【一巻発売中】たのしい異世界ハクスラ生活、あるいは超紳士的英雄譚   作:いらえ丸

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 誤字報告もありがとうございます。感謝しきりです。
 キャラ・ボスのご応募もありがとうございます。


プラネロリウム

 事の発端は、先の異種間交流会の最中に起こった夢魔騒動だった。

 それにより、聖輪郷と魔導人機を擁する組織に繋がりがある説が浮上したのである。

 

 特徴的な光輪跡に、念と炎の特殊攻撃。戦場に残った聖属性の魔力残滓。件の魔導人機の攻撃手段は、天使族のソレと酷似していた。

 一般には知られていないそうだが、件の魔導人機が行使した瞬間移動能力は上位天使の固有権能であるらしい。

 それが鎧自体の機能なのか適合者自身の能力なのかは不明だが、この時に天使族との関連性が見出されたのである。

 

 それから、第三王子主導で各地の天使を調査する事となった。

 調査開始から暫く、監視対象の一部が謎の失踪を遂げたという報告が上がった。

 何の前触れもなく、ある日突然ふらりと居なくなったのである。

 

 聖輪郷を離れる天使は、一部例外を除いてその殆どが下級天使である。失踪したのは、どれも最下級の非力な天使だった。

 情報を精査した結果、失踪した天使には知性と人脈に長け、時折ボーッとする癖があるという共通点が視られた。

 

 ここで、調査班はとある仮説を立てた。

 カムイバラに三本尻尾が入都できた事を筆頭に、これまで捕縛できなかった内通者が失踪天使であったなら、辻褄が合うのではないかと。

 諜報部は、例の共通点を持つ下級天使を監視し、見つかり次第確保する事を決定した。

 

 本格的な調査を開始して、すぐの事。

 カムイバラにいた天使の一人が、接触した際に「熾天使パレエス」の名を残して自決したのである。

 

 何故、件の天使がパレエスの名を残したのかは分からない。

 けれども、これには何か重要な意味があると考え、諜報部はこの事を第三王子に報告した。

 報告を受けた王子は、パレエスとその周辺の情報を秘密裡に集めるよう指示を出した。

 

 聖輪郷の様子は、いつもと変わらなかった。

 しかし、過去と現在のデータを比較してみると、巧妙な偽装の中に緩やかな変化が見受けられた。

 天津島管理者の交代。前任者に代わり指揮を執ったのは、誰あろう熾天使パレエスであった。

 

 放っておくと、無人の天津島は魔物の巣になる。それ故、湧いた魔物は定期的に間引く必要があるのだ。

 これまで、それらの管理は天使やその他翼人に任せていたのだが、近年一部の天津島にはデータと実際に齟齬が発見された。つまり、天使は魔物を間引いていなかったのである。

 その島というのが、事前に目星をつけていた例の組織の潜伏場所候補地だったのだ。

 

 高位天使を彷彿とさせる魔導人機の権能。

 半ば催眠状態にあったと思しき、自決した天使の伝言。

 熾天使が管理する天津島の現状。

 

 これ等を、偶然の一致と片付ける事はできない。

 利用しているのか、利用されているのか。いずれにせよ、熾天使パレエスが魔導人機関連の組織と裏で繋がっている可能性は高くなった。

 

 熾天使パレエスは最高位の天使族である。件の魔導人機同様、転移の権能を持っている上、その気になれば超長距離転移さえ可能であるという。

 天津島にあるかもしれない拠点を襲撃したら、パレエス自身が出張ってくる可能性はゼロではない。

 もし、本当にそうなったなら一目散に逃げてほしいというのが、専属侍女さんから伝えられた第三王子のお願い(・・・)だった。

 

「それは、ラリスと聖輪郷で国際問題になるからですか?」

「いえ、それは問題ではございません」

「問題ないんですね……」

 

 日和ってんの? と思ったが、ラリス王家はひと味違った。むしろ、これを機に聖輪郷を突っつき回すつもりらしい。

 ただ、驚くべき事にパレエスと戦った場合、ヴィーカさんですら勝てるかどうか怪しいというのである。だから逃げろ、と。

 俺視点、ヴィーカさんが負けるとは考え難いのだが、ことパレエスが相手だと話が変わってくるそうだ。

 

 熾天使パレエス。古代から現代に至るまで、その男の強さはよく分かっていない。

 空間権能に莫大な魔力。その他、天使階級に相応の力は持っているそうだが、どうにもそれだけとは思えない。

 というのも、遠い過去に彼奴と戦ったラリス王は、その一党ごとパレエス単騎に敗北したというのである。

 

 いくら古の天使であっても、ラリス王の一党を単騎で撃破するなど考え難い。もしそれだけの強さがあったなら、今頃ラリス王国に代わって聖輪郷が世界を纏めている事だろう。

 十中八九、何かカラクリがあると踏んでいるが、未だにその中身を掴めていない。

 そんな現状だから、パレエスとヴィーカさんを戦わせるのは避けたい。

 

「……故に、逃げて頂きたいのです。先ほど申し上げた通り、彼の熾天使が来る可能性は低いですが」

 

 という話だった。

 第三王子のお願いに、俺から否はなかった。言われなくてもスタコラサッサだぜ。うちの方針は命を大事にが基本である。

 

「断る……」

 

 対し、銀竜の英雄は俺とは真逆だった。

 案の定、詳しい話を聞いた上で、ヴィーカさんは否と答えた。

 暗に「お前じゃ勝てないかもしれん」と言われ、機嫌を悪くしてる風ではない。

 

「全てが真であるなら、熾天使パレエスは我が斬る……」

 

 ただ、決断的な意思だけがあった。

 

「天使族は……奴は、ニロウルの献身を知りながら、魔導人機の禁忌に触れた。ならば、我が斬らねばならぬ。ニロウルとは、そういう契約を結んだのだ」

 

 魔導人機は各種族の技術を集約して造った古代兵器である。その開発チームには天使族もいて、ニロウルとはその中心にいた天使の名前だ。

 しかし、魔導人機は強力に過ぎ、その力は深刻な環境汚染を引き起こす。ニロウル女史は魔導人機が起こした惨劇を知り、良心の呵責に苛まれた末に自害したらしい。

 ニロウルの十戒。それは、最近エージェント・メイドさんに渡された古書に書かれた教えだった。

 

「ですが、まだ確定した訳ではございません。現在は状況証拠しかなく……」

「確かめればいい。役目を果たした後、我は聖輪郷に向かう。そこで、奴と話をする」

 

 王子の使者を見据えるヴィーカさんの瞳は、あまりにも決意に満ちていた。

 こうなる事が分かっていたから、第三王子からは指示ではなくお願いをされたのだ。

 その従者であるキルスティンさんも、ヴィーカさんの発言には動揺していなかった。

 

「現在、殿下は急遽予定を変更し、聖輪郷の円卓議員と会談すべく動き出しております。グラフコス陛下やディミトリス殿下とは、内密にお話をしている最中でございます」

 

 どうやら、我等が第三王子は自身の立場を使って色々とやってくれているようだ。

 できれば王子にも戦場に来てほしい気持ちはあるが、彼には彼にしか出来ない事をしてもらうべきだろう。

 

「ヴィーカ様におかれましては、くれぐれもご用心をと……我が主からの伝言でございます」

「むぅ……」

 

 呻き、重々しく頷くヴィーカさん。

 次いで、キルスティンさんは俺の方を見た。

 

「イシグロ様も、どうかご無事で。殿下はイシグロ様の今後に期待を寄せております」

「はい」

 

 やる気満々のヴィーカさんと違い、もしそうなったらば俺は逃げる気満々だった。

 勇敢さと蛮勇の違いは分かっている。ヤバい奴とは絶対戦わない。

 しかし、彼女を諦めるつもりもなかった。

 

 暫定天使ちゃんからは、助けを求められているのだ。例え遠回りになろうが、俺は必ずロリコン道を遂行する。

 熾天使からは逃げるが、適合者ちゃんは助ける。

 可哀想なのは、いけない。

 

 それに、こうは言っても奴さんが出張って来る可能性など、普通に考えて極めて低いはずだ。

 何事もなく終わる可能性も、難なく助けられる可能性だってあるだろう。どだい確定している訳ではないのだし。

 

 これについて、皆とはさんざんお話をしたのだ。

 俺達のやる事に変わりはない。

 賽は投げられたのである。

 

「それでは、私は他の拠点に向かいますので。これにて失礼します」

 

 そう言って一礼したキルスティンさんは、しずしずと拠点を去って行った。

 この場には、瞑目して黙り込むヴィーカさんと、冷や汗をかいていたエージェント・メイドさん。息を吐いて決意を固める俺と、気配を消して佇むシュロメさん。

 

「にしても、あのメイドめちゃくちゃ乳デカかったのぅ……」

「いくら魔牛族とはいえ、ありゃなかなかお目にかかれないデカさッス。まさに宝乳、宝の乳ッスね」

「あそこまで大きいと、動くのに邪魔そうですよね。見た感じ、相当な使い手のようでしたが」

「貴女達ねぇ……」

 

 あと、割と気楽そうな皆が残された。

 確かに、キルスティンさんの胸はビックリするくらいデカかったが。それより真面目そうな印象のが強くないか?

 まぁともかく、今はもうさっさと明日に備えるべきだろう。

 

「パレエスめ……」

 

 臨時拠点の中、ヴィーカさんは声色低く呟いた。

 

 

 

 

 

 

 作戦開始の朝が来た。

 

 夜明け前、拠点から出た俺達は全ての準備を完了して空戦車に乗り込んだ。

 乗員は六名。御者席にルクスリリア。前部座席に俺とグーラ。後部座席にイリハとエリーゼとシュロメさんである。

 

「行ってらっしゃいませ」

 

 エージェント・メイドさんに見送られ、空飛ぶ守護獣が動き出す。翼を広げ、虚空を蹴って天駆ける。未だ薄暗い東に振り向くと、徐々に太陽が見えてきた。

 朝の光に背を向けて、遥か彼方の西方へ。透明な坂道を上るように、俺達を乗せた戦車は指定された作戦区域へと近づいていった。

 

「隠形は正常に機能しているでござる。さすがラリス謹製の魔道具でござるな」

「壊さないよう気をつけないといけませんね」

 

 作戦遂行に際して、俺達はクライアントから様々な魔道具を貸与されていた。今俺達が使用しているのは、空戦車をステルス迷彩化してくれる隠形魔道具だ。

 他にも、いくつか王家謹製のアイテムを渡されている。もしもの為の保険と、もしもの為の切り札。あとヴィーカさんにレスキュー頼む用の魔道具も。

 

「到着して、最初にやる事は覚えてるな?」

「はい。まずボクとシュロメさんで周囲を警戒するんですよね」

「現地の索敵と案内は任せるでござるよ。超得意分野でござる」

「戦車をしまい終わったら、内側に向かうのよね」

「わしは結界張っとく係じゃの。早めに頼むのじゃ」

「任せろッス! しこたま練習したんスから、秒で片してやるッスよ!」

 

 地図を広げ、上陸後の行動について確認する。

 一部を除き、多くの天津島は中空構造になっており、島の各所から内部に入る事ができるのだ。俺達が制圧する予定のウェルン島も例外ではなく、その入り口は事前の調査で判明している。

 上陸したらば、空戦車をしまって島の内部を制圧する。地表の魔物は無視していいし、邪魔なら全滅させてもいい。タイムアタックのつもりはないが、スピード勝負の制圧作戦。油断せず、けれど迅速にいこう。

 

「アレか……」

 

 暫くして、遠くの方に目的地が見えてきた。文字通り、雲海に浮かぶ島である。

 ウェルン島は大きめサイズの天津島だ。島の上には森や山や草原があり、独自の生態系を保っている。

 また、その生態系に乗じるように自然発生した魔物が群れを成し、呼応して強化された野生動物が生息しているらしい。あまつさえ両者の間引きは不十分という状況だ。

 

「とりま、一個目の候補んトコに停めていいッスか?」

「ちょい待ち」

 

 ウェルン島に接近しながら、射手スキルの【遠視】を使って偵察する。

 ズームされた視界には、着陸地点付近の空中でドッグファイトする生物達の姿があった。

 片や小さな鳥の群れに、片や大きな蜂の群れ。見た感じ、前者が原生生物で後者が魔物に見える。経験則だが、前者には普通の動物を思わせる可愛げがあって、後者にはダークファンタジー味があるのだ。

 

「敵がいる。ぐるっと回って、他の場所を見てみよう」

「あいッス」

「望遠鏡も無しによく見えるでござるな」

「ふふん、まぁね……」

「なんでエリーゼが自慢げなんですか?」

 

 突破できない事はないだろうが、安全面を考慮して上陸地点を変更した。

 島の周りを走りつつ、しっかり地形を確認する。かもしれない想定だが、何かのトラップで島が爆発するかもしれないのだ。退路は常に確保しておくべきだろう。

 

 それから、細心の注意を払いつつ島に近づき、端っこの森で空戦車を停車させた。

 上陸早々グーラとシュロメさんが飛び降りて周囲を警戒。その間に俺とルクスリリアで空戦車を収納した。エリーゼとイリハはバリア要員だ。

 

「予定通り、最寄りの入り口に向かいましょう。シュロメさん、お願いします」

「了。先導する故、少し離れてついてくるでござるよ」

 

 シュバッと駆け出したシュロメさん、隠形魔法を施した俺達が後に続く。

 空にある島、その森を歩く。現在、ウェルン島の標高はどれくらいだろうか。前の知識じゃ雲海の上は空気が薄いはずだが、どうにもそんな感じはしなかった。

 島に吹く風は穏やかで、思ってたより寒くない。森の中は爽やかな緑の匂いに満ちている。ただ、今まで見てきた森とは木々の生え方が違っている気がした。ダンジョン内ほど禍々しくないが、下界の森ほど鬱蒼としてないというか。

 

「っと、止まるでござるよ」

 

 指示に従い、一斉に静止。シュロメさんの指差す方向を見ると、二足歩行の毛むくじゃらモンスターが群れを成していた。パッと見、サルの群れに見える。

 群れの中心にはボス個体と思しきデカブツがいて、しきりに剣呑な唸り声を発している。その頭部は耳と鼻の位置にそれぞれ大きな目があって、三つある黒目がギョロギョロと動いていた。

 アレはリンジュの迷宮で戦った事のある魔物だ。眼猿迷宮の主、三眼火猿である。奴と目が合うと問答無用でランダムの状態異常が付与される上、長い手による強力な殴打攻撃や火吹き攻撃をしてくる厄介なウンチーモンキーだ。おまけに周囲の物や取り巻き猿を投擲してくるくらいには知能が高い。

 

「あとちょっとで入口でござるが、奴等が邪魔で先に進めぬ。ここは一旦迂回して、別の入り口に行く方が安全でござる」

「いえ、あれくらい余裕です。不意打ちで殺しましょう。隠れててください」

「え、マジでござるか……!?」

 

 が、勝てない相手じゃ断じてない。

 ボスエネミーとはいえ、所詮はデバフと怪力と遠隔攻撃があるだけのエテ公だ。それに、奴の弱点は目立つ上に修復に時間がかかるので、不意打ちできれば始末は容易い。迷宮外なら、尚の事。

 そろりそろりと接近し、俺は手振りで指示をした。頷いたグーラは、自身の得物に鎖を連結。ゆっくりと深呼吸。いちにのさんで、皆殺しだ。

 

「ふんッ……!」

 

 グォン! 凄まじい轟音を立て、大質量の剣が投擲される。狙いは当然、三つ目ボスの目ん玉だ。

 風切り音に反応してか、直撃の寸前にボス猿は身体を捻じった。しかし完全回避はできなかったようで、ぐしゃっと音立て奴の右眼から大量の房水が吹き上がった。鎖付きぶちぬき丸の先制攻撃だべ。

 

「バフよろ!」

「承知じゃ!」

「あいッス!」

往きなさい(・・・・・)……!」

 

 瞬間、全員動き出す。

 駆け出す前衛。支援する後衛。俺の身体に黄金のオーラが纏わりつき、状態異常無効化状態が付与される。同時、俺に淫魔、グーラに竜族のバフがかけられた。

 斬り込む。左の銃を構え、ザコサルの群れに魔法を数発。避けられた瞬間、【軽功】と【飛翔】で高く跳ぶ。俺に視線が集まる中、真っすぐ走る獣が一人。

 

「やぁーッ!」

 

 炎を纏うグーラである。駆け抜けながら鎖を巻き取り、身の丈よりある剣をキャッチした彼女は、俺を見上げる猿共を文字通り撥ね飛ばして直進。眼を押さえてジタバタするボス猿に接近した。

 

「死ねぇえええやぁああああ!」

 

 そこに、飛び上がった俺が【降下】で強襲。上から前から脅威が迫り、ボス猿は地面を殴って退避した。結果、俺とグーラのダブルアタックが空を切る。

 逃がすまいと放たれた後衛の魔法を、猿は左手でガードした。残る瞳でイリハが視られる。デバフの邪眼だ。が、彼女は気にせず式を編む。視線を遮るように、俺は三眼火猿の視界に割り込んだ。

 

「ケヒャーッ! こいつ等とんだ雑魚ッスねぇー! どいつもこいつも一発で死ぬッスよ!」

「油断しないの。今のうちに狩り尽くすわよ」

 

 指示待ちしている取り巻き猿は、派手に暴れるルクスリリアと二艇杖モードのエリーゼが蹴散らしていた。

 鎌のひと薙ぎで猿が真っ二つになり、魔法の一発で跡形もなく蒸発する。瞬きする度、ボスを守護する兵が減る。

 

「へいへい! こっちこっち!」

 

 騎士スキルの【陽動】を使いつつ、俺はボスの視線を釘付けにした。左右のパンチをジャスガして、返す刀で指を断つ。

 痛みに喘ぎバックステップするボス猿の側面から、地を這う軌道でグーラが迫る。炎纏う剣の刺突を、猿は反射でガードした。

 が、耐久度不足だ。パリィ自体は成功したが、その腕の肘から先が爆ぜた。車に撥ねられたように飛んだボス猿。反動に乗って宙返りするグーラ。

 そろそろだ。俺は再度【陽動】を使って、無理やり視線を誘導する。グリンと目玉が俺を向き、じっと控える必殺仕事狐を隠し切った。

 

「五行相生、【抱殺帯水】!」

 

 水のないところで高レベルの水魔法。陰陽術ソリティアを完了したイリハの刀から、ウォーターカッターめいた勢いの水が放たれた。

 槍のような流水は三眼火猿に直撃するなり形を変えて、その身体を雁字搦めに縛ってみせた。悲鳴を上げるボス猿。ギリギリとその身を削る水の帯は、やがて手足を束縛した。

 

「ほい、【水の礫】。グーラ!」

「はい! うぉおおおおおッ!」

 

 猿の火吹き悪あがきを妨害し、キツい一撃をグーラに頼む。大剣による最大溜め斬り。雷纏う分厚い刃が頭部にヒットし、残る目玉もろとも首より上を叩き斬った。

 頭を失ったボス猿は、力を失って粒子に還った。やはり、迷宮外の魔物はHPが残ってても殺せる。迷宮で戦ったお前はもっとタフだったぞ。

 

「イシグロ殿! 空から鳥が!」

「今度は原生生物か。シュロメさんは下がっててください。皆、いくぞ!」

「「「「応ッ!」」」」

 

 ボスを倒し、ザコエネミーを掃討し終えた頃、ボス猿が死ぬのを待っていたのか大量のハゲタカが襲ってきた。さっきの猿共と違い、こいつらは島に住んでる野生動物だ。

 飛行エネミーはもう慣れた。ルクスリリアの網魔法で捕縛し、まとまったところに広域攻撃を叩き込む。あぶれた個体は撃ち落として、寄ってきたらば斬り捨てる。

 そんな事をしていたら、あっと言う間に屍山血河の完成だ。死ぬと粒子になる魔物と違い、現地の動物は死体が残る上に血が出るのだ。普通にばっちぃ。

 

「とんでもないでござるな……」

「大丈夫ですか? シュロメさん」

「あー、問題ないでござるよ」

「良かった。では、先に進みましょうか。申し訳ないですが、これ等は放置します。皆、【清潔】かけるからこっち来て」

「滑るといけませんからね。よろしくお願いします」

「アタシは飛んでるんで大丈夫ッスよ」

 

 戦闘が終わり、警戒してから武器を下ろす。

 ともかく、これで迂回せずに内部に入れるはずだ。これが一番速いと思います。

 

 そうして、俺達はウェルン島の捜査を再開するのであった。




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 以前どっかに書いたような気がしないでもないですが、迷宮外の魔物は迷宮内の魔物より脆い傾向にあります。
 迷宮外の魔物は自然治癒に時間がかかる上、場合によっては治癒不可能な傷を負う事もあります。要するに、腕を切られたらそのままって感じになります。迷宮内の魔物はすぐに治ります。
 HPとMPも低いのに加え、それらの回復も時間がかかります。普通の動物同様、食って寝る必要があります。加えて言うと痛覚も増しているので、迷宮外の魔物は怯みやすくなっています。生命活動に必要な部位を破壊する事で殺せるようにもなってます。。
 その代わり、長く生きた魔物は知能が発達し、一定の条件を満たすと特異個体に進化する事ができます。
 ウェルン島にいた三眼火猿は長い間アタマ張っていましたが、発達したのは知能と統率力だけで能力の向上ができなかった半特異個体です。放置してたら大問題でした。
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