備した甲斐があったな。いつでも、と言う訳にはいかんが来たら歓迎しよう」

 

「私も良いのかい?」

 

「もちろんだとも」

 

 士郎なら断らないと知っていたが、お気に入りの場所が騒がしくならないか少し心配なカフェであった。それが露骨に顔に出ていたのか、タキオンが苦笑しながら言う。

 

「おいおいカフェ〜。そんなに嫌そうな顔しなくても良いじゃないか。流石の私も使い魔君の部屋で騒がしくはしないさ」

 

「だと良いんですけど」

 

 来ることを拒否はしないが、渋い顔は変わらず。

 猫は自分の縄張りを荒らされることを嫌うものだ。

 

 

 準備を手伝った出店の全部に顔を出しながら見回りをしていく。気付けばテイクアウト品は手提げ袋一杯になっていた。

 携帯に連絡が入る。たづなからの業務連絡である。

 

『樫本さんが来られたんですけど、対応をお願いします』

 

 幽霊との茶会の次の仕事は樫本理子の対応である。本来であれば理事長かたづなが対応するのが筋ではあるのだが、王族の対応でそれどころではないので士郎にお鉢が回って来たのだ。自分のようなペーペーで良いのかと尋ねたが、向こうも了承したとのことで対応する事に相成ったのだ。

 

「お久しぶりですね」

 

「ようこそ。拙いが本日の案内担当だ」

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