【一巻発売中】たのしい異世界ハクスラ生活、あるいは超紳士的英雄譚 作:いらえ丸
誤字報告も感謝です。ありがとうございます。
キャラ・ボスのご応募もありがとうございます。
アンケートのご協力、ありがとうございました。
だからどうなるとは言えませんが、今後の展開の参考にさせて頂きます。
今回もアンケあります。
お気軽にどうぞ。
「おもしれー雲……」
遠くで浮かぶ鱗雲を頭上に、俺達一行を乗せた戦車は空の帰路を走っていた。
王都に近づいていくにつれ、綺麗に整備されたラリス街道には多くの積荷を載せた馬車が散見されるようになった。
ラリスの王都を人の活気が血液のように出入りしている。まさに、あの場所こそが世界の心臓なのである。
「あれが、ラリス王国……?」
「いいえ、此処はもうラリス王国よ。今向かっているのはその首都ね」
「地理むずかしい」
「まぁそのうち覚えてくさ」
街道を往くキャラバンを追い越し追い越し、やがて王都西門に到着した空飛ぶ戦車は誘導に従って滑走路に着陸した。
アレクシストは異世界一の大都市であるからして、門の前には様々な人が屯っていた。俺達にとっては慣れたものだが、レノはあまりの混雑ぶりに身を竦ませていた。
「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ」
「ん……」
試験管で生まれ、猫又に改造されたレノは、普遍的な天使族にはない自身の身体的特徴に強いコンプレックスを持っている。メカ耳やメカ尻尾を人に見られるのが怖いのだ。
ぶっちゃけ、ただの杞憂なのだが。実際、門前の待ち人も検問の衛兵もレノを一瞥しただけで何を言ってくる事も陰険ヒソヒソ話などもしていない。
「イシグロ・リキタカ様ですね。どうぞ、お通りください」
検問をパスし、皆を引き連れてテーマパークめいた門を潜る。
はぐれないよう手を繋ぎ、人の流れに乗って歩道を歩く。近くを歩いている誰も、小さい天使の耳や尻尾には注目していなかった。
「あんまり見られないね……」
「まぁ実際こんなもんなんよ」
良くも悪くも、人は他人に無関心だ。こうも沢山の人がいれば、どんな奴でも埋没する。
王都民からすると、天使族はレア種族ではあっても奇異には映らない。普通にそこらへんで働いてるし。メカ耳やメカ尻尾も、せいぜい迷宮探索用の装備と思われて終わりである。
何なら普通の冒険者の方が様子がおかしい訳で。バケツヘッド半裸マンが受け入れられてるのだ、この異世界は。
「ほぇ~……」
案ずるより産むがやすしってやつで、いざ入ってみて特に何もなかった事を自覚したレノは王都の街並みを物珍しげに眺めていた。
多いのは人だけではなく、デカいのも人だけではない。新旧入り混じった建築物に、多種多様な種族。すぐ近くで、身長二メートル強の豚鬼人が重そうな荷物を抱えて走って行った。遠くでは衛兵と追いかけっこしてる鼠人がいて、建物の屋根では植物系魔族が気持ちよさそうに光合成していた。
法の下の混沌。それが王都アレクシストなのである。
「転移神殿は明日にして、今日はもう帰ろうか」
「その前に買い物ッスね」
「時間ある訳じゃし、今晩はいつもより凝ったモンでも作るかのぅ」
熱気の籠る商業区を抜け、活気のある商店街の方へ足を進める。
路地を抜ける度に世界観が変わるかのような錯覚。徐々に屋台の数が増え、飯を食わせる店が見えてきた。
開けっ放しの酒場では、ガテン系牛人の隣で衛兵コンビが森人豆のパスタを立ち食いしていた。お耽美な森人男子二人組が乳繰り合ってる様子を、陰キャっぽいドワーフ女子が鼻息を荒くして見つめている。オープンな厨房で料理をする蛇系魔族姉ちゃんは、炎魔法を使ってチャーハンモドキを作っていた。
どこを見ても情報量が凄まじい。静謐とした聖輪郷とは全くの別世界だ。うんうん、帰ってきたって感じがする。
「おっ、イシグロじゃねぇか! 戻ってきたか!」
馴染みの商店街まで来ると、馴染みの中年男性とエンカウントした。実質的な担当職員である迷宮ギルドの受付おじさんだ。
彼は完全オフスタイルの恰好で、ついさっき買い物してきたと思しき鞄を提げている。中からはみ出ているのは上等な酒瓶だった。独身貴族をエンジョイしていらっしゃる。
「お久しぶりです」
「おぅ。そっちのは新入りか?」
「はい。レノ、挨拶して」
挨拶を促すと、彼女は背の高いおじさんにビビりながら頭を下げた。
「えーっと、レノです。一応、天使族で……」
「天使族か」
「あ、はい……」
「ほうほう、なるほど……。そういや聖輪郷の雲が晴れた時期はイシグロが出てしばらく後だったな。そんで確か依頼書には……」
すると、おじさんは顎に手を添えて何事かボソボソ呟き始めた。
やがて彼はにやりと笑んで、
「へっ、そういう事かよ……」
得たりとばかりのドヤ顔を披露した。
何に納得したというのだろう。
「は~ん、人間に淫魔に竜族に……んで今度は天使族ときた。へへっ、一党らしくなってきたじゃねぇか、おい。単独のまま銀細工になった男とは思えねぇぜ。勿論、まだ続けるんだろ? 迷宮さ」
「ええ、そのつもりです」
「だろうな。流石はイシグロだぜ……」
そう言って、上機嫌な受付おじさんは手をヒラヒラさせて去って行った。
男は背中で語れと聞くが、おじさんの背中には大きな文字で「満足」と書かれていた。
「あのおじさん、何でかいつもああなんスよね~」
「不思議な人ですよね」
「好意的ではあるわ。魔力が少なすぎて見えづらいけれど」
「健康でいてほしいな」
「以前よりは健康になっとるのじゃ。肝の氣が若くなっておる」
「イリハ、凄い……」
そんな事を話しながら、西区随一の商店街に入っていく。
ここは借家最寄りの商店街なので、並んでいるのは若干お高め商品で占められている。例えるなら高級スーパーといったところ。
「さて、今日は何がお買い得かのぅ」
「どこもセールっぽい雰囲気だな。皆はなに食べたい?」
「ボクは何でも。イリハの料理はどれも美味しいですから」
「多分、それが一番困ると思うわよ」
「最近はラリス食が多かったッスからね。とりま卵が食いたいッス」
「たまご……」
「おっ、あったあった」
「鶏卵一個で三百ルァレ……相変わらず高いのじゃ」
「ボクのいた村だと、みんな普通に食べてたんですけどね。不思議です」
「土地が変われば価値が変わるのよ」
他愛もない日常会話を交わしつつ、使いそうな食材を適当にガンガン購入する。
その他ブラブラと物色していると、レノは何故か肉屋の前で一時停止した。
「レノ、なに見てるんだ?」
「ん、これなに……?」
「鹿のお肉ですよ」
「肉? 動物の死骸?」
「言い方ぁ……」
「今朝食べたでしょ? 調理する前はこんな色をしているのよ」
「そうなんだ……」
ぼそっと、興味深げに呟くレノ。
これまで、レノはロクなご飯を食べた事がなかった。楽園の時も検体の時も、水槽に満たされた培養液で栄養を賄っていたのだ。聖輪郷に保護されても、俺の持ってくるお菓子以外は清貧なパンと水だけで暮らしてきたのである。
そんな彼女だが、俺の一党に加わってからは宿屋の飯や保存食を食う機会があった。今朝は肉入りスープを食ったが、切り分けられた生肉を見るのは初めてなのである。
なら、魚も見た事がないのか。せっかくだし、買って帰ろうか。
「これも買ってこう。いい感じでよろしく」
「任せるのじゃ」
一人離れてササッと魚屋に寄り、冷凍された魚を購入。調理された魚を見て怖がらなきゃいいけど、まぁ何事もチャレンジだ。
「なぁ、もういいんじゃねぇか? 冒険者の飯はやっぱ外で食うのが粋ってモンだろ」
「前の探索は失敗しちゃったんだから、できるだけ節制しなきゃダメでしょ。ポーションだって安くないんだし、アンタの剣だって直さないといけないんだからね。あ、ほらこれ安いじゃない!」
「なら最初から安いトコ行けばいいんじゃないの?」
「今日だけ同じくらいの値段なんだから、こっちの方がお得でしょ」
「そうかなぁ」
と、何やら覚えのある声が聞こえてきた。
若者らしい声音で話しているのは、以前飲み会に参加した羊人少女一党だった。羊人少女が店を回って、男子二人が荷物持ち。何となく一党の力関係が見えてくるな。
「あ、イシグロさん! ちーっす!」
「ちょっと馴れ馴れし過ぎでしょ! お久しぶりです、イシグロさん!」
「御久しぶりです。先の騒動では失礼しました」
「いえ、終わった事ですから」
彼方も此方に気付いたようで、三人は軽やかな足取りで近づいてきた。
彼等は冒険者歴一年弱で鋼鉄札を授与された期待の一党である。鋼鉄札と言えば、一端の冒険者と認められる位階だ。
なのに、高給取りであろうはずの三人は生活費を切り詰めているようだった。毎日外食毎晩飲み会の冒険者とは思えない健全っぷりである。
「皆さんは自炊をされるんですか?」
「そうなんです。あたし達、三人で宿暮らしをしてるんです」
「料理は僕がやるんですけどね。カリッセ……あぁうちの頭目は食べる専門で」
「うるさいなぁ」
「まぁ俺としては別部屋に住みたいんすよね」
「なんでよ、お金の無駄でしょ?」
若い男女、何も起きないはずがなく……と言いたいところだが、幼馴染三人はそういう関係ではないらしい。
うん、こういう関係性嫌いじゃないよ。仲の良い男女友人枠からしか摂取できない栄養があるのだ。
逆に、外から見ると色気もクソもないのに実際はドチャエロの爛れた友人関係ってのも嫌いじゃない。スケベフレンズからしか摂取できない栄養だってあるのだ。
ロリじゃないと勃たないが。
「もっと迷宮を踏破して、もっと稼げたらいいんですが……」
「何か秘訣とかないすか? 今、オレたち雲羊迷宮に再挑戦するつもりなんすけど……」
「やはり、仲間を増やすのが最適解だと思いますよ。あそこ、湧いてくるザコが鬱陶しいですからね」
「それは、まぁ……」
そう率直にアドバイスすると、彼等は何ともいえない表情を浮かべた。そりゃ考えない訳もないよな。
が、手っ取り早く攻略したいならそれしかないと思う次第。
「それが、もう三人で連携が固まっちゃってて……」
「一回六人で潜ってみたんすけど、皆が皆の足引っ張るみたいになっちゃったんす。訓練とかも、あんまりできなくて……」
「凄い人だと、適当にやって連携取れるじゃないですか。あたし達、それが全然なんです」
ある意味、固定パーティの弊害である。三人で鋼鉄札に上がれる実力はあっても、四人集まって相応の実力を発揮できる訳でもないのか。
そもそも、彼等の戦闘力はさほど高くない。高くないのに、誰一人として死んでいない。ギルドからは、そういうとこが評価されてるってのを聞いた事がある。
「あっ、あの鹿肉残り一個じゃない! 行くよ二人とも!」
「へいへい」
「すみません。僕達はこれで。また手合わせして頂けますと幸いです。待ってよカリッセ」
会った時と同様、若々しい三人は元気いっぱいに去って行った。
荒くれが多い冒険者の中で、彼等のようなフレッシュな若者は貴重である。是非とも生き残って、幸せを掴んでほしい。
ふと、クイクイと手を引かれた。眠たそうなオッドアイが俺を見上げている。
「マスター、あの人たちはどういう関係?」
「冒険者の一党だよ」
「一緒に住んでるって」
「らしいな」
「仲良し?」
「だと思うよ」
「そう……」
どういう意図の質問なのかは分からないが、とりあえず普通に返答する。
レノは鹿肉の値切りをしている羊人少女を眺めていた。
「仲良しの、一党……」
そして、不思議そうに首を傾げていた。
〇
イリハの作った鰤大根は好評だった。
王都西区高級住宅街。借家にある食堂のテーブルには、色とりどりの夕餉が並んでいる。
シンプルに焼いただけの肉。サバっぽい魚と野菜の淫魔チーズ焼き。無月流剣術を応用して作った秋野菜のサラダ。その他色々、どれもサイズはモンハンレベルだ。
幸い、レノに好き嫌いはないようで、どの料理も「美味しい」と言って食べていた。
「これがモモ。これがヒレ。これがタン。これが肩ロースッス」
「全部同じじゃ……?」
「部位ごとに味が違うんですよ。やっぱり、淫魔王国産のお肉は最高ですね!」
「肝はアナタにあげるわ」
「わぁい、イシグロ肝臓大好きー」
「皆、普段からこんなに食べるんだね……すごい」
「まぁ冒険者ってこんなもんじゃよ。わしも最近までは寿司四貫でお腹いっぱいじゃった」
レノの言う通り、俺達は普段からドカ食い気絶部が驚いて気絶しそうな量を食べている。いかにも健康に害が出そうだが、魔族と竜族は当然として俺とイリハも全くその気配がない。むしろ食えば食うだけ元気になってるまであるよ。
が、これは俺だけじゃない。他の同業者もめちゃくちゃ食べるのだ。多分だけど、レベルアップするとこうなるんだと思う。
「ん、甘い……」
「たまにはこういうのも悪くないわね……」
食後、ハチミツ入りのワインを飲んでゆったりした時間を楽しむ。
聖輪郷で食べたイリハ製のお菓子で脳が焼かれた為か、レノはことさら甘い物を好んでいるようだった。
というか、レノに限らず異世界人は全体的に甘シャリを好んでいる印象だ。実際、淫魔氷菓は子供だけでなくおっさんからも人気だし。
「さて、皆聞いてくれ」
休憩の後、食後の腹が落ち着いたところで、俺はグラスを置いた。
「明日は鍛錬場に行ってレノの適性を調べようと思う」
「調べる……?」
首を傾げるレノ。俺の言わんとする事を、他のメンツは当然に理解していた。なので、分かってないレノに説明する事にした。
事前に言われたが、彼女は強くなる事――迷宮探索にはノリ気だからな。なら武具は必須でしょうと。
「武器が出来上がるまでには時間がかかるからな。だから先に決めちゃって、作ってるうちに色々済ませようと思うんだ」
種族図鑑に曰く、天使族は力も技も取り立てて強くはないらしい。
代わりに、天使固有の権能がやべーのだ。その他、治癒魔法に適性がある。飛行能力もあるし、再生能力も魔族並みかそれ以上。伊達に平均戦闘力異世界三位の種族じゃないのである。
勿論、個人差はある。バリバリ武闘派の力天使とか、翼人流の武術を修めた天使だっている。その個人差を確認しようというのである。
「すぐ決めて一直線じゃなくても、だいたいの方針は決めるべきだと思う。遠距離とか近距離とか」
「う~ん……」
ルクスリリアは武器ありきで考えた。エリーゼは器用万能を目指した。グーラとイリハは持ち味を活かした。
そんな中、レノは如何せんという話である。
適性武器の調査。得意戦法の模索。ジョブの方針を決めて、それ専用の武器と防具にアジャストされたスキルを付ける。
勿論レノの意見を最優先するとして、それでも心にグッとくる。考えるだけで楽しくなる心地だった。
「マスター楽しそう……」
「ご主人はそういう人なんス」
「きっとビックリすると思いますよ」
こうして、王都に帰って初めての夜は過ぎていくのであった。
〇
夜、レノは目を覚ました。
柔らかなベッドは、長い間水槽で眠っていたレノにはまだ慣れなかった。
上体を起こし、周囲を見る。殺風景なこの場所は、レノ個人にあてがわれた部屋だった。
通常、よほど特殊な理由がない限り。奴隷身分の者に部屋が与えられる事はない。それどころか、シーツや毛布もなく床で寝るのが普通だった。大事にされている事くらい、鈍いレノでも分かっている。
「ん……」
レノはおもむろにベッドから下りて、隣室を隔てる壁に近づいて行った。
そして、その顔を重厚な壁に近づけていく。まるで、その奥を覗き見るかのように。
ところで、レノには通常の天使族には無いいくつかの能力があった。
並みの獣人を超える地獄耳と障害物を無視する透視能力だ。猫又に改造されて増設されたメカ耳と、同じく移植された魔眼の力である。
それを、今使おうというのだ。
右眼の魔眼が光り、メカ耳が感度を上げる。
レノの視界が切り替わり、赤外線カメラを通したように壁の向こう側が見えてくる。
やがて、隣室の光景が感知できた。
床に跪いた大きな影が、小さな影に囲まれている。
主人が顔を埋めている。ぴちゃぴちゃと水音が鳴っている。激しい息遣いと、甲高い声。主人を囲む影は、彼の真ん中にあるモノを見て嗤っていた。
小さな影が身体を震わせると、今度は別の影が主人の頭を掴んで自身の方に押し付けた。大きな影はなおも丹念に舌を使っていた。
主人が、奴隷に、奉仕をしている。レノにはそのように見える光景だった。
一通りの奉仕を終えると、奴隷達は床に仰向けになった主人を踏みつけ始めた。
主人が集団リンチを受けているようで、実のところそうではない。悦んでる……というより、楽しんでいた。
踏む側と踏まれる側。けれど、そこに上下はなかった。
これまで、文字通りに純粋培養されてきたレノは、性愛や色恋というものを知らずに生きてきた。
だが、知識は与えられていた。彼女達がこうしているのを見る事も初めてではない。
任務地で、宿屋で、野外で、皆はレノに隠れて交尾をしているのだ。
しかし、彼等の交尾はレノの知ってるソレとは大分異なっていた。
ファリナの言う純粋な営み。ガリエーラに習った神聖な儀式。そのどれにも該当しないのだ。
「んぅ……」
彼等の営みの一部始終を、レノは特殊な目と耳で観察していた。
静謐ではないし、神聖でもない気がする。ただ只管に熱中してて、皆めちゃくちゃ幸せそう。
壁の向こうで、ついに奴隷が跨った。その時、レノは思った。
――なんで、わたしだけ呼ばれてないんだろう?
曰く、性交とは深く愛し合っている仲良し同士が行う行為らしい。
つまり、レノはまだイシグロ達に愛されてはいないのである。
それは、そうだろう。会ったばかりなのだ。どだいお互いに知らない事ばかりで、ああも曝け出すのは難しい。
それ以前に、では自分も混ざりたいのかというと、別にそんな事もなかった。
見てる分には何が楽しいのか分からないし、ぶっちゃけちょっと引いていた。
昼は頼れるお姉さんみたいだったエリーゼが、今は主人にキスをねだる甘えん坊になっている。
普段大人しくて純朴そうなグーラも、なにくれと世話を焼いてくれるイリハも、主人を前にしては一匹の獣になっていた。
ルクスリリアは……普段とあまり変わっていない。
感謝はしているが、まだ恋はしていない。
愛している訳ではないが、愛されたいとは思っている。
混ざりたい訳でもないが、一人で寝るのは寂しかった。
イシグロは、その仲間は、レノとその家族を命懸けで助けてくれた。
であれば、助けられた側の感情に、責任を取って欲しいと思う。
その小さな感情が、恋の萌芽であると気づかぬまま。
鉄の子宮で生まれた天使は、一人の夜を過ごしていた。
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作者のやる気に繋がります。
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