【一巻発売中】たのしい異世界ハクスラ生活、あるいは超紳士的英雄譚 作:いらえ丸
誤字報告もありがとうございます。本当に助かっています。
チュートリアルの続き。
デート回の予定でした。
今回、変な口調のキャラが出てきますが、こいつが喋ってるのは江戸言葉でもヤクザ口調でもなく、「映画の中盤で死にそうな商人キャラ」の口調です。
ちゃんとした江戸言葉はちょっとカロリーが高いです。
俺が住んでいる王都西区は、前世でいう東京都新宿区に近い雰囲気があると思う。
見た目がどうのとかじゃなく、何となくの雰囲気だ。猥雑な繁華街に煌びやかな商店街。路地裏の怪しさといい、ありとあらゆる清濁をかき集めて来たような感じがそう思わせるのである。
建物とか道路とかはイタリアとかフランスとかドイツとかイギリスとかをごちゃまぜにしたようなオーセンティックカジュアルファンタジースタイルではある。所謂ナーロッパだ。いや、どうだろう。なんとなく、アサクリ2よりはBHとかオリジンズに近い印象なんだよな。うん、ナーロッパというよりナローマだな。実際あっちこっちに銭湯あるし、闘技場もあるし。ローマはヨーロッパなのでなんか変な感じになっちゃうが、いやそれはいい。
大小の建築物。清濁併せた街。人の欲望と熱気。ともかく、ナローマ風の王都西区を、俺は東京都新宿区みたいだと感じたのである。
王都というだけあり、人や店の数もまた膨大だ。
通りに出れば人人人……。建物と建物の間に架けられた紐には「この道まっすぐに武器屋!」みたいな広告が吊るされ、大通りに面したところには色んなお店がぎっしり詰まっている。
広い道路の真ん中では馬車とか牛車とか巨大鳥車とかが走り、道行く人は休日の歌舞伎町並みに多く、姿は比較にならない程多様性に満ちている。
歩く人歩く人、皆二足歩行という点こそ一致しているが、その頭には角があったりお尻に尾があったり背に翼があったりで、色合いも鮮やかだ。緑髪のエルフがいれば紫髪のドワーフもいる。身長を見ると日本人視点やや平均が高く見え、2メートルを超えてる人もザラにいるのだから凄い。
店の種類もまた多様で、ごちゃごちゃしている。
武器屋の隣に飲食店があり、その隣に錬金術的な店が並んでたりする。娼館の前では客引きの爆乳牛人や長身翼人がいて、道行く人に声をかけていた。
特に多いのは飲食店で、パッと見では専門店が大半な印象だ。香ばしい肉の匂いがする店があれば、何か謎の豆を炒めている店もある。そういう店は玄関開けっ放しで、前世のようにしっかり戸締りされた感じはない。肉と煮物とチーズと豆と色んな料理の匂いが合わさり最高にカオスだ。
大衆向けの店が大半を占める西区だが、転移神殿の近くに行くとより冒険者向けの店が多くなる。高給取りを狙い撃ちにするお店たちだな。
神殿付近の武器屋や防具屋はワンランク上の雰囲気になり、カジノや娼館といった店も如何にも高級店といった感じ。あちらが歌舞伎町だとすれば、こちらは都庁周辺という印象だ。なんかしっくりこないが、まぁ大体分かるだろう。
ぎっしり詰まった大衆向け店舗と違い、冒険者向けの店はどれも敷地が広く造りも立派だ。以前行った防具屋もこの区画だが、全体で見ると小さい方だった気がする。
「へー、此処が武器屋ッスかー。なんかショボいッスね」
「店の前でそんな事言うもんじゃあないよ」
そんな転移神殿の周辺の一角。俺とルクスリリアは、とあるお店の看板を眺めてぼーっとしていた。
眼前にはこじんまりした石造りのお店。ドアの上には異世界語で「武器工匠のアダムス」と書いてある。他が大きくて立派な建物なのに対し、ここはちょっと小さい。前の防具屋がスーパーマーケットだとしたら、ここはコインランドリーである。
コインランドリーもとい武器工匠のアダムスは、俺の数少ない情報源である受付おじさんや他のギルド職員から教えてもらった武器屋であり、前防具屋の紳士に教えてもらった武器屋と違い、此処は完全オーダーメイド専門店らしいのだ。
おじさん曰く、何やかやあって職員は店のオススメはできねぇらしかったのだが、神殿周辺の店の存在だけは教えてくれた。で、聞いた感じここが一番いいんじゃないのという気持ちで来たのだが……。
「まぁ入ってみよう」
「はいッス」
ぶっちゃけちょっと怪しい。
前世でここ美味しいよと言われた店が妙にボロかった時みたいな気持ちだ。オイオイ大丈夫か? みたいな。
緊張しながら、俺は店のドアを開いた。
「すみませ~ん」
店の中は、想像通り薄暗かった。
事前に武器屋と聞いてはいたのだが、周囲の棚にはスクロールとか分厚い本が並んでおり、そこに武器らしきものはひとつもなかった。古い木と古い本の匂いがする。武器屋特有の鉄臭さはしなかった。
なんというか、〇リポタの杖屋さんみたいだなと思った。
「あー、ちょっと待っててくだせぇ!」
すると、店の奥から若い男性の声が聞こえてきた。
言われた通り待っていると、声の主と思しき青年が姿を現した。
「どうもすいやせん。冒険者様、どうぞおかけください」
「はい、失礼します」
現れたのは、金髪碧眼高身長イケメンエルフだった。
イケメンエルフは声の若さ相応に若い見てくれをしていたが、地球人の俺からするとエルフの年齢なんて分からない。実際に若いのか、あるいはめちゃくちゃ歳を取っているのか。
「あっしぁ此処の店主のアダムスと申しやす。失礼ですが、御手前様のお名前を伺ってもよろしいですかい?」
「イシグロ・リキタカと申します。イシグロが姓で、リキタカが名前です」
「へへっ、その歳で銀細工持ちですかい。そいつぁスゲェや」
「それほどでも」
彼はエルフと聞いてイメージする細身のエルフそのままの容姿をしており、つま先から頭までスラリとしたイケメンオーラで覆われていた。
足腰もしっかりして、身のこなしもキビキビしている。見た目も佇まいも、若い。
若い、のだが……。
「こちら、ギルドからの紹介状になります」
「へへ、どうも。ここで拝見しても?」
「どうぞ」
が、なんか粗野だ。
職人風というか江戸っ子風というか。如何にもティーン受けしそうなエルフさんは、ドワーフ鍛冶屋と聞いてイメージされるドワーフ鍛冶屋みたいな言葉遣いと佇まいをしていた。さながらドワルフだ。
ドワルフは紹介状を流し読むと、今度は顎をさすさすしながら俺の方を見てきた。
「えーっと、あっしぁ巷の噂にゃあ疎いんでさぁ。失礼を承知の上で聞きてぇんですが、此処に書いてある事ぁマジのガチなんですかい?」
「はい、間違いありません。お見せしましょうか」
「すいやせんねぇ」
言って、俺はアイテムボックスから昨日鑑定してもらった希少金属を出していった。
一種類につきひとつずつ、金に銀に黒いの青いの色々。今あるのはこれだけだが、銀行にはもっとたくさん預けてある。
ドワルフ氏はそれらひとつひとつに鋭い眼を向けていた。
おじさんに書いてもらった紹介状には、俺の身分の他にもこの石の入手経路についても書いてある。
前例のない話だと言ってたので、実際ドワルフ的にも信じがたい事なんだろう。希少金属は管理しっかりしてるっぽいし、盗品なり偽物なりを心配してるのだと思う。
「鑑定させてもらってもいいですかい?」
「どうぞ」
一応、これら石ひとつひとつにはギルド印の鑑定証がついてるのだが、彼は手に取った石を矯めつ眇めつし、時々人差し指でこつこつして触感を確かめていた。
その眼差しは鋭く、まさに職人といった感じ。睨まれてる訳でもないのに、俺は少し緊張してしまった。
「マジのガチじゃないですかい……」
最後の石を確認し終えると、ドワルフは感嘆の息を漏らした。
手に持っていた石を丁寧に戻し、背もたれに身を預ける様は職人というより会社員のおじさんといった感じ。つられた俺も安堵の息を漏らした。
「へへっ、すいやせんねぇ。あっしぁ自分で確かめたモンしか信用しない性質なんでさぁ。あっしが保証しやす、こいつぁどれもマジのガチ。それも一等上モノときた」
言うと、何が面白いのか「へっへっへっ」と笑うドワルフ。
それを見て、俺は「映画の中盤で死にそうな商人キャラ」みたいな人だなと思った。ゴーグルかけて片手がサイバネ腕だったらもっとそれっぽかっただろう。
「おっと失礼、年を取ると無駄話が好きになっちまって。若い時分はむしろさっさと用件言えーってお客に怒鳴ってたもんですが、いやはや……」
「あのー」
「あ、これまた失礼。で、銀細工持ちの御手前様がうちに来たって事ぁ、武器の作成依頼ってんで合ってますかい?」
頷くと、ドワルフは希少金属を眺めて言った。
「こんだけ良い石揃ってちゃあ、形にしてやらねぇと可哀想ってモンですわな。で、何が欲しいんです? 槌かい? 槍かい? ウチぁ鎧以外なら大抵のモン承りますぜ」
欲しいのは剣なのだが、それを言う直前で俺の口が一瞬止まってしまった。
今一度、ドワルフを見る。細い腕、白い肌。オーダーメイドの武器屋と聞いて、この人が作るのだろうかと思ってしまった。さっき石を眺めてた眼差しは職人そのものだったが、その身体つきはむしろモデルに近い気がするのだ。
まあ、この世界の住人は体格以上の腕力とか普通に持ってたりするのだが。リリィとかまさにそうである。
そんな俺の視線に気づいてか、店主は頭をぽりぽり掻いた。
「あー、失礼ついでに訊くんですがね。御手前様ぁ強ぇ武器の仕組みとかご存じねぇ感じで?」
「はい」
「へへっ、ならあっしんナリ見て疑う気持ちぁ分かりますぜ。見ての通り、あっしぁ鉄は打たねぇ。ま、並みの鍛冶屋よりゃデキるがね?」
手をプラプラするドワルフ。飄々とした振る舞いだが、そこには俺が持ち合わせていない強固な自信が満ちているように思えた。
「いいかい、強ぇ武器ってのは“皆”で作るんでさぁ」
背もたれに体重を預け、腕組みして語り出すドワルフ氏。
それは世間知らずな俺を見下す視線というより、良いモノを知らない人に良いモノを教えてあげる系の視線だった。
「剣ひとつ作るのにだって色んな職人が関わるモンでさぁ。刃打つ鍛冶師。魔術を籠める魔工師。呪い纏わせたいなら呪術師の協力もいるし、魔物素材を合成する錬金術師だって必要だ。そいつら職人共が最高のモン仕上げて、最終的に出来るのがマジのガチで強ぇ武器な訳よ。外で使う剣じゃねぇ、迷宮で振るう剣だ。並みのモンじゃねぇし、それを作るにゃあ並みの職人じゃ無理ってもんだ」
彼の語り口は、好きなアニメを語るオタクそのものだった。
それも早口オタクではなく、宇宙世紀を初代から順に裏設定まで含めて語る時のおじさんガノタに近い。
熱く、重く、とてもねっとりしている。
「当然、それにはまずどんな武器を作るか決める奴がいるし、必要な素材や組み合わせを検討する奴、職人共を管理する奴もいる。それがあっし等、“工匠”だ」
こういう人の話を聞くの、俺は割と好きだった。
好きな事を一生懸命話す人ってのは、見ようによってはキモくてウザいのかもしれないが、そういう時の皆さんは一様に楽しそうなのである。
そんな楽しそうに話す人には、独特な面白みがある。普通の人と話すより、よっぽど面白いと思うのだ。
「設計・管理っつっても、ただ紙に図ぅ描くだけじゃあねぇぜ。必要素材の選別やら適切な設計やら、籠める魔術体系の相性とか使い手の腕とか……まぁ見るべきやるべき事が多いモンなのよ」
話がヒートアップしてきたところで、ドワルフは胸にある謎の飾りを誇示してきた。
それは鈍い銀色をしたバッジだった。前世、偉い軍人が胸につけてた奴みたいなの。飾りの中心にはラリス王家のマークが彫刻されている。
「モノホンの工匠に必要なのは、知識と経験と実績。この通り、あっしぁ王家からお墨付きもらってる。モノホンって事だ」
そんなモノホンの工匠は、受付机に両肘を乗せてゲンドウポーズを取った。
イケメンエルフである彼がやると、司令官というより映画の広告ポスターの様である。
「で、工匠の最初のお仕事は、御手前様方からの要望を聞く事な訳だ。どんな剣が欲しいとか、こんな弓にしてほしいとか。場合によってはあっしから提案させてもらう事もありますがね。出来る限りご要望通りのモンを作らせてもらってまさぁ」
長い話だったが……。
要するに、この人は刀鍛冶じゃなく銃開発者かガンスミスみたいな感じなのね。あるいはオーダースーツ専門店の店員さん。
「で、御手前様はどんな武器をお求めで?」
なら話は早い。
「そうですね。“自動修復”付きの剣か、めちゃくちゃ頑丈な剣が欲しいです」
「ほう……それから?」
「え? えーっと、なるだけ鋭い方がいいなぁと」
実際、パッと思いつくのはそれくらいだった。
武器の何がアレって、やっぱ壊れるところなんだよな。地球の武器ほど壊れやすくはないが、安物ならゴーレム一体でパキン。上物でもゴーレム二体でバキンだ。
ゴーレムだけじゃなく、他ダンジョンのボスでも一回やれば大体半壊する。死闘となると武器に気を遣うなんて真似は俺にはできないので、壊れない武器なりがあればいいなぁとは常々思っていた。
「そんだけですかい?」
「まあ、それくらいですかね」
で、戦ってる最中に壊れると最悪で、その都度アイテムボックスに手ぇ突っ込んで新しいの出さないといけないのだ。隙だし、面倒だ。タイミング次第じゃ死に直結する。
そういうのもあって、俺は武器にはまず壊れにくさを求めたいところなのである。
「あ~、そうだな~」
その旨を話すと、ドワルフはこれまた腕組み姿勢になって天井を眺めはじめた。
それは宇宙世紀のどこを話そうかとするガノタというより、ガンダムの「ガ」の字も知らない女の子に逆シャアの見どころを解説しようとするガノタの様だった。
「紹介状にあった通り、御手前様ぁ腕はいいらしいがコッチの事情はからっきしだな。あーいや、けなしてんじゃねぇぜ。褒めてんだ。マジのガチ、モノホンの冒険者ってな」
「そうですか」
「あぁ。近頃の冒険者とくりゃ、やれ効率だやれ損得だのと小賢しいの何の。まだるっこしいったらありゃしねぇ。そういう奴に限って身の丈に合わねぇ武器担いで死んでくんだ、阿呆臭くて仕方ぁねぇや」
「なるほど」
「人がせっかく死なねぇ為の武器作ってやってんのに、あいつらとくりゃ金金金っつって身の丈以上の武器で身の丈以上の迷宮行って……。んで運よく生き残れればはいサヨナラと武器にも迷宮にも背ぇ向けやがる。そんな奴ぁ戦士でも冒険者でもねぇ、ただの知識層気取りの玉無しクソ博徒よ」
「はあ」
「第一に迷宮への恐怖がねぇ。第二に武器への敬意がねぇ。第三に未来への希望がねぇや。どいつもこいつも死んだ魚の目ぇして潜るもんだから、どんだけ良い武器持ってこうがす~ぐおっちんじまう。いいかい、モノホンの冒険者ってのぁなぁ……」
「ご主人~、お腹空いたッス~」
「お昼は近くの屋台で食べよっか」
「だいたい……!」
その後も、ドワルフの最近の若者トークは続いた。
そんでしばらく、良い職人と悪い職人の話になったところで、彼は急に口を閉じて、言った。
「あ~、すいやせん。剣の話でしたね」
「そういえばそうでしたね」
軌道修正したドワルフ氏の話をまとめると、こうだ。
まず、武器とはその質によって籠められる魔術の数や強さが変わるらしいのだ。
良い武器には強い魔術。悪い武器には弱い魔術。あるいはそもそも付けられないよとか。素材や形状によって、籠める魔術体系なんてのも変わってくるらしい。
これは分かりやすい。要するに、良い武器には沢山の空きスロットがあるという話だろう。籠める魔術というのも、多分“補助効果”の事だな。モンハンの装飾品か、あるいはブラボの血晶石か。そういう認識でいいだろう。
で、俺が持ってきたような希少金属を使うんなら、それはもう凄い上質な武器が作れるとの事。
頑丈で鋭い武器を作れる金剛鉄。補助効果を沢山つける事のできる真銀。魔術への親和性が高い聖鋼。
一個でも凄い武器が作れるし、良い職人が最高の技術を使えばそれら全部使って最強の合金を作る事もできるとか。
「あれ? 輝銀魔石は?」
「あー、そいつぁ魔法特化でさぁ。剣にゃ関係ねぇ」
「なるほど、そういうのもあるんですね」
中には今は使いでのないアイテムもあったらしいが。
そんな良いアイテムが沢山あるのに、俺は補助効果を一つしか所望してこなかったから変だねって話だった。
確かに、リリィの防具には補助効果が沢山ついてたし、深域武装にも凄い数の魔法が装填されていた。“自動修復”なんて、ついで感覚なのかもしれない。
奴隷の武具がそうなのだ。銀細工持ちの冒険者である主人は、もっと欲張った武器を使ってもいいのかな。
「と、言われてもね……」
「普通、潜るダンジョンに合った武器を担ぐモンですぜ。悪霊迷宮にゃ霊によく効く聖属性。猛獣迷宮にゃ獣殺しの呪いつけたりとか」
「それで言うなら、汎用性の高い剣が欲しいんですけど」
「“自動修復”は確定と。そんで純粋に上等な武器ですかい。んなら、やっぱ好みになるでしょうねぇ……」
言うと、店主は背後の棚から一冊の本を取り出し、それを広げて俺に見せてきた。
そこには異世界文字で補助効果の目次が記載されていた。
「へへっ、最初からこれ渡しときゃって話でしたね。こん中から欲しいモン選んでくだせぇ。まぁ相性云々で無理な時ぁ無理って言わせてもらいますがね」
「ありがとうございます」
俺は渡された設定資料集を手に取り、さっと目次を流し見た。異世界文字は書けないが読めるのだ。
そこには、自動修復や魔法装填など知っている補助効果に加え、俺の知らないスキル名も書いてあった。
「リリィはどれがいいと思う?」
「え? そうッスね~」
後ろで暇そうにしていたリリィに訊いてみると、「うむむ」と唸って存外真剣そうに考えてから言った。
「ご主人はよく敵の痛がるトコに攻撃入れてるんで、そういう戦い方に合った奴がいいと思うッス」
「おぉ、確かに」
言われてみれば、である。
モンハンでもそうだ。大剣に抜刀術。スラアクに高速変形。ガンスに砲術。武器ごと、プレイヤーごとに適したスキルがあるものだろう。
それで言うなら、俺は各種チートオプションのお陰でエネミーの弱点部位とかジャスガからのクリ確攻撃とかができるので、それにマッチしたスキルを選べばいいのだ。
敵に合わせた特攻武器でなく、いつでも強い汎用武器ならば一から十まで俺の癖に合わせた剣こそ具合がいい。
「えーっと、弱点に攻撃入れると威力が上がる的な……そういう補助効果ってありますか?」
「そりゃ“弱点特効”ですね。技巧派ってんなら、“会心特効”を併せるのもお勧めでさぁ」
「おぉ! じゃあ、とりあえずその三つで」
「おいおい、これだけの素材だ、まだ付けられますぜ。まあ、モノを絞って効果上げるのもアリっちゃアリだが、ちょいと勿体ねぇな。あと一つ二つ三つは全然余裕ですぜ」
「そうですか? じゃあ……」
そんなこんな。
俺と店主は、それからもああでもないこうでもないと剣に付与する補助効果について話していた。
途中、暇そうにしていたルクスリリアにお小遣いを渡して何か適当に買ってきてもらい、三人で食べた。
ちなみに、ドワルフ氏は普通にお肉食べてた。「エルフも普通に肉食いますぜ?」との事。
「まっ、こんなもんですかね」
「すみません、お時間取らせてしまって」
「気にしなさんな。こっちこそ年甲斐もなくはしゃいじまって、すいやせんねぇ」
結局、剣のオーダーが完了したのはお昼を過ぎた頃だった。
朝に入ってもうお昼過ぎだから、かれこれ5時間弱話してたらしい。
ゲーマーはこういうの好きなのだ。
「知ってるたぁ思いますが、代金は作成前にもらう事になってるんでさぁ」
「はい」
俺は、アイテムボックスから今回オーダーした剣の代金を支払った。
お値段、3000万ルァレ。しかも希少金属持ち込みでお安くなったうえでの値段だ。
余裕でルクスリリアを買える値段である。宿屋での朝食が200~500ルァレなあたり、やっぱ冒険者家業は儲かるが金遣いが荒くなる。
「今から図描いたり職人集めたりで色々やるんで、出来上がるのはもうちょい先になりまさぁ。完成したら適当な使い寄越しますんで、楽しみにしててくだせぇ。最高の剣をお見せしやしょう」
それから、イケメンエルフのお見送りを背に、俺とルクスリリアは傾き始めた太陽の方へ歩いていった。
モンハンだと作った武器はその場で装備できたりしたが、異世界でそんなの出来る訳もないので、完成までお預けである。早く試し切りがしたいね。
「きひひ……今日のご主人、なんか楽しそうでしたッス」
「うん、楽しかった」
アーマード・コアでもガンダムブレイカーでもそうだったが、とかく男子は「俺専用」というのが大好きなのだ。当然、俺も例外ではない。
異世界での俺専用のオーダーメイド武器。その注文である。それはもう楽しかったし、ワクワクした。
「まあ、けっこうお金かかったけどね……」
3000万ルァレ。決して安い額じゃない。
運が良ければルクスリリア級のロリ奴隷を買える値段なのだ。剣ひとつにしてはお高い気がせんでもない。
「でもまだまだ残ってるんスよね?」
「まあね」
「流石ご主人~♡ 甲斐性の塊~♡」
とはいえ、だ。
大枚をはたいたのは事実、失った分は補填したいところである。
なので……。
「明日のダンジョンも頑張ろう」
「きひひ~♡ ……え、明日? 潜るんスか? 迷宮?」
「そのつもり」
「……昨日行ったッスよね?」
「今日休んだからね」
「……ぇぇ?」
見ると、ルクスリリアは千と千尋の神隠しのカオナシみたいな表情になっていた。
時折、「アァ……アア……」と呻いているあたりソックリである。
「あの、ご主人?」
「なに?」
「ご主人ってもしかして、可哀想な人なんスか?」
「失礼だな、リア充だよ」
「いやだって、普通休みの日にゃあやりたい事の一つや二つあるもんッスよ? それこそ、あそこのカジノとかで遊んだりしないんスか?」
「興味がないではないけど、今はいいかな」
「えぇ……じゃあ、今まで休みの日は何を?」
「情報収集」
「それは休んでないんじゃあ……?」
実際、この世界で休日にやりたい事など、特にはないのだ。
ゲームもないし、アニメもないし、マンガもないし、映画もない。
この世界には、家族も友達もいないのだ。
「ご、ご主人?」
「なに?」
などと考えていると、浮遊して寄って来たルクスリリアは、俺の耳元に唇を寄せて、囁いた。
「アタシ……連れ込み宿に興味あるッス♡」
「なら明日は休みにしようか」
ダンジョンには行きたいが、それはそれ。
ルクスリリアをハック&スラッシュするのも楽しい。
俺は明日の予定を切り替える事にした。
「ふぃ~、とりあえずは回避できたッス~」
ルクスリリアが何か言っていたが、街往く人の話し声に紛れて聞こえなかった。
多分、腹減ったみたいな事だろう。
結局、次のダンジョンアタックは剣の注文から三日後の事になった。
ちょっとハッスルし過ぎたかもしれない。
感想投げてくれると喜びます。
ルクスリリアはオチに便利ですね。