【一巻発売中】たのしい異世界ハクスラ生活、あるいは超紳士的英雄譚 作:いらえ丸
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キャラ・ボスのご応募もありがとうございます。
今回、前に出たキャラが沢山出てきます。
よろしくお願いします。
今回アンケあります。お気軽にどうぞ。
ろりをしのびてさくらさく
前世、俺は乗り物全般が好きだった。
特にこれといった理由はない。ペダルを漕いで加速する感覚や、景色を見ながらのツーリングが何となく好きで、自動車の長距離運転なんかも全然苦にならなかった。
隣席のクラスメイトはめっちゃビビッてたが、修学旅行の時に乗った飛行機も怖くなかった。離陸する時など結構ワクワクしたまである。いつかセスナとか乗ってみたいなとか思っていた。
そんな俺にとって、ジブリの「紅の豚」は人生で五指に入るほど好きな映画だった。
軽妙な台詞回し。描きこまれた背景美術。素晴らしいドッグファイト。同作の魅力など界隈じゃ話し尽くされてるが、中でも俺は作中冒頭でフォルゴーレ号が波に乗って空に飛び発つシーンが大好きだった。
太陽の下、海風を浴び、鳥と共に空を飛ぶ姿には、子供心に憧れたものである。カッコいいって、ああいうものさ。
「ひぃ!? 主様! 魔物! 魔物が追ってきとるのじゃぁあああ!」
「ん? 随分としつこいな。エリーゼ、お願い」
「ええ。
地球でセスナに乗る夢は叶わなかったが、異世界では空飛ぶヘラジカに乗れている。男心を擽る隠れ家はないが、ロリコン心を擽る恋人達がいる。
俺は、この空の旅が結構好きだった。青い空、流れる景色、それから追ってくる魔物共……。
残念ながら、魔物くんには野生動物やゲームのエネミーにあるようなリミットオブエリアの概念はないようだが、そいつらをプチプチ潰してくのは気持ちがいい。
「大丈夫ですか? イリハ」
「へ、平然としとるお主等が怖いのじゃ……」
「次はイリハがやってみるといいわ。楽しいものよ」
「慣れてるッスからねー。ちょっと狭いッスけど」
楽しい慣れっこ空中移動だが、ルクスリリアの言う通りちょっと狭いのはその通り。ぎゅうぎゅうに押し込まれてるのは良いとして、ずっと同じ姿勢なのは精神的にキツいのである。
というのも、いくらデカいラザニアといえど限度があるのだ。今使っているこの鞍は四人用で、五人乗りの長距離移動には不向きである。今後の事を見据えて、何か考えておくべきか。
「サンタのソリみたいなの欲しいな……」
つまり、ずっと跨っているから狭いのであって、座席に座れるなら無問題だと思うのだ。前にも思ったが、それこそサンタクロースのアレみたいな。
う~ん、サンタか。赤い服に白いモコモコ、サンタコス……これ以上はグッドアップしそうだから止めておこう。エリーゼ・フラム・ミラヴィーカ・アヴァリツィア・オルタ・サンタ……。
「サンタとは何ですか? ソリというのも何なのでしょうか?」
「サンタは夜の冬空を舞う爺さんの事で、ソリは彼の相棒のトナカイが引く荷車みたいなもん」
「随分と元気な爺様じゃのぅ。人間とは思えんのじゃ」
「で、ソリには子供達への贈り物が満載されてるんだ。馬車ごと空を飛んでるーみたいな。もしそれがあればもっと快適なんだと思うってぼやき。俺は今でも好きだけど」
「浮遊する馬車ねぇ。できなくはないんじゃない?」
「え? できるの?」
そんな俺のぼやきには、顎に手を添えたエリーゼが応えた。
「過去の戦争で空戦車が使われた記録があるわ。アレと同じなら、できなくないんじゃない?」
「ほう!」
空飛ぶ戦車。エリーゼが言ってるのは、タンクじゃなくてチャリオットの方だろう。なるほど第四次ライダーか!
飛行の理屈は分からないが、興味ありますねぇ! この逞しいラザニアが引いてくれるなら、万里の彼方まで駆け抜けてくれそうだ。
「えーっと、空戦車が使われたのは第一次魔王戦争の時だったと思います。ラリス勢力が対有翼種用に造ったとか……。けど、これといって活躍したという記述はなかったような……?」
「便利そうッスけど、見た事ないッスよね。空飛んでんの大体翼人ッスし」
「空は魔物に追っかけられるからのぅ。結局、街道行く方が安全なんじゃろうな」
「ラリスの事だし、製造技術が失われたとは考え難いわね。何か使われなくなった理由があるのかしら……」
「真っ先に思い浮かぶのは、やっぱコストの問題かなぁ」
素材に希少金属が要るとか、専用の召喚獣が必須とか、運搬用だと非効率とか……?
仮に今でも造れるんだとしたら、俺としては多少高くついても欲しい代物ではある。俺はライダーとセイバーが追いかけっこしてたシーンが好きなのだ。
今度、ドワルフあたりに相談してみよう。戦車職人のツテとかないかしら。
「イリハ、あそこッス! そろそろ着くッスよ!」
「おぉ~! 大きいのじゃ~!」
そうこうしていると、遠くの方に目的地が見えてきた。
眼下には広大な畑が広がっており、太く長い街道の先は全て街に繋がっている。石造りの大都市、王都アレクシストだ。
俺は悠々と空を行き、グルッと回って西区門前広場の滑走路に着陸した。
「お疲れー」
「ひゃー! これが噂に聞く王都か! 死ぬ前に来られるなんて感激なのじゃ! すっごいの~!」
ラザニアを降りると、初王都のイリハはさっきまでの緊張を忘れてクソデカ進撃石壁に見入っていた。
行きと帰りで色んな街を見てきたからこそ分かるのだが、やはり王都の城壁は桁違いの規模である。冗談抜きで中に巨人とか詰まってそうな威厳あるよ。
「よろしくお願いします」
「うむ、いしぐ……イシグロォ!?」
「何か?」
「い、いえ! どうぞお通りください」
そんなこんな、列に並んで検問を受け、何事もなく西区に入る。
皆と手を繋ぎ、トンネルのような門を潜って進んでいくと、やがて視界いっぱいに賑々しい商業エリアが広がった。
怒鳴り合ってる職人連中に、金持ちそうな商人とその護衛。肉体労働をしてる若者に交じって、同じく荷物を運んでいる奴隷達。カムイバラと比べると、お客さんを出迎える雰囲気がないというか。世界よ、これが王都だ! って全力で主張している印象だ。
「あー。こんな感じだったッスね王都って」
「なんだか懐かしいです」
「イリハ、間違っても仙氣眼を開いちゃダメよ」
「おぇ~! ぎぼぢわるいのぢゃ~!」
「何故、開いたんだ……」
氣酔いしてるイリハに回復魔法をかけてから、商業エリアを進んでいく。
二階・三階建て住宅の多かったカムイバラと比べると、王都の建築物は全体的に背が高い。四階五階は当たり前で、それでいてカラフルな建物が多い。
カムイバラが祇園とおかげ横丁の合の子なら、王都はローマ市とフィレンツェがフュージョンしたような街並みである。
俺としては、どっちも好きである。如何にも異世界ファンタジーって王都も、なんだか落ち着くカムイバラも、両方に良いトコがあって甲乙つけがたい。
「なんじゃ、いきなり雰囲気が変わったのぅ」
「少し歩くとすぐ雰囲気が変わるのよ。カムイバラもそうだったでしょう?」
「転移神殿の近くはもう少し静かですよ」
「あっちッス!」
とりま、最初はギルドに帰還報告をしないといけない。
俺は商業エリアを抜け、転移神殿方向へ向かって行った。
「ひゃあ!? あやつ等、街中で斬り合っとるのじゃ!」
「おっ、今日もやってるッスね」
「あんま近づかないようになー」
「大丈夫ですよ、彼等はそんなに強くありませんから」
「猫同士がじゃれ合ってるようにしか見えないわ」
「よ、余裕じゃのぅ……」
そうして歩いていると、見慣れたばかりの景色が広がる。
転移神殿へ向かうにつれ、視界を過るモブに冒険者風の輩が増えていき、例の如く冒険者同士の喧嘩が勃発していた。
そしてすぐに衛兵が駆け付けて来て、喧嘩両成敗とばかりに二人共シールドバッシュで吹っ飛ばされていた。見るに、衛兵は鋼鉄札中位で、喧嘩してた冒険者は鉄札相当といったところか。
「お? おぉ!? お前、イシグロか!」
なんとなく喧嘩を見ていると、聞き覚えのある声が聞こえた。
声の方を見ると、案の定そこには見知った人物の姿があった。
「イシグロ、イシグロじゃねぇか! 生きてやがったかお前! いや死ぬとは思ってなかったけどな!」
「どうも、お久しぶりです」
西区ギルドの受付おじさんである。
彼は完全休日スタイルで、ラリスサンド片手に寄ってきた。随分と屈託のない笑顔でいらっしゃる。俺も俺で、おじさんと久々に会えて安心した心地だ。
「結構長かったな! カムイバラぁ、そんなに良かったのか?」
「ええ。色々ありましたし」
「そうか。まぁそれは報告書読ませてもらうとして……」
言って、おじさんは新入りのイリハを見ていた。
いつもの流れだ。お世話になってる職員さんには、一党のメンバーを紹介しておくべきだろう。
「イリハ、この人は俺がお世話になってるギルドの受付さん。挨拶して」
「わかったのじゃ」
促すと、イリハはおじさんに対しぺこりと頭を下げた。
「イシグロ・リキタカの第四奴隷、イリハと申します。微力非才の身ではありますが、一党の者として精進していく所存です」
「おう。リンジュの狐人って事ぁ、この感じからして天狐か。それに、その恰好は……陰陽術師? いや退魔士か……」
イリハを眺め見たおじさんは、何事か呟いた後にニヤリと笑んでみせた。
「へっ、そういう事かよ……」
何に納得したのか知らないが、おじさんは訳知り顔になっていた。
まぁ、淫魔に竜族に混合魔族に、その次に地域固有種の天狐だもんな。レア種族オンパレードである。すごいわね、だろう。
「まぁ頑張れよ。俺は特等席で見させてもらうからよ。お前等の冒険を……」
そう言って、おじさんは後ろ手を振って去っていった。
おじさんは異世界人らしく相当なイケおじなので、そういう仕草もなかなか様になっていた。
いたのだが、せっかく買ったリンジュ土産を渡し損ねてしまった。まぁ他の受付さんに渡しとけばいいか。
「なんか面白い人じゃな」
「アレでなかなかデキる職員さんなんだよ」
そのまま歩いていき、転移神殿近くの噴水広場に着くと、グーラが鼻をすんすんさせた後にパーッと表情を明るくした。匂いの発生源は屋台である。
ちょうど小腹も空いてきたところだ。ギルドに行く前に軽く食べていこう。俺達は広場にある屋台エリアに向かった。
「いらっしゃい! おぉ、イシグロ殿ではござらぬか!!」
「お久しぶりです、シュロメさん」
焦げる醤油と味噌の香り。日本人好みの匂いを拡散させていたのは、リンジュ金細工のシュロメさんだった。
彼女は森人耳をピコピコさせながら、眩いばかりのスマイルを浮かべていた。ねじり鉢巻きがよくお似合いで。
「久しいでござるなぁ! あっ、そうそう! 少し前にイスラちゃんがリンジュに行ったんでござるが、会ったでござるか?」
「挨拶はできませんでしたが、お見かけしましたよ。ところで、醤油の方はどうなりましたか?」
「よくぞ聞いてくれたでござる! そろそろ規模の大きい工場を造れそうなのでござるよ! 味噌はともかく、醤油はもう受け入れられてる感じがあるでござる! 味噌はともかく!」
「それは有難いですね。自分としては、味噌も流行って欲しいですけど」
シュロメさんは異世界における醤油と味噌の開発者であり、それらを布教する為にラリスへとやってきた人なのである。
俺としてもリンジュ調味料は王都に根付いてほしいと思ってるので、こっちで完成したらば是非とも買い支えたく思っている。
「とりあえず、醤油味を七本と、味噌味を三本ください。料金はこちらに」
「あいよ! おや、新入りさんもいるのでござるか!」
という訳で、さっそく買い支える事にした。
買ったのは異世界焼き団子である。これにはルクスリリア達もご満悦だ。残念ながら、リリィとエリーゼは完全醤油派で、味噌がイケるのは俺とイリハとグーラだけ……いや、割合で言えばこっちが多数派か。ヒンナヒンナ。
「ん~! やっぱこの屋台の団子が一番美味ぇッスね!」
「んむんむ、美味しいのじゃ~」
「喉乾いた、喉乾かない? 何か飲み物買ってこようか」
ベンチに座って団子を食べる。途中、喉が渇いたので別の屋台で飲み物も買った。贅沢を言えば渋~いお茶々が良かったが、残念ながらラリスには緑茶文化がないのである。
緑茶、白米、その他リンジュ文化……専門店とかないのかな。今度探してみるか。幸い現地で買った物はあるが、恒常的に手に入るならそっちのが良いだろう。
「おや? イシグロさん?」
「ニーナ先輩! お久しぶりッス!」
二本目の団子を食べていると、またしても顔見知りと遭遇。淫魔銀細工のニーナさんであった。
向こうでもそうだったが、やはり異世界で眼鏡をしてる人は冒険者だけだった。迷宮用の装飾品なんだろうな、異世界メガネは。
「お久しぶりです。今日はグレモリアさんと一緒じゃないんですね」
「ええ。今彼女は忙しそうにしてるので、その、例の件で……」
「あー、あいつマジでやってんスね」
どうやら、前に一緒してたグレモリアさんは御多忙らしい。
そういえば、あの人別れる前にルクスリリアに何かしら計画してるって話してたような。気にしなくていいって言われたから気にしてなかった。
まぁそれはいい、俺はアイテムボックスに手を突っ込んで。中から如何にもギフトって感じの箱をニーナさんに手渡した。
「こちら、リンジュ土産になります。お納めください」
「まぁ! ありがとうございます!」
これはルクスリリアが選んだ物なので、俺は中に何が入ってるかを知らない。曰く、知らん方がええらしい。
受け取った箱を見て、ニーナさんはウットリしていた。どうあれ喜んでくれたのなら幸いである。
「それでは、また鍛錬のご予定があればお気軽にお呼びください。いつでもお待ちしておりますので……くひひ♡」
しばらく話して、ニーナさんと別れる。
転移神殿に向かっていたはずの彼女は、何故だかさっき来た道へ引き返していった。
「あの女子とはどういう関係なのじゃ?」
「こっちで対人戦を教えてもらってるんだ」
「実戦形式で戦って下さるんですよ。次の対戦が楽しみです!」
「そうね。今の私なら、良い線いくんじゃないかしら……」
「そのうちイリハもやるんスよ! 覚悟してるッス!」
「はえ~」
などと話しつつ、食べ終えた団子の串を捨てて長い大階段を上る。
テッペンに着くと、眼前にノートルダム大聖堂亜種のようなクソデカ転移神殿の威容が広がった。
流石は迷宮探索の本場と言うべきか、こう見るとカムイバラのやつよりもデカい転移神殿なのが分かる。イリハなど、これまた口を半開きにして呆けていた。
そのまま歩いて入っていくと、これまた懐かしい景色。入口付近の受付スペースに、壁沿いの売店コーナー。弁当屋の前で商品を吟味する冒険者の姿に、武器屋の剣を見て話し合う新米冒険者達。ああ、とても懐かしい。
なんとなく、整理整頓されたカムイバラと比べ、こっちのギルドは雑多な雰囲気を感じた。
「おい、見ろよアレ……」
「変な一党だな。ありゃ奴隷か……?」
「バカやめとけ……! 銀細工だぞ……!」
が、そうやって懐かしむ俺達は悪い意味で目立っていた。見覚えのない駆け出し冒険者達がチラチラ見てくる。
こういうのは気にするだけ無駄である。俺は皆を引き連れて空いてる受付に行き、必要書類と冒険者証を提出した。
「はい、確認させていただきます。少々お待ちを」
確認にはちょっと時間がかかるらしいので、冒険者証が返ってくるまでバーで時間を潰す事にした。
幸い、カウンター席には誰もいなかったので全員座る事ができた。
「淫魔牛乳、ダブルでよろしくッス」
「じゃあ俺も、ミルクでも貰おうか」
「それではボクも」
「わしも」
「私も」
「は、はあ、それは構いませんが……」
牛乳のアテに苦いチョコなど食べていると、視界の隅で見覚えのある姿を発見した。
向こうも気づいたようで、小走りでこっちに向かってきた。
「よくぞご無事で!お久しぶりです、イシグロさん!」
「お久しぶりです、トリクシィさん。昇格されたんですね」
丸い獣耳にイキりコート。鼬人のトリクシィさんだ。
彼は初心者時代につっかかってきたハリキリボーイで、何だかんだそこから付き合いのある向上心溢れる男の子である。
前は鉄札持ちだったが、ちょっと旅行してた間に彼は鋼鉄札にランクアップしていた。すぐ銀細工に上がった俺が言うのも変な話だが、これで彼も一流の冒険者として認められた訳だ。
ふと見ると、彼の腰にある得物も変わっていた。トリクシィさんは得物の柄尻を撫でると、凄まじきドヤ顔になって口を開いた。
「先日、ついに買う事ができたんです。この刀……!」
それは一振りの刀だった。俺の持ってる橘や、イリハの綾景と異なり、トリクシィさんのは大きなサーベルに似た軍刀って感じ。柄や鞘に華美な装飾が付いている。
シンプルサムライソードもいいが、こういうのもロマンあるよね。俺としても刀フレンズが出来て嬉しい気持ちである。
「おぉ、手に入れたんですね」
「はい、打って下さったのはイシグロさんの刀と同じ鍛冶師さんで。最近はこれを十全に扱えるよう訓練中です。なかなか難しいですが、意外と手に馴染むというか……」
そう言うトリクシィさんは全身がキラキラしていた。
殺伐とした異世界でこうもピュアな少年は珍しい気がする。
そんな彼にはピッタリのお土産を用意してある。喜んでくれるといいが。
「どうぞ、こちらリンジュ土産になります」
「あ、ありがとうございます!」
俺はアイテムボックスから布ぐるぐる巻きの棒を取り出し、侍歴の浅い彼に手渡した。
俺が渡した土産はリンジュ産のガチ木刀で、ガチ訓練用のものである。武器としての性能は低いが、自動修復の補助効果が付いてるので、どんな過酷な鍛錬にも耐えてくれる優れものだ。
「本場の侍はこれで鍛錬していました。今後も頑張ってください」
「はい! 頑張ります!」
キターン! 某バンドのバックレギターのような眩しい笑顔だ。彼にはずっとこのままで居てほしい。
「おっ、イシグロじゃねぇか! ひっさしぶりだなオイ!」
「死んだかと思ったぜ!」
「うぃーっす、お久ぶりっす。イシグロさん」
これまた、転移神殿の奥から見覚えのある面々が現れた。
犬人斥候のウィードさんに、厄介おじさんのリカルトさん。それから一度ガチでやり合った鬼人剣士のラフィさんである。
死亡率の高い冒険者業、誰も死んでなくてよかったと思う。彼等の無事に安堵したあたり、それなりの思い入れがあるのかもしれない。
「お久しぶりです。こちら、お土産になります」
「へへへっ、悪いねぇ」
そんな訳で、彼等にもお土産を渡していった。
リカルトさんにはリンジュのお煎餅を、ラフィさんにはリンジュ酒を、ウィードさんには遊郭のパンフを。
遊郭パンフを手に取ったウィードさんは早速読み始めていた。鼻息を荒くして、目を血走らせている。
「うひょー! このミアカって遊女、めっちゃ良さそうじゃん! 実物見てみてぇーっ!」
「あ、でもミアカさんもう辞めちゃったみたいですよ。それ更新前のやつなんで」
「えぇーっ!? なんだよもぉ~! ん? あれ、もしかして知り合いだったりするんすか?」
「ええ、色々ありまして」
「遊郭はいいけどよ。おじさんにリンジュの事とか教えてよ。代わりにこっちの情報渡すからさ」
そんな感じで、お互いが持ってる情報を交換する。
リカルトさんが言うところによると、他区の方では一人新しい銀細工が生まれたらしい。これまた他区の銀細工の一部が此処に拠点を変えたとも。あと、出払ってた斥候が戻ってきたようだ。そういえば、そんなのあったな。
「主様ってこっちじゃとそれなりに話せる人おるんじゃな」
「前はもっと遠ざけてたんスけどね~」
「私達を第一にしてくれているし、悪い影響は受けていないわ。安心なさい」
「皆様、一度剣を合わせた仲です。通じ合うものがあったのでしょう」
皆はカウンター席、俺達はテーブル席でお話していた。
俺達のいるバーには、自然と誰も近寄ってはこなかった。
「イシグロさん、確認が終了しました。受付の方までお願いします」
「はい。それでは、自分はこれで」
「ん、じゃあな~」
職員に呼ばれたので受付に向かうと、冒険者証を返された。
受付の兄ちゃん曰く、リンジュでのやらかしはプラマイゼロで不問にしてくれるらしい。
まぁどっちみちそんなにデカいペナルティも無かったらしいが。
「あ、これリンジュ土産です。さっき受付さんに渡しそびれちゃって、ギルドの皆さんで召し上がってください」
「え? あ! どうもありがとうございます……!」
おじさんに渡しそびれたお土産は、受付の兄ちゃんに手渡しておいた。中身はオーソドックスなリンジュ菓子のセットである。
受付の兄ちゃんは顔を引きつらせて受け取っていた。この人、銀相手だからって流石にビビり過ぎじゃないか?
「さて……」
スタンプラリーも終わったし、冒険者証も手元にある、もう転移神殿に用はない。
正面扉に向かい、転移神殿を出ると、俺は大階段の上から街を見下ろした。
転移直後、毎日見ていた風景である。
俺が初めて冒険者登録をして、ルクスリリアやエリーゼと出会った異世界最大の都市。
如何にもナーロッパな街は、今日も今日とて賑やかな活気に満ちていた。
うん、帰ってきた感がある。
「ひとまず宿屋ッスかね」
「前のところだと、ちょっと手狭かもしれませんね。ベッドも特注のモノが必要になるかと」
「それに、あそこには台所がないから料理ができないわね……」
「させてくれるんなら、わしは料理のできるトコがいいのぅ」
「なら、台所のある宿だな。あと寝室の広い所」
異世界二年目。まだまだ、やりたい事は沢山ある。
ヘラジカチャリオットの作成に、注文してた武器の受け取り。またスーパー銭湯に行きたいし、他区にも足を運んでみたい。
鈍らないうちに迷宮にも潜りたいし、ニーナさんの実家のお店にも行ってみたいかな。ラリス料理も久々に食べたいし、どうせなら皆でパン作りとかどうだろうか。
が、その前に、今夜の寝床をゲットしないといけないな。
「よし、行こう!」
異世界ハクスラ生活、再開である。
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作者のやる気に繋がります。
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