【一巻発売中】たのしい異世界ハクスラ生活、あるいは超紳士的英雄譚 作:いらえ丸
誤字報告も感謝の極みです。ありがとうございます。
キャラ・ボスのご応募もありがとうございます。
アンケートのご協力、ありがとうございました。
という訳で、レノの武器は銃になりました。
早々に決着がついたので、早々に書いて投稿です。よろしくお願いします。
今回もアンケあります。
アンケというより、分岐ですね。
知り得たか、本作はこういう事する。
瞑想は頭の筋トレだ。
揺らぎがちな思考をゼロにして、脈でも呼吸でも何か一つの事に集中する。思考が逸れる度、それを無にして仕切り直す。その反復こそが、タフなメンタルを作る道筋なのだ。
瞑想には熟練が必須である。何はなくとも、人は考えて動く生き物だ。動かず考えないというのは、これが存外難しいもんで。ただ考えない事が出来そうで出来なかったりするのである。
前世、俺はよく「ながら行動」をやっていた。
ソシャゲしながらアニメを観る。音楽聴きながら家事をする。読書しながら飯を食う。
それらの多くは、集中力を低下させる行いであるらしい。それを矯正し、強化する。それこそが瞑想なのだ。
ガチで戦うと決めてから、俺は唯心無月流という異世界武術を修練している。
座って呼吸だけに集中する動かない瞑想。素振りや型稽古等、身体動作に意識を向ける動く瞑想。この流派、何はなくとも瞑想が鍛錬の主軸なのである。
継続は力なりとあるように、俺はほぼ毎日瞑想を続けていた。効果の程は多分あるんだと思う。少し意識すれば無心になれるし、前より集中力が長続きするようになった。実際、戦い漬けだった例の一日も最後まで集中状態を維持できてたし。
さて、前述の通り瞑想には熟練が必要である。たった五分の呼吸瞑想、これが意外とキツいのだ。
イリハは元々陰陽術の鍛錬で慣れてたし、グーラはその戦士適性の高さで問題なく習熟した。俺とエリーゼは少しずつ慣れていき、ルクスリリアはどれだけ頑張っても五分が限界だった。
そんな中、新入りのレノはというと……。
「寝てないッスか?」
「いいえ、脈も呼吸も一定です。普通に起きてますよ」
なんか最初から出来ていた。
とりあえず、初めの方は
そして、銀細工的腹時計できっかり十分が経過した瞬間、
「ん……」
レノはパチッと目を開けた。
瞑想を始めた頃、俺なんかは邪な妄想や陰茎の苛立ちによって表情を歪めまくっていたものだが、レノは終始無表情だった。
会話による外部刺激に対しても無反応で、眉一つ動かす事はなかった。凄まじい集中力である。
「すごいな、レノ。もう完璧じゃん」
「ん、そう……?」
アンドロイドっぽい見てくれのレノは、中身もちょっとソレっぽかったとさ。もちろん誉め言葉である。
何となく、彼女の射撃能力に納得がいく気がした。
そうして朝の稽古を終わらせ、朝食を食べて諸々済ませてから外に出る用意をする。
今日は行くところがあるのだ。
「最初にどこに行くのじゃ?」
「ドワルフの店」
「どわるふ……?」
そう、アダムスのとこに行って、レノの武器を注文しようというのである。
結論から言うと、レノの武器は銃に決定した。
とはいえ、何ントロック式だとか何とカッション式とかの火薬を使うリアル銃を使わせようってんじゃあない。
目指すべきは、ビームライフルあるいはレーザーブラスター。魔法触媒ならぬ光力触媒。光力を収束して放つ、仮称・光力銃だ。
光力撃って、権能使って、戦場狭しと飛び回る。レノの最終目標は、小さな魔導人機スタイルである。
昨日、レノの武器について皆と相談した結果、選ばれたのは銃でした。
何故かというと、弓と銃を比べた際、擬似タイマンの自衛力に差が出るのではとの意見が出た為だ。
長じればそんな事もないのかもしれないが、力も技も伸びにくい天使族の特性を鑑みるに、弓では大した火力が出ないんじゃないかと思った次第。
それなら、苦手を減らすより得意を伸ばした方が結果的に強くなれると考えたのである。実際、杖持ち型の高位天使は光力をメイン火力に据えている訳で。
光力を収束し、弾丸として放つ武器。
可能なら、それに魔法触媒と同じ光力制御の補助機能も持たせたいところだ。
恐らく、武器カテゴリとしては杖に……俺と同じ銃杖になるだろうか。
レノに俺の銃杖を使わせてみたところ、銃型の魔法触媒は狙いがつけやすいと言っていた。
矢を番えて放つ弓と、光力を装填して撃つ銃。現状どちらが上かは分からないが、光力に自信ネキのレノは射撃能力もグンバツなのだ。なら、後者がピッタリなんじゃないのかと。
汎用性については物魔どっちも行ける弓に劣るだろうが、純粋火力は光力メインのが高いはず。上手くいけば、光力の強化に応じて権能の強化だってできるかもしれない。
無論、現状では先の仮称・光力銃が実現可能かどうか分からない。
例え完成したとして、クロスボウのように使い物にならないゴミ武器になる可能性だってある。
その時は素直に弓ルートを進めばいい。最終的に、そのように収まった。
そんな感じで、俺はドワルフに光力銃についての相談をしに行こうというのである。
なにより、ロリと銃は相性がいい。対戦車ライフル使うロリとか最高じゃん。二挺拳銃ツインテロリだって悪くない。
まぁ何にせよ、レノの手に馴染むのが一番だ。
〇
仮称・光力銃。
それは天使が使う万能エネルギー“光力”の制御を目的とした光力版魔法触媒で、形は俺の銃杖のような“銃の形をした杖”が望ましい。
運用思想としては、後衛寄りの中衛で空を飛びつつ味方を援護するというもの。
その他、権能による各種立ち回りや、願わくば通常の魔法触媒としても使用したく考えている。
今のところ、これがどんな形になるかは分からない。
俺と同じレバーアクション式ショットガンみたいな形になるか、それともクソデカライフルになるか、あるいはガン=カタ的な拳銃型になるか。
そもそも完成するかどうか。銃杖とは微妙に異なる初めての試みとなるので、異世界の仕様に武器として認知してもらえるかさえも不明。
それでも、やってみる価値ありますぜと思うのだ。
「……って感じの武器をお願いしたいんですけど」
という旨の注文をしたところ、ドワーフみたいなエルフことアダムス氏は受付机に肘を乗せつつ難しい顔で唸っていた。
その顔は適当こいてる俺を非難してる訳でもなく、呆れている風でもなく、思考の大部分を別の事柄に回しているかのようであった。
受付机には昨夜俺が書いた光力銃の雑な仕様書が置かれている。我が銃杖と同じ形とか、少し長いモシン・ナガン型。とにかく持ちやすく狙いやすい銃っぽい絵も描いておいた。
現在、ドワルフの店には俺の一党が勢ぞろいしていた。俺と彼がお話してる間、皆は適当に暇潰しをしていた。
レノ以外は外で待ってていいよと言ったのだが、ついてきたのである。
「……そうですねぇ。まぁ、できなくはないと思いやすぜ」
「マジすか!」
我知らず喜色八割で反応する俺に対し、いつもの「映画の中盤で死にそうな商人キャラ」みたいな薄笑いを浮かべたドワルフはどうどうと手のひらを向けてきた。
「が、旦那の言った通り、それが使い物になるかどうかは保証できかねますぜ」
「な、なるほど、やっぱりそうですよね」
「そりゃあ、やってみねぇと分からねぇってのが本音ですわな」
言いつつ、椅子から立ち上がったドワルフは店の奥に入っていき、一冊の本を持って戻ってきた。
それからペラペラとページをめくり、ちょうど真ん中あたりを開いて机に置いた。そこには、天使族が使う杖についての記載があった。
「旦那の仰る光力触媒ってのぁ、ずっと昔から実際に在るもんでさぁ。六枚羽共の……失礼、高位天使のお偉方が扱う杖は、普通の魔法触媒よりも光力を通しやすくしてあるんです。主な目的としては、光力を増幅するんに使ってたようで」
「なるほど」
「この本によりゃあ、光力の通りが良い素材に権能を補助する為の聖印を彫刻して造るらしい。で、問題はそこなんでさぁ」
本に描いてある光力制御杖をとんとんして、ドワーフみたいなエルフが続ける。
「残念ながら、肝腎要の光力を通しやすい素材ってのが分からねぇ。あともういっちょ、聖印っつーもんも分からねぇ。地上に降りた奴等も、こっちで別の武器使うしな。正確な情報が入ってこねぇんだ。光力使いの種族は他にもいるが、そいつらの武器がコレと同じとは思えねぇ。それに、いくらあっしでも組んだ事のねぇ武器を自信満々にお出しする事ぁできねぇよ」
「だから、難しいと……」
「ああ。だけどもだ、さっきも言ったが出来なくぁねぇよ? 研究用にサンプルが一つあればいい。その上で職人達と相談して、色々と試行錯誤する必要があらぁな。話はそっからよ」
「なるほど……」
つまり、銃杖以上に何もかも初の試みだから時間も費用もかかるよって話か。
武器工匠のアダムス。彼はハイエンド・オーダーメイド武器専門の工匠である。何を注文するにしても、えげつない金額を要求してくる廃人仕様の武器屋さんだ。
それが初めて尽くし且つ完成の見通しもつかない依頼となれば、ただでさえやべー費用が更にやべー事になる。
それでもやるかと、アダムス氏はいつになく真剣な目で俺を見ていた。
予想より大きい買い物になりそうだ。皆は各々くつろいでいる。レノはよく分かってなさそうな顔。
そして、俺は請求される金額を覚悟して、姿勢を正してから口を開いた。
「はい、よろしくお願いします」
改めて、俺は採算度外視でレノ専用の光力銃の開発を依頼する事にした。
なに、ダメだった時は弓に行けばいい。迷宮強化月間のお陰で預金には余裕がある。例え失敗したとしても、金以外に大したダメージはない。
それに、こういう“遊び”がないと、新しいものは生まれないのだ。
「へへっ、へへへへっ……! それを聞きたかったぁ……!」
俺の返答を聞いたドワルフは、本をパタンと閉じて怪し過ぎる笑みを零した。
「あいよ、任せな! いやぁ、この歳で新しい仕事に挑戦できるなんて、工匠冥利に尽きるってもんでさぁ! へっへっへっ……」
それから、俺とドワルフは熱い握手を交わした。
武器工匠のアダムスから強い信頼を感じる。彼とのコープランクが上がった気がした。
「とりあえず、何はなくとも核になる素材を見つけなきゃなんねぇや。今わかってる範囲だと、
「わかりました。そっちのが安上がりって話ですよね。銀行から一通り持ってきます」
「おっ、流石ぁ旦那だ。じゃ、何がいいかはこっちで調べとくからよ、細かいとこはそっからでさぁ。場合によっちゃあ、新しい合金作る必要もあるかもしれねぇ。忙しくなるぜぇ!」
「はい、わかりました」
剣や盾と違い、今回は適正素材を選定する必要がある。
それから本格的にどんな形にするかが決まるのだ。その時はレノが使いやすいのにしよう。
「マスター、なんであんな楽しそうなの……?」
「前も言ったでしょう? いくつになっても男は武器が好きなのよ」
「とてもいい事だと思います。ご主人様、迷宮以外あまり趣味の無い方ですから」
「ご主人はあたし等がいれば幸せなんスよ」
「かーっ、よぅ朝からそんな小っ恥かしいこと言えるのぅ!」
「ふふっ、まぁ事実ね……」
「へぇ……」
こうして、異世界ビームライフル計画が始まったのである。
胸が熱くなるな。
〇
例によって例の如く、ドワルフの店から帰る頃にはラリスの秋空は夕焼け色に染まっていた。
というのも、光力銃の相談の他にも色々と注文したり、銀行に行って前金と希少金属を受け渡したり、途中全く関係ない武器の話題で盛り上がったりしてたからだ。
一応、マイホーム貯蓄はあるとはいえ、俺個人の口座の殆どが武器に消えてるの酷い金銭感覚よね。
「ジョブ? 訊いたことない……」
「ちな、あたしは淫魔妖妃ッスね」
「私はドラゴンルーラーらしいわ」
「ボクは魔獣勇士というものらしいです」
「退魔武士とか聞いたのぅ」
「へぇ……マスターは?」
「色々」
「いろいろ……」
帰り道、俺はレノのジョブの育成方針について改めて説明していた。
最終的には銃杖にアジャストしたジョブにする予定ではあるが、その過程をどうするかって話だ。
「昨夜も話したけど、俺的には、弓ジョブはボウマスターの途中まで育てて【遠視】とか【狙撃】とかの射撃系スキルを習得すべきだと思うんだ。ここらへんは銃杖使うなら腐らないと思うし」
「スキル……」
「魔物倒した後になんか覚えるんスよね、ピコーンって」
「不思議ですよね。恐らく、これもご主人様の“チート”が原因だと思います」
「じゃな。普通、戦技も陰陽術も鍛錬して覚えるもんじゃし」
「私は気づけば空間全体に命令できるようになっていたわ。よく分からないわよね」
この世界、覚えたスキルは条件次第で他のジョブでも使用できる。
そこで、レノの育成は弓系を経由してからの銃杖スタイルが良いと考えたのだ。
光力銃が完成すれば、レノはそれを使って射撃戦をする事になる。
なら、弓系ジョブで覚える各種射撃補助スキルにはシナジーがあると思ったのである。
俺とグーラが武闘家スキルで機動力を上げているように、弓スキルで射撃能力をアップさせるのだ。
「ん、よく分かんないけど、がんばる」
「ご安心ください。レノはボクがお守りします」
これの利点は、もし光力銃の開発が失敗したとしてもそのまま弓ルートに行けるところだ。
その為、今日は光力銃の後に短弓の注文もしておいたのだ。使わなくなったら俺が使えばいいしな。
まぁどのみち後の話になってくるが。
「明日はレノの防具を注文しに行こうか」
「待ちなさい。デザインには時間をかけるべきよ」
「明日はお絵描き大会になりそうじゃのぅ」
「凝りますよね、エリーゼは」
「結局、防具工匠次第なんスから任せときゃいいじゃないッスか」
「ん、何でもいい」
「よくないわ。並んだ時に映える見た目じゃないと」
とりあえず、武器もジョブも大体の方針は決定した。
未来に囚われず、それでも先を見据えて行動しないとな。
仮称・光力銃。完成したら、どういう形になるだろうか。
この世界の仕様上、杖と言い張れる形じゃないといけない。
やはり、俺と同じ何とかチェスター型が丸いだろうか。一応開発実績はあるのだし。
雰囲気的にレノの銃杖は金属多めになりそうだから、それこそ某流星の双子めいたクソデカライフルみたいなのになる可能性もあるか。あるいは、彼女の体格と取り回しの事を考慮して可能な限りの小さい銃になるか。
「ん、早く迷宮行ってみたい」
「そうね。そろそろ、私も魔法を撃ちたい気分よ」
「好戦的ッスね~」
「まぁまだまだ先だけどな」
光力銃はまだまだ先。弓も防具も時間がかかる。それまでは、他のやるべき事をしよう。
淫魔女王からエリーゼの検診についての手紙が来ていたから、一回淫魔王国に行かないと。
あと、シュロメさんの話によるとそろそろフライシュ領で料理大会が始まるはずだから、ちょっと見に行きたい気持ちがある。
リンジュに行くのは、光力銃が完成してからかな。そこで師匠に挨拶して、今一度稽古をつけてもらおう。
「あー。レノの服も買わないといけないな」
「それもそうじゃな。ずっとそのままって訳にもいかんじゃろ」
「ん、問題ない」
「あれ? 天使って寒いの平気なんでしたっけ?」
「慣れてる」
「冬服が必要ね。確か、家の近くに翼人専門の店があったはずよ」
「子供用しかないんスし、最初からレノ用の繕ってもらった方が良くないッスか?」
「選ぶ楽しみがあるでしょう?」
当然として、冒険者は迷宮のみに生きるにあらずだ。
美味いもん食って、面白いもん見て、適当にダラダラ過ごしたりして。
毎日、憂う事なく生きて行こう。
こうして、六人になった俺達は秋の夕暮れを歩くのであった。
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世界観上、“杖”と言い張る必要があるので、銃の種類に関わらず銃身は長くなります。要するにマカロフは無理って話です。
あと、上記と同じ理由で特殊な形の銃は杖認定されません。(例:P90等)
また、レノの体格だと二挺以上のマウントはできません。世界観的にもスタイリッシュ四丁拳銃は無理なようです。念力を使うのは実戦だと厳しいですね。二丁をドッキングしたりはできません。やっても意味がないですね。