【一巻発売中】たのしい異世界ハクスラ生活、あるいは超紳士的英雄譚   作:いらえ丸

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 感想・評価など、ありがとうございます。お陰で続けられております。
 誤字報告もありがとうございます。感謝です。
 キャラ・ボスのご応募もありがとうございます。

 今回は一人称です。
 よろしくお願いします。


開幕ロリ

 ダンジョンのあるファンタジー異世界の御多分に漏れず、この世界には様々な武器が存在している。

 メジャーどころで言うと、剣とか槍とか弓矢とか。中には釵や両刃剣といったイロモノ寄りの武器なんかもあった。

 それらは武器種ごとに細かくカテゴライズされており、同じ剣でも短剣や刺剣や大曲剣など、実に沢山の武器種がある。

 

 武器ごとのカテゴリー分けに関しては、近接武器だけでなく魔法触媒も同じ仕様だった。

 魔法使いの使う杖ひとつとっても、長杖・中杖・短杖といった区分けがされているのだ。

 

 魔法職にとって、触媒はマスト装備である。あるとなしじゃあ全然違う。どれくらい違うかというと、ママチャリと原チャリくらい違う。

 加えて言うなら、激安杖と高級杖は原付とリッタースポーツバイクくらい違う。それは剣も同じだな。無銘や橘といったオダメ武器を持つ今、転移直後のような数打ち消費戦法は危なっかしくて仕方がない。

 

 閑話休題。それほど大事な魔法触媒だが、一応魔法を使える俺は店売りの安物しか持っていなかった。

 というのも、俺は戦闘ではあまり魔法を使ってないからだ。飛び道具なら投擲のが手っ取り早いし、遠距離なら弓矢のが威力が高いのだ。わざわざ詠唱を挟む必要のある魔法は、俺にはあんまり合わなかった。

 どちらかというと、俺は生活を便利にする方向で魔法を使っていた。風呂上りのドライヤーに、毎日使うお掃除魔法。キャンプでは火起こしに使うし、焚火の始末も魔法でつける。

 

 そんな俺ではあるが、直近の戦いを鑑みて一番良い触媒をオーダーメイドしてもらう事にした。勿論、製作者は我等が武器工匠ドワルフである。

 剣に刀に弓に盾。そしてお次は魔法触媒。俺にアジャストされた、俺専用の魔法杖。これにテンションを上げないオタクはいないだろう。

 こういうのが欲しいと依頼して、ならこういうのにしやしょうと。試行錯誤を重ねに重ね、様々な紆余曲折がありつつ、とうとう俺の杖は完成に至った。

 

 話を戻すが、先述の通りこの世界の武器は細かくカテゴライズされている。

 ドワルフ曰く、一部の例外を除き武器種にはそれぞれに「型」と呼ばれるものが存在するらしい。

 短い剣は短剣で、大きな剣は大剣なのだ。当然、杖もサイズごとに武器種が変化する。そうあれかしと造っても、型に嵌らない限り性能を発揮できない。

 要するに、この世界には武器を武器たらしめる目に見えない要素があるというのだ。

 

 ここでひとつ、グーラの持っているぶちぬき丸を例に挙げてみよう。

 大きく太く大雑把な鉄塊のぶちぬき丸。剣身の厚さは大盾並みで、柄の太さも棍棒並み。どう見ても通常の大剣の規格を超えているのに、これはあくまで大剣扱いされている。

 何故なら、ぶちぬき丸が大剣に必要な要素を持って完成したからである。話によると、開発チームが少しでも失敗したら、ぶちぬき丸は剣の形をしたオブジェになってしまっていたらしい。

 

 太すぎる剣は棍棒になるし、柄が短すぎる槍は短剣になる。杖に関してもその通りで、バットみたいな杖は棍棒扱いになるのである。

 そして、それらは行き過ぎると剣にも槍にもなれぬ、哀れで醜い可愛い失敗作になってしまうのだ。

 故に、武器工匠にはそれら武器の限界ギリギリを見極める力が必須であると。

 

 で、俺専用杖の作成は、そのギリギリを攻めてもらった。

 長さ、太さ、握りの具合。その工程は取捨選択と試行錯誤の連続で、一度ドワルフと喧嘩まがいの議論を交わした事もあった。それでも、俺はその形に拘り続けた。

 何故か? 握りやすく、扱いやすく、何よりとっても恰好良いからだ。

 

 

 

◆アダムス式・魔導銃杖◆

 

・物理攻撃力=50

・魔力補正=C+

・魔攻補正=C+

 

・補助効果1=自動修復

・補助効果2=魔力回復(中)

・補助効果3=魔力消費軽減(中)

・補助効果4=魔法制御(大)

・補助効果5=魔法装填(飛翔)

・補助効果6=魔法装填(降下)

 

 

 

 例によって例の如く、俺史上初となる専用杖は、特定のコンセプトに基づいて設計された。

 そのコンセプトとは、即ち空中戦の補助である。

 

 この世界の人達が空を飛ぶにあたっては、自前の飛行手段か飛行魔法に頼る事になる。

 ルクスリリアは前者で、エリーゼが後者だ。グーラは種族特性で空を走り、イリハは権能憑依でオーバード・ブーストできるだけなので、二人は一旦置いておくとして。

 そんな中、俺は防御魔法の【魔力の盾】を足場にし、それを蹴って空中移動する形を取っていた。一応、【魔力飛行】で飛ぶ事はできるが、それは巡行移動に堪えるだけで戦闘機動には物足りない。

 言うまでもなく、そんな程度じゃルクスリリアやニーナさんといった飛行可能勢には一歩も二歩も劣ってしまう。事実、先の魔導人機戦において、空中で待ちガイルされた俺は手も足も出なかったのである。

 

 どげんかせんといかん。そうして生まれたのが、この杖だ。

 魔法による攻防は程々に、燃費と制御に振った性能。戦闘機動の補助として、反射で移動できるよう【飛翔】と【降下】を装填しておいた。それぞれ前者が急上昇、後者が急降下だ。

 ピョンピョン移動に上下の加速。細かい制御は【魔力飛行】でまかなって、何とかかんとかモノにした。

 杖を手にした俺は、空が苦手という弱点を克服したのである。

 

 まぁ、それはいいのだ。

 重要なのはそこじゃない。

 真に拘ったのは、形である。

 

 アダムス式・魔導銃杖。その名の通り、これは銃の形をした杖なのである。

 もっと詳しく例えると、ターミネーター2でシュワちゃんがバイク乗りながら使ってたショットガンの形をしているのだ。

 ウィン何とかの数字四桁的な。それの銃身切り詰めてる系のアレである。色んな映像作品で見覚えのあるアノ銃だ。クルッと回してリロードするの、めちゃくちゃカッコいいいよね。

 ともかく、俺専用杖はそういう形をしているのだ。

 

 当初、俺はこの銃杖をどこぞの大泥棒の愛銃の形にしてもらおうと思っていた。

 けれど、それはできなかった。どう足掻いても拳銃サイズの杖が魔法触媒としてカテゴライズされなかった為だ。

 そんで何とかして作り上げたのが、この形という訳である。

 

 他にも銃型に拘った理由はあるが、そこらへんはおいおいね。

 超カッコいい魔法の杖。その肝腎の使い勝手はというと……。 

 

「じゃ、ちょっくら鳥になってきます」

「いてら~ッス」

 

 右手に剣を、左手に銃を。魔法剣士にジョブチェンジした俺は、雲上を駆ける空戦車から飛び降りた。

 身を投げ出して、一回転二回転。それから身体を丸めて三回転し、慣性に乗るよう頭を下にし急降下。痛みを感じぬ銀細工の目に、倒すべき巨大魔物が映り込んだ。

 そいつは、空中を泳ぐウミガメだった。正確な大きさは分からないが、甲羅の広さは住宅街の公園くらいありそうだった。万民に人気のウミガメはしかし、リアルと違って可愛げがなかった。顔といい甲羅といい、全体的にダークファンタジー仕様の亀である。

 直線軌道で接近する俺に対し、巨大ウミガメは甲羅の一部を剥がして射出してきた。甲羅による迎撃ミサイルだ。

 

「当たらなければどうという事はない……よし!」

 

 迫り来るミサイル群。威力は高そうだが、その弾幕はブライトさんブチキレ案件の厚みしかない。故に応えは、加速である。

 ミサイルの隙間を縫い、左右の【魔力飛行】でゆるく避け、小さな欠片は右手の無銘で受け流す。そして、再度の【降下】で距離を詰める。

 

「ブォオオオオオオッ!」

 

 古びた汽笛に似た咆哮。次いで、クソデカ亀が火の玉状のブレスを吐いてきた。迫る炎に対し、俺は銃口を向けるように杖を構えた。直撃の瞬間、【魔法の盾】を発動して【弾き返し(パリィ)】た。集中状態など必要ない。この程度のパリィは慣れっこである。

 グングングンと距離が詰まる。落下の角度を調整し、滑るようにして甲羅に踵を付けた。勢いを殺すべく亀の背中に剣を突き立て、ズサーッと減速。俺の通った軌道上に、火花の線が引かれていた。

 悲鳴を上げるウミガメ。効いているようだ。こいつ、HPが高いだけでそんなに硬くないな。

 

「おぉっと……!?」

 

 そのまま頭に一発入れようと思った瞬間、足場にしている甲羅が傾いた。このまま回転するつもりか。

 抉るように剣を突き入れ、次の状況に備えた。やがて足場の角度が九十度を超え、天地が逆さになった。片手で剣にぶら下がりつつ、【魔力飛行】を発動して耐える。

 一回転、上下が戻る。俺は突き刺さったままの無銘を逆手に握り直し、剣士系能動スキル【鎧通し】を発動した。ズドン! と、亀の内側で爆発が起きたような轟音。ゼロ距離刺突技により、大ダメージが入った。使い勝手の悪い技だが、鈍いデカブツにはよく決まる。スタン入った。

 この間に、俺は剣を引き抜いて頭に向かい駆け出した。風が強く、不安定な足場でも関係ない。引っ込みかけてる亀の頭に、右手の無銘を振りかぶる。

 

「オラァ!」

 

 グシャッと、巨大亀の後頭部に剣が食い込み、骨周りの首の肉を抉った。

 このまま続けようと思ったが、脳裏に警鐘が木霊する。反応は甲羅全体。膨れ上がる魔力反応。範囲は……ジャンプすれば間に合う!

 魔力爆発。咄嗟に飛んでガードしたが、衝撃は逃がせなかった。浮遊感、俺は亀を見上げるようにして落下していた。

 空中に投げ出された状況。が、問題ない、想定の範囲内だ。即座に【魔力の盾】を生成し、着地。それから武闘家スキルと【飛翔】を併用して、次いで凄まじい勢いで垂直跳躍した。

 まさに殺人的加速。これまた当然問題ない。グングン飛んで、あっと言う間に亀の上を取った。見下ろすと、カメは下方にブレスを吐こうとしていた。敵を見失ってるなら好都合である。

 俺は、再度上から強襲した。

 

 それからは、さっきの焼き直しの連続である。

 急降下からの突撃でダメージを与え。振り落とされてもすぐ戻る。やっぱり、こいつはそんなに強くない。

 あまり優雅な空中戦ではないが、これが俺のやり方だった。

 

「ブォオオオオオオオッ……!」

 

 やがて、亀は青白い粒子に還っていった。獲得経験値はともかく、ドロップアイテムが無いのは素直にクソだ。

 せつないトドメを刺した俺は、消えゆく甲羅から飛び降りる。そのままゆっくり降下して、下で旋回している空戦車に回収してもらった。

 

「っと、ただいま。鳥になってきたぜ」

「ご主人様! 素晴らしい戦いぶりでした! まるで獣拳記第七章のイライジャ様のようです!」

「流石ご主人ッスね! アタシ等の出る幕が無かったッス!」

「ええ。杖も使いこなせていたわね」

「あんなにキビキビ動けるもんなんじゃな! なんか感動したのじゃ!」

 

 座席に着くと、皆がキャイキャイと褒めてくれた。どうやら、剣と銃で戦う様は皆にも好評だったようである。心がぴょんぴょんして気持ちがいい。

 あの程度の魔物、倒すだけならエリーゼが潰した方が手っ取り早いのだが、積める経験は積んどこうかと思ったのである。

 まあ、もしダメそうだったらエリーゼランチャー撃ってもらう予定だったけどね。あのウミガメ、ギルドの討伐対象だったし。

 

「主様どんどん強くなるのぅ」

「まだまだ、こんなんで満足はできないかな」

「せめて、お祖父様に一太刀浴びせるくらいになってくれないとね」

「いやー、それは高望みし過ぎッスよ」

「ですが、目標は高い方がよろしいかと」

 

 話しつつ、街道沿いにある見張り台に向かって行く。この戦いを見ていた兵士に、討伐証明証を貰わなくちゃいけないのだ。

 道中の手慰みに、銃杖を片手で回してみる。ご丁寧に輪っかの機構も再現してくれているので、クルクルリロードができるのだ。まぁ弾は籠められないんだけども。

 そして、つくづく思う。銃型にして正解だったな、と。

 

 性能だけならシンプル杖でいいところ、わざわざ銃型にしたのにはもう一つ理由があった。イメージのしやすさである。

 フリーレン世界ほどじゃないが、この世界の魔法も発動にはイメージが重要である。火の玉魔法を撃つには、まず火をイメージする必要があるのだ。それから詠唱して発射である。想像、詠唱、発動の順だな。

 恐らくこれは俺が現代日本の転移者だからだと思うが、触媒が銃の形をしていると先端から何かを出すイメージがしやすかったのである。

 引き金もないし、弾も出ない。けど、どこぞのユニコーンのマグナムみたいに溜めて撃つ感じに想像すれば、これが何とも具合がいい。

【魔力飛行】に関しても、普通の杖や箒よりもイメージしやすかった。何故かは知らんが、この銃杖よく馴染むぜ。

 

「あの魔物、ボクなら最初に鎖を繋げますね。それから首元の甲羅を割っていって……。イリハならどうしましたか?」

「撃ち合いは負けそうじゃし、何とか結界で時間稼いで強い陰陽術を当てるしかないかのぅ。一人じゃと厳しそうじゃ」

「いや、そんなに強くはなかったよ。頑丈だったけどね」

 

 現在、俺達はラリス王国のフライシュ領に向かっていた。

 リンジュと違い、観光旅行に行くのではない。王家絡みの依頼の為、ひいては俺の我儘の為に、我が一党はフライシュ領の都市に向かっているのである。

 

 銃杖をホルスターにしまい、女装王子とのお話を思い出す。

 来る魔導人機捜索作戦。その開始前に、俺は協力者と合流するのだ。詳細については、現地のエージェントに聞くようにとの指示だ。

 また、今回の作戦にはヴィーカさんも参加してくれるらしい。頼もしさ百億点だ。勝ったなガハハと行きたいとこだが、できれば最大戦力は温存したいところ。その辺も現地の会議で決めるのだろう。

 

「見えてきたな。ルクスリリア」

「うッス。どーどー、ゆっくり降りるッスよ~」

「前々から思っていたのだけれど、手綱を持つ必要あるのかしら? この守護獣……」

「賢いからのぅ」

「実際、ルクスリリアの指示の前に減速してましたもんね」

「うるせぇ! 誰が何と言おうとコイツを操ってるのはアタシなんス!」

 

 お仕事の待ち合わせとなれば、時間厳守が絶対と考える次第。故に、我が一党は早めの到着を予定している。

 とはいえ時間には余裕があるので、今夜は中継地点の街で一泊だ。

 晩飯食って、朝飯食って、ゆっくりしてから再出発。

 

 常に余裕を持って優雅たれ

 私の好きな言葉です。

 

 

 

 

 

 

 リンジュ旅行の時も思ったが、街から街へ移動していると王都の凄さがよく分かる。

 人の多さや景観の美しさもさることながら、何より水路の透明度がダンチなのだ。

 めちゃくちゃ人口は多いのに、王都に流れる水路は信じられないくらい綺麗なのである。

 

 この異世界、活気のある街は水が綺麗な傾向にある。

 王都は言うに及ばず、街灯の少ないカムイバラも川の水は綺麗だった。その他の街も同様である。

 

 さて、フライシュ領の水はどうなんだろうか。

 フライシュ侯爵は美食貴族らしいし、水の質には気を付けてると思いたい。水が良いと料理も美味い気がするのだ。

 酒好きなエリーゼや食いしん坊のグーラ、繊細な舌のイリハが楽しめる街なら嬉しいのだが。あと、ルクスリリアの為に美味しい卵料理があるといいな。

 

 そんな事を考えつつ、俺は月光に照らされる皆の裸体に【清潔】をかけていた。

 高級宿、風呂上り、何も起きないはずがなく……。

 事後の上気した肌が艶めかしい。冷房魔道具をガンガン稼働させても、俺達の熱気は抑えられなかった。

 

「はい、終わり」

 

 杖を収納し、俺は大きなベッドに寝そべった。

 すると、まだ意識のあったエリーゼとグーラがもぞもぞ寄ってきて、無言で俺の腕に抱きついてきた。

 

「大丈夫? 暑くない?」

「ご主人様がお嫌なら離れますが、ボクはこうしてたいです♡」

「まさか、嫌だなんて言わないわよね……?」

「幸せしか感じてないよ」

 

 エリーゼの体温は低く、グーラの体温は温かい。二人とも、きめ細やかで柔らかい肌をしている。ただ触れているだけで、俺は最高に幸せだった。

 

「いよいよね……」

「はい。ヴィーカ様もいらっしゃるそうですし、頑張りましょう」

 

 そう言う二人には、戦いに怯えている雰囲気はなかった。

 それは、寝ているルクスリリアとイリハも同様だった。それどころか、この一党ではイリハのやる気が最も高いように見受けられた。

 魔導人機から助けを求める声が聞こえたから、これを助けに戦うのだ。こんな戯言を、皆は本気で信用し、一緒に戦ってくれるというのである。感謝しかなかった。

 イリハのやる気ゲージが高いのは、似たような経緯で救われたから……らしい。つくづく善なるお狐さんである。

 

「ああ……」

 

 ふと、窓を通した月に、小さな黒点が見えた。

 それは、空に浮かぶ島だった。

 

 この世界には、雲の上に島がある。

 古代、その島は天使族が支配する翼人の領域だった。現代、それらの多くは破棄されて、無人の島がいくつも浮かんでいる。人、空の島々を“天津島(あまつしま)”と呼ぶ。

 そのうちの一つに、魔導人機が隠れているかもしれないらしい。

 

「何を見ているのかしら?」

「天津島」

「ふぅん……」

 

 何となく空の島を見ていると、エリーゼが俺の胸に頭を乗せてきた。

 目を合わせると、彼女は悪戯っぽく微笑んだ。

 

「もし、魔導人機の中身がアナタの言う通りの子だったら、私達の仲間になるのかしら?」

「イリハと同じだよ。その子次第だ」

 

 事実、俺は件の適合者ちゃんを助けた後、彼女をどうこうするつもりはなかった。

 俺が直接庇護できるのは、ある程度強い子に限られる。強い子しか一党に入れないというのではなく、手の届く範囲の狭い個人が無責任に庇護すべきでないと考えているからだ。

 迷宮が嫌なら、止まり木協会に預ける選択肢もあるだろう。そうでなくとも独り立ちできるよう全力で援助するつもりだ。王子にお願いするのも、まぁ選択肢としてはアリだろう。ロリの為なら頑張る所存。できれば取りたくない手段だが。王子に貸しを作りまくるのはなんか怖い。

 とにかく、無責任な事だけはしないと誓う。

 

「ねぇ……」

 

 わざとらしく、甘えるような声音。白魚のような指が、俺の胸に「の」の字を描いていた。

 見上げてくる瞳は悪戯っぽい三日月で、けれども僅かな寂しさを湛えていた。

 

「新しい子に夢中になって、私達を忘れるのはダメよ……?」

「もちろん」

 

 何かと思えば、そんな事か。無論、全くそのつもりはない。できるとも思っていない。何故なら、俺は皆に心底惚れこんでいるのだから。

 フィクションの話だが、ハーレムメンバーを増やすだけ増やして後発ヒロインしか優遇しない展開は、俺はあまり好きではないのだ。

 

「なら、今すぐ証明して頂戴……♡」

 

 んっ、と。エリーゼは唇を差し出してきた。

 応じて、俺は小さな唇にそっと口づけた。寝てる二人を起こさないよう、ゆっくりと。

 

「ご主人様、ボクもお願いします♡ んっ……♡」

 

 グーラとも唇を重ねる。親愛を示すようなキスだ。

 そのまま、エリーゼとグーラと交互にキスを交わす。決して舌は使わずに、俺達は初心な恋人同士みたいに戯れていた。

 そうしていると、股間に違和感を覚えた。きたぜ、ぬるりと。

 

「いざとなったら超淫魔化できるように、もうちょっと仕込むべきッスよね~♡ これも戦備えの一環ッス♡」

「そういえば、今宵はこっち(・・・)はまだじゃったからのぅ♡」

 

 下の方を見ると、再起動したマイサンに笑顔で頬擦りする二人がいた。

 起こしてしまったようである。ならば、責任を取らねば。

 

 俺達は戦う為に生きているのではない、生きる為に戦いに向かうのだ。

 同じ戦いなら、命を作る戦いの方が素晴らしいに決まっている。

 

 このあとめちゃくちゃ以下略。

 その日の夜もアツかった。




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 イシグロが言ってる銃は、ウィンチェスターM1887のソードオフ仕様です。
 文中にある通り、あくまで形だけなんですけどね。弾薬入ってないですし、マジカル弾も撃てません。ですが、ループレバーはカチャカチャできます。イシグロの我儘でそうなりました。
 右手に剣、左手に銃杖がイシグロの魔法剣士スタイルになります。
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