【一巻発売中】たのしい異世界ハクスラ生活、あるいは超紳士的英雄譚 作:いらえ丸
誤字報告も大変助かっています。前話の誤字数ハンパなかったですね。申し訳ない。
前話の後書きにて、頂いた支援絵を掲載しています。まだご覧になっていない方はぜひ。
今回は引き続きダンジョン回。次で帰還ですかね。
感想欄に触発されて、大幅に加筆&修正しました。文量が増えたので分割。
作者は抜けているので、何故そこに気づかない? みたいなのにマジで気づきません。ご意見・ご感想は積極的に参考にしていく所存です。
前世、俺はポケモンが好きだった。
主人公の着せ替え要素といった部分も大好きだったが、普通にいちゲームとしても好きだったのだ。
お馴染みポケモンには色んな楽しみ方がある。
強いポケモンを育成し、ストーリーを攻略するとか。珍しいポケモンを捕まえたり、色違いを探したり。対戦をガチったりとかもメジャーな楽しみ方だろう。
そんな中、俺は図鑑埋めが好きなタイプのトレーナーだった。
御三家を選び、旅に出る。観た事ないポケモンはとりあえずゲットして、一匹一匹進化させる。そして、少しずつ少しずつストーリーを進めるのだ。
こいつ進化したらどうなるんだろうとか、こいつレベルアップしたらどんな技覚えるんだろうとか、そういう小さなワクワクを感じながら遊んでいたのだ。そうして、旅の中で出会ったお気に入りのポケモン達でクリアするのが好きだった。
当然、シナリオの進行は遅い。他のポケモン好きの友人が数日でクリアしてるのに対し、同時に始めたはずの俺は普通に序盤だったりした。実際、SVも凄い時間かかった。早くナンジャモに会いたい気持ちと、ゆっくり進めたい欲の間で板挟みになってたのを覚えている。
そんな俺である。ポケモン以外のゲームでも、よくそういう感じのゲームプレイをしていた。
ドラクエでは街の住人全員に話しかけ、如くでは目についたサブストーリー全てに絡んでいく。カジノやミニゲームに入り浸り、メインストーリーそっちのけで寄り道をエンジョイしていた。
とはいえ、絶対全部埋めてやるぜ! というような思考はしておらず、あくまで目についたもの限定なので寄り道ガチ勢ではなかった。
ともかく、昔から俺はそういうタイプのゲーマーだったのだ。
さて、ロリコンゲーマー・イシグロは、異世界に来ても“そういう”楽しみ方をしていた。
順当に、「戦士→剣士→ソードマスター」とジョブチェンジしていくのではなく、「戦士→魔術師→剣士→剣闘士→ウィザード→魔法剣士→重戦士→騎士……」といった風に、ジョブチェンジの道のりをフラフラしまくっていたのだ。
幸い、この世界のステータスはジョブチェンジごとにリセットされる仕様ではなかった。が、ぶっちゃけただ強くなるだけなら、さっさと上位職についた方が良いのである。実際、基本職と中位職ではステの伸びがダンチだ。
これまでの経験、その全てを剣特化なり魔法特化なりにしていれば、俺は今頃最上位職に到達して、かつステータスも今より高かったんだと思う。
けど、俺はそうはしなかった。
何故か? ジョブ埋めが楽しかったからだ。
命を賭けたダンジョンアタック。だからこそ、楽しく命を賭けたかった。
ポケモンと同じだった。騎士レベル20で次なにになるんだろうとか、ウィザードレベル10で何に派生するんだろうとか、気になっちゃって埋めたくなるのである。
おかげで俺のステは平均的。ソロの使い勝手を考慮して前衛寄りになってはいるが、それでもガチガチ前衛タイプではない。
その中で一番使いやすいのが剣系ジョブなので、ガチる時はソドマスを使うが、俺は剣も斧も魔法も回復もそれなりにできるのだ。
色々できると何かと楽しい。Gジェネでもそうだったが、俺は強い技一個持ってるユニットより、色んな技持ってるユニットのが好きなのだ。
しかし、そんな俺でも埋めてないジョブがあった。
武闘家系である。
この世界、というか多分人間の基本職は戦士と魔術師の二つである。そんで、どちらもレベル10・20・30で色んな下位職にジョブチェンジできるのだ。戦士10で剣士、魔術師10でウィザードといった風に。
で、戦士レベル20でソレが生えてきたのだ。武闘家さんである。
武闘家。作品によって扱いはマチマチだが、大体のイメージは拳や蹴りを主として戦い、防御は脆いがパワーもスピードもあるみたいな、こんな感じだろう。
実際、この世界の武闘家もそうだった。その手に武器を持たず――この世界にセスタスといった拳系武器はない――、己の肉体のみで怪物を打倒するストロングスタイル。性質上、鎧等の関節可動域を狭める装備は身に着けず、軽装かあるいは殆ど裸めいた格好でダンジョンに潜るのだ。
曰く、伝説の最強の武闘家――獣人イライジャ氏はパンツ一丁でダンジョンアタックやってたらしい。伝説って? あぁ!
もはや言うまでもないが、この世界は前世地球とは物理法則が異なる。
石での殴打よりヤクザキックのがダメージが出る世界観である。パン一武闘家は武器さえ持たずとも剣士や魔術師と肩を並べて戦えるのだ。
この世界では、無手での殴る蹴るの暴行は立派な怪物退治の手段の一つなのである。
わかってはいた。そういう世界である。魔法があってゴーレムがいてエタロリがいるファンタジー。攻撃力10の斧の連撃より、攻撃力100の素手ワンパンのが強いのだ。
けれど、俺はこれまで武闘家系ジョブに手を付けてこなかった。何故か? 武器ないとか怖くね? である。
ていうか、迫りくるモンスター相手にステゴロでやる勇気がなかった。例えやるにしたって剣ひとつ、槍一本持ってたいのが人情だろう。
それを、ろくに保護してない拳で怪物退治するなど、マジかよという気持ちだったのだ。
そんな訳で、埋めてくのが好きな俺、武闘家には手を出してなかった。
多分、今後もステゴロジョブは使わないだろうなーと、思っていた。
が、巨像迷宮にて、何体目かのゴーレムを倒し、見事剣が折れた直後である。
瞬間、俺は天か異次元かどこかの宇宙から、謎の電波を受信したのだ。
『なに? ゴーレム戦で武器が壊れて仕方ない? 逆に考えるんだ。武器なんてなくていいさと考えるんだ』
天啓であった。
そうじゃん。武器壊してくる敵には、武器なしで戦えばいいじゃんであった。
おあつらえ向きに、この世界の武闘家は火力面で優遇されてるし、防御こそ脆いがスピードは凄いのだ。盾はないが回避盾ができる。
という訳で……。
石黒力隆、ここにきて武器を捨てる覚悟を決めた。
「キャストオフ!」
「うわぁなんスかご主人!?」
ついでに装備も脱いだ。今の俺はパンツ一丁である。
異世界に来てからというもの日々の運動を欠かしていない肉体は、まさに戦士の肉体と化していた。ボクサーの様な体ではない。プロレスラーの様な体でもない。強いていうなら、自衛官めいた肉体をしていた。
ゴーレムの一撃、どうせ当たれば死ぬのである。なら、極限まで回避力に振る方がいい。
俺はコンソールを開き、ジョブをソードマスターから下位職の“武闘家”に変更した。
武闘家レベル1。変更と同時、俺のスキル欄から“切り抜け”や“剛剣一閃”といった剣士専用スキルが消えた。
「行くぞルクスリリア。作戦はさっきと同じ。俺が下、リリィが上だ」
「は、はあ……。いやそうじゃなく、ご主人……武器は?」
「拳で」
「なんでもありッスね異世界人!」
それはこっちの台詞だと言いたい気持ちだったが、それはともかく。
俺とルクスリリアは。次なるゴーレムへと挑んでいった。
〇
巨像迷宮、多分北部。
その名の通りゴーレムしかいないダンジョンの一角で、大きな影と小さな影が戦っていた。
大の影はひとつ。全高約10メートル程の獣型巨像。足の数は四つで、首が異様に長い。キリン型ゴーレムである。ビールが恋しくなる敵だ。あのキリンはキリンさんじゃないが、それはいい。
小の影はふたつ。蝙蝠の様な翼で空を舞い、身の丈を超える鎌を振るう淫魔と、パン一すっぽんぽんスタイルでキリンゴーレムの足に拳を叩き込み続ける駆け出し武闘家。
「オラァ!」
裂帛の気合と共に、何の保護もされてない拳がキリンの足に叩き込まれる。ゴーレムの武器破壊特性は素手には適用されず、ぶち込んだ俺の拳には傷ひとつない。ついでに痛くもない。
すると、拳がめり込んだ部分から蜘蛛の巣状に亀裂が広がり、やがてバギンと音立てて砕けた。前脚一本の先っちょが割れたのだ。攻撃を与えまくったが故の部位破壊である。
痛みを感じた訳でもないだろうが、キリンゴーレムは残る三本足でバタバタ藻掻きはじめた。わかっていたので範囲を抜けると、入れ替わるように空に影が差す。ルクスリリアだ。
リリィは両手で持った大鎌を、まるで空中ゴルフでもするように構え突貫していた。俺にキリンのヘイトが集まっている間隙を縫って、小さな淫魔は獣ゴーレムの首の根本まで接近した。
「どっせぇぇぇい!」
そして大鎌フルスイング。ブゥンと振られた鎌部が分裂し、根本から先端までの湾曲刃がマフラーめいてキリンゴーレムの首に巻き付いた。
リリィは勢いそのままスパイダーマンのように舞い上がり、一定高度に達した後にふんすと力を入れて大鎌を引き寄せる動作をした。それはさながらマグロ一本釣りの様。
すると、分裂して首に巻き付いていた刃がギャリギャリと物騒な火花を散らして元の形状に戻っていく。その間、当然の様にキリンの首はずたずたに切り裂かれ続けていた。首刈りチェーンソーである。
「マジか」
このゴーレムの弱点は首だった。そうなるとあの長い首に攻撃入れるのが効率いいのだが、その位置と動き的に一撃離脱で入れるしかないと思っていた。
そこへ、ルクスリリアは深域武装の形状変化を活かし、弱点部位にチェーンソーめいた継続ダメージをぶち込んだのである。実際ゴーレムのHPはガンガン減っていった。
「あ、ヤベ、倒しきれてない!」
だが、殺しきれていない。俺は再度突貫し、残る一本の前脚関節部に全力飛び蹴りを敢行した。
ドガン! 膝カックンを受けたキリンの姿勢が傾く。もっかい弱点に攻撃すれば倒せる。チラリとリリィの方を見ると、得たりと三下スマイルを浮かべたルクスリリアは、自身の魔力を深域武装へと籠めはじめた。
ラザファムの大鎌、その鎌部分に赤黒い光が凝集していく。そして、担い手は再度空中ゴルファーとなって。深域武装を大きく振りかぶった。
「はぁぁぁっ!」
空中で、ゴーレムの首を刈るべく刃が振るわれる。その軌跡をなぞるように、禍々しい刃状の魔力光が飛ぶ斬撃として射出された。
“破壊する魔力の刃”。
赤雷の尾を引いて放たれたそれは、着弾と同時に激しい爆発を起こした。
映画館のスピーカーの大音量より凄い爆音。派手なエフェクト、如何にもな破壊描写。これで低威力だったらクソ技認定で草も生えないが、リリィ渾身の装填魔法は見事ゴーレムの首を爆砕してのけた。
キリンが倒れ、粒子に還っていく。
青白い粒子は半分が俺に、もう半分はルクスリリアに吸い込まれていった。
どうやら、パーティでの経験値配分は、戦闘での“貢献度”的なものによるらしい。
アタッカーなら与ダメで、サポーターならバフで。どういう基準かは分からないが、明確に戦闘に貢献した者に多めに配られるようである。
つまり、ノビさんにトドメを刺させただけではあんま効率よくないって仕様だな。
「きひひ~、ご主人どうだったッスかさっきの動き~。強かったっしょ? 凄かったっしょ? いや~、我ながら自分の才能が恐ろしいッス~!」
などと言いつつ降りてきたルクスリリア。だが、何故降りてきたのかは知っている。魔力不足だ。
今のルクスリリアは未だ基本職のまま。レベルこそ上がったが、魔力の伸びはそこまでなのだ。先ほどの大魔法を使った後では魔力の残りも心許ない。ほとんど魔力消費のない飛行も厳しいのである。
「鎌を首に巻き付けるのは素直に凄いと思った」
「でっしょ~」
「けど最後に大技使ったのは如何なものかと。あれ普通に“貫く魔力の槍”でも十分だったよね」
「ぎく! いや~、まぁ? 念には念を? みたいな?」
「まぁカッコつけたい気持ちは分かるけどね。次からは大技じゃなくクールな技巧で魅せてほしいな」
「はぁい」
話しつつ、キリンがドロップしたアイテムを拾っていく。
相変わらずの石石石……素手&深域武装でコスト削減したとはいえ、やっぱり渋い。俺のアイテムボックスにどんどん余計な石が溜って行きますよ。
「きひひっ、ご主人様♡ ん、ちゅっ……♡」
ドロップアイテムを集め終えると、浮遊状態で寄ってきたルクスリリアが首に腕をからませてきた。
そしてそのまま唇を合わせると、彼女は半ば無理矢理舌をねじ込んできて、俺の口内をねぶり始めた。
「ん……ちゅ♡ あむっ♡ れろ♡ ちゅ……れろ♡ れろぉっ♡ んん、じゅるるぅ……♡」
戦闘後、ダンジョン内での唐突なベロチュー。一応、これには理由がある。色々あるが一言で言うと吸精だ。
基本、淫魔の吸精は男女のアレやコレやで行うものだ。けど、他にも手段がないではない。こうして唾液を飲む事でも吸精できるし、文字通り“精”を飲む事でも吸精できる。
ちなみに、ルクスリリアと生活して分かったのだが、どうやら魔族はトイレをしないらしい。じゃあそのケツは何の為のケツなんだと訊いたら「ナニの為のお尻ッスよ♡」と返された。ソッチでの吸精はまだ試していない。いつか試そうとは思っている。
「ん、じゅる……れろれろぉ♡ ちゅぅぅぅぅぅ……ぷはぁ♡ きひひっ、ごちそう様ッス♡」
ハイオク満タン! とはならないが、こうして給油する事はできるので俺とリリィのダンジョン探索に魔力切れの心配はなかった。
実際、魔族は魔力がなければへなちょこだが、魔力さえあればほぼ不死身である。魔力補給の手段があるのはダンジョンアタックでかなりのアドだ。多分、彼の淫魔剣聖女史もパーティメンバーの方をタンク(意味深)にしてたのではないかな。
「むぅ……」
ところで、前述の通り俺の今の恰好はオーセンティック武闘家スタイルのパン一なので、俺のジムがジムスナイパーになってるのは確定濃厚バレバレな訳だが。
「きひひ……なんスかご主人様ぁ♡ そんな怖い目しちゃってぇ? 次行くッスよ次ぃ♡」
当のルクスリリアは、絶対分かった上でこんな事を言っていた。
まぁ、軽い戯れである。ロリコンとロリサキュバスが一緒なのだ。こうもなろうという話で。
乗ってやろうじゃんである。
「範囲指定……“清潔”」
俺はジョブをウィザードに変え、杖を振って俺の身体を綺麗にした。
次いでルクスリリアにも“清潔”を使い、キリン戦で被った汚れ等を除去していった。
それから近くを飛んでいたルクスリリアを捕まえ、優しくその頭を撫でた。
「お? なんスかぁ? これどういう奴ッスか? きひひ……♡」
癖のある金髪を撫でる。ふわふわした毛の感触が心地よい。
そして、丁度良いところにあった角を鷲掴みにした。
「へ?」
杖をしまい、もう片っぽの手で残る角を握りしめる。グイと引き寄せ、正面から相対する。
丁度、両手でリリィの左右の角を掴んでる状態だ。浮遊してるので目線は一緒である。
「リリィ」
「はいッス……?」
ところで、この世界の多くの種族には“角”がある。
話に聞く牛系の人には牛っぽい角があり、鬼人族には如何にも鬼っぽい角が生えてるらしい。竜族にも角があって、それは龍の竜たるパワーの源なのだとか。
そんな中、淫魔には羊の様にねじれた角があるのだ。まるで何かのレースゲームのハンドルのように、それはそれは掴みやすそうな角があるのだ。
「次に備えて魔力満タンにしとこうか」
「え、あ、はいッス」
なので、そうする事にした。
この角、前々から使ってみたかったのである。
ハンドルみたいに。
実際にやってみた。
気持ち良かった、まる。
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